2023年 工房からの風

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木と漆 万緑 (木工)

Q1
福井県福井市で制作をする「木と漆 万緑」さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
挽物(ひきもの)という技法を用いて作った木地人形を出品いたします。
白漆や生漆にて、木目を生かした拭き漆という技法で仕上げ、色漆で顔を描いています。
人形の胴体部は空洞になっており小豆を入れています。
振るとシャカシャカと音が鳴り、樹種によって異なる音色や質感を感じていただけると思います。
また、押すとゆらゆらと体を揺らします。
音や揺れで、もの言わぬ物たちの声や動きを表しています。

私が木地人形を作り始めたきっかけはコロナ禍でした。
ちょうど育児中だったため、こどもたちと家の中にこもる日々が続きました。
不要不急という言葉について嫌でも考えることになり、何が大切で何が不要なのかを自問自答しました。
唯一確かなことはこどもたちの存在が何よりも大切だということでした。
そして、存在そのものに価値があるものを作ってみたい、私にそれができるのかと強く思うようになりました。

そんな思いを抱え、幼いこどもたちを日々眺めてできあがったものがこの木地人形たちでした。

また、幼少期に山間の田舎で育ったこともあり、自然はとても身近な存在でした。
木の実や草花などを小さな掌の上にのせては眺めていました。見つめていると胸を締めつけるようなときめきを感じました。
その頃の気持ちを形にしたものが、掌におさまる小さな木地人形です。

万緑(ばんりょく)という名前は、夏の季語に由来しています。
万緑とは夏の野山が見渡す限り緑になった光景の描写です。
梅雨が明け、夏にさしかかる頃にはやわらかい若草色だった野山が青々とした緑に変わります。その瑞々しさと力強さを木は持っているということを忘れないためにつけました。
木という素材を自然からいただき、生かせるようになるためのみちしるべとして名づけました。

木と漆の美しさが生活の中に潜むよう、ただ愛おしい存在になることを願って製作しています。

Q2
木と漆 万緑さんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
挽物の修行を終え、独立する際にお世話になった工房の師匠が誂えてくださったまな板です。
木を鉋で削るための作業台のことを挽物の世界ではまな板と呼びます。
このまな板は、栃の木の縮み杢が美しい厚みのある一枚板です。
本来なら作品用として取り扱われるほどの貴重な板を贈ってくださいました。

道具や鉋屑に埋もれるまな板を掃除する度にこの縮み杢が浮かび上がり、その美しさを眺めて製作できることのありがたさを日々感じています。

師匠から教えていただいたものは、経験や技術だけでなく、ものを大切にすることや、人と人との繋がりの大切さを教えていただいたのだと思います。

Q3
木と漆 万緑さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
挽物の修行時代に古道具店で出会った木彫のちいさな仏様です。
工藝品ではないのかもしれませんが、私が木地人形を作る原点にあるものだと思っています。

古道具は好きですが仏像などを蒐集する趣味もなく信心深い方でもないのですが、お店でこの仏様を見た時にとても清らかな気持ちになりました。
思えば物に対して敬意を強く感じたのは初めての経験だったように思います。
それ以来、この仏様の前では姿勢を正し、手を合わせて一礼するようになりました。
この仏様に対して専門的な知識がなくとも、自然と心が正される力を持っていることに驚きました。
このことを通して、物が持つ力を信じるようになりました。
まだまだ道のりは遠いのですが、これからも物が持つ力を信じて作り続けていきたいと思っています。

木と漆 万緑さんが大切にされているまな板のお話し。
とても深い想いを感じられますね。

皆さんから教えていただくもの、どれもが専門の道具で、その道具があってこそ、美しいものが生まれてくる。
使い手はその道具に直接触れることはないけれど、作り手が大切にしている心に触れるのは豊かなことと思います。

コロナ禍の中から制作の核を熟考し、辿り着いた木地人形。
その姿の奥には、万緑という美しい季語にこめられた想いをはじめ、木と漆 万緑さんの万感の想いがこめられているように思います。

木と漆 万緑さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入って、右手に添って歩いた先。
インスタグラムはこちらです。
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また、今展スペシャル映像にも登場していますので、こちらもぜひご覧くださいませ。
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石井宏治さん(木工)

Q1
今回の出展作家の中で、一番近くに工房を持つ石井宏治さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
千葉県市川市で木彫にてスプーン、皿、ボウルなどの器を制作しています。
木理の細やかな材を用いて、彫刻刀や鉋などの刃物による手削りで仕上げています。
削りの仕事が好きですし、木部が返すひかりに心を惹かれます。

無垢の木の質感や表情、経年変化が楽しめるように着色などはせずにオイルフィニッシュで仕上げています。
塗膜のない自然な質感は多少の取り扱いに気を遣うものですが、生活の中で木の素材が感じられ親しみやすいと思っています。

制作しているものは使いやすいように。
人の暮らしの傍にあるいいかたちを考えながら、素材と道具の理にかなったものづくりを目指しています。

本展の出品ではアメリカンチェリー材と北海道産のくるみ材・山桜材を主に用いて制作します。
落ち着いた木理で手取りが軽いくるみの木皿。
色艶の良い山桜から素朴なかたちの匙。緻密なチェリー材にてスプーン、フォーク、バターナイフなど。
リム皿とボウルはひとつひとつ個体差を活かして作ることを心がけました。
お手にとってみていただけたら嬉しいです。

Q2
石井さんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
彫刻刀です。
木の器のおおらかさを表現したく彫刻刀で彫り仕上げています。
彫刻刀は徐々に買い足しており、通販でも手に入りますが、やはり老舗の刃物屋さんへ出向き、お話伺いながら選ぶことは勉強になり有り難いことです。
東京の鍛冶屋さんのものと伺いましたがもう高齢でやめてしまったと聞きました。
大切な道具です。

Q3
石井さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
フランスアンティークのビストログラス。
当時の庶民的なビストロで普通に使われていたといわれるグラス。
ビアタンにステムがついたようなシンプルなかたち。
使いやすく頑丈、これ以上も以下もないような説得力を感じます。
おおまかなバランスのなかで張りや揺らぎがあり、淀みない動きから作られる身体性のある手仕事が好ましく、良い時もそうでない時もいつも愛用しています。

工房からの風には毎回のように来場くださっていたという石井さん。
満を持して、今回は出展作家として、会場にやって来られます。

『使いやすく頑丈、これ以上も以下もないような説得力を感じます。』
というアンティークグラスに心惹かれる石井さん。
自ら作る木の器にも、静かな説得力のあるかたちを求めているように思います。

寄せてくださった文章も読みやすく淡々としながらも、想いの通った言葉が綴られていて、そのことも作品の姿に通じていて。
想いとその先にある姿が一致していることは、作り手として確かな仕事なのだと思います。

奇をてらわず、けれどシンプルという一言では済まされない心がうれしくなる器。
コルトン広場、モニュメント周りのテントで、ぜひ出会ってみてください。

石井宏治さんのホームページはこちらです。
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鷺谷綾子さん(ガラス)

Q1
石川県金沢市でガラス作品を制作する鷺谷綾子さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
パート・ド・ヴェールの器と、アクセサリーを少し出品予定です。
パート・ド・ヴェールは、粘土やワックスで作った原型を石膏で型取りし、
原型を取り出した中にガラスの粉末を詰め、電気炉で焼成し成形する鋳造技法です。

石膏型は一度しか使えなかったり、ガラスをパウダーになるまで粉砕したりと、
なにかと手間のかかる技法ですが、細かいガラスが気泡をたくさん含むことで生まれる、砂糖菓子のような柔らかい質感に惹かれ制作をしています。

器としての機能性も意識しつつ、そっと眺めていたくなるような色彩や輪郭、しっとりとした触感を大事にしています。

酒器いろいろ

ろくろで一つ一つ原型を作っています。
白いパウダーのガラスに色を混ぜたパーツをのせて焼成していますが、どんな風に色が流れてくれるのか、石膏型から割り出すまではわかりません。
意図したところと意図しないところ、作っていても楽しい作品です。

形もいろいろ、色もいろいろ。
選ぶ楽しさを感じていただけたら嬉しいです。

淡い色の中に黒い粒々が入った、蒟蒻のような、寒天のような見た目の器です。
黒い点々があることで、ガラスの奥行きが感じられるところが気に入っています。
同じ蒟蒻風味の器で丸皿、角皿なども出品予定です。

デザートカップ

以前大きめのカップを作った際、湯口(ガラスを充填する部分)にガラスが残って高台みたいになっていたので、残したまま加工してみるとなんだかいい感じに。
その形が気に入って、小さい高台付きのカップを作りたいなと思い、できた器です。
ヨーグルトやフルーツ、サラダなど、ちょっと盛りにちょうどいいサイズです。

Q2
鷺谷さんの工房で、大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
手磨きに使用している道具です。(すみません。一点とあったのですが、セットということで、、)
研磨作業の大まかな部分は機械を使いますが、機械ではやりづらい部分や最終の仕上げは手磨きで行っています。
上と左下はダイヤモンドパッドです。上のパッドはスポンジが付いていて折り曲げて使えるので、器の内側を磨くのに重宝しています。
右下は砥石です。砥石は形に沿って削れてくれるので、口元などの曲面の凹凸を整えたい時に使うことが多いです。
いずれも消耗品ですが、作品を仕上げるために欠かせない道具です。

Q3
鷺谷さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
佐渡へ行った際に購入した裂織のペンケースです。
衣服や布を裂いてつくった糸を織り込んでいく裂織は、すべて一点もので柄も様々。
なので、選ぶのにとても迷った記憶があります。

地域のお母さん達が作られていて、売場にいた方がどんな柄にしようかな、こんな風にしたらかわいいかな、と考えながら作っている、と楽しそうにお話されていたのが印象的でした。
柄も気に入っていますが、作りもしっかりしていて使いやすいので、ずっと愛用しています。

砂糖菓子のような美しい表情のパート・ド・ヴェール。
(鷺谷さんは、こんにゃくのような寒天のようなと・・・)
白にいくつかの色彩が加わって、その質感を印象的に仕上げられています。

鷺谷さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜中心部。
賑わいの中で、優しく晴れやかなガラスの作品がどのように輝くことでしょう。

鷺谷綾子さんのインスタグラムはこちらです。
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兒島硝子(ガラス)

Q1
東京のガラス工房を中心に制作する兒島佳祐さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
「工房からの風」にもですが、初めての千葉での出展なので、自分を知ってもらうための定番のシリーズに加えて、新しい試みの泡のグラスや照明などを一部出品します。

光に当たると綺麗な透明感のあるガラスと、透明色のガラスを使うことで、ガラスという素材を活かせるデザインと、使いやすさを考えた吹きガラスに出来る作品を考えた物を出品します。

ぜひ一度お手に取って見て頂けたらと思います。

Q2
兒島さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
僕にとって大事な道具はジャック(洋バシ)と呼ばれる一番大きな道具です。
コップの口を広げたりガラスを切り離す時に作るクビレを作ったりするための道具になります。
作業としてはとても重要ですが、この道具は自分で購入したものではありません。
実は亡くなった職人さんの御家族から譲り受けた物なんです。
長く使われただけに削れてしまいクセがついている物ではありましたが、なぜかとても馴染みがよく使いやすい不思議な物で、違う種類のジャックも何本か持ってはいますが、しっくりくるこの道具は僕にとっては職人さんの魂もこもった大事な道具です。

ガラスならではの表情が美しいフォルムに輝く兒島さんのガラス作品。
お庭の緑と光の中で、どのようにきらめくことでしょう。

兒島佳祐さんの出展場所は、

ニッケ鎮守の杜に入って右手すぐ。

インスタグラムはこちらです。
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菊田佳代さん(ガラス)

Q1
宮城県気仙沼市から出展くださる菊田佳代さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
フュージングとエナメル絵付け技法で制作した絵皿を中心に、蓋物、ブローチなどのアクセサリーを出品いたします。
作品は、絵付けをしたガラスの上にガラスを重ね合わせて制作をしています。

10月の澄んだ空の元でガラスが光を溜めて、見てくださる方にも広がるようなイメージを持ち、「光の庭」という言葉が思い浮かびました。
作品は主に植物をモチーフに、コスモス、小菊、金木犀などの秋の花や、ミモザ、薔薇の他様々描きました。

絵皿をつくるときに心掛けたのは、自分が使用したいと思うもの、絵としても見られるものということです。
テーブルに並べたときに気持ちが和んだり、華やいだり、作品を使う時間が少しでも特別な時間になりましたら幸いです。
アクセサリーは、これから冬に向かう季節に合わせて黒など落ち着いた色合いも取り入れました。

Q3
菊田さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
2019年に、工房からの風ディレクターの稲垣さんが企画されたデンマークツアーに参加をさせていただきました。
その際に訪れたアンティークショップで、可愛らしいデザインや色合いが一目で気に入って購入したコペンハーゲンの絵皿です。
今にもお皿から飛び出してしまいそうなクジャクの姿に想像を膨らませながら、毎日眺めて大切にしています。

2017年に初めて「工房からの風」に出展くださった菊田佳代さん。
6年ぶりの出展になります。
この間、表現の幅を広げて、前回からぐんと進化したお仕事を見せてくださることでしょう。

デンマークでは、同行の工藝作家の方々と共に、展覧会も行いました。
ガラス工藝の盛んな彼の地でも、菊田さんの絵皿は新鮮に受け止められていました。
久しぶりの「工房からの風」で、今の菊田佳代さんの全力が見られることが楽しみですね。

菊田佳代さんの出展場所は、コルトン広場スペイン階段前。

ホームページはこちらです。
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古賀雄大さん(ガラス)

Q1
富山県で吹きガラスを制作する古賀雄大さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
揺らいだテクスチャーのflowシリーズのグラスなどテーブルウェアを出品させて頂く予定です。

「吹きガラス」の「宙吹き」という技法で、約1300℃に溶けたガラスに息を吹き込み制作しています。

flowシリーズが生まれたきっかけは“失敗”からで、失敗してぐちゃぐちゃになってしまって、バケツに入れられたガラスの表情がどこか美しく、その造形が唯一無二のものであったことに惹かれてこのシリーズを作りました。

溶けたガラスならではの流動性を活かしたテクスチャーや光の屈折による見え方、目立ち過ぎず、中に入った物がより美しく見えるものをイメージして制作しています。

Q2
古賀さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
吹きガラスで形を成形する時に使用する「ジャック」と呼ばれる道具です。
溶けたガラスは熱くて直接手では触れないので、道具を使って成形して制作します。

ジャックは“なんでも”という意味があるらしく、吹きガラスを制作する際になんでもこの道具を使用します。
例えばグラスなら側面、底、飲み口など。
制作の際に1番よく使う道具がこのジャックです。

先輩の職人さんたちがそれぞれ自分の道具で制作する姿に憧れていました。
僕にとってはとても高価で手の届かない道具でしたが、そんな時に安く譲ってもらたジャックです。

その時のワクワク感や道具を大切にする事、ものづくりに対する熱量を忘れない為に、今はほとんど出番はありませんが、初心を忘れない為にいつも道具箱に入っているお守りのような道具です。

フォルムの美しい吹きガラスを制作する古賀さん。
富山からは毎年力のあるガラス作家の方が出展くださるので、今年もとても楽しみですね。

古賀さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、入って左側、下草萌ゆる空間です。

古賀さんのインスタグラムはこちらです。
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mnoi(革)

Q1
ニッケコルトンプラザにもほど近い船橋市を拠点に制作をされるmnoi(ムノイ)。
革作家・Natsuki Ishiharaさんと、金属装飾家・Miki Otsuka さん夫妻のブランドです。
mnoiさんは「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
シンプルな物に装飾的な真鍮チャームを合わせた革小物、素材の特徴を活かしたバッグ。
真鍮では透かし彫りという技法などを使ったアクセサリーを出品致します。

出身地である兵庫県のたつの市や姫路の革を使っています。
また質感から色のムラまでこだわったオリジナルレザー開発もしております。

1000年以上あると言われる日本の皮革の歴史
私たちの作品でタンナーさんの素晴らしさも感じて頂ければと思っています。

今その空間にある モノ としての美しさ、力強さをお伝えできればと願っております。

Q2
mnoiさんの工房で、大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください

A2
革や生地の仮止めや圧着させる際に使う接着剤を塗る竹べら。
弟子入りの最初に渡される道具です。
それから自分に合う角度に削ったりしていきます。
扱いも難しく今では中々使っている方も少ないのではないかと思います。
実際、私自身もプラスチック製を使うことが多くなったのですが、お手入れをしながら、あの時の気持ち忘れない象徴的な道具となっています。

Q3
mnoiさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
祖母が制作した陶器のカップです。
華道や茶道の先生をしており、展覧会で使う花器や日用品を制作している姿は小さい頃の美しい記憶です。
物作りは祖母から受け継ぎ、残してくれた事だと感じています。
そのカップでコーヒーを飲み1日の作業をスタートさせる大切な物です。

小さい頃の美しい記憶。
そのフレーズそのものが美しいですね。
mnoiの生み出すものから感じる美しさ。
ぜひ、会場でお手に取ってご覧ください。

monoiの出展場所は、おりひめ神社のお社の脇。
ホームページはこちらです。
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TSU ZU KU(革)

Q1
TSU ZU KU(ツヅク)という工房名で作品を発表している齊藤篤さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
TSU ZU KU(ツヅク)は、神奈川県鎌倉市で革の工房兼店舗として営んでいます。
使う方が「永く使い続けたい」と思える革ものたちを、「永く作り続けていきたい」という想いから私たちの屋号は生まれました。
主に日用品であるバッグ・お財布、カードケースなどの小物や仕事道具入れなどを製作していますが、今回はお財布を中心にご用意します。
イタリアの伝統的なバケッタ製法で鞣された革を使用した、しっとりと手に馴染むお財布を手に取って実感いただきたいと思います。

会場で並べるお財布は、使う方のライフスタイルを想像し、数種類のデザインで作ったものたちです。
コイン&カードケース、薄いお財布、子どもから大人まで使えるお財布、薄い長財布、収納力たっぷりの長財布。
様々な暮らし方が選択できるこの時代に直結するお財布を、ぜひお手にとってご覧ください。
また、作品一つ一つには愛着を込めて名前がついています。使い勝手や見た目、直感から名付けた愛称にもご注目ください。

できるだけ横幅の長さを抑え、お札がぴったり入るサイズにしました。
ポケットや仕切りが多く、収納力がたっぷりあります。また、蓋を開けるワンアクションですべてが見渡せるので、お会計がスムーズです。

手のひらサイズの薄いお財布。
キャッシュレス決済がメインの方や旅行などお出掛け用の財布として使いたい方に便利なお財布です。

クリスマスなどの贈り物用にはリボンをお付けしますのでお声かけください。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
一番先に思い付いたものは、「千枚通し」です。
革でものづくりを始めた時から20年以上経った今も、変わらず同じものを使っています。
接着、けがき等用途に合わせて使い分けて使用していますが、ほぼ毎日使うので製作には欠かせない道具です。
自分が使いやすい角度になるよう、先端部分を用途に合わせヤスリで整えて使っています。
どこの革工房にも必ずある、なんてことのない千枚通しですが、自分にとっては相棒のような存在です。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
フィンランドで作られたマグカップ「ククサ」です。
ラップランド地方で育った白樺の木の瘤をくり貫いて作られた手仕事に、どれだけ時間がかかったかと想像するだけで溜息がでます。
使って15年経ちますが、革同様に経年変化が楽しく、「自分だけの色」に育っていくところが特に気に入っています。

「永く使い続けたい」と思える革ものたちを「永く作り続けていきたい」
明解な想いを工房名、ブランド名とした齊藤さん。
今展ではお財布も充実させた展開になるそうです。

個人的にびっくりしたのは、12年来通っているcotonさんという美容室のオーナーのシザーケースを齊藤さんが作っていたと、この夏に知ったこと。

齋藤さんは、私がその美容室に通っていることをご存じなかったのですが、髪を切ってもらいながら、そのオーナーの方に教えていただいたのでした。

その方がアシスタントから独立した記念に作った20年物とのこと。
使いやすく、なくてはならないものとなったというシザーケースは、まさにTSU ZU KUのスピリッツを表しているようでした。

(この写真は稲垣のスナップです。)

TSU ZU KUさんの映像もインスタ版を公開しました。
こちらもご覧ください。
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TSU ZU KUさんの出展場所は、コルトン広場、スペイン階段前
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oceano(革)

Q1
静岡県富士市で〈oceano〉というブランド名で革の作品を制作する阿部洋太さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
革という素材を使うことによって出てくる素敵さや、可笑しみを大事にしてつくられた〈oceano〉の革製品を出品します。
〈oceano〉は阿部洋太がデザインから縫製、仕上げまでを手がける革製品のブランドです。

私が〈oceano〉の製品をデザインするときは、何か“ひとつ”の理由やモチーフをフォルムに溶け込ませています。
その“ひとつ”あるフォルムを持つ日用品は、どこか愛嬌や可笑しみを帯び、使い勝手の良い道具でありつつも日常に楽しみを与えてくれます。

“Wet-form”の帽子

革小物でよく使われる技法を大きな曲面で使うことで、不思議なフォルムを持った革製品という印象が生まれました。
革であることの可笑しみや素敵さを楽しめるモノを作っていこうという気持ちを込めて、この帽子を<oceano>の代表作としています。

“牛革”のオーナメント

折とカットで美しくも可愛らしい牛のフォルムを表現したオーナメント。

製作時にどうしても出てしまう革の端切れを利用するために作り始めました。
捨てるような端切れでも、造形を施すことで人々に大切にされる存在にできるということは、作家としての矜持でもあります。

私は手で物を作るのが好きで、それを生業にできたらとぼんやり考えているような人間でした。

デザイナーを志したり、鞄制作会社に勤めてもみましたが、どうしても自分でデザインから制作までを手掛けたくなって独立して作ったのが<oceano>です。
名前も革細工を始めたメキシコ滞在時の私の渾名からつけたもので、このブランド自体が私の作家としての姿となっています。

なかなかに自分勝手な活動理由ですが、好きなことをやるのであれば、そこに自信と誇りを持ってやろうという気持ちで日々製作しています。

Q2
oceanoさんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
革の裁断や手漉き、コバ処理などに使っている「革包丁」です。

私が革細工を始めたメキシコ南部の町では、質の良い道具が手に入りませんでした。
現地の革細工師に教わって、ペティナイフを逐一研ぎながら使っているような状態でした。

そんなおり、日本から遊びに来ることになった妻にお願いして、日本の革包丁を砥石と一緒に買ってきてもらったのです。
その切れ味の気持ちよさと言ったらありません。
すっかり気を良くして、その後の南米縦断に砥石とともに持っていくなどという、今思えばおかしなこともしました(南極帰りの革包丁を持つ人はそういないでしょう)。

この革包丁は革に関わるモノの中で、一番古くから私のそばにある大切な道具です。
私の作るものたちがこうして使い手と長く過ごせるよう、誠実に質の良いものを作る作家でありたいです。

Q3
oceanoさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
メキシコで手に入れた「鶏の鍋掴み」です。
メキシコ南部のインディヘナ達が織った布と、ざっくりした鶏のシルエットが可愛いですね。
滞在中にお世話になった叔母の家のキッチンで使っており、その街を離れるときにお土産として市場で買って帰りました。
ビジュアルが良いだけでなく、頭を摘んで持ったりと絶妙に使い勝手が良くて気に入っています。

今回、革で出展される作家は4名。
皆さん個性がはっきり立ち上がっていて、何をどのように作るかが明確です。
oceanoならではの感覚から生まれたフォルム、とても新鮮ですね。

また、メキシコにゆかりがあるとのこと。
「鶏の鍋掴み」に日々触れながら、彼の地で感じたsomething。
oceanoのものづくりのエッセンスに潜んでいるのかもしれません。

oceanoの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入って右手に4つ並んだテント。
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enku (革)

Q1
東京都多摩市で制作をするenkuの原田賢一さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
藍の葉を発酵させたすくもと呼ばれる染料から藍を建て、天然の藍のみで染色し、様々な革小物を製作しております。

革はすぐには染まらない為に手のかかる素材ですが、一切色を足したりせず藍だけでここまで濃く染め上げております。
革も藍も天然素材ですので、二つとして同じ状態の物はありません。
それぞれの状態を見極めながら、一枚ごとに合わせて少しづつ工程を変えながら染色を行っております。
染料と時間をかけ徐々に色づき奥深さを増していく様は、革を育てているような感覚。
手がける時間が長い程、愛着も増していきます。

革というのは不思議なもので、同じものを作っても使い手により様々な表情に変化してまいります。
共に過ごした時間と共に愛着を増していく革が、より自然に近く温かみを感じるものであったらと思い作り続けております。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
この仕事を始める頃からお世話になっている、今は無き加賀谷刃物製作所さんの革包丁です。
職人気質が多い浅草周辺で、何も知らない若手にも刃物のイロハや研ぎ方など優しく丁寧に教えてくださいました。
革包丁以外にも道具の選び方を教えていただいたり、こんな道具があったらと相談すると、食い切りやケガキ、時には特注で製作してくれたフチ捻やヘリ落としなど用意していただきました。
今でも私の仕事を支えてくれている大切な道具達ばかりです。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
300年以上の歴史を持ち、東京都の伝統工芸品に指定されている江戸屋さんの「引き染め刷毛」です。
革に染料を馴染ませたり、型染のノリを落としたり、藍を落とす時や革を濯ぐ際など、私の染色工程に欠かせない道具として愛用しています。
今では親指と人差し指で握り、形も重さも心地よく感じるくらいに馴染んでおります。

藍が見事に染みついた頼もしい手。
布ではなく革を染めてのものづくり。
なかなか出会えない独自の展開を進めるenku、原田さんのお仕事です。

今回、12名の作家の制作光景を映像を編集したものを制作しています。
youtube版は少し長めで、インスタグラム版は短めに制作しました。
enkuさんも登場しているインスタグラム版はこちらになります。
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工房からの風、当日のenkuさんの出展場所は、おりひめ神社、お社の裏手。
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ハレの日へ

あと16日。

今年の「工房からの風」の開幕が迫ってきました。

第21回となる今展の特徴。
それは、ひとりひとりの作家のブースが、輝いて立ち上がっていること。

コロナ禍で3年間できなかった事前ミーティングを行ったことで、各作家が自身の仕事について深く考えて、それに基づいて準備に進めてきました。

その実りは、当日の各テントで豊かに花開いていることと確信しています。

そう確信している理由の一つが、明日からこの場でご紹介していく作家からのメッセージ。
例年以上に自身の仕事について、とても丁寧に伝わる文章や写真が届いています。
まとめている私が、読みながらほんとうにワクワクしてくるのです。

ただなんとなく作品を持ってきて並べる。
そんな作家は「工房からの風」には、ひとりもいません。

作品の豊かさ、その展示の仕方、自身の仕事のプレゼンテーション。
個展が50ブース集まったような第21回「工房からの風」。
10月 28日 29日の土日。
ぜひ、カレンダーにチェックしてくださいね。
そして、ものづくりとそれを心に響かせてくださる方々が集うことで生まれる、清々しくも優しい人の笑顔が満ちた「工房からの風」に、ぜひご来場ください。
出展作家、風人作家、主催者一同、皆様のご来場をお待ち申し上げております。

:::

出展作家50ブースと共に、今展では風人(かぜびと)と呼ばれる、企画に加わってくださる16人の作家の方々の展開も輝きがひとしおです。

出展作家からのメッセージを前に、今日はこちらをさくっと(個々にはあらためて)ご紹介いたしましょう。

制作光景動画放映/デモンストレーション/トークセッション
1 「南京鉋で削る木の道具」 杉田創作 (木工)
2 「手箒と小箒」 吉田慎司 (箒)
3 「タタラ作りで陶のうつわを作る」大野七実 (陶)
4 「木のボウルを彫る、削る」 片田学 (木工)
5 「家具を作る」 hyakka (木工)
6 「上映会&トークイベント」-風の実りと風人-
岡林厚志(hyakka 風人)× 吉田慎司(中津箒 風人)× 稲垣早苗(工房からの風ディレクター)

鎮守の杜の色暦
ニッケ鎮守の杜・手仕事の庭で約20年にわたって続けてきた草木染めの営み。
製本家の本間あずささんによって、「Book」にまとめ、
RIRI TEXTILEの和泉綾子さんによって、布に織りあげ、当日は草木染めのデモンストレーション(制作公開)を。

素材の学校
こどもが工藝に触れる喜び。
ものが作られていく過程を見聞、体験。
大人の(工藝作家の)本気!を感じてもらう「素材の学校」という企画を10年以上続けてきました。
いつの日にか、このワークショップを体験した子どもが、出展作家として参加することも夢見て!

金属の時間「刻印キーホルダーを作ろう」川崎千明
金属の時間「たたいて作る錫(すず)の腕輪」川崎千明
紙の時間「かお、顔、どんなかお?再生紙で作る壁飾り」森友見子
綿の時間「綿の糸を指で織る」磯敦子
木の時間「いろんな木でお魚を作ろう!」鈴木友子(もくのすけ)
竹の時間「竹のオーナメント」勢司恵美
フェルトの時間「お水でゴシゴシ、羊毛フェルト」西澤泉(IZOOMI)
綿と紙の時間「綿と紙で作るスイーツ」森友見子×磯敦子
キッズ庭めぐりツアー 風人
(詳細は、別記事でご案内しますね)

風の光 – 小さな万華鏡を作る
アトリエ倭による恒例となった木工ワークショップ。
今年は、万華鏡づくりです。
子どもから大人まで、どなたもご参加いただけます。 

ほかにも、特別編集の制作光景動画の公開など、ここから2週間、webやSNSを通じて、「工房からの風」のプレゼンテーションを行っていきます。
ハレの日、二日間をより心から楽しんでいただけますように、ぜひ、このサイトやインスタグラム→clickをご覧ください。

さあ、明日から、出展作家からのメッセージをお届けします。
定番の
Q1
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
の他に、今年は以下のような質問にお答えいただきました。
Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

Q2とQ3は、どちらか、あるいは両方をお答えいただいています。

ではでは、どうぞお楽しみに~

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第21回 工房からの風 craft in action

第21回 工房からの風 のご案内をいたします。

10月28日(土)29日(日)10時から16時
50組の作家が北海道から沖縄、日本全国から選出されてニッケコルトンプラザにやってきます。

今年のキービジュアルも公開いたします。

毎年恒例となった大野八生さんによる描きおろしです。

会場の一部、「ニッケ鎮守の杜」に茂る植物が散りばめられた画面に、
さまざまな種や実、そして工藝品が手のひらに載せられています。

手から手へ

シンプルに、原点を思いつつ、今の風を感じあえる展覧会を目指します。

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昨日は、北海道からの出展作家の方と電話でお話を。
「こちら、準備を整えていますから、安心していらしてくださいねー」
と最後にお伝えしたところ、
「会場は田舎ではないですよね?」
と、ちょっと不安そうなお声。

「ええ、街なかですねー」
とお答えすると
「都会の道路、車事情がちょっと心配で・・・」
とのこと。

フェリーで茨城県の大洗まで来られて、そのあと自家用車でコルトンプラザへ。

あらためて、すごいことなんだなって思いました。
大変な思いをして遠くからはるばる来てくださる作家の方々。
ああ、来てよかった!
すべての出展作家にそう思っていただきたいと心から思いました。

ああ、来てよかった!
そう思える一番のこと。
それは出会い、だと思っています。

そのもっとも大きな実りが、来場くださる皆様との出会い、なんですね。
作品を介して会場で交わされる豊かなやりとり。
かけがえのないその恵みを目指して、全国津々浦々からやってきてくださる出展作家。

その魅力的なお仕事と想いのご紹介も、間もなくこちらからも始まります。

21回目の工房からの風
来場くださる皆様の手に、心に触れるものが豊かでありますように。