director's voice

フォーラムのご報告です

先日参加したフォーラムのレポートを、宇佐美智子がまとめました。
少し長いですけれど、ご報告としてこちらに掲載させていただきますね。

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企業メセナ協議会
GBFund『文化による震災復興の、これまでとこれから』(12月10日:電通ホール)
フォーラムに参加してきました。

GBFund(東日本大震災 芸術・文化による復興支援ファンド)は、
災害の際に後回しになりがちな、けれども重要である芸術文化面に特化したファンドで、
このファンドをもとに助成された伝統的な芸能、文化財、
例大祭や修復されたお神輿などはこれまでに153件に上ります。

ディレクター稲垣は、『ぬくもりを届けよう。ニッケ+工房からの風から』
パネラーとしてお呼びいただきました。
東日本大震災を受けて立ち上がった『ぬくもりを届けよう。ニッケ+工房からの風から』では、
2011年工房からの風より、ものづくりを通した応援プログラムを実施し、
その売り上げをGBFundへ託しています。
2012年工房からの風では、継続してチャリティ作品と庭の恵みの売上をGBFundへ、
そして、石巻市牡鹿半島おさかなたわし売上を編み手の方々へお渡ししました。

第1部のグループディスカッションでは5つのグループに分かれて話し合います。
『ぬくもりを届けよう』は
「持てる資源・スキル・ネットワークをいかした支援活動の<今>を語る」グループです。
10組のパネラーの内、寄付側としては『ぬくもりを届けよう』だけがお呼びいただいていました。

『ぬくもりを届けよう』の「もてる資源・スキル・ネットワーク」とは、
毛織物メーカーであるニッケからの素材提供、工芸作家の技術、
ものづくりや暮らしを大切に思う方々や地域の方々が集まる場での展開、などでしょうか。
企業、作家、お客様が手をつないでの寄付金を生み出しています。
編み物はスキルをいかしながら、同時に毛糸で癒される活動でもあるとご感想もいただきました。

■自ら作ることの意味
同グループパネリストの佐藤敏博さん(小渕浜獅子舞復活プロジェクト/小渕浜通信)は
デザイン制作、まちづくりを手がけ、ご自身も仙台で震災に遭われましたが、
その後、支援の行き届きにくかった石巻市牡鹿半島の小渕浜の応援に駆けつけ、
以来現地へ通われていました。
ある日、浜の実業団に欲しい物を尋ねると「欲しい物はないけれど、ただ、
獅子頭が流されてしまったのが気になっているんだ‥」という声があがったことから、
古くから浜に伝わる獅子舞復活の必要を感じ、プロジェクトを起ち上げられました。
小渕浜獅子舞の獅子頭を再び作る活動がGBFundの助成を受けることになった時、
どこかの工房にまるごと制作を頼むことも可能だったそうですが、
最終的には、すべて自分たちの手で作り上げることを選ばれました。
知恵を集めて工夫し、自らの手を動かし、ものを作る。
それでこそ、自分たちの誇りである「祭り」を取り戻すことができたのかもしれません。

自ら作る、と言えば。
2011年11月、『ぬくもりを届けよう』として、
kegoyaのお二人と牡鹿半島の仮設住宅数か所を訪ね、
手編みの帽子やマフラー、そして、毛糸を手渡した時のことです。
数日前に回してもらった回覧板を見ていてくださったのでしょうか、
あるおばあちゃんが、「ね、これから編み物するんでしょ」と
ポケットから大事そうにかぎ針を出してみせてくれました。
(その編み針をいったいどんな思いで今の住まいに持ってきたのでしょう。
手放せないものだったのだと思います。
思うだけで、今でも胸がはりさけそうですが、
同時に、編む、つまり、ものを生み出すことがそのおばあちゃんにとって
いかに身近であったのかがわかりました。その編み針を再び使うということが、
普段の生活に戻っていくことを意味するのだとも。)
その日は手編みと毛糸をお届けするまでで、
編み物の時間をご一緒はしなかったのですが、
その後、私たちは『ぬくもりのつながり』(2012年2月)で、
おばあちゃんやお母ちゃんたちの素晴らしい手編みの腕前を見せていただくことになります。

■様々な「もてる資源、スキル、ネットワーク」
グループ参加のパフォーマーの方から、
「身体動作に関わる知識を持った人が、身体をほぐす手伝いをすることで心の和らぎを導く」
という意見もありました。
また、これまで現地で見受けられた支援の中には現場のニーズと合わず、
支援する側の思い込みや自己満足になっているような活動もあったそうです。
だからまず会いに行き、話し相手になって関係(ネットワーク)を作り、
「何が必要ですか?」と声をかけることから始めよう、という意見がひとつまとまりました。

■これからの課題
「気持ちがあってもアクションを起こしきれない芸術家もまだまだいる。
そんな人たちを巻き込んでいく仕組みを作ろう。」
「ものづくりを共有する場を作る。復興と声高にしない支援を、
しかし結果的に支援をしていることが理想なのでは」といった今後の課題が出ました。
支援のあり方も刻々と変化しているので、現地の方が何を求めているか
(仕事、衣食住、生き甲斐、人間関係)を互いに話し合うことが一番必要なことだと言えます。
その中でもやはり、ものづくりを通しての応援を、私たちも模索しながらにはなりますが継続していきたいと思います。
佐藤さんからは、被災地へ支援した方は、自分が暮らす地域のつながりにもフィードバックして欲しいというお話もありました。

第2部では、各グループのファシリテータ―より他グループでの議論の結果を聞くことができました。
『郷土芸能の復活と地域コミュニティの今を語る』グル―プで、
「元の通りに戻す一方で、新しい芸能をも作っていくことがこれからは重要なのでは」
とまとめられていたのが印象的でした。

フォーラムのように各地から様々な人が集まる場も、また、
例えば身近な人とも、日頃から話し合うことが大切と感じました。

以上、『ぬくもりを届けよう。ニッケ+工房からの風から』に
ご協力ご賛同いただきました皆様へ、ご興味をお持ちいただきました皆様へ、
ここにご報告させていただきます。
最後になりましたが、
東日本大震災により被災された方々のご健康と、
一日も早い復興をお祈りしております。
(以上、宇佐美 記)

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今回、ほかのパネラーが被災地にお住いの方が多く、
日々震災の爪跡の中で暮らしていらっしゃることに対して、
私のように震災以前の暮らしにほぼ戻っている者が、
何を伝えることがあるのだろうかと、正直なところ、とまどいもありました。
(本質的には変わったことも多いですし、
戻ることもある意味必要なことであるとは思うのですが)

答えは簡単には出ませんけれど、こうして機会あるごとに、
人と人とが交流しながら、気付いていく、考えていくことは、
大切なことなのではないだろうか。
そんなことを思いながら、会場を後にしました。

尚、10月の工房からの風では、以下の作家の方々が、作品を提供くださり、
その売上金の全額617.880円をGBFundに託しましたことを、
あらためてご報告いたします。
提供くださった作家の方々、お買い上げくださいましたお客様、
ありがとうございました。

作品提供作家 
赤堀友美・大谷哲也・大中和典・沖澤真紀子・小澤基晴
加藤かずみ・加藤仁志・平厚志・中本純也・萩原千春
平野照子・松塚裕子・山崎裕子・安土草多・さこうゆうこ
硝子屋 PRATO PINO・Mellow Glass・アトリエ倭
泉健太郎・kino workshop・tomot・名古路英介
深見昌記・Anima uni・笹島友紀子・月日工藝
中川久美子・新田麻紀・増子浩代・mitome tsukasa
鈴木有紀子・伊香英恵・いわもとあきこ・大谷房子
今野恵・佐藤亜紀・里見香奈子・横山正美・qan:savi
                         (順不同 敬称略)