director's voice

菅原博之さん(木工)

おりひめ神社の真裏。
木漏れ日清々しくもれるところで、美しい木工作品が展示されていました。
菅原博之さん
4年ぶりの出展で、どのようなことを感じられたのでしょうか?

会場の中で一番奥となるこの場所には、お客様の出だしは割りとゆっくり、
しかし、気がつくと、展示の前にはたくさんの方が。
話しをして、作品への思いを伝える。
「自分の思いはどれくらい伝わっているだろう・・・」そう思いながらも、
気がつくと忙しく時間がどんどん過ぎていきました。

そんな中、あるお客様に自分が出展の応募用紙に書き込んだ思いを、
そのまま展示の印象として、お話しくださる方がいらっしゃって、はっとしました。

それは、とてもとても嬉しくて、
思い描いていた出展イメージに少しは近づけてたのかな?と。。
その言葉が、柔軟剤のようになって、ごわごわした気持ちが一気にほぐれ、
最初の不安だった気持ちは、いつの間にかなくなっていました。
神社の裏側で、とても不思議な体験をしました。

そして、「工房からの風」については、このような感想を寄せてくださいました。

半年間の中で、作家それぞれの色を大切に、濃く々々、凝縮していくような、
そして、当日は見事な化学反応で、その年の色や香りをはなつ、二度と同じ空気感はだせない、
そんな一期一会感、他のイベントでは絶対無い個性だと感じました。
自分としっかり向き合わなければ、結果ぼやけてしまう・・・そんな緊張感も感じ、
まさに「背水の陣」そんな印象です。僕だけでしょうか、、

楽しい中にも、ビリビリとした、何かとんがったもの。。
秋が深まりを見せるように、これからも、終わるとそれぞれの色がぐっと濃くなる会であってほしいです。

今回の菅原さんご自身の感想は、

「誰にも負けたくない!」と、できる事をやり尽くして、たくさん売った、そんな4年前の達成感。
「アイテムを絞り、お客様と話しがしたい、自分の気持ちを伝えたい!」
落ち着いてゆっくりとした時間の中たくさん話した、今回の達成感。

以前、稲垣さんに聞かれた事「菅原さんはこれからどんなことをやっていきたいの?」
その当時、質問に戸惑ってしまい、上手く答えられなかった自分がいました。
どんなふうに、ものつくりをしていきたいのか?
それから、ずっと自分に問い続けていたように思います。
4年間という時期は、そんなふうに向かい合った時間でした。

今回の終了後は直後から、自分の足下の道がすっとのびたような感覚。
達成感ではなく、進行感。
そんなことを感じています。

「菅原さんはこれからどんなことをやっていきたいの?」
なんて聞きましたかねー?(笑)
でも、きっと、聞いたのでしょうねー(冷)

菅原さんの伝えたい思いのひとつには、木の器をもっと食卓で楽しんでもらいたい!
ということがあるのだと思います。
食卓が楽しくなる美しい器を作り、その使い方までを丁寧に伝えよう。
それを実践するために、人気アイテムの小さな花器をあえて出品しなかった菅原さん。
それはどこかで冒険であったはずですけれど、潔く実行することで、
願っていた実りを十分に得られたようですね。

菅原さんとのここ数年にわたるやりとりは、私にもとても学ぶことが多かったです。

そんな素敵な菅原さんですが、
『本人も展示作品の一部・・・とばかりに、当日かっこつけてきたシャツに、
カレーとワインのシミが!!』
と、オチをちゃんとつけてくれました。
洗ってもなかなか取れないシミは、わかこさんにも叱られたそうですが、
『今回の思い出も、僕の人生の中でいつまでも残る「シミ」であってほしいと感じました。』
と、メッセージを締めくくってくださいました。