director's voice

堀内亜理子さんより

スペイン階段前のテントで、ひときわ人の山ができていたブースがありました。
堀内亜理子さん。
北海道は旭川から来られた、漆の作家です。

戻ってくると、山は真っ白、紅葉は葉を落とし、街行く人は冬装備。
会場で送った自分の荷物が少しずつ戻ってきました。
いよいよ旅も終わりです。

この度は本当にお世話になりました、ありがとうございました。

「工房からの風」は「愛」なんだなあと思いました。
そこには作家への見返りや押し付けはなく、
ひたすらに希望や光を与える「愛」そのものです。
産み出すのはいつも「女性」なのですね。
だから続くのかなあと思いました。
12回…干支をひとつ巡ったのですね。

毎日「工房からの風」という言葉を頭にのせながら向き合った半年でした。
今年の大きな目標が終わりました。
こんなに創ったのも、人の手に渡ったのも初めてでした。
自分が生きている感じがしました。

終わったら、始まりです。
充実したし、楽しかったけれど、個人的には大きな課題を抱えています。
これからがっちり向き合わないと…。

私の工房に新しい言葉が増えました
稲垣さんのブログにあった
「取り組むことにケチにならない、出会いにケチにならない」
これ、名言ですね!!真理です!!
ケチらなかったらちゃんと得られるモノなのですね。

この切り捨ての時代にアーティストを惜しみなく支援して下さるニッケの方々、
スタッフの風人さん、庭人さん、サポート戴いた皆さんに…
心から、心から感謝を込めて。

堀内亜理子

北海道はいきなり冬支度の季節なのですね。

「自分が生きている気がしました」
という、ありこさんの言葉は、決して軽口ではないのだと思います。
産地ではない地方で、黙々と制作をしながら、
横のつながりもまだ豊かではない若い作家は、
作ってもそれに応えてくれる人と出会える機会があまりになくて、
きっと心を細くしていたのだと思います。
今回、思い切って出展されたことで、大きな反応を得たこと、
そのこと自体が、ありこさんの宝ものになり、
生きている実感につながったのですね。

懇親会で、笑い話のようにしてくださったこと。
大きな大きなお重箱をぜひみてほしくて作ったけれど、
きっと売れることはないだろうな、
と思ったというありこさん。
そのお重が売れたときにいれる大きな紙袋を買おうか買うまいか、
かなり悩んだそうなのです。
(作家の方々、きっと共感していますよねー)
けれど、やっぱり買おう!
と北海道から携えてきました。

そのお重、お選びいただけたのですね!
その瞬間、こみあげてきてしまい、涙がこぼれてしまったというありこさん。
心優しいお客様は
「いろいろ買い物はしたけれど、もの買って泣かれたのは初めてだよ」
と、励ますように言ってくださったとのこと。

「取り組むことにケチにならない、出会いにケチにならない」
は、紙袋を買うか買わぬかで迷ったありこさんの実感!だったのでしょうね。

ちょっと、おかしみをもって書きましたけれど、
実は私も最初その話を聞いた時には、目頭熱くなってしまったのでした。

「工房からの風」は、ハレの日であって、また日常、ケの日々となるのですが、
手ごたえという宝ものが心にあれば、きっと 日々の制作も心潤うはず。
ありこさん、時々は関東にもいらして、
今回の出会いの糸を豊かにつなげてくださいね。