director's voice

クラフトフェアじゃないの?

のっけから「私、クラフトフェアをやっているという意識がないんです」

赤木さんの文章はこのように始まります。
えっ、「工房からの風」って、クラフトフェアじゃないの?
多くの読者はそう思われますよね。

この書き方が正確だと感じいったのは、「意識がない」
と書いてくださったことでした。

私、クラフトフェアの定義が、そもそもわかりません。
そして、あらためて問われれば、多くの方がそうではないでしょうか。

-野外にクラフトを作る人が集まってテントで販売する-

という広義であれば、「工房からの風」が、
クラフトフェアだと呼ばれても別に構わないと思っています。
但し、自らはクラフトフェアではなく、野外展と思っています。
年月を経て、そんな風に思うようになってきたのです。

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と、書き出したのですが、昨日、発売日早々というのに、
既に「住む」を読まれた方々がやってきて、
このことについての会話を何人もの人と交わしました。
その中で、あらためて確信したことを、先に書こうと思います。
このdirector’s voiceで、出展作家への質問コーナーを毎年やっておりますが、
それにならって書いてみますね。

Q1
「工房からの風」の原点、やってきたことって何ですか?

A
新鮮な作家が世に出ていく、豊かな場面を作りたい、ということですね。

Q2
「工房からの風」がこれから新たにやっていきたいことって何ですか?

A
世に出た作家が、その後によい仕事(よき作品作り)を進めるための、
時間や空間をもっと作っていきたい。

です。

Q1に関しては、現在の野外展が始まって15年目の今、
その願いが少しは叶ってきたかもしれません。
可能性に満ちた力のある作家から応募をいただくようになりましたし、
全国からギャラリーショップ関係者や
バイヤーの方々が多数来場されるようになりました。
出展を機に、スタートを切る作家が毎年輩出しているように思います。

そして、それを支えてくださっているのが、一般のお客様でもあるのですね。
遡ればこの地で工芸ギャラリーショップ
(「ニッケこるとん銀花」という名前で1988年にオープン)
を立ち上げてから27年が経ちましたから、
ニッケコルトンプラザをコアとした周辺のお客様に
じんわり工芸、クラフトが浸透しているのを感じています。
実際、出展作家の方から後日感想を伺うと、
熱心に見てくださる方に、地元の方が多い、とお聞きします。
また、広域からも、毎回「工房からの風」を楽しみに
欠かさず来場くださるお客様も多く、その方々との会話にも
とても励まされていると。

作家を作家たらしめるものは、一部のキーパーソンだけではなくて、
こうした層の厚い使い手の方々あってこそなのですね。
私も時を重ねてそう思うようになりました。

そして、Q2。
これがここ数年来、強く願いはじめてきたことです。
「工房からの風」の特長のひとつが、出展作家同士の交流の濃さです。
人数が50人規模ということや、開催前に交流の機会を何度も設けることなどから、
「同じ釜の飯を食う」というような関係になる方々がいます。
同期、とか、一期上とか、二期下とか、まるで学校のような言われ方をして驚くことも。
この密な関係性の中から、教え合う、影響し合う、ということが生まれてきました。
制作の師や先輩、同輩が以前より希薄になった今日、
佳き影響を与えあう人的つながりは、とても大切だと思います。

そして、その次。
作品そのものが、進化成長していくための場面を創出したいと願っています。
昨年8月に行った日本橋三越本店での二週間の催事は、
そのひとつのさきがけにもなりました。
(今年も同時期に行います)
このような機会を生かして、
赤木さんが書かれていた、
クラフトフェアが作品の低俗化を招いたのでは、
ということと逆の方向へ向かっていきたいと思っています。

と、すっかり長くなりましたね。
今日はこの辺で切り上げますね。