director's voice

aeiさんから

このブログには「凪ぐ浜の宝もの」というカテゴリーがあります。

これは 工房からの風という大波が去ったあと、
砂浜に打ち上げられ、散りばめられた、宝ものようなきらめきを
毎回綴っているものです。

出展作家から送られてきた私あてのメッセージから抜粋してのお届けです。

いの一番に送られてきたのは、金属装身具のaeiさんでした。

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稲垣さま

おはようございます。aei の桑山明美です。
昨晩、無事に愛知の自宅に帰ってきました。

今日は、少し朝寝坊をして
いつもの3倍の時間をかけて朝ご飯を食べました。
いつもと変わらない日常に戻りましたが、
確実に違う何かを手に入れた空気を感じています。

皆さんおっしゃるように、
長いようで短いこの半年はあっという間に過ぎて行きました。
昨日、周りの作家さんと
“帰りたくないね”
“もう一日でいいから出展していたいね”
と話しながら片付けの作業を行っていました。
風人さんのお手も借り、
いつもになくスムーズに片付けが済んでしまい、
会場を後にする時間がきました。

最後、皆さんから見送っていただいたその瞬間は、
卒業式に似ている感覚でした。
そして私は、また新しい朝を迎えています。

私は、作家という職業で生きて行く事にずっと自信が持てずにいました。
区切りをつけるため、30歳までに“芽”を出すぞ!
っとラインをひいて活動してきたここ4年間。
明日、私は29歳になります。

工房からの風に出展が決まり、
絶対なんとか芽がでると気持ちが舞い上がった春。
初夏のミーティングを終え、
そんな芽はとっくに生えていたと気づかされたあの日。

私にとって “芽” とは、それで食べていけることになることでした。
でも、違いました。

私は “つくる” ことが好きなので一生手放すことはしたくない。
“つくる” ことと向き合って生きる覚悟が出来ました。

これが、今回の出展で一番の財産です。

その他にもお話したいことがたくさんありますが、
かなりの長文になってしまうので、
割愛してひとつだけ書かせて下さい。

昨日のチャリティーの素材の果実で
私の作品を当ててくれた方がブースにお礼を言いにきてくれました。
こんなに素敵なりんごがいただけてうれしい!
ということ、
そして、その方の親戚が被災者なので、
チャリティーをしていただきありがとうございます。と。
私は、企画があればとりあえず手を出すタイプなので、
あまり深いことを考えずに参加しましたが、
彼女の本当に喜んでくれている姿を見て、
私も本当に心が熱くなりました。

悔いはやはりいくつもありますが、
私はそれ以上のものを手に入れました。

この先、また立ち止まることも何度もあるかと思います。
その時は、あの日に書いたメモを開き、
“腹をくくる”の言葉を読み返します。

この度は、工房からの風に参加させていただきありがとうございました。

aei 桑山明美

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5月の終わり、私を訪ねてこられた桑山さん。
たぶん、伝えたい思いがいっぱいいっぱいで、こんがらがって、
最初、私には何を言いたいのかがわからなかったのです。
でも、言いたかったことは、きっとひとつだったのですね。
これで食べていけるかどうか、ということ。
その不安に絡まれてしまっていたのでしょうか。

「そんなことは、誰にもわからないよ、
腹をくくるかどうかじゃないの」
と、私は応えるしかなかったのですね。

ハラハラと大粒の涙をこぼしだした人を前に、
正直参ったなぁ、と思ったことでした。

8月。
第二回目のミーティングで3か月ぶりにお会いした桑山さんは、
憑き物が落ちたように、すっきり爽やかな笑顔の人になっていました。
それは若いからだけではなくて、
桑山さん自身の心の素直さからの変化だったのだと思います。

展覧会の二日間、渾身の新作を素敵なディスプレイに配置して、
訪れるお客様と、自然体の素敵な笑顔で会話を続けていた桑山さん。
授かった宝物は、やりきった果ての自信なのだと思います。

そうそう!
お誕生日、おめでとうございます!!
よい20代最後の年が始まりますね。

開催前に届いたaeiさんからのメッセージはこちらです。
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