director's voice

本山ひろ子さん(金属)

型を作って金属を流し込む鋳金技法の本山ひろ子さん。
千葉県内の作家の方です。

Q
本山ひろ子さんは「工房からの風」に、どのような作品をお持ちくださいますか?

A
鋳金の技法で制作した真鍮の花器と、ブロンズの動物達を持って行きます。

ニッケの杜を最初に訪れた際、とにかく樹木が目に入ってきました。
ちょうどその杜が見える位置にコーヒーショップがあり、
そこから杜を見ていると、一番高い木の上に黒い鳥がいるのが見えました。
遠くでよくわからなかったけど、カラスか何かだったと思います。
その鳥はそこから離れずに、一時間ぐらいじっととまっていました。
それが今回の作品の始まりでした。

木を作ろう。
ずっしりと根を下ろした木がそこにある。
そして、そこに鳥がとまっている。
そんなイメージの花器です。

展示場所をお稲荷さんのすぐ隣にしていただきました。
「あ、狐がいる」
ブロンズの動物達はお稲荷さんに向かって歩いて行きます。
それぞれ思い思いのプレゼントを持って。

鋳金について、制作行程も含め皆さんといろいろ会場でお話できたらと思っています。

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とっても輪状の感のある興味深いストーリー。
こんなふうに作品構成が生まれて、かたちになるって、
見る側には楽しみですねー。

稲荷社の脇では、自家製テントの本山さんワールドがさく裂?する予定。
想いと手と時間のこめられた空間が生まれますね。

そうそう、本山さんは鋳金と言っても、型をつくるだけではなくて、
「鋳込み」自体から行う方なんです。
どんな工程かというと、そうですねー、
南部鉄器の工房でドロドロの鉄の液体を流し込むような映像を
ご覧になられた方ははなんとなくおわかりでしょうか?

かなり男前!なお仕事、ぜひいろいろお話しうかがってみてくださいね。

Q
本山さんにとって「工房からの風」は、どのような風でしょうか?

A
台風のような大きな風です。
台風がやってくると、外に出て風を体全部で受け止めたいと思ったりします。
空を見上げると、普段は静かな大木がゴーゴーと音を立て、
枝を振り回していて、太刀打ちできない自然の力を感じます。
そのまま自分の体が飛んで行っちゃうんじゃないかと。

工房からの風は私にとってそんな風です。

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えーっ、そうなんですか~。
なんだか泰然とした印象を持っていたので、ちょっと意外でした(笑
でも、そんなふうに大きな自然の力と想定して、
その力を目いっぱい受けようとされていることは、
準備期間から十分に感じてきました。
まもなくですね、受け止めるときは!

Q
本山ひろ子さんのお名前、あるいは工房名についての由来、
またはエピソードを教えてくださいますか?

A
自分の名前というのは、自分自身の名前なのに
自分で決めることができない不思議なものですね。

同じ名前が付いていてもお医者さんの本山ひろ子さんや
魚屋さんの本山ひろ子さんがどこかの街に暮らしてるかもしれません。

今まで自分は造形作家だと、漠然と設定していました。
鋳物を20年やってきて、様々な人と知り合う事ができました。
道具屋さん、屑鉄屋さん、金属の研究者、鋳物職人さん。
そういう方々と話す中で、鋳物に対する自分の未熟さを感じました。

人生の約半分ぐらいを迎えて、もっと学びたい、もっと掘り下げていきたいと。
その決意表明っていうんですかね、工房からの風に受かったことをきっかけに、
名前の前に「鋳金家」とつけてみたんです。
書いてみたらすーっと風が抜けたような、そんな気持ちになったんです。

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この機の決意表明、光栄です。
何よりうれしいと思えるのは、
これからの本山さんのお仕事が「鋳金家」として充実されていくこと。
何かが急に変わるわけではないかもしれませんが、
後で振り返ってみたとき、この機会の取り組みが
一里塚だったと思ってもらえたらと思います。

本山ひろ子さんの出展場所は稲荷社の手前。

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text sanae inagaki