Opening Exhibition
2004年10月9日(土)~17(日)
Joy Y・スズキ作品画像

「 トウメイシリーズニ、ゼヒ、ミナサンノ
ソダテタハナヲ、 イケテクダサイ 」
この庭の草花の話をすると、
Joyさんの言葉が返ってきました。

作家の器に花を生ける、その喜びを伝えたい。
たとえば、ワインボトルに挿しても花は美しい。
花の息吹きと花を挿す人のセンス。
そこに加わる作家の器の魅力。

透明と曇りガラスの半透明が Joyさんの色。
研ぎ澄まされたフォルムが美しい。
色を点さず、黙したかたちは一見クールだけれど、
向かい合えば、ひとつひとつのガラスから、
静かに詩が立ち上がってくるのを感じる。

コトバの世界。詩。
ヒトがヒトならばこそ、発せずにはいられない
心のふるえを表す調べが 詩だとしたら、
Joyさんのガラスには、ヒトが手と心で創り出す
喜びが 共鳴して、 かたちになっている。

花は詩を詠まないけれど、
花を心に映してヒトは詩を詠う。
Joyさんの花の器と植物を響かせて、
私のコトバを奏でられたら。

大野七実作品画像

かたちはシンプル、色はベーシック。
なのに、あっ、これ見つけた、 と思わずには
いられない、 大野七実さんの 陶器の魅力。
作者本人は 「なんとなくの気持ち」 を大切に
作っている、 と話してくれたけれど、
「なんとなく」ってなんだろう?
そんなことを考えないのが
「なんとなく」かもしれないけれど。

乳色・砂色・菜色・空色・・・。
七実さんの器に家族のためのおかずを盛る。
テーブルに並んだ器の表情から、
ふと、何度も訪ねた北欧の町並みが
心に浮かんできた。
幾たびも塗り重ねられた土の壁。
時が紡いだとしか思えない、壁の質感。
それと近しいものが、七実さんの陶器にはある。
目の前にすると、なつかしさに包まれて、
しあわせな気持ちが満ちてくる。

風合い。
色やかたち、文様を超えて、
器から伝わる穏やかな感覚。
目にしただけで、手に触れたように感じる心地よさ。
七実さんの大切にしている「なんとなく」は、
風合いのことかもしれない。

庭のほとりにあるギャラリーのオープニング。
育ててきた植物と響く展覧会をしたいと思いました。

無色トウメイ、すっきりとしたガラスのjoyさんは、
空間のとらえかたも鮮やかなひと。
やわらかな色調と、穏やかな質感が印象的な陶器を作る七実さんは、
ギャラリーの15年という時の中で、そっとそばに居て伸びていったひと。

新しい空間の演出。新しい空間からの誕生。
植物とともに暮らすひとたちの作品から始めます。

text: inagaki sanae