ちいさなもの×ちいさなことば 世良 順展
2005年2月11日(金・祝)~20(日)
世良 順 作品

ちいさなもの・ちいさなことば

ちいさなものはちいささ故に
おおきなものの力に飲み込まれずにいます。
ちいさなものはおおきなものを気にすることなく
すなおに無心に誇り高く存在しています。

おおきなものに知らず知らずに覆われて
気持ちがかたくなって、すっかり行き詰まってしまった時ちいさなものが、なぜか、ふと、目に止まります。

子供たちや野の花、落ち葉、小鳥の羽、さまざまなもの
いつもは通り過ぎていたのに。

あるいは幼い頃の記憶の中の故郷や思い出深い人びと
忘れていたのにふと思い出します。

それは、
ちいさなものたちが、かたまってしまいそうな心を
柔らかく、ゆっくり息ができる様に
救いに来てくれている様に感じます。

text : sunao sera

洋紙が貼られた少し色あせた文箱。
幼い頃から机周りにあったその箱に、
世良さんからの手紙をしまうようになって、
10年が過ぎた。

純白の、空色の、パラフィンのような、
静かな紙にちいさな文字で。
さっき見た夕焼けの色や、
掴めなかった木漏れ日のきらめきが、
ひとりの作家の心を揺すっている。
呟くように記された文字は、遠い航海を照らす光のように、
ほのかでまっすぐに綴られて。

文箱に詰められた物語の断片を、
未だ見ぬ誰かに拾い集めてもらえたら。
冬の透き通った光の中で。

金属という素材と、誠実に学んだ技術が、
感じる心を、確かな物語・かたちに変えていく。
世良さんのちいさな作品が、
ちいさなギャラリーを灯します。

text : sanae inagaki