草の時間 矢谷左知子の草世界
2004年10月30日(土)~11月7(日)
矢谷左知子作品画像

草狩り、毎夏の草の収穫
刈りのこされた野生の草を探す狩り
ほのくらい林道で ようやく見つけた苧麻を刈る
炎天下のがれ場でえんえんと葛のツルを手繰る
出会う山の蛇、
蝉の声、谷の水音、
足下の虫、道に下りる蝶、
山の水で顔を洗う、雲を見あげる
ふりそそぐ 木漏れ日
すぐ傍らのたくさんの命あるものの気配、
大気の中
包まれている

剥く、ただただ草の皮を剥く
洗う、来る日も葛を洗って糸にする
草の様態を夏じゅうひたすらに見つづけて
くり返される労働
腐った蔓が透明な光を放つ白い繊維となる不思議
身体ときもちが洗いさらされる
季節を終え、また土へ還っていく草たち
その循環に手出しをしないことで
充ちてくるなんともいえない安堵感

text : yatani sachiko

*素材の糸は夏しか生えていないので一年分をその時期に収穫します。

野山に育つ葛や苧麻をそっと見つけて、糸をひき、布にする。
これはまさにヒトの営みで、矢谷さんはとても素敵な女性なのだけど、
彼女の魅力はまるで小さな動物、俊敏で繊細で、
でもおっとりとした生き物が発するもののようです。
そのエッセンスがたまたま織物の姿をかりて
彼女のつくるものとなり、私たちの前にあらわれる……

草の時のながれ。
草の目線で世界を感じたくなる展覧会です。

text : ishida norika

クッション

※草の布、草守、クッション、暦など ※10/30(土)・31(日)・11/6(土)・7(日)作家在廊 この4日間はトキニワカフェがopen。 天然酵母パン屋アッチッチベーカリー(渋谷)による気ままな草世界軽食をご用意いたします。