director's voice

スプーン榧(かや)木工

Q1
「工房からの風」への出展作品についてお尋ねします。
スプーン榧(かや)さんの代表的な作品、または、定番的な作品、作り続けている作品の中から、ひとつをご紹介ください。

A1
『そよ風のスプーン』
そよ風をイメージして大きくカーブした柄が特徴のデザートスプーンです。
優しく手に馴染む持ち心地と少し深めの匙は薄く仕上げているので口当たりがとても良く、ゼリーやヨーグルトなどをとても美味しくしてくれます。
木工を始めた初期から少しずつ形を変えながら、ずっと作り続けている私のお気に入りのスプーンです。
私の代名詞でもある『見て楽しい、使って嬉しい木のスプーン』です。
ぜひ、実際に手に取って手触りや握り心地を体感してもらえたら嬉しいです。

Q2
もう一つ作品について教えてください。
今回、特に見ていただきたい作品はどのようなものでしょうか。
新作や、今特に力を注いでいる作品についてひとつをご紹介ください。

A2
『十薬(ドクダミ)のカトラリーBOX』
ドクダミの花を蓋のつまみにしたカトラリーBOXです。
私の好きな花の一つがドクダミです。

ドクダミの花の立体感をどのように木から削り出そうか、ぼんやりとしたイメージのまま構想に数年。
ある時ふっとイメージが鮮明になり、ここをこうして次はああして。と制作に取り掛かることができました。
そして、本体と蓋は木の塊から手作業で彫りだして制作しています。
塊から彫りだすのはとても時間がかかり体力も使う大変な作業ですが、
木と向き合いながら制作する過程は心穏やかで楽しい時間です。

仕上げに表面に模様を彫っていきます。
模様は、工房名で私の名前でもある榧(カヤ)の木の葉をモチーフにしています。
ノミや彫刻刀を使い、彫り模様の仕上げをするのもとても楽しく大好きな工程の一つです。
私の大好き、や楽しいを全部詰め込んだ作品です。

Q3
スプーン榧(かや)さんの「工房」で印象的な「もの」をひとつ教えてください。

A3
明治生まれの医者だった祖父の診療所で使っていた棚。
白い木の壁と緑の屋根瓦。まるでサツキとメイの家のような祖父の診療所。
私が子どもの頃にはもうずっと前に使われなくなっていて廃墟。裏庭を掘れば薬の瓶とか出てきたりしました。

そんな診療所の中には様々な医療器具や道具、家具がそのまま残されていました。
工房を構えた際、診療所の家具が使いたい!と診療所から(一人で動かせるサイズの棚を)引っ張り出しました。
綺麗に洗い壊れていたところは修理し再び息を吹き返した棚です。
今では工房の入り口のシンボル的な棚になり、小さな展示スペースと道具入れの棚として使っています。

『木を彫ってる時がいちばん幸せ』
と話すスプーン榧(かや)さんの手になる作品からは、その喜びが波動となって感じられます。
作り手の幸福感が、そのまま使い手に伝わっていくような。

そうそう、かやさんというのは、ご本名。
実は、お嬢さんの名前も素敵な樹木の名前なんです。
気になる方は、ぜひブースでお尋ねになってみてください。

スプーン榧(かや)さんの出展場所は、コルトン広場、お庭を背にしたニッケ鎮守の杜入り口近くのテント。
お洋服のさざなみさん、革のTSU ZU KUさんの間になります。

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工房での制作光景はこちらでご覧いただけます。
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映像編集:いとうゆり