2023年 工房からの風

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小泉すなおさん(陶芸)

Q1
二回目の出展となる小泉すなおさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
千葉県柏市にて工房を構えて作陶しています。

食器や花器を、半磁土と陶土を作品によって使い分けて作っています。
砂糖菓子のような滑らかな質感、河原で拾う石のような質感など、どれも手に取った時の質感を大切にしています。

食の器はマットな釉を掛けたものが中心ですが
花器やオブジェなどは、土を重ねて表面に装飾を施し
た作品もあります。

陶芸は窯で焼く事で完成するので、最後の最後を見届けられません。
毎回がテストのつもりで、ドキドキの窯出しを行い
自分の中の正解は数を重ねなくては得られない、を痛感しています。

初めて出展させて頂いてから6年になりますが、
小さな窯を新しく手に入れ、沢山の釉薬の試作を行い
色の世界が広がりました。

釉薬の掛け合わせや、滲みで生まれる柔らかな景色。
移りゆく空や広がる波のように、ぼんやりとした優しい景色を
器に写せたらと思っています。

Q2
小泉すなおさんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
工房を構えた時に入れたガス窯と、新しく加わった電気窯。
道具というより相棒で、どちらもクセがあります。
開ける時にこんなに高揚感のある扉はありません。

自分のやっている事は、広い陶芸の世界では
本当に狭い範囲の試作の繰り返しに過ぎないのですが、失敗も多い中、少しでも「ああこれは!」と思うものが出てきた時は、この窯の前で小躍りしてしまうのです。


前回から6年!
その間、風人(かぜびと)さんとしても活躍いただきました。

すなおさんのご自身の創作は、この間、ぐんぐん展開を進められて、作品構成がかなり変わったように思います。
釉薬の変化による色のグラデーションなど、きっと今現在の渾身の展開を見せてくださることでしょう。

小泉すなおさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、入って中央右側。
梅とアーモンドの木の間です。

小泉すなおさんのインスタグラムはこちらです。
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Deep Gorge(陶芸)

Q1
Deep Gorgeという工房名で作陶する高田寛子さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
屋号のDeep Gorge(ディープゴージ)は、幼少期を過ごした米国東部コネチカット州の当時の住所、Deep Gorge Roadから名付けました。
ニューイングランドで培った感性と、日本の陶芸技術を組み合わせた独特の作風が特徴のブランドです。
「たおやか」をテーマに、信楽から取り寄せた2種類の陶土 x 自作の3種類の釉薬 x 2種類の焼成方法を組み合わせて、土の器を作陶しています。
和食器や洋食器といった用途にとらわれない、Versatile=多用途なデザインを心がけており、手に取ってくださった方の解釈で如何様にも使えるうつわを、出品致します。

例えば、代表作のCUP&SAUCERは、コーヒー、紅茶、日本茶、お酒、ジュース・・あらゆる飲み物が似合うデザインを想定して作りました。
お客様がいらした時はソーサーを茶托として。
普段はちょっとしたおやつを載せたり、取り皿としてカップと一緒に。
ハレの日もケの日も寄り添える、食器棚のスタメンを目指しています。

奇をてらわない、不完全だけど、特別。

くらしに寄り添い、何気ない一瞬を大切にしたくなる日々の器をご覧ください。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
道具、というには大きすぎるかもしれませんが、私にとって大切なのはやはり陶芸用の窯です。
電気とガスを併用する窯を用い、12~16時間かけて1250度まで温度を上げて作品を焼成しています。
そのあとで、24~30時間かけて冷ます時間も同様に大切な制作過程です。

陶芸にはたくさんの工程がありますが、泣いても笑っても、最後は窯の神様に作品を預けて仕上げていただく気持ちで毎回の焼成に挑んでいます。

神奈川県鎌倉市で作陶されていたDeep Gorgeさんは、この秋、群馬県北軽井沢に引っ越しをされるとのことです。
陶芸作家が工房を移転するのは、大きな変化ですね。
その直前の「工房からの風」への出展は、ひとつの節目、集大成にもなるのかもしれません。

Deep Gorgeさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、入って右手に添ったところ。
手前隣に、金工の玉置久実さん。奥隣に革のoceanoさんのテントになります。

ホームページはこちらです。
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ふくべ窯(陶芸)

Q1
岐阜県土岐市で窯をひらくふくべ窯さん。
「工房からの風」にはどのような作品を出品くださいますか?

A1
精炻器(せいせっき)というやきものを出品します。

精炻器は昭和初期に岐阜県で生まれたやきもので、化粧土を使った加飾技法を特徴としています。
約50年前に生産が途絶え、現在制作ができる作り手はほんのわずかです。
約20年前に当時の精炻器に出会い、その美しさに魅了されました。
技法を学び、現在はふくべ窯として夫婦で精炻器を制作しています。
精炻器には化粧土を使った様々な技法がありますが、私たちはさまざまな色の化粧土を盛り上げるようにして筆で描いていきます。
身近にある植物や動物をモチーフに毎日の食卓が楽しくなるような器づくりを目指しています。

私たちが昔の精炻器から感じたわくわくを、ふくべ窯の精炻器から少しでも感じていただけましたら嬉しいです。
精炻器の貴重な加飾技術、作品を多くの方に広く知っていただくきっかけにしたいと思っております。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
私たちふくべ窯の大切な道具は、化粧土で加飾するためのヘラです。

筆以外の加飾の道具は多くが手作りです。
このヘラは精炻器の先生である曽根洋司先生が作られたヘラで、精炻器を学び始めた頃からずっと使い続けています。
先生のヘラは私たちが作った道具よりも格段に使いやすく、20年近く制作をしていてもかないません。
化粧土を柔らかく動かし、思い通りの表情を出せるこのヘラを使うたびに、制作したものだけではなく、そこに至るまでの過程も大切に受け継いでいきたいと強く思います。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
愛用している工芸品はNAKARI WATCH JP さんの腕時計です。

まだ使い始めて2年ほどですが、はじめは堅かった皮が使うたびにやわらかく肌に馴染み、木製の文字盤もだんだん深みのある色になってきています。
ただ時間を確認するだけのものではない、同じ時間を一緒に過ごしている生きもののようでとても気に入っています。
これから使い続けてどんな色合いになっていくのかとても楽しみです。

ご夫婦で制作される「ふくべ窯」。
どこか懐かしいような、それでいて新鮮な「精炻器(せいせっき)の器。
なかなか見る機会も少ないかもしれません。
その独特な美しさの有る器が、普段使われている様子を想像してみるのも楽しいですね。

ふくべ窯さんのインスタグラムはこちらです。
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玉置久実さん(金工)

Q1
静岡県で金属を素材とした制作をする玉置(たまおき)久実さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
銅や真鍮を主な素材として、板材や棒材を切り出し、形成、溶接をして制作しています。

金属という素材は熱を加えれば柔らかくなるり、手を加えれば形を変え、硬くなる性質をもち、これを繰り返しながらカタチにしていきます。
私はこのピカピカで無機質だった金属の板が1打1打鎚で叩くごとに鎚目がつき、姿を変え立体になっていく瞬間がとても好きです。
手間と時間がかかる方法ですが、ハリのある丸みと柔らかなカタチはぜひ手に取って感じていただきたい魅力です。

今回出品するライトは場所を選ばず設置でるよう乾電池式にし、配線やスイッチも作品に合わせて1つ1つ制作しています。
カタチはシンプルにしてすっきりと、空間になじみながらも存在感が出るように心がけています。

花の器は絞りの技法を使い制作しています。

焼き鈍し、成形を何度も繰り返しカタチをつくっていくため、鎚の模様と手の中でずっと撫でていたいような丸みを存分に感じられると思います。

オブジェは身近にいる野鳥をモチーフに制作しています。

野鳥は当たり前のように目にしていますが、その中には季節によって何千キロも渡りをおこなうものや、生存のために住む場所を変えたものなどがいます。

あたりまえの光景は、実は尊く美しいものだと気づいたことからその姿を残したいと思い制作しています。

時の経過とともに変化していく色合いも金属の魅力の1つだと感じています。

だんだんと落ち着きのある色合いになり、使い方やお手入れの仕方でマットな質感なったり、つやがでたりと変化の仕方も様々です。

金属の色味や鎚の模様、カタチの丸み1つ1つの違いを楽しみながら手に取っていただけたら嬉しいです。

Q2
玉置さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
工房で使用している机

この机は小学校の入学祝に両親から贈られた学習机です。
最初は木目でしたが、高校時代にペンキで白く塗りなおしました。
学生時代はこの机でまじめに勉強した記憶はあまりありませんが、今では制作に欠かせない机になっています。
安定感があり、天板が広く、引き出しもあるのでとても作業がしやすく気に入っています。

もらった当時はこんな長い付き合いになると思っていませんでしたが、これからも大切に使っていきたいと思います。

ランプ、花瓶、アクセサリー・・・
金属素材で幅広い制作を行う玉置久実さん。
ニッケ鎮守の杜に入って右手(銀座アスター側)に並ぶ4基のテントの、一番入り口側で、金属の作品がどのような表情をしていることでしょう。

玉置久実さんのインスタグラムはこちらです。
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三井亮さん(陶芸)

Q1
山梨県韮崎市で日月窯をひらく三井亮さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
近隣の果樹灰を使用した釉薬でやきあげたうつわや花入れなどの陶器。
果物灰釉は不安定な釉薬ですが、それゆえの繊細な色合いを見て頂ければと思います。
形は平安時代の遺跡からの出土品にインスピレーションを得てシンプルで美しい形状を追い求めています。

Q2
三井さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
窯です。
父の築いた1立米の不思議な箱。
つくり手にも完全に掌握しきれない5日間。
内で炎が流れ、釉薬が動く瞬間を外から見極める。
日月窯のつくる果物釉は窯の詰め方や詰まり具合も仕上がりに大きく影響を与えるために6日目に窯の蓋を切る瞬間は毎回期待と不安が入り交じります。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
松永 聖士作 漆塗り箸
友人でもある漆作家が制作したもので十年以上愛用しています。
重さ、箸先の細さ、使い代の長さ、持ち代の感触全てにおいていつの間にか自分の手にしっくり馴染んでいて食事の時に違う箸が用意されているとわざわざ取り替えに行くほどなくては落ち着かない相棒になっています。

お父様と同じ陶芸の道へ進まれた三井さん。
お手製の窯も引継ぎ、そこで焼かれる器には、時が脈々と受け継がれているように感じます。

山梨の果樹で灰釉を作って作品作りに生かすお仕事。
今回は、静岡の平井亮太さんが柿農家の剪定作業で出る枝葉を活用されているとおっしゃっていましたね。
身近な素材を活用して美しく人の営みに行かされるものを作る仕事。
それぞれにじっくり拝見してみたいです。

三井亮さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜。
galleryらふとの向かい、佐藤かれんさんのお隣。

インズたグラムはこちらです。
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荒井彩乃さん(陶芸)

Q1
コルトンプラザのある市川市で作陶する荒井彩乃さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
スリップウェアと和紙染めの技法を用いた陶器の食器とアクセサリーや小物入れを出品いたします。

スリップウェアとは、クリーム状の化粧土の上に化粧土で重ね掛けをし装飾をして焼き上げた陶器全般のことを言います。スリップウェアのやわらかくぽってりとした表現と化粧土を伸ばして出来た細い線組み合わせ、豊かな動きの植物模様をうつわに描いております。

和紙染めとは、下絵付けの一種で筆で直接描かずに型紙に絵の具を染み込ませて模様をつける技法です。
花畑や草花の茂みの一部を切り取ってうつわの上に乗せたような、色とりどりで華やかな雰囲気のうつわを作成しております。

2つの技法を使い、自分の思う植物模様で陶器に落とし込んでみました。
それぞれ雰囲気の異なる陶器をお楽しみいただけますと幸いです。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
スリップウェア作家、小島鉄平さんの角皿です。
小島さんの器に描く生き物はとても生き生きとし、スリップウェア特有の化粧土の流れを上手く利用した作品だと思います。
自分もいつかこの様に生き生きとした作品作れるよう、普段からなるべく目の届く場所に置いて、自分を鼓舞しております。

スリップウエアと和紙染めのふたつの系統のお仕事を進める荒井彩乃さん。
以前、他の作家の方のサポートでお客様をお迎えする側も経験されたようですが、ご自身のお仕事、どのように見て、受け止めていただくのか、きっとドキドキされていますね。

荒井彩乃さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、galleryらふとの近く。

インスタグラムはこちらです。
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ムラカミ染織(丹波布)

Q1
丹波布を織る村上樹里さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
兵庫県丹波市青垣町の伝統的木綿織物、丹波布(たんばぬの)を製作しています。
丹波布は、綿から糸を紡ぎ、草木で染め、織り上げる、それら全ての工程を人の手で行なっています。
また、養蚕が盛んだった時代に、商品にならない屑眉をほんの少し木綿織物に織り込んだことから、それが丹波布の特徴となっています。

伝統的な丹波布は、丹波の素朴な空気感を表すかのように、渋く静かな風合いのものが多いのですが、それと比べると、私の織る丹波布は明るい印象を受けられるかもしれません。

日々の生活の中で丹波の自然の豊かさや多様性を感じるにつれ、いつの間にかそのような作風になっていったような気がします。
昔ながらの丹波布を継承すること、それと同時に、現代を生きる私自身が感じるものを表現すること、両方を大切にしながら織り続けています。

工房からの風では、そんな丹波布を肌で感じられるストールやバッグ、日々の生活で使えるがまぐち小物やテーブルウェアなどを展示します。
日々使う物だからこそ、人の手、空気、水、光に触れます。そうした刺激を受けることで、草木染めの色や木綿の手触りが、少しずつ変化していきます。
そんな自然の移ろいを、生活の中で楽しんでいただけたらと思っています。

ぜひ、丹波で生まれた丹波布を、手で触れてみてください。
みなさまにお会いできることを、とても楽しみにしています。

Q2
ムラカミ染織で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
この織機は明治時代初頭のもので、とてもシンプルな作りをしています。
そのため、私でも簡単に持ち上げられるほど軽く、織っていると織機の木材が揺れ動きます。
最初はそれに慣れず、少し戸惑いました。
ただ、織機の揺れと自分のリズムが一致した時、織機と身体とが一体化しているかのようにとても心地よく織れるのです。

数年前、長年染織に携わっておられた大先輩がご高齢のため引退される際に、この織機を譲っていただきました。
そして元々はその先輩もまた、素敵な縞模様のもんぺを履いた方から、この織機を譲り受けたそうです。

先輩から織機をいただく際、「あなたにバトンを渡したからね」と言っていただきました。
約150年前から何代も受け継がれてきたそのバトンを落とすことなく走り続け、いつか私も次の世代へ渡すことが出来るだろうか。
この織機と共にあった人々と伝統の流れに思いを馳せながら、日々、織り続けています。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
秋田の曲げわっぱのお弁当箱です。
私が丹波市へ移住することになり、それまで働いていた職場を退職する際、同僚たちが贈ってくれたものです。

この時、私はとても驚きました。
実はちょうど、曲げわっぱのお弁当箱が欲しくて探していたところだったのです。
ただそのことは誰にも言っていなかったため、箱を開けてわっぱの姿を見た時、「どうやって私の心を読んだ・・?」と衝撃を受けたのです。
同僚に、「なんとなく、わっぱが好きだと思った」とあっさり言われ、見透かされているなぁと、なんだか嬉しくなったのでした。

丹波へ来て、毎日のように使ううち、今では良い風合いを醸し出しています。
壊れることもへたることもなく、秋田の職人さんの技術を感じます。
周りの人から「そのお弁当箱、いいね」と言われるたびに自慢しつつ、これからも大切に、この曲げわっぱを使い続けたいと思っています。

素敵なストーリーがたくさん散りばめられたメッセージですね。

『 約150年前から何代も受け継がれてきたそのバトンを落とすことなく走り続け、いつか私も次の世代へ渡すことが出来るだろうか。』
走り続けるその過程にある「工房からの風」への出展。
ぜひ豊かな経験にしていただきたいと思います。

そして、わっぱのお話も!
わっぱ、会場に持ってきてくださるといいなぁ。

ムラカミ染織さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜。
中央の花壇のほとりです。
和紙のPAPER BRUT さんがお隣。
糸車ももってきてくださるそうですので、きっとすぐわかりますね。

ムラカミ染織さんのインスタグラムはこちら
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そして、映像はこちらです。
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佐藤かれんさん(染織)

Q1
『 北アルプスの山々が初冠雪しました。』
と、コメントを寄せてくださった佐藤かれんさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
今回が2回目の出展になります。
前回から4年経ち、織るときに使う技法や色、作品の種類や量が増えました。
当日は、この4年間の織りの広がりを、作品を通してお見せできればと思います。

制作では、織物留学をしたスウェーデンでの経験や、日々の暮らしからの「実感」を大切にしています。
この「実感」とは、言い換えると、その作品を織りたいと感じたときの背景です。

今年の「工房からの風」に向けて織ったものから、3つ作品を紹介いたします。

タオル
コットンとリネンのタオルです。
ハンドタオルとバスタオルの、2種類を制作しています。
タオルとして拭くだけでなく、ランチョンマットのように敷いたり、カゴやバッグの目隠しに掛けたり、暮らしに合わせて用途が広がります。

留学中、ルームメイトがお風呂上がりに、薄手でクタッとした布を、いつも部屋に干していました。聞くとその布は、バスタオルだそうで、スウェーデンでは一般的だと教えてくれました。
タオルといったら、厚手でフワフワだと思い込んでいた私にとって、驚きの返答でした。

その後、授業でスウェーデンのタオルを織る機会がありました。
完成後に使ってみると、なんとも言えない心地よい質感で、手放せなくなりました。

手元には使い始めて9年目の、手織りのバスタオルがあります。
今回の出展の際に、見本としてお持ちいたします。
使い込まれたタオルと、新しく織ったもの、それぞれの手触りの違いを感じていただきたいです。

クッション
スウェーデンの民族衣装から着想を得て、ダーラドレルという技法で制作しています。

ダーラドレルは、スウェーデンのダーラナ地方の伝統の織りです。
この地方に学校があったので、留学中、ダーラドレルの布を多く目にしました。
特に、ダーラドレルの模様が織られた、民族衣装が印象に残っています。
スウェーデンの衣装はとても装飾的で、細かい刺繍や色鮮やかなポンポンが沢山付いています。
装飾と合わさると、ダーラドレルの模様が一層引立って、衣装の上でハッとするほど美しく見えました。

その美しさを織りたくて、表面にダーラドレルの模様、裏面に刺繍、四隅にポンポンを付けたクッションが出来ました。
表面、裏面、隅まで愉しめる、手仕事が詰まったクッションです。
会場でお手に取って、様々な角度からご覧いただけると嬉しいです。

膝掛け
コットンとラムウールで織った膝掛けです。
ラムウールのふんわりとした風合いに、コットンのさっぱり感が加わって、肌寒い季節に最適です。
自宅では、昼寝のおともにしています。
大判のストールとして羽織ったり、ソファーに掛けても素敵です。

今回の膝掛けは、8月の「工房からの風」のミーティングで、出展場所を確認した弾みで制作しました。

私のテントは、おりひめ神社の鳥居のほとりです。
木々の間で、少し薄暗く、木漏れ日がひらひら揺れる場所でした。
その様子を見たとき、ここに色で明かりを灯したい、その為に、何かぴったりのものが織りたいと感じました。

新鮮な気持ちのうちにと、帰路で頭をフル回転させて、翌日一気に織ったのが、写真の膝掛け3枚です。
勢いに任せて制作したからか、とっても爽やかな色調になりました。個人的に、今年の出展の、記念のような作品です。

Q2
佐藤かれんさんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
スウェーデンからやってきた、織り機です。綜絖16枚、織り幅150cm、重量約300kgの、大型モデルです。

北欧で初めて織りを学んだ私は、卒業後、日本で織りを続ける手立てがありませんでした。
知人もおらず、道具も場所も、何ひとつ揃っていない状態で、残念な気持ちでいたとき、スウェーデンの先生が、織り機を譲ってくださる方を見つけて、日本へ送ってくださいました。

その織り機の持ち主は、先生のお知り合いの作家さんで、本を何冊も出版するほど、織りに精通されていました。
ご高齢になり、織りをやめ、道具を手放すことにしたそうです。

私には勿体ないほど立派な織り機がやって来て、この織り機を活かすためにも、これからも制作を続けたいと、作家活動が始まりました。この織り機があるから、今の自分の制作ができている、とても大切な存在です。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
手作りのシャトルです。

スウェーデンで織りを学ばれた日本人の先輩が、私の作家活動の応援にと、昨年に譲ってくださいました。
彼女が北欧にいた頃に、知り合いの木工作家の方にお願いしたもので、糸を入れる所に、作り手のサインが入っています。

一般的なシャトルよりも分厚くて、曲線的なつくりです。
使い込まれて、艶やかな見た目をしています。
手によく馴染んで、糸が魔法みたいにスルッと通るので、他のシャトルも持っていますが、こればかり使ってしまいます。

佐藤かれんさんが前回出展くださって4年が経つのですね。
ちょうどコロナ禍の前年。
最年少作家でした。

もちろんベテランの染織作家のような完成度には至らなかったでしょうけれど、ひたむきに織り上げられた布の瑞々しさに、多くの方が魅了されていました。

コロナ禍の3年間。
弛まず織り続けた先の今展。
ひたむきさはそのままに、織りの手も成熟してきたかれんさん。
初期感動、初期動機の光を失わず、手が掴んだ技術をもって、作品のバリエーションも一層豊かになったようです。

8月のミーティングで、出展場所を確認したパッションのままに織り上げた膝掛け!
ぜひ、見て、触れてみたいですね!
おりひめ神社鳥居のふもとで。

かれんさんのインスタグラムは、こちらです。
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畑からそだてた布(苧麻)

Q1
奥会津でからむし(苧麻)の織りをする「畑からそだてた布」さん。
工房からの風には、どのような作品を出品されますか?

A1
布小物やアクセサリーを中心にバッグ類も少し出品する予定です。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
おぼけ
績んだ糸を入れておく入れ物。
曲げわっぱでつくられたものです。

各家庭にはかなり古いものも残されていてそれを使っている方も多いです。
私は桧枝岐村のわっぱ職人さんに作っていただきました。
杉のまさ目の部分を使い丁寧に仕上げられています。
おぼけの外側は地元のおじいちゃんに柿渋を重ね塗りしていただきました。

「工房からの風」初期に出展くださって、久しぶりに今展にやってきてくださいます。
出展場所は、コルトン広場、スペイン階段前。

インスタグラムはこちらです。
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すずきみきさん(服)

Q1
東京都町田市で洋服を制作するすずきみきさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
私自身目立ちたがりやな方ではないのですが、少しだけ個性のある服が好きでした。
服作りはそのような思いから始まりました。
一番楽しい瞬間は、基本に作った型紙からその時々で少しアレンジを加えて一点ものを作り出すときです。
凝り過ぎず、さりげない個性。
そんな感覚を共感していただけたら嬉しいのです。

今回はヨーロッパアンティークに刺激を受けて、大好きなギャザーをモチーフに制作しています。
ギャザーをたっぷり入れたかったので、薄くて軽い上質な天日干しコットンを選びました。 天日干しの奥深い風合いは、写真ではなかなか表現できないのが残念ですが、ぜひ実物を手にとっていただけたらと思います。

ギャザーたっぷりさらに薄く軽い透けるコットン生地サラッと上に重ねて着る

赤いタータンチェック柄のバルーンスカートとても暖かいウールガーゼ素材

エリとラペル部分を最小限に小さくラグラン袖のシャツジャケットです。エリは立てても寝かせてもお好みで素材は天日干しリネン

Q3
すずきみきさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
山葡萄のカゴバック。
何年か前に福島県奥会津三島で開催される会津工人まつりに主人が出展した際におみやげとして買ってきてくれたものです。
九十歳越えている作り手の方が作っているんだってすごいよね、シンプルにいいなと思い購入したとのこと。
ものつくりをしている私達夫婦もいつまでも作り続けたいと願いも重なりとても尊敬するバックです。

素敵なお土産、いいですね。
購入されたのは、am鈴木厚司さん。
今回は、ご夫婦で近くながら、別テントで出展くださることになりました。
ニッケ鎮守の杜、稲荷社の方角です。

すずきみきさんのインスタグラムはこちらです。
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am(帆布バッグ)

Q1
東京都町田市でamというブランド名で、帆布と革を使ってバッグを制作する鈴木厚司さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
タンニン染め帆布のベージュ色、カーキ色、黒色の定番色3色に加え去年ぐらいから使い始めた、レンガ色と白色のバッグも出品します。
今回は何度も試作を作った「普通のトートバッグ」と「ワンハンドルバッグ」を新しく作りました。
どのバッグも長く愛用していただきたいと思い、シンプルな作り、シンプルな見た目の使いやすいバッグ作りを心掛けています。

Q3
amさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
「工藝品」では無いのですが、20年程前に自分が初めて型紙から作った手縫の革ミニショルダーバッグです。
その時は仕事では無く趣味で作っていて、少し不恰好ですが今でも「かわいい型だなあ」と思っています。
自分にはサイズが少し小さかったので母親に使って貰ってました。
ビニールに入れて引き出しの奥に保管していますが、たまに思い出したように引っ張り出してオイルを塗ったりブラッシングしたりしています。

鈴木さんは昨年は風人さんでお力をいただき、今年は出展くださることになりました。
鈴木さんは控えめでいつもにこやかに微笑んでいる印象。
けっしてご自身をアピールされないのですが、ひとつひとつの催事や、やりとりを通じて、ゆっくりそのお仕事に近づいて行ったような気がします。

強く主張されないけれど、手堅く嘘のないお仕事は、まさにお人柄そのもの。
他の作家さんたちもゆっくりそのお人柄とお仕事に惹かれていったのだと思います。

その鈴木さんが作る「普通のトートバッグ」って、一体どんなものなのでしょう??
興味が湧きます・・・。

amさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、稲荷社の前方。
インスタグラムはこちらです。
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コタニサツキさん(木工)

Q1
都内で木工制作に励むコタニサツキさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
いろいろなストーリーが詰まった古いガラスや陶器等の素材と合わせた木の蓋物をメインに、木のカトラリー等のテーブルウェアも出品します。

蓋物について…
私の作る蓋物のガラスや陶器等は、今まで何かに使われていたもの、デッドストックのものを私自身骨董市等で探してきています。
元々ガラスや陶器等の異素材と合わせた木の蓋物を作りたい、という気持ちが独立する前からありました。
それは単に木と異素材との組み合わせが好きだったから。

独立して間もない頃
「こんなにもたくさんの新しいものが生まれているのに、なんで私はまた新しいものを作っているんだろう。ものってこんなに必要なのかな。」
とモヤモヤした気持ちがありました。

やりたい事とそんなモヤモヤを抱えながら、自分が納得してできるものづくりとはどんなものなのだろうと思い続けていました。
そんな中最初に出会ったのが羊羹の型として使われていた古いガラスでした。
古いものが元々好きだったのもあり、骨董市等にはよく足を運んでいました。
そのガラスを見た途端、上に被せる木の蓋がパッと浮かび、すごく大切に丁寧につくったのを覚えています。

それから私は、ものが溢れている中でただ新しいものだけを制作するのではなく、使われなくなったものに木を添える事でまた新しいものとして使い続けていけるような、そんなものづくりがしたいと作り手として強く思うようになりました。
私がつくった蓋物を、生活に取り入れてもらうことが、またその先のいいことに繋がっていくよう想いを込めてつくっています。

カトラリーについて…
蓋物について熱く語っていながらもカトラリー等の木の小物をつくり続けている理由もあります。
それは完全に自己満足、自分のモチベーションとして。

私が木工をしたいと思ったきっかけは木の匙をつくりたい!という想いからでした。
私にとって初心を忘れないため、木の良さを伝えるために必要な存在なのです。

「工房からの風」当日は、もののストーリーやこれからどう使われていくのかをじっくりお話しながらご覧になっていただければと思っています。
これからどんな方の元で、どんな新しいストーリーが刻まれていくのか。
わくわくして新しい出会いをお待ちしています。

Q2
コタニサツキさんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
工房の古い大きな作業台です。
独立して工房を立ち上げる前にまずこの作業台を購入しました。
私は新品にはない、時の経過を感じるものに魅力を感じてしまいます。
この作業台もどこで誰がどの様に使っていたのか。
使い込まれた作業台の上で、新たに私の作品達がまた生まれていきます。

希望と矛盾を抱えながら、希望の光の方へ一歩一歩進んで今のお仕事につなげてこられたコタニさん。
作品である「もの」を介して、コタニさんのテントのもとで豊かな会話、交流が生まれるとよいですね。

作家の方々、来場者の皆さんとの会話をとっても願っています。
ぜひ、臆せず、会話を楽しんでいただければと思います。

コタニサツキさんは、滋賀の川端健夫さんのところで働いていたとのこと。
(マンマミーアさん!)
川端さんが初出展くださったのは2007年のこと。
16年の後、出会いのつながりがあること、とてもうれしく励みに思っています。

コタニサツキさんの出展場所は、おりひめ神社鳥居のふもと。

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