Q1
「工房からの風」への出展作品についてお尋ねします。
藤田永子さんの代表的な作品、または、定番的な作品、作り続けている作品の中から、ひとつをご紹介ください。
A1
私の作品の中で、ひときわワイルドなテクスチャをしているものがあります。
灰色をベースとした中に、黒、白、茶色や金色、青っぽく見える部分など、様々な色味がマーブル模様のように広がっています。
これは「錫引き」という昔からある技法を、個人的に研究発展させ、模様やテクスチャを持たせられるようにしたものです。
ひとつ名刺の代わりになるようなものを、という思いで研究し、作り続けてきました。
最近ではこのテクスチャだけで、私の作品だと気づいてくださる方も増えてきました。
今回の「工房からの風」でもこの名刺の作品はご用意してまいりますので、ぜひお手にとってご覧いただき、いつかまたどこかで作品に出会った時にも、ピンときていただけたら嬉しいです。
Q2
もう一つ作品について教えてください。
今回、特に見ていただきたい作品はどのようなものでしょうか。
新作や、今特に力を注いでいる作品についてひとつをご紹介ください。
A2
「金属が好きである」「暮らしの道具が好きである」ということだけで、テーブルウェアを作り続けてきました。
ここ数年はより一層「金属であることの意義」に心を寄せながら制作しています。
その中で外せないのが、直火にかけられる薬缶などの注器です。
銅の注器は熱伝導率の良さ、カルキ臭の軽減など、良い要素をたくさん持っています。
世の中には優れた注器がたくさんあります。
人間工学に基づいて工場で安定的に生産されたもの、持ち手にプラスチックがついていて熱くないもの、電気で急速に沸かしてくれるものもありますね。
私の注器は、持つ時に布巾をご用意いただきたいですし、経年で色も変わります。
それでも毎日見ていたい、そばに置いておきたいと思える、愛らしい注器を目指しています。
Q4
「工房からの風」の出展が決まってから、藤田永子さんに起こった変化について教えてください
A4
「工房からの風」ディレクターの稲垣さんにかけていただいた言葉の中で印象的なのが
「展示に向けては、今作りたいものから着手したほうがよい、定番のものは手が覚えているから、直前でも作れます。」というものです。
ずっと頭では分かっていたつもりだけれど、なかなか踏ん切れないことを、はっきりと言葉にして伝えていただいたことで、少しだけ心が解き放たれた気がしています。
定番のラインナップで、かつコンスタントに売れていくものが展示で求められるのは当然で、そういったものは数を用意しなければならないという、自身が勝手に作った掟の中で苦しんでいる部分がありました。
しかし「工房からの風」は良い意味で自己責任であり、言葉を選ばず言うと、売り上げが立っても立たなくても誰にも迷惑をかけない舞台です。
そう思えてから「今自分が作りたいものを作って、見せたいように見せよう。」
と吹っ切れることができました。
もしかしたら、当日はご覧になりたかった作品がないかもしれません。
それでも「今これがやりたかったんだな」と思って貰えるようなブースにして、お待ちしております。
鍛金技法による生活道具を作る若手作家のトップランナーのおひとりの藤田永子さん。
期待が大きな分、応えなければならない制作アイテムと量があるのかと思います。
今回は他者からの期待をいったんおいて、ご自身の今の制作意欲の向かう方に素直に向かってくださっているようです。
これからも展がる作家活動への滋養となるような展示、機会にしていただけることを願っています。
藤田永子さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、おりひめ神社の奥。
ホームページはこちらになります。
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