director's voice

けもの舎・深山けものさんからのことば

「凪ぐ浜の宝物」
嵐の去った後の浜辺にきらりと光る宝物のような想い、言葉。
稲垣宛に届いたメールの一部を、10作家ほどご許可をいただいて皆様と共有していきます。

けもの舎、深山けものさんは、岩手県より出展くださいました。
ニッケ鎮守の杜西側の稲荷社の前。
鹿の角などを用いた作品を展示くださいました。
深山けものさんからのメール文の一部をご紹介します。

このたびの工房からの風では、大変お世話になりました。
秋の澄んだ空気の中、初めての出展という緊張と高揚を抱えながら、風に背を押されるように二日間を過ごしました。
会場に立ち並ぶ作品たちの間を、光と人の気配がやわらかく行き交い、その中で私の小さな作品たちも、そっと誰かの手に受け取られていく——
その光景を前に、胸の奥がじんわりとあたたかくなりました。

私は、鹿の角や骨という自然の欠片を素材にしています。
それは命の残響のようなもの。
人の営みのはるか前から、この地に息づいてきた形。
その美しさを、人の暮らしの中にもう一度、やさしく溶かし戻したい。
日々の支えとなるような静かな存在として傍らに置いてもらえたら——そんな願いを込めて制作しています。

今回の展示では、素材の持つ気配や時間を感じ取ってくださる方が多く、
「この光の反射が好き」「骨の白が、やさしい」
そんな一言一言に、作り手としての根が深く潤っていくのを感じました。

また、風人さんから什器の配置や導線について丁寧なアドバイスをいただき、
稲垣さんをはじめ、スタッフの皆さまが絶えず気を配ってくださる姿に、
この場所がどれほどの時間と誠意を重ねて育まれてきたのかを思いました。
出展者の方々との対話にも多くの気づきをいただき、
「風」という名にふさわしい、流れとめぐりの中で過ごすことができました。

二日間の終わり、片付けの手を止めたとき、ふと胸の内に静かな確信がありました。
この素材と、この手と、この場所を信じていけばいい。
ものづくりはきっと、祈りのようなもの。
自然と人、過去と未来、そのあわいをつなぐ細い糸を、今日も手繰り寄せること。

このたびの出展を通して、自分の根っこを見つめ直し、これから進むべき道の光を見つけたように思います。
与えられた風の力を胸に、またひとつひとつ、誠実に形を生み出していきます。
そしてまた近い未来、このすばらしい「工房からの風」に出展できればと思っております。

準備から当日、後片付けまで、本当にお世話になりました。
皆さまお疲れが残りませんように。
心よりの感謝を込めて。

狩猟も長く続けられていて、野生動物と人間の関係、昔からの営み、さまざまなことを思考しながら進めて来られたものづくり。
もっと、たくさんお話しも伺いたかったです。
これを起点に、深山さんの活動、制作を通して人の輪がひろがっていくことができたらいいなと思っています。

深山けものさんの出展前のメッセージはこちらになります。
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