director's voice

tama glass・多賀屋泰子さんからのことば

「凪ぐ浜の宝物」
嵐の去った後の浜辺にきらりと光る宝物のような想い、言葉。
稲垣宛に届いたメールの一部を、10作家ほどご許可をいただいて皆様と共有していきます。

バーナー技法で耐熱ガラスを素材として制作をするtama glassの多賀屋泰子さん。
ニッケ鎮守の杜、galleryらふとの脇、手仕事の庭を借景としたテントで展示をしてくださいました。
多賀屋泰子さんからのメールの一部をご紹介しますね。

工房からの風。
応募を迷っていた頃から数えると、約一年間どっぷりと共に過ごしてきたように思います。
作品数を含め、私にとって今までで一番大きな挑戦だったため、特にこの半年間は一点集中で準備をしてきました。

以前は、作り続けていくにしても、どこへ向かえばいいのかわからない、というような心境でした。
憧れの作り手が通った道、作ることを生業とする方々の集う場所に行って、その人たちが何を見て、どんなことを考えているのか、知りたかったし、学びたかったのです。

事前のミーティングでは、稲垣さんや風人さん、ご一緒した作り手の方々から伺ったさまざまな言葉が印象的でした。
これまでぼんやりと感じていたことの答え合わせができたり、逆に、言葉が後から体験と結びついて立体的に理解できたりと、多くの学びがありました。
今後もきっと、新たな気づきが続いていくように思います。

そして、工房からの風を作っている、事務局の皆さま、風人さん、庭人さん。
その他にもたくさんの方がいらっしゃるのでしょう。
それぞれに才能溢れる方たちの想いがひとつになり、工房からの風が成り立っていることを、本番2日間を通じてひしひしと感じ、そのパワーに驚き、心揺さぶられました。

惜しみなく与えてもらいました。
私も精一杯、惜しみなくやろう、と思っていたのですが、
想像以上たくさんのものを与えてもらっていることに終盤になる頃やっと気づき、恥ずかしいような思いすらしました。

工房からの風を通じて、今後の活動の骨格となるであろう経験と、たくさんのエールをいただきました。
またこの場所に戻ってこられるよう、何か少しでも新しい実りをお返しできるよう、作り続けていきたいと思います。
本当にありがとうございました。

tama glass 多賀屋泰子

個性豊かな作家の方々の中にあって、控えめに静かにすべてのミーティングに参加されていた多賀屋さん。
『憧れの作り手が通った道、作ることを生業とする方々の集う場所に行って、その人たちが何を見て、どんなことを考えているのか、知りたかったし、学びたかった』
という想いを素直に、惜しみなく実践されていたのですね。

そのような想いに対して、実践できなかったとしたら(MTGに出席したり、私や風人さんたちと交流しなかったとしたら)、今回の展示にはならなかったことと思います。
まるで紙が水を吸うがごとく、お会いするたびに進化を遂げていらした多賀屋さん。
静かに、けれど惜しみなく向き合われた結果が今回の実りだったと思います。

とはいえ、今スタートラインに立ったところ。
ご自身が心豊かに制作を続けていけるように、消耗したり、消費されてしまわないように、
作る速度と選ばれる速度のバランスをチューニングしながら、制作を続けていただきたいと願っています。
その先に見えてくる美しい景色を期待しながら。

tama glassさんの出展前のメッセージはこちらです。
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