director's voice

堀江悦子さん(染織)

7人の織り手がいます。
とご紹介しましたので、続いても布づくりの方をご紹介しましょう。
棉の布ここいと
として活動されている堀江悦子さんです。

Q
堀江さんは「工房からの風」に、どのような作品をお持ちくださいますか?

A
手紡ぎ和綿のストールや、細めのマフラーなどを持って行きます。

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堀江さんの布に初めて触れたとき、
織りの組織を新鮮に感じました。

織り物はご存知のように、
経糸と緯糸の組み方でさまざまな組織が生まれ、
それによって織模様が現れてきます。

棉での布づくりを進める方には、
糸そのものの魅力をストレートに活かした
平織りの方を多く見てきたので、
棉の組織織のさまざまな表情に驚いたのでした。

聞けば堀江さんは「織る」こと、その行為が大好きなのだと。
けれど、棉糸を使ってその大好きなさまざまな組織を
織りあげていくことが喜びながら、
そのこまやかな仕事、時間のかかることに対する理解が、
使い手から得られるものだろうかというのが、悩みのようでありました。

夏の日本橋三越展。
堀江さんにチャレンジしてもらいました。
組織の布で大ぶりなものを出展してみましょうと。

結果は大成功。
日本橋三越のお客様に、きちんと布の魅力が伝わっていました。
素材の魅力と織りの魅力。
そのどちらもを大切にしている作者ならではの布は、
お客様にも新鮮に映っていたのでした。

堀江さん、背中を押されるようにその結果に励まされて、
「工房からの風」に向けて制作を深めてくださっています。
とはいえ、何分にも数がたくさん織りあげられるものではないのですが、
きっと夏からまた数歩進化した布と出会えそうなのです。

Q
堀江さんにとって「工房からの風」は、どのような風でしょうか?

A
お客さんとしてではなく、出展予定者として過ごした半年間。
「風」に対する認識も大きく変わりました。

この半年、とても幸せで心地よい風に吹かれてきました。
それは手仕事に懸命に携わっている人たちが興す風です。
自分がやっていることに不安を感じながらの日々の中、
このまま進んでもいいんだと優しく背中を押してくれる風でした。

でも、まだ私は風に吹かれている身です。
いずれは私も風を興す側に立てるように、、、
実りある二日間を過ごせたらと思います。

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『まだ私は風に吹かれている身です。
いずれは私も風を興す側に立てるように』

直前のこのタイミングで、
こんな風にメッセージをくださる方ってなかなかいらっしゃらないように思います。
読んだとき、はっとしました。
そうですよね。
ひとりひとりがよき仕事を果たして、その力が循環していく。
そんな機会にしていきたいなぁとあらためて思ったのでした。

Q
堀江さんのお名前、あるいは工房名についての由来、
またはエピソードを教えてくださいますか?

A
「棉の布ここいと」という工房名でも活動しています。
心地、此処で、此処から、愛おしい、営み、糸、、、
制作上、常に頭の隅に置いている断片的なことをひとまとめにした造語です。
また、植物であるワタの布を織る意識で、
糸偏でなく木偏の「棉」という文字を使っています。

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綿ではなくて棉。
はい、堀江さんの出展場所は、棉を植えた花壇の近くにしました!
「工房からの風」の日、まだ棉が弾けているかもしれませんね。
ぜひ布と合わせて楽しんでいただきたいと思います。

堀江悦子さんのサイトはこちらになります。
→ click

written by sanae inagaki