director's voice

加藤キナさん

ご夫婦で革を使ってバッグや小物を制作する加藤キナさん。
(加藤キナ、というお名前がユニット名なのです)
二回目の出展。
前回からぐーーんと制作を深められての進化した展示が見られそうです。

Q1
加藤キナさん、「工房からの風」にはどのような作品を出品しますか?

A1
この数年、夢中になって取り組んで来た、
日本に生息する野生の鹿皮を素材とした作品を出品いたします。

江戸・明治期に制作された日本の袋物に関心を寄せている私たちにとって、
鹿革はとても馴染みの深い革です。
今でこそ、タンニン鞣しやクロム鞣しが日本に導入され、
扱われる革の多くは牛革や豚革になりましたが、
鎧や武具にみられるように、
古来の日本では、鹿革の文化が定着していました。

加藤キナ 工房からの風2017-4

毛がストローのような形状をした鹿毛は、
今も染色の道具として使われており、
しっかりとした毛穴を持つ鹿革は通気性に優れ、
湿度の高い日本には向いている革と言えるかもしれません。
その粘りのあるしなやかさ・軽やかさは、
牛革などとはまた違った魅力を具えています。

日本各地で捕獲駆除の対象にされている背景を持つ素材ですが、
こうして私達が活用することで、
日本の風土に適した用具や服飾品に生まれ変わり、
私たちの生活圏の中で、ごくごく身近なモノであり得たら‥
そのように希い、日々、この愛すべき素材と向き合っています。

加藤キナ 工房からの風2017-2

駆除され廃棄される鹿革を少しでも生かそうと取り組むおふたり。
現場にも足を運び、言葉の上だけではない心からの取り組みには驚かされます。
鹿革での制作が始まってから、一層おふたりのものづくりへの表情が輝きました。
今回の工房からの風では、今の精一杯のお仕事をたっぷり見せていただけそうです。
そう、この白い輪も、鹿の角を細工されて使われているんですよ。

Q2
「工房からの風」への出展が決まった時、どのようなことを思いましたか?

A2
ご恩返しがしたい。
という思いが、心にポンと浮かびました。

2014年に初出展をさせて頂いた時から、
継続してたくさんの経験を重ねさせていただいている「工房からの風」。
なすべき仕事に丁寧に向き合っていくことで、
作家としてだけでなく人間としても、少しずつ成長させて頂いています。

折しも、節目の時を迎えている私たち。
次の段階に踏み出すために、
この数年取り組んで来た仕事の集大成の場にしたい‥
そのように思っています。

加藤キナ 工房からの風2017-3

なんとまあ。。
ありがとうございます。

でも、おふたりの成長は、
出展後に出会えた作家の方々との交流を続けてこられたことも大きいと思います。
今回もぜひよい機会にしてくださいね。

Q3
加藤さんの「工房」のある街の好きなものやところ、
自慢できること大切に思っていることひとつ教えてください。

Q3
2人の意見が気持ちよく一致しました。

それは、自宅から私たちの工房までの通い道。
それぞれに好む道を持ち、夫はあの小径を、
私はその広場を、お気に入りの木々に挨拶をしながら通う道。
たっぷりと時間をかけ、たくさんのヒントを拾いながら歩くその道は、
私たちにとって「哲学の道」ならぬ「思考の道」。

古くからのお百姓さんである大家さんの畑が見える頃、
スゥーと南から乾いた風が運ばれて来て、私の肩を撫でていく。
衣のように感じる風の姿を、私は見、味わいながら歩をすすめる。

東京という地に住みながら、
草花や樹々に恵まれた場所で制作させていただいている喜び。
鳥や虫の音に耳を傾け、空気の中にその季節を知る。

世界から日々感じるものを、
私たちは自分の言葉に置き換え、翻訳し、形へと写してゆく。

その小さなちいさな宇宙の時間を、とても大切に思っています。

加藤キナ 工房からの風2017-5

ささやかなことにこそ、喜びが輝いている。
おふたりの日々の姿が、この丁寧なバッグや革小物の形そのものなんですね。
手仕事の作品ですから、どなたの作品も時間のかかるお仕事ですが、
とくにおふたりの制作は一点一点への比重が重く思います。
それでも十分に準備くださって、見応えたっぷりな構成になることと思います。

加藤キナさんの出展場所は、おりひめ神社の脇。
販売作品のほか、オヴジェの展示もありますので、
ぜひ、ゆっくりご覧ください。

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加藤キナ 工房からの風2017-1