director's voice

岩田圭音(たまね)さん 金属 埼玉

Q1
岩田圭音さんは、工房からの風にどのような作品を出品なさいますか?

A2
凹版画とその原版をブローチに加工した作品を出品いたします。
素材は真鍮と洋白、絵柄は一点ごとに手描きをし、
銅版画の技法と同じ塩化第二鉄による腐蝕エッチングで制作しています。

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Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、
または、道具の写真を1カット撮ってください。そして、その説明をお願いします。

A2
写真は作業をしている所にある明り取りの窓。
どこかの蔵で使われていたという鉄格子が嵌め込んであります。
奥の絵は小山田二郎のドローイング。
一息つく時は、格子のひと枡ごとに違う景色や色を眺めたり、
小山田のドローイングを眺めたりします。

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Q3
岩田さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、
大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
美大の時は油絵科でしたが、銅版画をどうしてもやりたくて、
版画家の作田富幸先生の版画工房へ通った時期がありました。
銅版画を制作し始めて、最初に受けた強い印象は、
エッチングによって絵が刻まれた原版が、とても綺麗だったということです。
黒いインクを詰めて白い紙に擦った作品も、勿論魅力がありますが、
綺麗な原版を眺めるのがとても好きでした。

版画とは別に、たまたま、アンティークのポーセリンブローチを目にする機会があり、
「絵」が装身具になっていることに、とても感動したことがありました。
とても小さな画面に緻密に描かれた女性の肖像画があること、
そして、その絵柄が、いわゆる紋様的なものではなく、
描き込まれた絵画レベルのものであることに、非常に驚かされました。
当時はあまりに感動して、上絵付けを習いに行こうとも思っていたのですが、
版画の原版のことを思いだし、版画の技法を応用して、
真鍮にエッチングで絵を施し、ブローチに仕立ててみたのが始まりです。

銅版画の基本的な技法はそのまま踏襲しつつ、
腐蝕時間や腐蝕の方法を変えたり、凹部分に漆を入れたりして、
金属上でも絵がしっかり見えるように工夫しています。

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とても印象的な岩田圭音さんの作品。
(お名前も印象的ですね。
たまね、さんとおっしゃいます)
その作品の成り立ちが、最後の質問の答えからよく伝わってきますね。

実際の作品を拝見したとき、その繊細さな美しさに見入ってしまいました。
そして、写真よりも実際の作品が、なんというか爽やか?というか、
よい意味ですっきりと感じるのは私だけでしょうか。

ご本人もとてもお話しのしやすい方で、
作品や、お名前のある種の「濃さ」を、
これもまた、よい意味で裏切ってくれるような出会いでした。
もちろん、創作の泉には深く、こんこんと湧き上がるものをお持ちですので、
その泉、あるいは火種について、ゆっくりお話しを交わしてみたくなったのでした。

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岩田圭音さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、手仕事の庭の花壇を背にしたところ。
作品を介して、ぜひお話しなさってみてくださいね。

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