director's voice

山田春美さん(ガラス)

Q
地元市川でガラスの制作をされる山田春美さん。
「工房からの風」にはどのような作品を出品くださいますか?

A
小さなオブジェを中心に器や蓋物など、
日常の片隅に置いてもらえるようなガラスを出品したいと思います。

私はキルンキャストという鋳造技法で制作しているのですが、
この技法では溶けたガラスに直接触れることはありません。
私が制作過程ですることは石膏型をつくりガラスの粒を詰め、
窯の温度を上げてガラスが流れる道筋を準備するだけ。
あとは自然にガラスが型に流れ込みます。

ガラスが形を変えるときに手出しができないせいか、
私はガラスとの間に不思議な距離感を感じます。
でもそれはとても心地いい距離感です。

熱く溶けた姿はみせず、
型肌が焼き付いた表面の質感や内側に浮かぶ気泡に
何となく窯の中での時間を感じさせるガラスは、
何かを知っているけど、
何も言わずに佇んでいるようで静かで心強い存在に思えます。
半透明なカタマリの中に
時間、音、風、匂い、人の記憶みたいなものを
吸い込んで預かってくれるような不思議な存在です。

私が制作したガラスが、
手に取る人にとってもそういう存在になれたらと思いながら制作した作品です。

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Q
山田さんにとって「工房からの風」はどんな風でしょうか?

A
風はいろんな「気配」を伝えてくれるものだと思います。
季節が変わる気配、遠くの天気の気配、
どこかのお家の夕御飯の気配などなど。

工房からの風はそこに集まる作り手の気配を運ぶ風だなと思います。
ものづくりの中には形にならないことの中にも大切なものがあると思います。
作品にかけた時間と手とその他いろいろと。
工房からの風にはそういう形にならない気配のようなものまで伝えてくれる
不思議で素敵な雰囲気があると思います。

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Q
山田さんの初めての「ものづくり」は、なんでしょう?
印象的なもの教えてくださいますか?

A
ものづくりは小さな頃からいつも身近にあったように思います。

祖父と父は畳屋として畳を縫っていましたし、
祖母はお手玉を一緒に作ってお裁縫を教えてくれました。
曽祖母はハギレを使ってリカちゃん人形の用の浴衣やお布団を縫ってくれて、
これはとても可愛くていまでも捨てられずとってあります。
母はいつもおいしい料理を作ってくれましたし、
小学校で6年間使った手提げ袋と上履き袋はお揃いで、
叔母が縫ってくれたものでした。

私のまわりにいる人たちが
手づくりのものがくれる喜びと愛着を教えてくれたと思います。
そして姉は絵も工作も上手で、
いつも描いたり作ったりしながら一緒に遊んでくれました。
花を潰した色水でティッシュを染めたり、
なかなか上手く折れない折り紙を教えてくれたり。
ちょっとしたことがすべて楽しかった記憶があります。
特別な大きな出来事はないけれど、
はじめてを意識することもないくらい日々の遊びの中にものづくりが入り込んで、
楽しいこととして刷り込まれていたように思います。

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山田さん、手仕事に囲まれたとっても幸せな時間を過ごしてこられたのですね。

「何かを知っているけど、何も言わずに佇んでいるようで静かで心強い存在」
って、いいですね。
山田さんが、そういう世界観を大切にして、ものづくりに向かわれていること、
よく伝わってきました。

山田さんが大切に心の真ん中にそよがせている風、
あせらず、大切に育んで、工房からの風の中で気持ちよくふくらむといいですね。
静かだけれど、芯のある作品、木々や光と響きあうように。。。

山田春美さんのブースは、おりひめ神社の正面から右手側。
木立の中にぽっと灯るように小さなテントが立っています。

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