director's voice

空想製本屋

空想製本屋
イメージ広がる工房名で制作を続ける
本間あずささんからのメッセージをご紹介しましょう。

Q1
「工房からの風」にはどのような作品を出品しますか?

A1
生活の中にある工芸としての製本、をお伝えしたいと思っています。

私にとっての製本は、記憶の宝箱を作ることに似ています。
そのままではばらばらになってしまう記憶や思いを集めて、
編んで、本という形の中に収め、
いつでも見て触れて読んで大切にできる形にする
—「記憶を綴じ込める」手製本の魅力を知っていただきたい。
宝箱を覗くように、
本を触って読んで、楽しんでいただけたらと思います。

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・庭の本
季節を綴じ込めた本。
移り行く季節を本にして表現したい。
そう願いながら、庭の草木で紙や糸を染め、
四季の言葉を編み、春夏秋冬の「庭の本」が出来上がりました。

平安時代から近代までの、
季節を詠んだ古い俳句や短歌、詩をテーマを決めて集め、
造本も四季により異なります。
読みながらページを切り開いていく、アンカットという仕様です。
季節をともに過ごす歳時記のように、
手から言葉から、四季を感じていただけたら嬉しいです。

余談になりますが、草木染めを始めたのは5年前、
工房からの風にワークショップで参加した際、
教えていただいたのがきっかけでした。
今回こうして形になった庭の本を、
工房からの風の庭でお見せできることを嬉しく思います。

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・旅の本
土地の記憶を綴じ込めた本。
古い外国の地図やパンフレットを国や地域ごとに編み、
9冊の旅の本が出来上がりました。

昔の紙はデザインや紙質も独特で、
書き込みがあったりするものも。

半世紀近く前に、欧州やアメリカを旅した人たちの記憶が、紙に宿っています。
地図やパンフレットは大きく広げられるように綴じているので、
本を開いて、9つの旅先への紙上旅行を楽しんでいただけたら。

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・古書の仕立て直し
古書が経て来た時間を綴じ込めた本。
価値はあるけれど壊れてしまった古書を、
修理しあらたなデザインで仕立て直した特装本も数冊お持ちします。

紙、革、布、糸…様々な素材を用いてその本の世界を表す、
手製本の醍醐味を感じていただきたいです。

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・紙のおもちゃのような本
紙の手触りを綴じ込めた本。
紙の色や質感、造形を楽しむ紙のおもちゃのような本を作りました。
折り畳んだ三角形の紙を綴じたシンプルなものですが、
四角、台形、平行四辺形、船、家、うさぎ…などなど、
紙を組み替えて変形折り紙のように、色々なかたちに変化します。

紙は身近な素材ですが、最近は大人はもちろん、子どもでさえも、
紙そのものの触感を楽しむ機会が減っているように感じます。
スマホをタップする指先よりも、紙を繰る手指の感覚に、
敏感であって欲しい。そんな思いから、ささやかな本ができました。

本間さん、ご丁寧にご案内をありがとうございます。
手製本の世界もいろいろですが(もっとも、陶芸も、木工も、染織もいろいろですね)
『本と人とのあいだを繋ぐ製本屋』という想いを軸にして、
磨いたセンスと技術を活かしてのものづくりなのだということが伝わってきます。

こういう奥行のある、知の楽しさを叶えてくれるものづくりを
「工房からの風」でご紹介できること、
大きな歓びです!

Q2
「工房からの風」への出展が決まった時、どのようなことを思いましたか?

A2
こんどは風を起こす側になれる!と、とても嬉しい思いでした。
「工房からの風」はお客さんとして通っていた場所でもあり、
いつも制作を刺激し励ましてくれる「追い風」でした。

その人と人、作品を結ぶ場にずっと憧れていましたが、
受注制作の他に自身の作品を作りはじめて、今回初めて出展が叶いました。
空想製本屋は、手製本で本と人とのあいだを繋ぎたいと願い、
仕事をしています。
本と人、人と人の関係性が手製本を通じてより深くなったり、
変わっていく現場に立ち会うのが大きな喜びです。

これまでの受注制作ではお客様との一対一のやりとりが多かったのですが、
より広やかに人と関わる中で作品や制作を育てていきたいと思うようになりました。
工房からの風からもらった様々なよき思いを、
今度は私が作り出し、循環させていくことができれば幸せです。

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励まされ、応援される「追い風」と捉えていただくこともありがたいことですが、
「風を起こす側になれる!」という主体的な気持ちで工房からの風に取り組む
空想製本屋さんの心意気にぐっときます。
こういう循環っていいですよね。

Q3
空想製本屋さんの「工房」のある街の好きなものやところ、
自慢できること大切に思っていることひとつ教えてください。

A3
自宅兼アトリエは、東京の武蔵野市、
武蔵境駅からしばらく歩いた住宅街の中にあります。
都心からそう遠くないのに緑のたくさんあるところが気に入っています。
果樹園では梨やぶどう、柿が実り、直売所のある農家さんもたくさん。
近くの野川公園では川遊びが楽しめ、アトリエの庭ではタヌキを見かけたことも!
また、駅前にあるカフェ併設の図書館や、
国立天文台の絵本の家など、
子どもも大人も読書を満喫できる場所があるのが自慢です。

今回、空想製本屋さんの出展場所は、トキニワカフェのすぐ近く。
DOUBLE=DOUBLE FURNITURE さんの隣です。

空想製本屋さんのアドレスは、honno-aida.com
本 間 
これはまさに、本間あずささんならではのお仕事なのだわーと
膝を打ちました。
そのホームページをご覧いただくと、空想製本屋さんの想いや、
世界観にぐんと近づけられることと思います
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