director's voice

中本純也さん・陶芸・和歌山

最後のご紹介となってしまいました。
中本純也さん。

実は純也さんはpcを使わない。
携帯も持たない。
お風呂は五右衛門風呂。

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2001年、第一回の工房からの風に応募してくださったのが、
中本さんとの出会いです。
それから11年。
はがき、てがみ、で、ゆるやかにやりとりを続けさせていただいています。
(純也さんと夫人の理詠さんのこと、拙著『手しごとを結ぶ庭』で綴らせていただきました)

当時はメールを持っていない人も多かったし、携帯を持っていない人も、
いました、いました。
けれど、今回、メールで連絡が取れない作家は純也さんだけになりました。

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Facebookもはじめましたし、こうしてwebを通しての発信も、
『工房からの風』は力を注いでいます。
かなり、がんばっているかも。
けれど、それが、すべてではないんですね。
それはあくまでの情報のツールにしか過ぎないもの。
げんに、実際の作品よりも、webなどの宣伝力で人気作家になっている人だっているかもしれない。
知るきっかけではあっても、心をコントロールされたくないって思います。
そう、発信している私の発言だって、それはひとつの発信にしかすぎないのです。

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そして、一番変わっていないような中本純也さんが、実は一番変化していました。
南蛮焼き締め一本でやっていたひとが、今年から白磁へと。
一心に打ち込んでいた南蛮焼き締めから、どのような思いを経て白磁へと
制作を変えていかれたのでしょう。
それは、ぜひ、実際の作品を見て、触れて、感じていただけたら、と思います。

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そう、五右衛門風呂の純也さんとか、書いてしまったので、
作務衣を着て、ヒゲ面の気難しい陶芸家、と思わないでくださいね。
(そんな人って、いるのかな?)
たぶん、ジーンズに無地のTシャツで、すらりとした身体を恥ずかしそうに
手持ちぶたさで立っている青年(ではないけれど、そう見える)が、純也さんです。

純也さんの白磁と出合えるのは、おりひめ神社脇、
お稲荷さんの奥。
木漏れ日、白い器に光が揺れるでしょうか。