director's voice

石井宏治さん(木工)

Q1
今回の出展作家の中で、一番近くに工房を持つ石井宏治さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
千葉県市川市で木彫にてスプーン、皿、ボウルなどの器を制作しています。
木理の細やかな材を用いて、彫刻刀や鉋などの刃物による手削りで仕上げています。
削りの仕事が好きですし、木部が返すひかりに心を惹かれます。

無垢の木の質感や表情、経年変化が楽しめるように着色などはせずにオイルフィニッシュで仕上げています。
塗膜のない自然な質感は多少の取り扱いに気を遣うものですが、生活の中で木の素材が感じられ親しみやすいと思っています。

制作しているものは使いやすいように。
人の暮らしの傍にあるいいかたちを考えながら、素材と道具の理にかなったものづくりを目指しています。

本展の出品ではアメリカンチェリー材と北海道産のくるみ材・山桜材を主に用いて制作します。
落ち着いた木理で手取りが軽いくるみの木皿。
色艶の良い山桜から素朴なかたちの匙。緻密なチェリー材にてスプーン、フォーク、バターナイフなど。
リム皿とボウルはひとつひとつ個体差を活かして作ることを心がけました。
お手にとってみていただけたら嬉しいです。

Q2
石井さんが、工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
彫刻刀です。
木の器のおおらかさを表現したく彫刻刀で彫り仕上げています。
彫刻刀は徐々に買い足しており、通販でも手に入りますが、やはり老舗の刃物屋さんへ出向き、お話伺いながら選ぶことは勉強になり有り難いことです。
東京の鍛冶屋さんのものと伺いましたがもう高齢でやめてしまったと聞きました。
大切な道具です。

Q3
石井さんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
フランスアンティークのビストログラス。
当時の庶民的なビストロで普通に使われていたといわれるグラス。
ビアタンにステムがついたようなシンプルなかたち。
使いやすく頑丈、これ以上も以下もないような説得力を感じます。
おおまかなバランスのなかで張りや揺らぎがあり、淀みない動きから作られる身体性のある手仕事が好ましく、良い時もそうでない時もいつも愛用しています。

工房からの風には毎回のように来場くださっていたという石井さん。
満を持して、今回は出展作家として、会場にやって来られます。

『使いやすく頑丈、これ以上も以下もないような説得力を感じます。』
というアンティークグラスに心惹かれる石井さん。
自ら作る木の器にも、静かな説得力のあるかたちを求めているように思います。

寄せてくださった文章も読みやすく淡々としながらも、想いの通った言葉が綴られていて、そのことも作品の姿に通じていて。
想いとその先にある姿が一致していることは、作り手として確かな仕事なのだと思います。

奇をてらわず、けれどシンプルという一言では済まされない心がうれしくなる器。
コルトン広場、モニュメント周りのテントで、ぜひ出会ってみてください。

石井宏治さんのホームページはこちらです。
→ click