director's voice

鴫原利夫さん 手製本 千葉

今回は、一般的に工芸のジャンルでとらえられているもの以外の作り手
の方々も多く出展いただきました。

Q
鴫原さんは、「工房からの風」に、どのような作品を出品くださいますか?

A
糸かがりによる手製本です。
工芸製本というよりは、もっと日常的なものをご案内します。

文庫本の半分サイズの「はん・ぶんこ」の本やノートを中心に、
洋古書をミニチュア化した豆本、文庫本サイズのノート等を準備しています。

背表紙がなく糸でかがっただけのシンプルな造本ですが、
使い勝手と使い心地を追求した結果たどり着いたカタチです。

機械で作られた本に対する「不満」から手製本を始めたので、
「こうでなければならない」という視点よりも、
「こうであっても良いのではないか?」という発
想がもとになっています。

製本、ルリユール、ということで選考させていただいたつもりだったのですが、
私が思っていたそれとは違っていたことに気づいて、
正直にお書きすれば、たぶん、お互い想いのすりあわせにぎくしゃくしたように思います。

でも、それは決して不毛なことではなくて、そのことを通して、
鴫原さんはご自身のお仕事を見つめられたことでしょうし、
私も自身が想うものづくりのことを、あらためて確かにできたように思います。

鴫原さんが綴じる「はん・ぶんこ」のアイデアから、
今回の出展者有志による「手の本」が生まれたことが、何よりの実りでした。
これについては、あらためて別のエントリーでご紹介いたしますね。

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Q
出展が決まってから、ご自身やお仕事などに変化はありましたでしょうか?

A
技術的にはさほど変化が無いというか、
いまでも満足なモノがなかなかできないのが悩みです。

「作品を売る」ことよりも
「本を作ること」を案内したいなと考えていました。
製本そのものは裏方的な仕事なので、作品としておもてに出すよりは、
カタチにする手伝いのほうが「しごと」として意味があるのかな、と。
それが一つのカタチになったのは大きな収穫でした。

あとは「プロ」を意識するようになったこと。
以前は語学のプロの端くれだった(完全に過去形)のですが、
手仕事のプロ、書物のプロでありたいなと、時間はかかるだろうけど・・・

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Q
好きな言葉、座右の銘、何気なく工房の壁に貼りとめているフレーズなど、
鴫原さんが 大切にしている言葉を教えてください。

A
Mon livre rien qu’à moi.
いせひでこさんの絵本『ルリユールおじさん』にあるフレーズです。
ポストカードを書棚に飾っています。
「わたしだけの本」のフランス語訳です。

もうひとつ、「天衣無縫」の書です。
8月の三越展のとき、予告ブログで気になって、どうしても欲しくなり
初日に駆けつけて求めたもの。
「工房からの風」つながりで素敵な作品に出会えました。

2011年に出展くださったデザイン書家の国分佳代さんの書ですね!
出展年度が違っても、こうして交流していただけることが、
「工房からの風」を続けてきた喜びのひとつです。

鴫原利夫さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜の東側。
花壇のほとりの小さなテントです。

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