director's voice

色葉工房さん(染織)

おりひめ神社の脇で、色糸奏でる作品群を展示くださっていた色葉工房さん。
仙台の庄子葉子さんからいただいたメールの一部をご紹介します。
まじめ!な文章ですけれど、ちょっとくすっとさせてくださいます。

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無事に仙台へ戻りました。
ここ数日は、風の余韻の中で ただただ静かに 荷物と心の整理をしています。

何からお伝えしたらよいやら…
とにかく感謝の気持ちでいっぱいです。

会場に流れる風と あたたかな光を
たくさんの方と共有できたこと、本当に嬉しく思います。
気がつけば、「私、しあわせです。」と 何度も同じ言葉を口にしていました。

あまりにもいいお天気に恵まれて
木漏れ日も みんなの表情も あの日と同じようにキラキラ輝いて、
心地よく爽やかな空気で会場全体が満ちていて。

初めて工房からの風を見に訪れた日も、こんな晴天の日でした。
いつか私も作り手としてこの場所に立ってみたいと
おりひめ神社の前で あの時 芽生えた気持ち
ずっと心の中で想い描いてきたことが 
今、ここで こうして実っている。
願いは本当に叶うんだね。
生きていてよかったね。
もう一人の自分に そう言いながら過ごした 夢のような2日間でした。

たくさんのお客様から あたたかい言葉をかけていただきました。
半年間 同じ時間を過ごした出展者の方々との繋がり、たからものです。

・・・
   ・・・

チャリティーでコースターを手にしたお客様もブースを訪ねてくださいました。
震災後、工房のそばに建った仮設住宅で織物のボランティアを始め
毎月細々と4年半続けてきた活動を
今年3月で終了する事に決めた直後に
工房からの風の選考通知を受け取ったことを思い出しました。
あー、これからは、その分の時間とエネルギーを
自分のために使っていいんだと思えたこと。
そして自分のためにと歩みを進めたその先で
こうしてまた 見ず知らずの方々が
東北に九州に想いを馳せてくださっている姿に触れることができました。

すべてが今に繋がっていたんですね。

それもこれも
稲垣さんが長い時間と愛情をかけて育んでこられた
ふっかふかの土があったから、このタイミングで実った想いや
結ばれたご縁。
その土の上で、これまでの自分と これからの自分を
しっかりと繋ぐ 結び目となるような経験をさせていただきました。

そして、
工房に戻ってから気がついたことが 一つあります。

自分に足りないものって何だろう。
自分にできることは、何でもやってみよう。
あれもこれもと想いばかりが先に立ち、いつも少し前のめりで
作品のボリュームが多くなってしまう割に
これまでなかなか納得のいく展示ができずにいたのですが、
その原因が やっとわかりました!
今の私に必要なのは、「間引き」だったのだと思います。
ワサワサと茂った葉をそのままにせず、
適度に間引いて風通しよく
光や水や養分が 必要な所へちゃんと届くように
よりよい成長へつなげていくための作業。

稲垣さんの言葉の中で、とくに強く心に残っているのが
「自分の庭を丹精すること」
きっとそのことにも通じているかなと思います。

昨夜の食卓に
いつもと変わらぬシンプルな野菜料理が並ぶ中、
ひときわ輝く一皿があって、
「これ、何の葉っぱ?」と家族に問いました。
返ってきた答えは、
「間引いた大根。」
おもわずニヤリ(笑)。
間引かれた葉も 無駄ではないみたいです。

本当に大切なものは、そう多くなかったのかもしれません。
ようやく少し肩の力が抜けた気がしました。

半年間、かけがえのない出逢いと経験させていただき、
本当にありがとうございました。

色葉工房 庄子葉子

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自分に足りないものって、なんだろう?
それを「間引き」と気づかれた庄子葉子さんのすばらしさ。

これから、ニッケ鎮守の杜で間引いた草!を
色葉工房さんへお送りして、ぜひ糸を染めていただこうと思っています。
その糸で織り上げられた布、引き続きご紹介させていただけますように。

色葉工房さんの出展前のメッセージはこちらです。
→ click

text sanae inagaki