director's voice

col tempoさんより

おはようございます。
今朝は雨の朝。
私の方は、少しずつ日常に戻りつつも、風の余韻にずっと浸っております。

昨年末、選考通知を受け取ったときから
ずっと工房からの風に想いを馳せていました。

初めての全体ミーティングでいただいた多くの大切な言葉たち。

香田佳子さんの「工房からの風は言葉を大切にする会です」
大野七実さんの「つくるだけでなく、心を耕す時間を」
稲垣さんの「比べない、いじけない、ケチにならない」

途中、稲垣さんからの電話でいただいた言葉、
「自分の尊いと思うことをやって!」

この言葉たちをずっと心に留めていました。

そして個人ミーティングでは、
作品のことよりも、私が悩んでいた
育児家事と制作のバランスについて、多くのアドバイスをいただいたように思います。
この当時の私は、子どもがいること、
制作が1番の生活にできない自分の置かれた状況が嫌でした。
他のご夫妻の作家方々の経験されてきた過程を教えていただき、
前を向くきっかけになった気がしています。
心持ちを明るくしたら、ずっと待機していた保育所に入れると市から連絡があり、
そのタイミングに驚きました。

晩春から初秋にかけて、心を耕す時間を、
本を読んだり家族とのひとときを大切にして過ごしていたら、
自分の手から生まれるものが確かに佳い変化をしているのを感じました。
そして、日々の暮らしの中に、ものをつくることがある幸せを感じることができるようになっていました。

直前までふわふわと、幸せだなぁと感じながら制作をしていました。
そして稲垣さんがブログに書いてくださった言葉、
「やりきった晴れ晴れとした表情で、みなさまを迎えてくださることでしょう」
私もそう信じて疑いませんでした。

ですが、直前に起こった台風での甚大な被害。
気持ちが、心が、とまってしまいました。
親しい人に被害はなかったのだけれど、
あまりにも大きな被害に心が大きくゆらぎ、そこから手もとまってしまいました。
本当は、出展の直前は作品と想いを伝えることに注力しようと準備していたのです。
でもうまく言葉にできず、自分のしていることを声高に伝えることが苦しくも感じ、言葉にだすことができませんでした。

そしてその混沌とした気持ちのまま千葉へ向かいました。
道中、主人にその混沌とした想いを打ち明けて少し心が軽くなり、
そしてお庭で稲垣さんや風人の方々、そして出展者のみなさんと久しぶりに顔をあわせて、そして少し言葉を交わして、、

あぁ、ここに無事こうしてみんなで集えているんだ。

その実感が湧いてきて、いつのまにか元気に、心が軽くなっていました。
前日搬入を終えたあとは、もう本番を迎えるのが楽しみで楽しみで!

そして迎えた土曜日の朝。
雨なのはわかっていたので、さほど気にせず搬入に向かいましたが、
お庭について目を疑いました。

稲垣さんや風人さんや初めてお顔を拝見するみなさんまで
必死に水をなんとかしてくださっていた姿をずっと横で気になりながら、
自分の作業をすすめていました。

しばらくして、一気に水がひいていったときには、感動しました!
そのあとも残った水を丁寧に最後まで取り除いてくださって、
稲垣さんや風人さんのお顔をみるとみんなびしょびしょで、、、
このあと自分のブースの担当やそれぞれのお仕事の本番前なのに、
水浸しになるのも構わず懸命に動いてくださっているその姿をみて、
私にそんなことができるだろうか、なんて強い人たちなのだろうと。

開いてみると、ほんとにあっと言う間。
これほどまで自分のブースを離れられないことは初めてでした。
離れてもいいと思わせない、見てくださる方の真剣な姿勢。
話をすると、つぎつぎに質問が返ってくる。
私の想いを真剣に受けとめて聞いてくださる。
なんて、温かいのだろう。
心が震えっぱなしでした。

いつもは椅子に座ってぼぉっとしている主人も、
今回は一度も座らず、ずっと接客をしてくれていて私も驚きました。
後でそのことを聞いてみたら、
「みんな説明をしっかり聞きたがっていたから」と。
来場者の方々の真剣な姿勢が、私たちの側にもとても佳い影響を与えていて、
集っているひとが真剣な想いを伝えあって互いに響き合う。
なんて稀有な場なのだろう。

火がテーマの今展、
鈴木さんのロウソクに火を灯してみて、
その色をイメージして染めた「火の色」を制作していました。

炎のゆらぎをもとに、ベースに黄色を、
その上からオレンジをまだらに染めて仕上げた火の色、
私のお気に入りでしたので鈴木さんのロウソクとともに
1番前にディスプレイしていました。
この火の色のコインケースを手にとってお選びいただいた方が

「これに元気をもらって、またがんばります!
元気のでる色よね!」

そうおっしゃってくださる方がいて、
はっと思って尋ねてみました。

やはり、
先の台風でご実家に大きな被害があったことを
目を潤ませながらお話してくださいました。

素敵なものをみに出かけて元気をだそう!と思って
足を運んでくださっていたことも。

私の手から生まれたものに、
元気や勇気や幸せを感じてくださる方が本当にいて
その想いを伝えてくださる、
なんて、なんて、ことなのだろう。と。

ものの力を信じることができた瞬間でした。

17回目。
稲垣さんをはじめとするスタッフの方々、
先の作り手の方々、ご来場くださる使い手の方々、
たくさんの人の想いが積み重なって熟成されてきたあの場所に立たせてもらえたこと、
とても有り難く、財産となる経験をさせていただきました。

こんなにもいろんな人の想いが重なって1つになる場所。
温かくて、尊い空間。

とっても長文になってしまいました。
ただまだまだお話したいことがたくさん。
どれだけ書いてもきりがないほど湧き上がってくるので、このあたりでひとまず、、。

稲垣さんと出逢えたこと、
風人さんたち、同期の出展者の方々と出逢えたこと、
私の一生の財産となりました!
そして、とっても幸せな日々を過ごすことができました!
私、火の回でよかった!!

心からの感謝を込めて。

土居 祥子

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フィレンツェで出会った革工芸に惚れ込んで、学び、制作発表を始められた土居さん。
熱く!長く!丁寧なメールをくださいました。

選考結果を受け取ってから、出展、そして帰宅してからの想いを走馬灯のように綴ってくださいました。

ケチにならない。
って、言いましたね―。
やると決めたら、惜しみなくやりましょう。
惜しみなくやってみてこそ、今見えていない何かが見えるはず。
そんなことを、今までの出展作家の何人かの姿から学んできました。
土居さんも、まさにその殿堂入り!
真剣、こそ楽しい。
土居さんのものづくりの手の技術も、心の土台も、
この経験を通してどれほど進化、強化されたことでしょう。

同じ会に出展しても、50人ならば50人の感想があります。
それが健全、自然。
その中で、思いっきり取り組んだ人には、思いっきり何かが返ってきているのだと思っています。

土居さん、風人になりたいって申し出てくださいました。
風人さんは、近隣の作家の方でお願いしていますので、
今の風人さんと同じような役割ではお願いできないのですが、
近隣ではない、この場に想いを寄せてくださる方々の
まさにその想いや力を結ぶような仕組みを考えてみたいと思いました。

土居さん、メッセージをお寄せくださり、掲載の許可をありがとうございました。
col tempoさんの出展前のメッセージはこちらです。
→ click

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先ほど、手の技術も、心の土台も、と書いて気づいたのですが、
きっと、今展の前だったら、心の種火、とかいていたような気が・・・。
土台。
木火土金水、すでに火から土へと向かっている??
我ながら、ちょっと驚きました。

今年は、種火、灯す・・・が会の底流にある言葉でした。
来年は、土台、耕す・・・を想いながら、企画を進めましょう。

はい、いよいよ、一次募集が12月1日から始まります。
→ click

土台を見直し、大切に。そして、その土台を耕すような出展経験をぜひに。
耕すとは、土に風を送ること。
工房からの風、をぜひ制作の進化成長に活用ください。

火の次の土の年、私たちは、何を耕し、その先に何を見るのでしょう。
まだまだご紹介したいメッセージがたくさんあるのですが、
「凪ぐ浜の宝もの」、そろそろこの辺で閉じましょう。
10月も終わりますものね。

11月。
さっそく2日、3日、4日の3連休には、
galleryらふとで、風人さんたちによる企画展
「風のクリスマス」を開催します。

Anima uni|金属
大野七実|陶
CHIAKI KAWASAKI|金属
ナカヤマサトシ|木とドライフラワー
森 友見子|再生紙

2日は、出展作家5名、3日は川崎さん、
ひょっこり七実さんなどは、2日以外にも在館くださる予定です。

稲垣は3日の午後以外は在館しています。
秋のお庭で、風のクリスマスを一足早く感じながら、
これからのことをお話ししましょう!

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