director's voice

Anima uni(装身具)

2012年の初出展ののち、毎年風人として「工房からの風」を支えてっくださったAnima uniの長野麻紀子さん。
今年は10年ぶりに出展作家として参加くださいます。
10年間で制作活動をうんと広げ、飛躍されてきました。
その独自な世界観は、高まった技術をもって自在に表現され、かたちとなって「工房からの風」にやってきます。

Q1
Anima uniさんは、工房からの風に、どのような作品を出品されますか?

A1
ふっと原点に立ちかえってみたくなったのでしょうか。
なにやらよくわからない力に突き動かされ、10年ぶり2回目の出展です。

はじめての時は、スペイン階段下のテントで緊張した面持ちで佇んでいたら、
あれよあれよという間に終わっていた2日間でしたが、
あれから、わずかでも進化できているのでしょうか。

迷いながら、立ちどまりそうになりながら
揺れて、揺らいで
それでもわたしを内側からつきうごかすなにか。
たましいがふるえるからつくる、つくらずにはいられない、
そういうのだけを掬いとって集めたのなら。

作品があるひとつの形態をなしてから、また変奏曲のように刻一刻と変わりゆき
あたらしい和音が謐けさのうちにたちのぼる。
そんな印象の今回の作品群では、庭のシリーズが深化して
四季折々、とりわけこっくりと秋の実りの季節が展開されます。
エルダーには深紫のベリーがたわわに実り、豊穣を唄います。

またずっと作りたかった<ふれる ear cuff>が完成して、
お披露目いたします。
研ぎ澄まされたバランス感覚から生まれてくる色石の作品。

はじめること、つづけていくこと、おわりを告げること、
どこの地点においてもたいへんで、愛おしい日々なのでしょうか。
それぞれの日々に祝福あらんことを願いつつ。

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Q2
Anima uniさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
彫金机

身長、腕の長さ、てのひらの大きさ、
細部に渡る隅々までわたしの身体と動きに合わせ、フルオーダーで作っていただいたもの。
使い手にとことん寄り添ってくださるアトリエ倭さんのすばらしいお仕事です。
動くわたしをフレーミングしている、という視点から考えると、
先の倭さんの個展でのオーダーフレームと相通じるものがあるような気が多分にいたします。

眼前の大きな硝子窓のむこう、エルダーの木がサワサワと梢を揺らし、
小鳥たちがピチチチとのぞきこんでいきます。
明るい陽光がしずかに射し込んで、白い机と壁面をちろちろきらめかせるなか作業する
冬のあさが一等好きな情景です。

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Q3
Anima uniさんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3

◯絶賛愛用中

松塚裕子さんの珈琲カップ&ソーサー
朝から晩まで。もう365日手放せません。苔むした竹っぽいから、竹苔カップと勝手に命名。
なんでしょう、この吸いつくような手触り。これで飲む珈琲の美味しいこと。

◯宝物

佐藤亜紀さんからいただいた茜と藍染の糸巻き
これは神棚風に作業場の上の方にしつらえてあって、いつでも彫金作業を見守ってくれているのです。

下地康子さんからいただいた草木染めの糸一式
織の際に出る端っこだそうで、あまりに美しくて言葉を失う色糸。
後生大事にしまってありますが、いつか作品に使わせていただく時がくるかもしれません。
恐れ多いことですが。

武井春香さんの藍甕で染めていただいた真珠
あらたに加わった宝物。なんとも愉快な思い出と共に、この青い真珠を眺めることでしょう。

大野八生さんの落書きのうちのネコ
八生さんからの小包とか紙袋には落書きがしてあるので、もう絶対に捨てられません。

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2012年には、工藝作家のつながりをあまり持っていなかったというAnima uniさん。
この10年豊かに工藝作家とのつながりを育まれて、制作と日々の暮らしの両輪が豊かになられた一端を感じられるメッセージを寄せていただきました。

Anima uniさんの出展場所は、おりひめ神社の奥。
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