director's voice

石井宏治さんから

コルトン広場、モニュメント周りのテントで木工作品を展示していた石井宏治さんからのメールを一部お伝えします。
ちょっと、長いですけれど!文章は息遣いですので、センテンスはそのままにお届けしますね。

日曜日の終了後は周りの方々の助けもあり、無事搬出し帰路に着くことができました。
仕事場を片付けたり、気持ちの整理もしつつまだまとまらない心境ではありますが、
お礼と今日に至るまでの自身の感想をお伝えさせていただきます。

近くに住んでいることもあり、ニッケコルトンプラザには幼少期から馴染みがありました。
ものづくりを志したころから「工房からの風」の存在を知り、かれこれ10年以上毎年楽しみに伺っておりました。
各分野で活躍されている好きな作家さん方がこれまで出展されたきたことや、尊敬する方から「工房からの風」の出展が契機になったと教えていただくことがあり、自分にとって一つの目標でした。

今年になり、ようやく自分の制作環境が整ってきたことと、
制作の幅をより広げて自由に作りたい意欲、
作品を見ていただける機会が欲しいといった気持ちが重なり挑戦しようと思いました。

応募用紙に向かうものの、シンプルな問いかけに対する自分の答えを出すのは簡単なことではなく、作品写真の用意も含めて期日のギリギリまで取り掛かり速達で応募したのを覚えています。

自分で振り返っても支離滅裂な内容になってしまったと意気消沈していたのですが、
封筒が届き、恐々開封すると参加できるということで、本当にその時は光が差し込んできたようなひとつ道が開けたような喜びがありました。

それと同時にここで自分はやるぞ!という前向きな気持ちと同時についに出られることの重圧も感じました。

5月に最初のミーティングがあり、まだ先のことと思っていた10月の開催に対して意識が変わり、今のうちにやり始めないといけないという気持ちになったことと、その日のお話しでの気付きは大きかったです。
特に、自分の真ん中の仕事をするというお話しは今でもとても響いています。
また他の出展者の方々や風人さんとの出会いから学び得るものも多いということを知りました。

夏にしていただいた個人ミーティングでは作家として立つことについてご教示いただき、
作家性ということに深く悩みながらも一つでも自分らしいものを作りたいと思い制作を続けました。

出展に向けての制作をはじめてからこれまでに経験がないほどに数を作りました。
定番化していきたいものは常々ブラッシュアップしつつ、挑戦したいものをひとつひとつかたちにしていくという最中に、自分は作るほどに見えてくることがある状態であることをはっきりと認識しました。

失敗したとしても何かしら自分に返ってくると思えてそれまでに手を出せなかったことに取り組むことができました。
不思議と皿で得た感覚がスプーンに活きてきたりといったような制作に良い循環ができたことは初めての経験でした。

出展も近づいたころはブログへの寄稿もはじまり、文章と写真で自分が表現する機会ができました。
慣れないことで難しかったのですが、限定ブログで事前に取り組んでいたおかげもあり期日が迫る中でも前向きに取り組めましたし、ブログで頂いたコメントがとても励みになりました。

これまでSNSで発信することに苦手意識があったのですが、集中して制作に取り組む時間を取れたことからもっと発信していきたい気持ちになり、やってみると見てくれている人の存在がまた励みとなり、より良いものを作ろうという意識になるといったとても良い循環が自分の中にできました。

始まると、よく見ていただけるお客様が多くて、購入していただく方で何度も立ち寄ってはじっくり見てという方が多くいらっしゃいました。
そういう方とのやりとりや、お持ち帰りいただけることはとても嬉しかったです。

自分の中にできた良い循環が表に出せたら良いなと思っていたのですが、むしろお客様含めてスタッフの方々、風人さんの方々からどんどん良い循環をいただいているような感覚でした。

出展を終えた今の実感では、何かが確実に自分の中で変わったようで長年凝り固まっていたものが解きほぐされたような感じを覚えます。
工房からの風当日はもちろん、周りの方々の生き生きとした様子のおかげだと思います。

お庭が素敵なことはわかっていたつもりでしたが、庭人さんからの草花や実は展示をとても豊かにしてくれましたし、持ち帰らせていただいてから生活に潤いがあって、具象としてこれまでの実りがここにあるような嬉しい気持ちです。

いただいた良い循環が絶えないようにこれから活動できたらと思っています。
長く続いている工房からの風の営みに参加でき、より知れたことが嬉しく、感謝しています。
大変お世話になり、ありがとうございました。

石井宏治

長く綴ってくださったのは、時の流れのままに、石井さんご自身の心の軌跡を伝えたいと思ってくださったからだと思います。

出展作家の中には、共感される方、多いのではないでしょうか。
また、お客様からすると、「こんな風な時をたどって、あの場所に立つ作家さんもいるんだなぁー」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

『 自分の中にできた良い循環が表に出せたら良いなと思っていたのですが、むしろお客様含めてスタッフの方々、風人さんの方々からどんどん良い循環をいただいているような感覚でした。』

『 出展を終えた今の実感では、何かが確実に自分の中で変わったようで長年凝り固まっていたものが解きほぐされたような感じを覚えます。
工房からの風当日はもちろん、周りの方々の生き生きとした様子のおかげだと思います。』

よきものの循環。
つくり手同士はもちろん、お客様も交えての。
そんな場と時でありたいと願っています。

石井さんの出展前のメッセージはこちらです。
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