director's voice

その後の凪ぐ浜の宝もの

今日はニッケ鎮守の杜にも木枯らしが吹きました。
「工房からの風」から、早3週間強。
なんだかもう遠い昔のような気さえします。

工房からの風が終わった後、
メールやお手紙を出展作家の方々からいただきます。
早々に、「無事、工房に戻りました!」というご報告や、
落ち着いてご自身の心と向かい合うことで紡がれた言葉など。

今年は特に長い文章をたくさんいただきました。
それは、私を対象に書かれているものでありながら、
何よりご自身に向かって書かれた言葉なのだと思います。
文章にするために心に反芻させた想い、
まとめられたこと、まとめられなかったこと。
どれもが、これからの制作の養分、宝物になることと思います。

その一部を、皆さんと共有しようと、
凪ぐ浜の宝もの
として、この場で綴って、先日一区切りをしました。

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例年、「工房からの風」が終わってから、まったく連絡をくださらない方が
そうですね、5名くらいでしょうか、いらっしゃいます。

割とぼんやりとされていて、あんまり気を使わない方?
もいるのかもしれませんが、
たぶん、悔しい想いをされたのだろうな、
納得いかない気持ちなのだろうな、
と思いあたるような方もいらっしゃいます。

納得のいかない気持ちがあるとしたら、それは仕方のないことですが、
結果の中の原因、理由に気づかれて、
ぜひ次によい形で反映させていただきたいと願っています。

この経験からほんとうの実りに向けたものを見つけてほしいと。

そんな中、1通のメールが届きました。
連絡がなかった方から。

転載の許可をいただきましたので、
ここから皆さんにお伝えしますね。

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工房からの風を終え3週間。
終わった直後は なんだか言葉が出て来ず
思考が停止した状態になっていました。

帰りの車の中で声を殺しながら
涙しました。
半年間 必死になれた事や
工房からの風への思い。
色んな感情が入り混じった涙でした。
言葉にするのも難しく
静かに心落ち着くまで待ってみようと。

時が流れ3週間が経ち。
こんな時間が経ってしまったのに
ご迷惑かな。と思いながら
止まっていた風が、緩やかに吹き始め
言葉が溢れて来たので失礼ながら
メールしました。

作家を始めて
こんなに考え、必死に自分の作品と向かい合えた事は初めてでした。
正直、当日の結果はショックでした。
まだまだ自分の力不足を痛感した2日間でした。
必死にやって来たからこそ悔しや学びはそこにはありました。
だからこそ見えた世界は、未来へ繋がる大きな一歩なんだと強く思いました。

この様な体験や経験のご縁を頂き
本当に感謝しています。

緩やかに吹き始めた風は
優しく温かいものです。

これからも、この風を見失わない様、
自分自身を見つめながら
邁進したいと思っています。

本当にありがとうございました。
心を込めて。

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誰とは書かないことにしますね。
そして、よく送ってくださいました、メールを。
ありがとうございます。

当日、ご本人が思ったような結果が出なかったのだと思います。
それでも、搬出の日、しみじみお礼を言ってくださって帰られこと、覚えています。
その帰り道で、涙を流していらしたとは。

そして、涙の訳を何かや誰かに転嫁するのではなく、
心を澄ませて自身を見つめなおす。

もう、このことだけで、この作家は、「工房からの風」で、
どれほどの宝ものを見つけられたことでしょう。
まさに、凪いだ浜を丁寧にコーミングして(くしけずって)、
何よりの輝きを見つけられたのですね。
その作家の心の軌跡を想うと、胸の奥が熱くなって困ってしまいました。

真剣に取り組んだことを発露させる場であること。
これからの「工房からの風」は、一層そのような場でありたいと思います。
そして、真剣に向かいあう中で知り合えた作家同士、その関係性が、
これからの出展作家の財産になるのだから、
ますますよき出展作家が集う場にしていきたい。
そう、想いをあらたにしたのでした。

2017年、第15回「工房からの風」への出展者募集、
間もなく始まります。
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