director's voice

五行テント「火」

五行テントを担当くださったのが、
陶芸の大野七実さん、木工の岡林厚志さん、箒の吉田慎司さん。
吉田慎司さんからレポートをいただきました。

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五行テント「火を巡るものづくりの旅」

・五行テントについて

五行テントでは、工房からの風16回展から20回展に向けて五行「木火土金水」をテーマに構成していきます。
昨年は「木(一草一木)」今年は「火」がモチーフでした。

工芸の内側をより深く理解して戴くために手仕事の素材や背景をご紹介する事が目的です。
今年は、大野七実・岡林厚志(hyakka)・吉田慎司(中津箒)、三人の風人が企画・構成しました。

・「火」をどう考えるか。「心の火」

「木火土金水」は、木が火を生み、灰が土を育み、土から金属が生まれ、金の表に水が生まれる…
という森羅万象が支え合って世界が循環している、というような考えを手仕事と重ね合わせる企画ですが、
今年の「火」は、「素材」ではなく「反応」、化学現象という事が課題でした。

ただ、火の在り方に自然の理を感じ、作り手が共鳴する事には変わりがありません。

「継火」と言われるように、誰かが火を受け継ぎ守りながら、何十年、何百年と営みは続いていく。
新たな風と燃料によって少しずつ、対話をしながら「種火」を育み、生きている火を大きくしていく。

そんな風人同士の対話の中で、話は抽象性を高めていきました。
作家の「心の火」に触れ、ご来場の皆様と共有するにはどうしたらいいか。
そこで、作家さんの工房を訪れ、取材をする事になりました。

お訪ねしたのは、ろうそくの作家の鈴木有紀子さん。
鈴木さんは、ウィンドウディスプレイで見た…などの些細なきっかけから、ひたすらに自ら考え、創作し、道を拓いてきた作家さんです。
溶け方、透け方、形、実験室のようなアトリエで、日々試行錯誤を繰り返しています。

工房からの風当日は、三人+鈴木さんの対話の中で、印象に残ったエピソードをまとめ、パネル展示しました。
そこには、多くの作り手に響く、手仕事のエッセンスが凝縮されていました。

文・ 吉田慎司
写真・岡林厚志

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五行をテーマに五年間、という提案をしましたが、
こうして我がこととして引き取って、私の想像以上に取り組んでくれた3人。
その3人の取り組みから、多くの人へ手渡ったものがありました。
まさに、「火を継ぐ」営みだったのではないでしょうか。
吉田慎司さんからは、合わせて、感想、メッセージもいただきました。
私信でしたが、許可をいただきましたので、
以下に一部を転載させていただきますね。

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今回も、誠にありがとうございました。

例年に増して、すごく得るものの多い二日間だったように思います。

初日は生憎の天候。
初めての作家さん、はるばる来た作家さん、気持ちの落ちてしまう方がいないか…?
残念がっている方がいないか…?
という事が何より心配だったのですが、神社の周りや庭には誰1人として、
下を向いている人はいなかったように思います。
工房からの風への思いが、作家さん、コルトンの皆さんにまで
深く伝わっている事に既に感動していました。

今年もこの場所があるんだ…!と、
水たまりを歩きながら、強く噛みしめていました。

オープンの瞬間には晴れて、祝福されているような気持ちでしたね。

更に二日目は、レイアウトを大きく変えて、本当に花が咲いたようで…
昨日雨だったから、などではなく、今日を精一杯に花開こう、形にしよう。
という意志を感じて、またすごく嬉しくなりました。

手仕事の面白さ、深さ、熱さ。
皆が抱えているものが、本当に生々しく形になる時、
手仕事の世界はもっとおもしろくなるし、
新たな作り手も竹のように次々と伸びてくるのだと思います。

誠実な作り手が等身大のまま真っ当に受け入れられる世界にこそ、
自分の作ったものがあるようにしたいと思っています。
自分だけではなくて、真剣な全ての作り手が報われる世界でこそ、
ものを作り、語りたいと思っています。
そこは譲りたくないですね。

そんな事もあって今回は、素材の魅力、深さ、
奥行きを幾らかでも紹介出来た思いがあり、
夢を少し叶えさせてもらった気持ちです。
(勿論、続けていくこと、営み自体が目的なのですが…!)

自分が変わったのか?分かりませんが、
いつもより数段、作家さん達とも心を通わせられた感触があります。
こんな思いの種を持った作り手の皆さんが、全国に帰られ、
心の火を大きくしていく事を思うと、本当に大きな希望を感じます。

吉田慎司として、箒屋として、作り手として、
この場所の歴史が1つ進んだ事に感謝しています。

帰ったら、札幌はもう冬の風でしたね。

皆様も大変お疲れかと思うのですが、何卒ご自愛下さい。
今後とも、工房からの風で生まれた美しい景色が続き、
広がっていきますよう!心よりお祈りしています。

吉田慎司

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吉田さん、ありがとうございます!
吉田さんからは、いつも「自分」ではなくて、
他者や社会への温かくも冷静なまなざしを感じます。
吉田さんのまなざしも、影響し合って、他の出展作家へと継がれていくのだと思います。

今回は、多くの出展作家が「種火」について考えてくれました。
日々の制作、暮らしの中でその種火がくすむときもあるかもしれません。
でも、そんなときは、ぜひ今展のこと、五行テントでの3人の作家の展開、
思い出してくださいね。

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上の画像は、日曜日のトークイベントの時のもの。
陶芸作家の小泉すなおさんが撮ってくださいました。
すなおさんも、ありがとう!