director's voice

豊田陽子さんより(染織)

はじめに稲垣さんのお話で、「霧の中に入ってしまったときは、初心に戻る」とおっしゃったことに、あっ、と思いました。

2017年の初参加の時は、とにかく自分の作品を売りたくて、どうしたら売れるのか、それがピラミッドの一番上にあって、作る喜びや楽しさが底の方に沈んでいました。
常に数字が頭の中でグルグルしながら制作していて、自分の心が苦しくなっていたことにも気づかず、
全身アトピーになり、その他謎の体調不良のなか鞭打ちながらとにかく制作しなければならない!と。
今振り返れば、それでよくやってたな・・といった感じです(笑)

おそらく、その当時も稲垣さんは「工房からの風」の参加作家に向けて同じような言葉を投げかけていたのではないかと思いました。
でもその時はその言葉の本当の大切さに気付けずにいてまさに霧の中にいたんだなと。

あれから5年たち、他の作家さんとのより深い交流もでき、自分の心とからだを見つめなおし、ピラミッドの構成が変わり、少しずつ少しずつ霧が晴れていったこと。
2017年の参加は転機だったと思っていましたが、なぜこの仕事を始めたのか、光輝いていた大切なその思いが、それが相手に伝わるのだと。
「霧の中に入った時は初心に戻る」
今回この言葉で一番心が震えたことで、自分の軌跡を改めて振り返り今回参加させていただけることの有難さをより強く実感しました。

他の作家さんたちの自己紹介でも、ああ、同じような悩みを持ちながら制作しているのだなあとか、自分とは違ったスタンスで制作されているのは興味深い!とか、創作をはじめて間もないフレッシュな感覚で自由に制作されている作家さん(素敵!)など、
本当に暑さを忘れるぐらい楽しい時間でした。(自分の発表は緊張で震えましたが)

前回とは違ったいい意味での緊張感と、今の自分にとって精いっぱいできること。
自分への期待で静かで底の方からワクワクとした熱を得ることができました。
突然の体調不良にならない限り、ミーティングに参加をしようと思っていましたが、これからさらに制作を進めるうえで、自分が思っていた以上に大切な心持を持ち帰ることができました。

他にはないこの現地でのミーティングは本当に大事で、このような難しい状況の中でも集まれる人だけでと開催された意義を実感しました。
本当にありがとうございました!!

豊田陽子
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