2014年11月の記事一覧

「凪ぐ浜の宝物/工房からの風」New

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加藤キナさんより

「工房からの風」が終わって2週間。
なんだかもっと時間が経ったような気がします。

出展作家の方々も、それぞれの日常、お仕事に戻られている頃ですね。
私の方はといえば、いつになく今年は終了後から来年に向けて、
さまざまな方たちとお会いする日々が続き、気持ちが次に向かっています。
来年の要綱なども整えて、遠からずご案内したいと思います。

「風の余韻」。
出展作家からのお便りをご紹介する「凪ぐ浜の宝もの」。
たくさんのお便りを寄せていただいていますが、
どれも公開前提ではなく私信ですので、
掲載確認をいただきながらこちらにお載せしています。

ゆっくり、皆さんに風の余韻を味わっていただければ、、、
そのような想いもありますが、
余韻というだけではなくて、凪ぐ浜の宝ものが、
これからの作り手にとっても何か心の栄養になったなら、、、
そんなことも思いながら、もうしばらく続けたいと思います。

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おりひめ神社の後方で展示されていた加藤キナさん。
ご夫婦でバッグづくりをされています。
少し時間をおいて、丁寧なメールをいただきました。

わたしは、物をつくることともうひとつ、同じくらいに好きな事があります。

それは、文字を書くということ。

わたしにとって言葉は、芸術であり、美しさ。
その人そのものを表すものだから、矯正されたような文字には魅力を感じません。
その人となりが表れた文字を見ると、心が弾む。

だから、自分でも文字を書くときは心を込めます。
一文字ひと文字、呪文のように、おどるように・・・

でもこの何年か、文字は書いていても 言葉を書いてはいなかった。
自分のことばで歌うのを、やめてしまっていたのです。
人の前で、素直なこころの歌をうたうのが、こわくなっていたのです。

きっかけもあり、自分という人間に自信を持てなくなっていたのだと思います。

それから何年か、私も人並みに色々と経験することになり、
口はひとつで、耳はふたつ。
話すよりも、まず人の話を聞こう・・・と感じるようになっていきました。
謙虚さに、うつくしさを見いだしはじめたのかもしれません。
実際、自分の話よりも、人の話を聞いている方が数段楽しく過ごせました。

そんなある日、ある舞踊家の踊りを見にいく機会がありました。
深い静かな湖のようなその人は、還暦がすぎてふと思ったそうです。
「自分はダンスですべてを伝えられると思っていたけれど、はたしてそうなのであろうか。
コトバも時には必要なのではないだろうか・・・」

はっとなりました。
ことばの葉が、ひらりと1枚 わたしの心に落ちてきたようでした。

数ヶ月後、工房からの風に出展が決まった私は、
封印していた自分のことばと向き合うことになったのです。

多くの作家さんが、自分の持つ歌声で、見事な音色を奏でていました。
作家さんだけではありません。
この展覧会にたずさわる人それぞれが、自分のことばで歌っていました。

私も、自分のこころの中、深く深くに湧いていることばの泉を、覗いてみてもいいのかもしれない・・・
そんな風に思えるようになった頃、1通のハガキが届きました。

よく滑るブルーブラックのインクで書かれたその文字は、
羽根のように軽やかに・・・

風とともに歩んできたその人は、羽根のような文字をもつ、風を宿した人でした。

ただ、生きるのではない。
どう生きるのか。

私たち夫婦が作り出せるモノの数は、限られている。
だとしたら、いったい何がつくりたいのか・・・
どんな歌を紡いでいきたいのか・・・

工房からの風で、数をつくるのではなく、自分たちが納得のいくものを作り並べました。
そして、その想いは、多くの方につたわりました。

「欲張らない」
これは、工房からの風が毎年50組の限られた出展者しか参加できないことにもつながっています。
あれだけ密に、作家ひとり一人と向き合っているのだから。

「欲を張らない」
自分の置かれた場所をよく見て、自分のできる範囲で充分な仕事をする。

この先、この学びを忘れないように。
吹いてきた風を クルクルと少しちいさくコンパクトにして、いつでも心から取り出せるように。

風はこれからも密やかに、私と一緒に歩んでくれそうな気がします。

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やっと、こころにあった言葉をすくいあげることができました。

工房からの風は、私の中でほんとうに大きな学びの場となりました。
ありがとうございました。

キナさんたちとは、今年初めてお会いしましたが、
「工房からの風」には、数年前から来場くださっていたとのこと。
満を持して?応募くださったようですね。

言葉とものづくり。

言葉はものづくりになくてはならない、
とは思っていませんが、
と、同時に、言葉がものづくりに必要ない、
とも思っていないのです。

ものを作る人の中に、たしかに生きた言葉を綴る人がいる。
という事実があって、そのことを大切にしたい、
ただ、そう思っています。

キナさんたちが、今展を通して上記のような熟した言葉、文章を綴られたのは、
想いが豊かに実って、自然に言葉となって弾けだしたのですね。

言葉とものづくり、が、どちらかを補うためのものではなくて、
どちらをも豊かに育むものであるように。

加藤キナさんからのお便りは、そんなことを伝えてくれました。

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叶谷真一郎さんより

おりひめ神社のまうしろで、使い心地のよさそうな器が
さりげなく風景に溶け込んでいましたね。
叶谷真一郎さん。
神戸から来られた陶芸作家の方からもお便りをいただきました。

こんにちは、叶谷です。

無事帰りました!
疲れと余韻とが重なり、まだぼ~っとしております。

今年初めから、この日の為に考え、
目標にしてきたと言っても過言ではありませんでした。
頭の中に常に”工房からの風”の文字がありましたから・・・。

前日の準備の段階から終わるのが怖かったくらいです。

本当にあの場所は良かったです。
木漏れ日が器と花を照らしてくれて・・・
日々の器を作っている僕にとって、
皆さんがじ~っと器を見て、
食卓に思いを馳せていらっしゃる姿を拝見していると、とても嬉しくなりました。
季節を感じながら、器を選ぶこと、素敵だなとしみじみ感じた時間でした。

個人的には、今までと違った器も展示してみようと試みました。
改善点等、考える余地も生まれ、今後の指針となりました。

今回の展示で、結果が伴った人
(どういうことを結果が出たというのかは人それぞれだとは思いますが)、
思ったような展示にはならなかった人。
思いはさまざまだっただろうなと思いました。

売れたか売れなかったかとか、次の仕事が来たとか。
そういうことではなくて、こぼれ種が自分の中で芽生え、
それがどこへ向かうかだと思っています。

この2日間だけではないと思うのです。
そこからいつかどこかで何かに繋がっていく。
だから、この出展者の誰もが、これからの活動の糧になるはずだと。

若い人が多いこの工房からの風の中で、
おそらく年長者の方ではないかと思われる僕の経験を踏まえた実感でした。

同じ作り手の仲間と出会えたこと、有意義な1年間でした。
自分だけでなく、この仲間達の種が風に乗って、どこかでまた会えるように・・・
そう思ってやみません。

このような場を作って下さった、スタッフの皆様、
そして何より「工房からの風」にお越し下さるお客様に、感謝の一言です。
ありがとうございました。
また、ご一緒できるのを、楽しみにしております!

叶谷真一郎

叶谷さんとの会話やメールには、必ずなおこ夫人が登場して、
その恐妻ぶり!がおふたりの仲の良さを表しているのだと
今回お二人にお会いして気づきました。
でも、今回は妻話!(掲載はできませんが(笑))の他にも
しっとりとした文章を寄せてくださったのでした。

目まぐるしく進む時間軸の中で、数か月をかけて取り組んだ展覧会。
そこでの結果は これからの時間の中に。
ほんとうにそうですね。
出展年次も超えて、この風に吹かれた作家同士、
これからさまざまな地で、よき交流が生まれることを願っています。

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堀内亜理子さんより

スペイン階段前のテントで、ひときわ人の山ができていたブースがありました。
堀内亜理子さん。
北海道は旭川から来られた、漆の作家です。

戻ってくると、山は真っ白、紅葉は葉を落とし、街行く人は冬装備。
会場で送った自分の荷物が少しずつ戻ってきました。
いよいよ旅も終わりです。

この度は本当にお世話になりました、ありがとうございました。

「工房からの風」は「愛」なんだなあと思いました。
そこには作家への見返りや押し付けはなく、
ひたすらに希望や光を与える「愛」そのものです。
産み出すのはいつも「女性」なのですね。
だから続くのかなあと思いました。
12回…干支をひとつ巡ったのですね。

毎日「工房からの風」という言葉を頭にのせながら向き合った半年でした。
今年の大きな目標が終わりました。
こんなに創ったのも、人の手に渡ったのも初めてでした。
自分が生きている感じがしました。

終わったら、始まりです。
充実したし、楽しかったけれど、個人的には大きな課題を抱えています。
これからがっちり向き合わないと…。

私の工房に新しい言葉が増えました
稲垣さんのブログにあった
「取り組むことにケチにならない、出会いにケチにならない」
これ、名言ですね!!真理です!!
ケチらなかったらちゃんと得られるモノなのですね。

この切り捨ての時代にアーティストを惜しみなく支援して下さるニッケの方々、
スタッフの風人さん、庭人さん、サポート戴いた皆さんに…
心から、心から感謝を込めて。

堀内亜理子

北海道はいきなり冬支度の季節なのですね。

「自分が生きている気がしました」
という、ありこさんの言葉は、決して軽口ではないのだと思います。
産地ではない地方で、黙々と制作をしながら、
横のつながりもまだ豊かではない若い作家は、
作ってもそれに応えてくれる人と出会える機会があまりになくて、
きっと心を細くしていたのだと思います。
今回、思い切って出展されたことで、大きな反応を得たこと、
そのこと自体が、ありこさんの宝ものになり、
生きている実感につながったのですね。

懇親会で、笑い話のようにしてくださったこと。
大きな大きなお重箱をぜひみてほしくて作ったけれど、
きっと売れることはないだろうな、
と思ったというありこさん。
そのお重が売れたときにいれる大きな紙袋を買おうか買うまいか、
かなり悩んだそうなのです。
(作家の方々、きっと共感していますよねー)
けれど、やっぱり買おう!
と北海道から携えてきました。

そのお重、お選びいただけたのですね!
その瞬間、こみあげてきてしまい、涙がこぼれてしまったというありこさん。
心優しいお客様は
「いろいろ買い物はしたけれど、もの買って泣かれたのは初めてだよ」
と、励ますように言ってくださったとのこと。

「取り組むことにケチにならない、出会いにケチにならない」
は、紙袋を買うか買わぬかで迷ったありこさんの実感!だったのでしょうね。

ちょっと、おかしみをもって書きましたけれど、
実は私も最初その話を聞いた時には、目頭熱くなってしまったのでした。

「工房からの風」は、ハレの日であって、また日常、ケの日々となるのですが、
手ごたえという宝ものが心にあれば、きっと 日々の制作も心潤うはず。
ありこさん、時々は関東にもいらして、
今回の出会いの糸を豊かにつなげてくださいね。

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OLD TO NEWさんより

第十二回「工房からの風」から、早くも1週間が経ちましたね。
なんだか、すでにずーーと前のことのよう、、
出展作家の方々から届くお便り、メールにも、夢の中の出来事だったのでは??
という言葉がなぜか共通に書かれていました。

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「凪ぐ浜の宝もの」

いつも「工房からの風」が終わった後に、
作家から届くお便りを一部ご紹介しています。
大波の去った後に、静かな浜辺に転がる美しい貝殻やガラスのかけらのように、
作家の心の浜辺に宿った輝く言葉を綴らせていただいています。

どれも、稲垣宛の私信ですので、作家に確認して、一部を掲載しています。
今年は、あまりにディープなものが多くて、なかなかすぐに掲載ができませんでした!
穏やかな秋晴れのもと、心豊かな時間を得た今年度の「工房からの風」
でしたけれど、その日に向けた作家たちの熱い思いは、そのまま転載するには、
ためらいもありました。

けれど、ご許可をいただき、これから数日、ご案内していきますね。
思いを共有したり、共感したり、ハテナ?と思ってみたり。
また、これから出展を検討される方にも、参考になれば、
と思います。

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まずは、まっさきに届いた(日曜日の夜!)OLD TO NEWさん。
おりひめ神社の脇で、金属の装身具を出品していた女性です。

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1月からお世話になりました!
準備期間を振り返ってもあっという間、
当日の二日間はもっとあっという間に過ぎました。
何からお伝えしたらいいのかわからないほどの経験をさせていただいたこと、
本当にありがとうございました。

出産などで少しスローペースだったわたしの制作の中に、
迷いや不安が沢山ありました。

それは当日を迎える日々の中でどんどん小さくなって行き、
出展を終えた今日は作っていていいんだと思える大きな大きな転機となりました。

それは度々の折衝だったり、
他の作家さんとのお話や作品に直接触れられることだったり、
風人さんのお話だったりの眩しいことや
お客様とのやり取りだったりの奇跡のような出会いの積み重ねからです。

もちろん自分に足りないこともまた明確に分かり、
それもまた大きな収穫でした。
うまく言えませんが本当に色んな風が色んなことや感動を運んでくれました。
改めて、この仕事が出来て幸せだと思います。
他の展示会ではここまで思えることはなかったと、
「工房からの風」に今年参加出来た幸運にとても感謝しています。

終わってしまったことでぽっかり寂しい気持ちになりましたが、
ぜひこれからもずっと「工房からの風」の皆様と
繋がって行きたいと心から願っています。
その為にもどんどん力をつけて良い作品を作り続けて行きたいです。
言いたいことの半分も言えていないような気がしますが、
どうか今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。
本当に、本当にありがとうございました!

 

:::

京都の彫金工房でしっかりと働いていた史さん。
結婚、出産を経て独立後の不安の中での応募だったのですね。
けれど私にはそんなそぶりはちっとも見せずに、
いつもニコニコ前向きに訪ねてきてくださいました。
きっとご家族の協力や、ご自身のやりくりなど大変だったと思いますが、
秋の日の実りに向けて取り組んだ時間は、見事に生りましたね。
そして、ぽっかりの穴は、作りたい意欲!で満たされているようです。

これからのOLD TO NEWさんの作品、とても楽しみですね。

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uiny by nakamurayuiさん(アクセサリー・服)

ニッケ鎮守の杜の一番西側。
岩の配置されたゾーンでお手製フィッテングルーム?まで拵えてくださった
uiny by nakamurayuiさん
一度お便りをくださったあと、先日の「小骨」のブログを読んで再びメッセージをくださいました。

まず、最初のお便りから一部を。

・・・
一日目の帰り道、皆でもう終わっちゃうね、さみしいねーと帰ったり、
朝に挨拶しあったり、ブースをみて回りあったり、
搬出の時に、また!と。

『このばかぎり』で終わらせたくないね、という気持ちが皆にあって、
沢山の人と人の両想いがあって、それがとてもうれしかったです。
色々な場所でこの出会いをいかしたいし、
また成長して大きな風になって戻ってきたいな、と思いました。

それから、「小骨」のあとにいただいたメッセージ。
少し長いですけれど、転載させていただきますね。

・・・
こんなに沢山の作家がいて、更にターニングポイントになるような場所で、
自分の人生の立ち方をわからずにいる方もいたり、
色んな場所を通り心を傷つけたまま、「工房からの風」に参加する方もいたんだろうな、
と思いました。
全てのエネルギーを先頭で受け入れていくことは、
とてもエネルギーを使うことだろうと感じました。

私は自分で自分が立ってからこそ、人と関われると思っていて、
あの場所はそれを実現してこそ素晴らしい場所になるな。と思い、準備をしてきました。
自分で自分を立たせるということはひとりで頑張るんじゃなく、
自己というものへの認識をもってから人に頼れる。
と経験からも信じていて、それを最大限実現したかったんです。

不特定多数の人が集まる場所でイベントをやると、心ないことを言われたりしますし、
要らない傷を受けたりします。
そういう事が無い場所で自分の作品を真正面からみて貰える、ということは、
これからの制作人生の根幹で支えになるな、と思いました。
自信を貰える、得られる。
私にとっては全てではないですが、そういう場所でした。

常に様々な視点で疑問を持ちながら毎年進化させていこうとしているあの場所で、
今年作品を発表出来たことはとても素晴らしい体験でした。

ありがとうございました。
さらなる成長をしていきます。

この「凪ぐ浜の宝もの」では、作家が感じた生々しい感想の中から、
共有出来たり、次につながっていけたらいいな、と思うものをご紹介してきました。

企画者としては、参加くださった全員がよかった!と感じてほしいところですが、
実際そんなことになったら、ファッショですよね。
中には、思うようにいかなかった、とか、もっとこうすればよかった、とか、
今回は、いらっしゃらなかったけれど、以前には、
自分には何の変化もなかった、というようなメッセージをいただいたこともあります。
もちろん、この場でお名前を出して負の要素のあるメッセージをお伝えすることはないと思いますので、
どうしてもポジティブなメッセージが多くなってしまいますが、
先日、思い切って「小骨」のブログを書いたところ、数人の作家の方から(過去出展者も含めて)
好意的な長文のメールをいただきました。

そして、その根っこには、やっぱり、よいものを作りたい。
そのことがあるんですね。
だからこそ、いろいろと感じるし、考える。
このブログでそのことを整理するのは難しいですが、
いつかそういった生身の思いを冷静に書ける日を迎えたいと思っています。

あと数人の方からのメッセージをご紹介して、浜辺から一度退いていこうと思います。
(作家の方々、お返事が滞っていて申し訳ありません。
お一人ずつ、書かせていただいてますので、しばしお時間をくださいね)

長い文をお読みいただいて、ありがとうございます!

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Noraglassさん(ガラス) 

おりひめ神社の鳥居のほとり。
きらきらと木漏れ日を受けて輝くガラスのNoraglassさんからも
メッセージをいただきました。

・・・

天候、ロケーション、 空気感。
全てが思い描いていた通りの環境で出展させていただきました。
運営の皆さん、風人の皆さん、庭人さん。
たくさんの方達に見守られているような安心感は格別でした。

そして周りを見渡せば幾度も言葉を交わした同期たちが。
なにか共通のテーマを与えられているわけではないのに、同じものを共有している感覚は
とても心地よく、また、たくさんの刺激を受けました。
この経験、出会いはこれからも大切に育んでいければと思います。
運営の方々、作家同士のコミュニケーションの豊かさは唯一無二のものだと思います。
そこから生まれているであろう当日の会場の緩やかな統一感も。

そしてもう一つ感じたのはお客様の選ぶ作品の違いです。
Noraglassでは通常、食器よりも花器を選んでいただける場合が多いのですが
今回はそれが逆転したのです。
多くのお客様が手仕事の器を生活に取り入れることにより積極的で慣れている、
という感じを受けました。
「工房からの風」がこの地にしっかりと根付き、そのような文化を育んでいるのだとすれば、
そしてそれが端的に現れた結果であるならそれはとても素敵なことで、尊いことだと思います。
求められることは年々変わっていくとは思いますが
どうかいつまでも作り手、使い手とともにある「工房からの風」であってほしいと願います。

若くて誠実な前嶋さんらしいメッセージ。
これから、もっともっとご自身が求める美しいかたちに向かって、
制作を進めていかれることと思います。

このブログへの一部掲載のご許可をいただくためのメールをしましたら、
そのお返事の最後に

憧れていた「工房からの風」。
これで本当に終わったのだな、とメールを拝見しながら少しの寂しさを感じています。

と、綴ってくださいました。
ええ、ほんとうに。私もなんだか寂しいです。
でも、この寂しさは、次の出会いの始まりですね。
お互いに仕事を深めて、ぜひ、またお会いいたしましょう!

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菅原博之さん(木工)

おりひめ神社の真裏。
木漏れ日清々しくもれるところで、美しい木工作品が展示されていました。
菅原博之さん
4年ぶりの出展で、どのようなことを感じられたのでしょうか?

会場の中で一番奥となるこの場所には、お客様の出だしは割りとゆっくり、
しかし、気がつくと、展示の前にはたくさんの方が。
話しをして、作品への思いを伝える。
「自分の思いはどれくらい伝わっているだろう・・・」そう思いながらも、
気がつくと忙しく時間がどんどん過ぎていきました。

そんな中、あるお客様に自分が出展の応募用紙に書き込んだ思いを、
そのまま展示の印象として、お話しくださる方がいらっしゃって、はっとしました。

それは、とてもとても嬉しくて、
思い描いていた出展イメージに少しは近づけてたのかな?と。。
その言葉が、柔軟剤のようになって、ごわごわした気持ちが一気にほぐれ、
最初の不安だった気持ちは、いつの間にかなくなっていました。
神社の裏側で、とても不思議な体験をしました。

そして、「工房からの風」については、このような感想を寄せてくださいました。

半年間の中で、作家それぞれの色を大切に、濃く々々、凝縮していくような、
そして、当日は見事な化学反応で、その年の色や香りをはなつ、二度と同じ空気感はだせない、
そんな一期一会感、他のイベントでは絶対無い個性だと感じました。
自分としっかり向き合わなければ、結果ぼやけてしまう・・・そんな緊張感も感じ、
まさに「背水の陣」そんな印象です。僕だけでしょうか、、

楽しい中にも、ビリビリとした、何かとんがったもの。。
秋が深まりを見せるように、これからも、終わるとそれぞれの色がぐっと濃くなる会であってほしいです。

今回の菅原さんご自身の感想は、

「誰にも負けたくない!」と、できる事をやり尽くして、たくさん売った、そんな4年前の達成感。
「アイテムを絞り、お客様と話しがしたい、自分の気持ちを伝えたい!」
落ち着いてゆっくりとした時間の中たくさん話した、今回の達成感。

以前、稲垣さんに聞かれた事「菅原さんはこれからどんなことをやっていきたいの?」
その当時、質問に戸惑ってしまい、上手く答えられなかった自分がいました。
どんなふうに、ものつくりをしていきたいのか?
それから、ずっと自分に問い続けていたように思います。
4年間という時期は、そんなふうに向かい合った時間でした。

今回の終了後は直後から、自分の足下の道がすっとのびたような感覚。
達成感ではなく、進行感。
そんなことを感じています。

「菅原さんはこれからどんなことをやっていきたいの?」
なんて聞きましたかねー?(笑)
でも、きっと、聞いたのでしょうねー(冷)

菅原さんの伝えたい思いのひとつには、木の器をもっと食卓で楽しんでもらいたい!
ということがあるのだと思います。
食卓が楽しくなる美しい器を作り、その使い方までを丁寧に伝えよう。
それを実践するために、人気アイテムの小さな花器をあえて出品しなかった菅原さん。
それはどこかで冒険であったはずですけれど、潔く実行することで、
願っていた実りを十分に得られたようですね。

菅原さんとのここ数年にわたるやりとりは、私にもとても学ぶことが多かったです。

そんな素敵な菅原さんですが、
『本人も展示作品の一部・・・とばかりに、当日かっこつけてきたシャツに、
カレーとワインのシミが!!』
と、オチをちゃんとつけてくれました。
洗ってもなかなか取れないシミは、わかこさんにも叱られたそうですが、
『今回の思い出も、僕の人生の中でいつまでも残る「シミ」であってほしいと感じました。』
と、メッセージを締めくくってくださいました。

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nomamaさん(染織)

コルトン広場から、ニッケ鎮守の杜に入ってすぐに高台のところで、
明るい色彩の布が気持ちよさそうにそよいでいました。
nomamaさん
初めての出展を終えて、メッセージを寄せてくださいました。

『工房からの風』の空間に居て、印象に残った事はお客様の滞在時間の長さでしょうか。
じっくりと作品や空間自体を楽しんでいる雰囲気がとても伝わりました。
あるお客様には
「このイベントは本当に居心地が良いのよ。
作家はみんな凄いパワーで作ってるはずなのに、ここではみんなガツガツして無くて
優しい空気が充満してる」
と言われました。
凄く嬉しい言葉でした。

展示当日がゴールでは無く、『工房からの風』を通過する事で、
その後に続く作り手としての生き方を考える事の出来るクラフトフェアだと思います。

またミーティングや懇親会がある為でしょうか、
全員で当日の2日間を素晴らしいものにしようと言う心意気が感じられました。
自分の展示だけを考えるのでは無く、
参加した全員の開かれた意識を会場全体に感じました。

自分の作品が褒められる以上に『工房からの風』全体を褒められると嬉しかったり、
他の出展仲間がニコニコしてると嬉しい…と言うなんとも不思議な感覚でした。

:::

自分の作品が褒められる以上に『工房からの風』全体を褒められると嬉しかったり、
他の出展仲間がニコニコしてると嬉しい…

って、企画者からしても、とっても嬉しい!言葉です。
nomamaさんのにこやかで聡明そうな表情と 布の表情がとっても合っていて、
そのことも、来場者の方々が心地よくながーく滞在されていた理由かもしれませんね。

毎回、毎回の会の空気は、微妙に違っていて、
それは出展者の違いによるものが大きいかと思います。
今回はお天気のよさと、和やかな方が多かったのも、いっそう優しい空気を
醸し出していたのかもしれませんね。

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studio fujinoさん(木工)

おりひめ神社の鳥居のふもとで木の作品を展示していた
studio fujinoの藤崎均さんからもメッセージが届きました。
その一部をご許可をいただいて、こちらでもご紹介しますね。

今回、特に印象に残ったのは、購入いただく作品の種類でした。
お求めいただきやすい日用品より、花器、ジュエリーボックス、小箱がよく動いた事です。
より生活を豊かにするようなものに、ご来場の方々のご興味が集中したしたように思えます。

今回、私たちにとって新たな起点となる時期に、
工房からの風に出展させて頂いたように思います。
私も日頃の仕事も見直し、クラフトの仕事を進める為に、
生活の糧にしていた仕事も一部お断りをしました。
次に進む為に、覚悟する機会を頂いたように感じています。
新たな起点に来た時に、また応募できたら良いなと考えています。

・・・
  ・・・

「工房からの風」の個性は、「クラフトフェア」というより「展覧会」であることです。
どの作家さんも一度自分を振り返り、じっくり考え、悩み、
制作に取り組み発表する場という意識があるように思います。

あと、地元の人達の関心度です。
一般のクラフトのイベントは、興味のある人が遠方から集まる印象。
『工房からの風』は、遠方のクラフトファンも勿論多く来場されていましたが、
毎年とても楽しみにしていると話してくれる地元の人が多く、
地元に愛されている展示会なのだと感じました。

2日間、多くの人の笑顔が見れて、楽しく充実した時間を過ごさせていただきました。

studio fujino
藤崎 均/東川 裕子

イタリアでの生活が長かったおふたりが、帰国して暮らしと仕事を整えたうえで応募くださった今回。
ここを新たな起点としてくださるとしたら、これからの豊かな進化を、
来場者の皆様とともに、応援し、楽しみにしていきたいですね。
galleryらふとでのワークショップなども、ぜひお願いしたいと思っています。

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mek & jirraさん(お香)

お香。
今回、初めて出展いただいたジャンルです。
mek & jirraさん
花壇の脇のテントで、丁寧にお香についてお伝えする姿が印象的でした。
そのmek & jirra、丸山さんからも、メッセージが届きました。


(画像 mek & jirraさんより)

今回 とても驚いたのが、「お線香」をたくさんお買い求めいただいた事です。
お線香と言うのは、自分自身の為ではなく、亡くなった方への贈り物。
お線香をお食事のように、生前の好みに合わせ香りを
お選びいただけたらと日々製作しております。

僕は、お線香をお買い求め頂いた時に、なんとも言えない気持ちになります。
通じる。
作り手として 自分が作ったものを通して お客様と思いが通じる。

お香、インセンスだけではなく、あえて「お線香」も制作するmek & jirraさん。
ほかでの出展と比べて、「工房からの風」では特に反響があったそうです。
その「工房からの風」については、このように感想を寄せてくださいました。

「工房からの風」の個性の一つは、圧倒的な世界観。
それは、今までの方々が作り上げてこられたもの ご来場のお客様と育まれたものだと思います。

人と自然と様々な素材、作品 そして 空気。
色んなものがキラキラしていました。

もう一つは、土をたがやす。
今年の冬に出展が決まり、3月にミーティングを行いました。
その時は、どうしてこんなに早く集まるのかな?と思ってました。

そのミーティングから出展目前まで、どうして、自分が選ばれたのかをずっと考え、
自分とお香。
考えて…… 考えて ……
考えて。

今は、たくさんの発見ができてそれが財産です。
その考えて 考えていた感じが、畑仕事で土をたがやして たがやしているような、
今思えば半年間で種をまく準備をしていたのかと。

そして、たくさん発見した種を二日間 まかせて頂いたので
よし、水をくみに出発!と、言う気分です。

工房からの風は1人の作家として、成長させてくれた 力強い風です。

お便りの最後には、
まだまだ 自分の日常にも、工房からの風の余韻、残像、そして残り香が色濃くあります。
大事に大事に 暖めたいと思います。

と綴ってくださった丸山さん。
お香を連れ帰られた方々のほとりにも、残り香がしばらく続きますね。