2024年11月の記事一覧

「凪ぐ浜の宝物/工房からの風」New

director's voice | コメントする

水村真由子さん(木工)より

ニッケ鎮守の杜、レンガ道が折れるちょうど杜の真ん中あたり。
匙を中心とした木工のブースがありました。
水村真由子さんからのメールの一部を共有します。(ほかの方を含めすべてご許可いただいております)

昨晩、奈良に戻りました。
この度も大変お世話になり、ありがとうございました。
やっぱり風は、夢のようで、あっという間。
強烈に心に留まる2日間でした。

今年5月にお会いした時に、2回目の出展はどのように展開したらいいのかなと私が不安げにつぶやくと、
「そんなこと考えてるの?これまでのあなたの仕事を、これまで通りしっかり見せたらいいの」と稲垣さんに言ってもらって我に返ったようになり、その次の日から今展の新作に取り組みました。
常に頭上には湯気がのぼっているような状態で、全集中で真向かった準備期間でしたが本当に愉快でした。

そこからぽろっと零れ落ちてきた、熊のおもちゃ。
動物、身体が動くギミックというキーワードはずっと頭の中にあって、これができたらいいなーという思いを何年も持ち続けていましたが、ある瞬間に頭の中でパズルがカチッと動いて、一気に手が動きました。

取り組んでいるときは表現が悪いですが、愉しすぎて無意識によだれがでちゃうような感覚。
大真面目にふざけることの愉しさ。
見てくれた人の表情はどんなんかなぁと想像するとめちゃくちゃ不安だけと、ワクワクが勝って、手を動かさずにはおれん!という状態。
苦しかったけど、幸せでした。

本展では、ブースの奥のほうにひっそりと置いていたのにもかかわらず、お客さまや、作家仲間、スタッフのみなさん関係なく、本当にたくさんの方がわざわざ見に来てくださいました。
無我夢中から出来上がった熊たちを目の前にすると、今度は世に出して大丈夫かなという不安に襲われましたが自分のスキを信じて、挑戦してよかった。

匙や木べらなどばかりを追求している私のこれまでの仕事とは、全く違うようなものである印象に映っていたのかもしれません。
もちろんこしらえる上では、まったくちがうリズムのものであるのですが、自分の中ではこれまでの仕事があったからこそ、そこから派生して自然と出来上がったものなので、なんら違和感はありません。
自分の中のスキの引き出し、ちょっと勇気を出して開けてみてよかった。
きっとそのきっかけをくれたのは、2回目の風への出展だったのだと思います。
感謝しかありません。

今回も宝物のような経験をさせていただきました。
本当にありがとうございました。
誠実に、そして時にチャレンジしながら、笑顔で手を動かしてゆける自分であれますように。
今はそんなことを願わずにはおれません。

スタッフのみなさまにもどうぞよろしくお伝えください。
お疲れ出ませんよう!

二回めの出展の方は、よい意味でも気負ってしまわれて、何をしたら???
と思うようですが、基本は初出展から今日までの進化(深化)させたお仕事をまっすぐに示されたらよいと思っています。

水村さんもそのように心が定まったあとに、自然発生的に「クマ」が誕生したのですね。
それは無理に絞り出した何かではなく、手と心の実りのようなもの。
お庭のまんなかで、クマも水村さんも!気持ちよく居れたのではないでしょうか。

水村真由子さんの出展前のメッセージはこちらになります。
→ click

director's voice | コメントする

吉田慎司さん(ほうき・風人)より

「工房からの風」に出展経験があり、企画運営に力を寄せてくださる作家の方々。
風人(かぜびと)さんと呼んでいます。
今年は13作家。
それぞれ本業!のものづくりがありますので、ご負担のないように関わっていただくようにしています。
なので、全体ミーティング2回と準備日と当日含めた3日、計5日を活動いただく方。
ほかに、企画テント(風人テント、素材の学校テント)を担当くださる方は、準備制作など、かなりがっつりと。

今回風人テントは、大野七実さん、岡林厚志さん、吉田慎司さん、本間あずささんが中心となって担ってくださいました。
深く関わってくださる分、この回を通して、ものづくりのこと、工藝のこと、社会のこと・・・・
たくさん、考え、語り合い、哲学を深めていらっしゃいます。
先日は、本間あずささんからのメッセージを共有しましたが、吉田慎司さんからのメールも一部共有いたしますね。
長いですけれど、ほんものはもーーっと長いです!

・・・僕たち手仕事をする人のほとんどは、自身の絶え間ない成長と、その仕事が永く遺(のこ)り続けることを願っています。
成長は、半ば自身の努力であっても、周囲の助けや関わりがなくては独りよがりになっていくと思います。
また、遺すこととなると尚更で、自分の手を離れた場所や、時代へ繋ぐには他力を願うしかなく、とても心許ない。
そこで根の確かさをあらため、時間や場所を越えた循環を結実してくれるのは、作家や繋ぎ手、使い手の皆様との心からの繋がりであるように思いました。

植物が影響しあい、循環し、豊かに、そしてどんどんと更新されていくように、僕たちも必死で伸びて、芯から関わり合うことで命を全うできるように思います。
1本だけの草や、貰ってきた土壌では、大きくなることはあっても一時的なものでしょう。
僕たちが人と繋がる最大で最適の方法は至ってシンプルで、やはり仕事でしかありません。
必死に伸びて種を遺す草木のように、必死の仕事が誰かに響いた時、その恵みを足がかりにして初めて次の場所が見えてくる気がしています。
人の生きた足跡は、そういう所に遺るのではないでしょうか。

自力で目立ったり、表に出る方法は無数に増えてきましたが、本当に大きくなり、仕事を遺すには、血の通った場が必要であると、改めて確信した次第です。
また毎年ながら、輝く作家さんに触れて、自身の仕事への戒めにもなりました。

自力で目立ったり、表に出る方法は無数に増えてきましたが、本当に大きくなり、仕事を遺すには、血の通った場が必要である・・・

そうですね。

僕たちが人と繋がる最大で最適の方法は至ってシンプルで、やはり仕事でしかありません。

その仕事の発露の場として、「工房からの風」は、もっとよりよくしていきたいです。
この写真の表情もとてもいいですね。
「素材の学校」のツアーでの一コマ。
木工作家の岡林厚志さんが撮影してくださったもの。
岡林さん撮影の画像、この「凪ぐ浜の宝もの」でもたくさん掲載させていただいています!

ほうきを作る吉田慎司さんのインスタグラムは、こちらです。
→ click

director's voice | コメントする

増田早紀さん(耐熱ガラス)より

ニッケ鎮守の杜に入って、レンガ道に沿った梅の木とアーモンドの木の間で透明に輝く作品がありました。
増田早紀さん。
耐熱ガラスで作品を作る作家からいただいたメールの一部を共有します。

冷たい雨が続いて、先日の2日間の活気ある暖かさが夢のように思えます。
夢のような時間のための、数々の準備にご尽力いただき、誠にありがとうございました。

千葉に移り住んで、お客さんとして毎年楽しみにしていた工房からの風。
あの光さす美しい庭で、優しくあたたかい空間で展示できたことは、駆け出しの私にとって大きな大きな一歩になりました。

ご購入いただいた作品をお包みする間、私は皆さまに「工房からの風にはよくいらっしゃるんですか?」とお尋ねしていたのですが、
「工房からの風の開催を、毎年毎年楽しみにしています!」
と答えて下さる方がとっても多く、こんなに愛されるクラフト展に参加できた有り難さを 身に沁みて感じました。

また、ミーティングで知り合った作家の方々のご活躍や、当日の展示の素晴らしさに、大変刺激を受けました。
会うたびに優しくお声がけ下さる作家さんが多く、この得難い出会いを大切に、またあの庭でいつか再会できることを夢みて制作に励みます。

約10ヶ月に渡り 我々作り手をあたたかく応援し続けて下さり、本当にありがとうございました。

増田早紀さんは、ミーティングにも熱心に来られたり、展開について積極的に構想していらっしゃいました。
初出展ならではの緊張もあったことと思いますが、そんな緊張を吹き飛ばすようにたくさんのお客様にご覧いただいていましたね。
これからの制作、発表も楽しみです。

増田早紀さんの出展前のメッセージはこちらです。
→ click

director's voice | コメントする

空想遊牧民 仔山羊さん(金工)より

ニッケ鎮守の杜、入って右側奥に並んだ4つのテント。
その中で渋い輝きを放っていた「空想遊牧民 仔山羊」さん。
無事工房へ戻られたというご報告のメールから、一部を共有させていただきますね。

今回出展させていただいて、工房からの風のスタッフの皆さまのお心遣いがとても印象深く残っています。
沢山の作家がいるなか名前で呼んでくださったり、2日目の強い日差し対策を一緒に考えてくださったり、モノだけでなく人をちゃんと感じてくださる空気がとても気持ちがよかったです。
改めて、素敵な場でご一緒できたこと嬉しく思っております。

・・・私はまだまだ駆け出しで、とくに関東の出展やギャラリー様とのご縁も今まであまりなかったのですが、いくつかギャラリー様とのご縁に恵まれました。
このようなご縁や、今後の自分の発展の仕方を考えるきっかけになったのが今回の収穫だと思っています。

今後は自分の作りたいモノをより深く追求し、ひとつひとつの質、技術を高めて説得力のあるモノをつくり続ける作り手になるよう、手を動かしていこうと思います。}わたしは普段、美味しいものを作る人は楽しそうに、踊るようににつくってるなと思っているのですが、稲垣さんの本に書かれていた金工の作り手、朝さんがいう「機嫌よく叩こう」はそれと通じるところがありますね。
本はまたゆっくりと読ませていただきます。

またいつの日か、みなさまとご一緒できるように。
ありがとうございました。

「空想遊牧民 仔山羊」さんとも、開催前にはゆっくりお話しができなかったのですが、
映像 → click に取り組んでくださったり、意欲的に「風」に取り組んでくださいました。

「空想遊牧民 仔山羊」さんが抱く世界観が、ますます金属で表現されていくのが楽しみです。
出展前のメッセージもあらためてご覧ください。
→ click

director's voice | コメントする

die Tasche(革)さんより

コルトン広場、モニュメント周りのテントで出展くださった革のdie Taschさん。
風人さん数名が、小さな革財布を選ばれていたと。
お財布には特にこだわりをもって制作されているそうで、同じ作り手として、響きあうものがあったみたいです。

die Taschさんから届いたメールの一部を共有させていただきますね。

・・・この度は工房からの風出展させていただき誠にありがとうございます。
また、諸々の手厚いサポート、細やかなご連絡など大変ありがたく存じます。

無事に工房へも帰り、後片付けなど済ませ、日々の暮らしに戻りました。

出展が決まり、2月のミーティングから開催日まで、
「工房からの風」のことはずっとついて回っていました。

「新しいことへのチャレンジの場」
という言葉がありました。
当時の自分にはまさにぴったりの言葉で、
この1年で鞄の新作をいくつも完成させることができました。
また、出展時の什器を抜本的に見直し、形状や見やすさなどを考慮し、一から作り直しました。
形而下での変化はそのように表すことができました。

そして恐らく今後にもつながっていくと思われる、精神的な部分こそ、大きい変化があったと思います。

ミーティングでの忌憚ない言葉により怯む気持ちもありつつ、大きな礎のような思想を受け取ったと思っています。
風人さんのひたむきな姿勢、朴訥とした語り口の奥に感じられた情熱に、確実に灼かれるような思いがありました。
ひとつのことに対して真正面から対峙する、ということの難しさ、大変さ、それをまず改めて感じ入り、さらにその大変な事に実際に取り掛った経験談であったと思います。
そのような事業を成し遂げた人たちの言葉として受け取りました。
そしてその舞台としての「工房からの風」

「50組の出展作家がいるとすれば50組の個展を同時開催するイメージ」
という言葉がありました。

それが出来るような工夫を凝らしつつ、なんとなくうまいこと出来ているかよくわからない状態で挑んだ初日。
自身のブースにのみ注力していた状態で、緊張や様々な新しいことに身を引き締めることで、周りを見渡す余裕はあまりなかったように思い返します。
二日目の朝、庭人さんたちとつくられたという草花を見て、その言葉と繋がった感じがありました。
ゆったりとした気持ちで、この大きな町(と形容していいのでしょうか(工房からの風)の空間のことです)を構成する一つとしてのdie Tasche、という気持ちで、半ばたゆたうような気分で過ごしていたように思います。
とても楽しく過ごすことができました。

die Taschさんとは、なかなか機会が持てずに開催までゆっくりお話しができなかったのですが、こうして丁寧なメールをいただけて、企画者としてはとてもうれしいです。
このように真摯に取り組んでくださったこと。
当日をこのように感じでくださったこと。
すべてdie Taschさんの財産になりますね。

そう、私宛に書いてくださった文章ですが、「書く」ことはまずご自身と向き合うことですから、ご自身のためにとても豊かなことと思います。
この場に掲載するしないは関係なく、ぜひ、一区切り、書いてみることをお勧めします。
この経験をもっと育むために。

die Taschさんの開催前のメッセージはこちらです。
→ click

director's voice | コメントする

本間あずささんより(風人)製本作家

「工房からの風」には、出展経験があり、企画運営に加わってくださる作家の方々がいらっしゃいます。
風人(かぜびと)さんとお呼びしています。
今回は、風人作家の本間あずささんから寄せられたメッセージをお届けします。

:::

「凪ぐ浜の宝もの」
というのは、嵐、大波が去ったあとの「静かな浜辺に残された宝もの」
を、イメージしています。
以前、私自身が「工房からの風」が終わってみて、思いがけず目の前に、心の中に現れたきらりと光る想いと出会ったので、このようなカテゴリーを設けました。

ここに掲載するのは、5,6名の作家の方からの予定です。
皆さん、私宛の私信なので、その一部を掲載許可を取ってお載せします。

まず、シンガリ!?として、あずささんより。

本間あずささんは、大野七実さん、岡林厚志さん、吉田慎司さんと組んで、「風人テント」を担当してくださいました。
「つくるひとの手−工房からの風景 」
として、6名の作家からの文章をご紹介することで、作り手の心の一端をひろやかに伝えられたら、、という試みです。

その中で、まるで本の頁をめくるように、製本のアイデアも生かして文章を掲出してくださったのでした。

 

・・・今年、手渡していくこと、つないでいくこと、時間の積層ということを強く感じた会でもありました。
ものはいつか形をうしなう、そして人も。
それでも、美しいものを作ろうと、人は手を動かす。
美しいものに触れて心が動いた記憶、人と一緒に紡いだ想いはずっと残り、受け継がれていく。
ものを作っているけれど、本当に作っているのは人と人の関係性でもあるのかもしれません。
その場に関われることは、かけがえなく幸せなことだと思います。
トークイベントの冒頭に稲垣さんがおっしゃっていたように、まさに。

私が本を作っていて、本が好きな理由は、本がタイムマシンのように、時間を行き来する装置だからでもあります。
そして、工芸作家が作る作品も、人の記憶をとじこめる装置なんだな、と。
作品を媒介に、人の心が動き、その人がいなくなった後も美しい記憶を伝えられるものが作れたら、なんといとおしいことでしょうか。

時間をかけてしか分からないことはたくさんある、と思います。
工房からの風の出展の後、劇的に何かが変化することは少ないかもしれません。
けれどここで得た思い、気づきが心の奥深くに沈んで、その時の興奮が持続しなくても、数年後にふと芽を出し、次の過程にきっと繋がると思います。
私自身、初出展から7年を経てこうして皆さんとご一緒できていることに驚きと、喜びを感じています。
大切なことは時間をかけて知っていくもの。
手で作る時間の中にいる人たちは、皆その想いを心の中に持っている。

・・・本間あずささんからのメールより一部

本がタイムマシンのように、時間を行き来する装置・・・
工芸作家が作る作品も、人の記憶をとじこめる装置・・・

「工房からの風」は工藝、クラフトの野外展ですけれど、
続けていく原動力として、「感じる力」「考える力」も大切に思っています。

「風人テント」は知のテントとして、「工房からの風」を重層的に育んでいるのですね。

では、次からは、今年の出展作家の方からの「凪ぐ浜の宝もの」を、一緒に感じてみましょう。

director's voice | コメントする

長野麻紀子さんから

風人、長野麻紀子さん(Anima uni)からのメッセージをお届けします。
2011年の初出展時、長野さんのウルトラ級の優しさに気づいてしまい!
風人さんをぜひにとお願いしてきました。

今回は、主にコルトン広場で出展作家のサポートを手厚くしてくださいました。

生物学を専攻し、英語も堪能な長野さん。
風人のことを「wind seekers」と訳しました。
箒の吉田さんなど、その訳のすばらしさにたましい撃ち抜かれ(笑)ておりましたが、私もまさにです。

それは、英語ができるからではなく、道を求めているからたどり着けた言葉なのだと思います。
wind seekers
と題されたテキスト、皆様に共有いたします。


(photo by hyakka)

 

2023 Nov

工房からの風 vol.21が終わった。
嵐の眼のように穏やかでやさしい光に満ちて。
長いと言えば長く、しかし短いといえば流れ星の如く瞬時に過ぎ去ったような瞬間の堆積たる時間が流れた。

悔いのないようやり切りたいと願っていたが、十分に役に立てたのだろうか。
時々で、できうる限りをお還ししたいと手足頭に心を動かしてきた。
しかし新芽はやがて枯ちる。
それはなんら寂しいことではなく、健やかなる代謝ととどまることなき循環こそが自然のなりわいであるのだと、庭が教える。

わたしは一枚の枯れ葉となり、朽ちながら微かな養分をまたきた場所へと還し、なもなきものへと帰りゆく。
豊潤なる土壌は、雨、風、光、微生物、大小様々な生物の織りなす時の錦。
工房からの風という場に、比喩ではなく実存として庭が育くまれ、来訪者の隣にあり続けることの意味を、おもう。

風人としてご一緒させていただいたこと、共に過ごしきた明るい時間、先達、仲間たちを想う。
さまざまの出逢い、しみじみと胸を打つ幾多の場面。

稲垣さんというひとりの、水先案内人の、明るい灯に照らされ、互いに照らしあいながら、これまで実に多くの小舟がそれぞれの、時に苛烈で時に安寧なる流れを懸命に渡りゆき、いまもまた地上のどこかで流れを漕いでいく。

工房からの風に流れる流れは、いつもどこまでも限りなくやさしくあたたかく、朝露から涙のひとしずくまで、すべてが恩寵に満ちていた。
さいわいなるしらべが空に流れ、手入れの行き届いた、しかし自然そのものの輝きに満ちた草花が風に揺れて、慈雨ふりそそぎ、行き交うひとびとはやさしい微笑みに満ちて咲きほこっていた。

流転を続けながらいつもかわらずそこはサンクチュアリであった。
誰もが懸命だったから。
そのことすら忘れるほどに。

手から手へと渡されつながるバトン。
帰り際の晴々としたまなざし、笑顔・笑顔。

不穏の世すら颯爽と渡る世代の力強い立ち上がりを見守ることができた今年。
言葉にしつくせぬほど多くの学びを実践的に得た場だからこそ、未来ある若人へと譲り、つないでゆかねばならぬ。

ひとときならずこの場にたずさわれたことを誇りに、わたしはわたしの孤独の舟を果敢に漕ぎ進んでゆかねばならぬ。
未来は曖昧模糊としてあまりに不とうめいで、眠れぬ夜もあるだろう。
しかし、決まりきった路になどそもそも興味などなかったはずだ。

旅はつづく。
この星のうえ、空のした、巡りゆくせかいの片隅で。
あらたなる地平線を探して、それぞれに、ゆるやかに、交錯しつつ、まっさらな水面にあたらしい弧を描く。

・・・

稲垣さま

風人としてご一緒させていただき本当にありがとうございました。
稲垣さま、本間さま、宇佐美さま、スタッフの皆さま、風人、庭人、警備、設営、運営で会場を見守ってくださった方々、そして各地から精一杯を持って駆けつけてくださった出展作家の方々。
みなさまと共に過ごしきたすべての時間が、大切な宝物です。

こころからの尊敬と深い感謝をこめて。

Anima uni 長野麻紀子拝


(photo by hyakka)

『 工房からの風という場に、比喩ではなく実存として庭が育くまれ、来訪者の隣にあり続けることの意味を、おもう。』

『 工房からの風に流れる流れは、いつもどこまでも限りなくやさしくあたたかく、朝露から涙のひとしずくまで、すべてが恩寵に満ちていた。』

『 流転を続けながらいつもかわらずそこはサンクチュアリであった。
誰もが懸命だったから。
そのことすら忘れるほどに。』

どれもが想いを正確に磨き抜いた珠玉の言葉で、詩そのもの。
このような想いの方たち「風人」さんが、出展作家を支え、「工房からの風」の骨格となってくださっていること。
あらためて、深く、しみじみと感謝したいと思います。

風人からの風の映像もトリ(最後)に登場されています。
→ click

長野麻紀子さんのHPはこちらです。
click

director's voice | コメントする

落合可南子さんから

おりひめ神社の奥。
穏やかなモノトーン。
ろうの光に包まれた空間がありました。

ろう作家の落合可南子さんからのメールの一部をお届けします。

昨日は無事家路に辿り着きました!
出展が決まり昨日まで、本当にお世話になりました。

初めての野外での不安を皆様に手厚くサポートして頂き感謝でしかありません。
初日が終わり稲垣さんから頂いた作家宛のメール、心に響きました。
メールに書かれてあったことを参考に、二日目はレイアウトを変更したことにより多くのご来場者と初日よりたくさんお話ができました。
初日は作品を見せる方に頭が行き過ぎ、大事な対面での会話をすることを忘れていたような気がします。
気づきを頂けて本当に良かったです。

工房からの風は出展経験のある作家さん達から
「作家としての人生観が変わる経験ができる!」
と聞いていたのですが、自分のこれからの作家としての在り方と向き合えた日々でもありました。
出展させて頂けたことを光栄に思います。

稲垣さんの作家愛にも感銘を受け、スタッフ皆様が愛に溢れ共有させて頂けたことに本当に心がいっぱいです。。
反省点は数えたらキリが無いのですが、、

いつかまた、ひとつの風が吹かせらるようになった時に応募させてください!
感謝しても仕切れませんが心より感謝申し上げます。

またいつかお会い出来る時を楽しみにしております。

落合可南子

(photo by hyakka)

『作家としての人生観が変わる経験ができる!』

強烈なプッシュ!でお薦めくださった作家の方、こちらからも御礼申し上げます。

人生観というのかはわかりませんが、要は「リスペクト」なのだと思っています。
ものづくりという仕事自体へのリスペクト。
ものづくりである自分自身へのリスペクト。

ひとりで籠っての制作が続いたり、たまに出かけた先でよい想いができなかったりすると、気持が小さくなってしまうこともありますね。
所謂、自己肯定感が低くなってしまう方も多いような気がします。

でも、工房からの風で堂々とそれぞれの仕事を示す姿に触れることで、
「これでいいんだ、これがいいんだ」って気づき合えるような気がします。
また、お客様もものづくりへのリスペクトがある方が多いので、きっと励まされたことでしょう。

自らが出会い、ちからを注いできた「つくる仕事」を、ぜひ志高くこれからも続けてほしい。
「工房からの風」の願いです。

落合可南子さんの出展前のメッセージはこちらです。
→ click

director's voice | コメントする

平戸香菜さんから

ニッケ鎮守の杜、galleryらふとと手仕事の庭の花壇の間。
金属の作品を展示されていた平戸加菜さんからのメールの一部をお届けします。

(photo by hyakka)

この度は大変お世話になりました。

昨日は富山の自宅にはAM1:30に無事つきました!
バタバタと撤収し、皆様にきちんとご挨拶できずに申し訳ありません。

本当に、はじめてのクラフトフェアが「工房からの風」で良かったです。

稲垣さんからたくさんのアドバイスや注意点を折に触れてご連絡いただくことで、息が詰まりそうになるときに、ふっと楽になることが何度あったかわかりません。

会場内の風人さんや庭人さんが、いつも笑顔で挨拶して声をかけてくださることも嬉しかったです。
初めての出展ですし、ずっと暇だったらどうしようーと思っていましたが、初日は息着く間もないくらいお客様にきていただいたことは嬉しい誤算でした。
本当にありがたい限りです。

きちんと作品をみにきてくださっているお客様ばかりで、そのことにも感銘を受けました。
2日目も時間あるかなーと周りの展示を見に行くと誰かがきてくださる、、という感じで、きちんと他の皆さんのブースが回れなかったことが心残りです。

自分の甘さや反省点は沢山ありますが、2日目の雨上がりの庭の美しさと光が今記憶に焼き付いています。

とりとめのない文章になってしまいましたが、とにかくお伝えしたいのは関わったすべての皆さんへの感謝の気持ちです。

本当にありがとうございました。

平戸香菜

『 きちんと作品をみにきてくださっているお客様ばかりで、そのことにも感銘を受けました。』

そうなんです。
出展作家さんの感想でとても多いのがこのこと。
お客様がとってもものづくりに理解と関心があって、優しいと。

このことは、ミーティングでもお話ししているのですが、実体験してみないとピンとこないのかもしれません。
開催当日で、皆さん心にしみじみ感じられるみたいです。

上のバングル作りの映像も公開していましたので、たくさんの方に作品を見ていただきましたね。
金属ならではの立体感や滑らかさが、一層伝わっていたように思います。

ご夫婦で楽しそうに並んでお話しくださった平戸さん。
すぐにそのシーンの写真を掲載できませんが、風人さんたちから届く画像の中にありましたら、こちらに掲載させていただきますね。

平戸香菜さんの出展前のメッセージはこちらです。
→ click

director's voice | コメントする

岡林厚志さんから

ふたたび、風人さんからも。
岡林厚志さん。
風人からの風テントで放映していた映像の多くの撮影とすべての編集も行ってくださいました。
写真もすごくいいんですよね。
あとからになりますが、いただいたら、こちらにも掲載させていただきます。

(他にも、風人さんとしての絶妙な特技があるんです。
車の誘導。
hyakkaさんの「オーライ、オーライ、オーライ・・・」の声と手ぶりが、工房からの風のあとしばらく残ります(笑))

今年は本当にお庭が美しかったですね…。
鎮守の杜の色暦」の映像のために撮影しているときも、お庭の映像だけで長尺になってしまいそうなくらい、心惹かれる景色ばかりでした。
この恵みの年に「鎮守の杜の色暦」の取り組みができたことは、お庭からの祝福に他ありませんね。

会場を巡回している際も、お庭の美しさに心奪われる瞬間が何度もありました。
雨上がりがまた美しくて。
2日目、1日目よりも晴れやかな表情の出展者さんが多かったのも、もしかしたら雨上がりの解放感のおかげもあるかもしれませんね。


(photo by hyakka)


(photo by hyakka)

ところで、トークショーでお庭の土の話になった時に思い出したことがありました。
我が家の庭の車庫を庭師さんに施工して頂いた時にその方が仰っていたのですが、
豊かな森では、土の中に菌類による「菌糸ネットワーク」というものがあるそうです。
土中の菌類を介して植物たちは情報や栄養をやりとりしているんだとか。

病害虫が流行った時に森全体が壊滅しないようにその情報を伝えたり、大きな木が小さな幼木に栄養を送ったりもしているそうです。
森の中でひとつの社会ができているわけですね。
もしかしたら、ここの庭にも同じシステムができているのかもしれません。

手仕事や工藝の世界でも、作家同士が繋がりあって、直接的でなくともそっと支え合い、工藝の世界全体が豊かな森のようになっていけるといいですね。
そういう意味では、「工房からの風」は土の中の菌の役目を担っているのかもしれません。


(photo by hyakka)


(photo by hyakka)

今年は風人からの風の映像のために作家同士で深い話をする機会にも恵まれ、例年以上に頭も心もフル回転!
その分、たくさん刺激を頂き、様々に思考を巡らし、充実した年となりました。
これも「工房からの風」がなければ繋がらなかったことですね。

改めまして、この度も大変お世話になりました。
コロナ禍の苦しい時にあっても灯を絶やさず続けてこられたことが結実したような会でしたね。
本当に大変なことだったと思います。
誠に、ありがとうございます!

来年の展開はまだわかりませんが、さらに土を膨よかにできるようなお手伝いができればと思っています。

hyakka 岡林厚志

(photo by hyakka)

(photo by hyakka)

『 手仕事や工藝の世界でも、作家同士が繋がりあって、直接的でなくともそっと支え合い、工藝の世界全体が豊かな森のようになっていけるといいですね。』

素敵な感じ方、考え方ですね。
今年は季節の巡りの幸いもあって、お庭の草花が史上最高に工房からの風の日にマッチしていました。
多様な草花が重層的に息づいていて、それぞれが美しくあって、そして他者をも美しく映えさせるというような。
庭の在り方は、仕事、生き方にとても響くものですね。

諸々整えて、風人からの風のテントで限定公開していた映像もまもなく一般公開いたします。
準備が整いましたら、また、お知らせいたしますね。
&岡林さんの美しい写真もこの頁で更新しましょう。

岡林厚志さんのHPはこちらです。
→ click