2024年 工房からの風

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mnoi(革)

Q1
ニッケコルトンプラザにもほど近い船橋市を拠点に制作をされるmnoi(ムノイ)。
革作家・Natsuki Ishiharaさんと、金属装飾家・Miki Otsuka さん夫妻のブランドです。
mnoiさんは「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
シンプルな物に装飾的な真鍮チャームを合わせた革小物、素材の特徴を活かしたバッグ。
真鍮では透かし彫りという技法などを使ったアクセサリーを出品致します。

出身地である兵庫県のたつの市や姫路の革を使っています。
また質感から色のムラまでこだわったオリジナルレザー開発もしております。

1000年以上あると言われる日本の皮革の歴史
私たちの作品でタンナーさんの素晴らしさも感じて頂ければと思っています。

今その空間にある モノ としての美しさ、力強さをお伝えできればと願っております。

Q2
mnoiさんの工房で、大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください

A2
革や生地の仮止めや圧着させる際に使う接着剤を塗る竹べら。
弟子入りの最初に渡される道具です。
それから自分に合う角度に削ったりしていきます。
扱いも難しく今では中々使っている方も少ないのではないかと思います。
実際、私自身もプラスチック製を使うことが多くなったのですが、お手入れをしながら、あの時の気持ち忘れない象徴的な道具となっています。

Q3
mnoiさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
祖母が制作した陶器のカップです。
華道や茶道の先生をしており、展覧会で使う花器や日用品を制作している姿は小さい頃の美しい記憶です。
物作りは祖母から受け継ぎ、残してくれた事だと感じています。
そのカップでコーヒーを飲み1日の作業をスタートさせる大切な物です。

小さい頃の美しい記憶。
そのフレーズそのものが美しいですね。
mnoiの生み出すものから感じる美しさ。
ぜひ、会場でお手に取ってご覧ください。

monoiの出展場所は、おりひめ神社のお社の脇。
ホームページはこちらです。
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TSU ZU KU(革)

Q1
TSU ZU KU(ツヅク)という工房名で作品を発表している齊藤篤さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
TSU ZU KU(ツヅク)は、神奈川県鎌倉市で革の工房兼店舗として営んでいます。
使う方が「永く使い続けたい」と思える革ものたちを、「永く作り続けていきたい」という想いから私たちの屋号は生まれました。
主に日用品であるバッグ・お財布、カードケースなどの小物や仕事道具入れなどを製作していますが、今回はお財布を中心にご用意します。
イタリアの伝統的なバケッタ製法で鞣された革を使用した、しっとりと手に馴染むお財布を手に取って実感いただきたいと思います。

会場で並べるお財布は、使う方のライフスタイルを想像し、数種類のデザインで作ったものたちです。
コイン&カードケース、薄いお財布、子どもから大人まで使えるお財布、薄い長財布、収納力たっぷりの長財布。
様々な暮らし方が選択できるこの時代に直結するお財布を、ぜひお手にとってご覧ください。
また、作品一つ一つには愛着を込めて名前がついています。使い勝手や見た目、直感から名付けた愛称にもご注目ください。

できるだけ横幅の長さを抑え、お札がぴったり入るサイズにしました。
ポケットや仕切りが多く、収納力がたっぷりあります。また、蓋を開けるワンアクションですべてが見渡せるので、お会計がスムーズです。

手のひらサイズの薄いお財布。
キャッシュレス決済がメインの方や旅行などお出掛け用の財布として使いたい方に便利なお財布です。

クリスマスなどの贈り物用にはリボンをお付けしますのでお声かけください。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
一番先に思い付いたものは、「千枚通し」です。
革でものづくりを始めた時から20年以上経った今も、変わらず同じものを使っています。
接着、けがき等用途に合わせて使い分けて使用していますが、ほぼ毎日使うので製作には欠かせない道具です。
自分が使いやすい角度になるよう、先端部分を用途に合わせヤスリで整えて使っています。
どこの革工房にも必ずある、なんてことのない千枚通しですが、自分にとっては相棒のような存在です。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
フィンランドで作られたマグカップ「ククサ」です。
ラップランド地方で育った白樺の木の瘤をくり貫いて作られた手仕事に、どれだけ時間がかかったかと想像するだけで溜息がでます。
使って15年経ちますが、革同様に経年変化が楽しく、「自分だけの色」に育っていくところが特に気に入っています。

「永く使い続けたい」と思える革ものたちを「永く作り続けていきたい」
明解な想いを工房名、ブランド名とした齊藤さん。
今展ではお財布も充実させた展開になるそうです。

個人的にびっくりしたのは、12年来通っているcotonさんという美容室のオーナーのシザーケースを齊藤さんが作っていたと、この夏に知ったこと。

齋藤さんは、私がその美容室に通っていることをご存じなかったのですが、髪を切ってもらいながら、そのオーナーの方に教えていただいたのでした。

その方がアシスタントから独立した記念に作った20年物とのこと。
使いやすく、なくてはならないものとなったというシザーケースは、まさにTSU ZU KUのスピリッツを表しているようでした。

(この写真は稲垣のスナップです。)

TSU ZU KUさんの映像もインスタ版を公開しました。
こちらもご覧ください。
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TSU ZU KUさんの出展場所は、コルトン広場、スペイン階段前
ホームページはこちらになります。
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oceano(革)

Q1
静岡県富士市で〈oceano〉というブランド名で革の作品を制作する阿部洋太さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
革という素材を使うことによって出てくる素敵さや、可笑しみを大事にしてつくられた〈oceano〉の革製品を出品します。
〈oceano〉は阿部洋太がデザインから縫製、仕上げまでを手がける革製品のブランドです。

私が〈oceano〉の製品をデザインするときは、何か“ひとつ”の理由やモチーフをフォルムに溶け込ませています。
その“ひとつ”あるフォルムを持つ日用品は、どこか愛嬌や可笑しみを帯び、使い勝手の良い道具でありつつも日常に楽しみを与えてくれます。

“Wet-form”の帽子

革小物でよく使われる技法を大きな曲面で使うことで、不思議なフォルムを持った革製品という印象が生まれました。
革であることの可笑しみや素敵さを楽しめるモノを作っていこうという気持ちを込めて、この帽子を<oceano>の代表作としています。

“牛革”のオーナメント

折とカットで美しくも可愛らしい牛のフォルムを表現したオーナメント。

製作時にどうしても出てしまう革の端切れを利用するために作り始めました。
捨てるような端切れでも、造形を施すことで人々に大切にされる存在にできるということは、作家としての矜持でもあります。

私は手で物を作るのが好きで、それを生業にできたらとぼんやり考えているような人間でした。

デザイナーを志したり、鞄制作会社に勤めてもみましたが、どうしても自分でデザインから制作までを手掛けたくなって独立して作ったのが<oceano>です。
名前も革細工を始めたメキシコ滞在時の私の渾名からつけたもので、このブランド自体が私の作家としての姿となっています。

なかなかに自分勝手な活動理由ですが、好きなことをやるのであれば、そこに自信と誇りを持ってやろうという気持ちで日々製作しています。

Q2
oceanoさんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
革の裁断や手漉き、コバ処理などに使っている「革包丁」です。

私が革細工を始めたメキシコ南部の町では、質の良い道具が手に入りませんでした。
現地の革細工師に教わって、ペティナイフを逐一研ぎながら使っているような状態でした。

そんなおり、日本から遊びに来ることになった妻にお願いして、日本の革包丁を砥石と一緒に買ってきてもらったのです。
その切れ味の気持ちよさと言ったらありません。
すっかり気を良くして、その後の南米縦断に砥石とともに持っていくなどという、今思えばおかしなこともしました(南極帰りの革包丁を持つ人はそういないでしょう)。

この革包丁は革に関わるモノの中で、一番古くから私のそばにある大切な道具です。
私の作るものたちがこうして使い手と長く過ごせるよう、誠実に質の良いものを作る作家でありたいです。

Q3
oceanoさんのお手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
メキシコで手に入れた「鶏の鍋掴み」です。
メキシコ南部のインディヘナ達が織った布と、ざっくりした鶏のシルエットが可愛いですね。
滞在中にお世話になった叔母の家のキッチンで使っており、その街を離れるときにお土産として市場で買って帰りました。
ビジュアルが良いだけでなく、頭を摘んで持ったりと絶妙に使い勝手が良くて気に入っています。

今回、革で出展される作家は4名。
皆さん個性がはっきり立ち上がっていて、何をどのように作るかが明確です。
oceanoならではの感覚から生まれたフォルム、とても新鮮ですね。

また、メキシコにゆかりがあるとのこと。
「鶏の鍋掴み」に日々触れながら、彼の地で感じたsomething。
oceanoのものづくりのエッセンスに潜んでいるのかもしれません。

oceanoの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入って右手に4つ並んだテント。
ホームページはこちらです。
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enku (革)

Q1
東京都多摩市で制作をするenkuの原田賢一さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
藍の葉を発酵させたすくもと呼ばれる染料から藍を建て、天然の藍のみで染色し、様々な革小物を製作しております。

革はすぐには染まらない為に手のかかる素材ですが、一切色を足したりせず藍だけでここまで濃く染め上げております。
革も藍も天然素材ですので、二つとして同じ状態の物はありません。
それぞれの状態を見極めながら、一枚ごとに合わせて少しづつ工程を変えながら染色を行っております。
染料と時間をかけ徐々に色づき奥深さを増していく様は、革を育てているような感覚。
手がける時間が長い程、愛着も増していきます。

革というのは不思議なもので、同じものを作っても使い手により様々な表情に変化してまいります。
共に過ごした時間と共に愛着を増していく革が、より自然に近く温かみを感じるものであったらと思い作り続けております。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
この仕事を始める頃からお世話になっている、今は無き加賀谷刃物製作所さんの革包丁です。
職人気質が多い浅草周辺で、何も知らない若手にも刃物のイロハや研ぎ方など優しく丁寧に教えてくださいました。
革包丁以外にも道具の選び方を教えていただいたり、こんな道具があったらと相談すると、食い切りやケガキ、時には特注で製作してくれたフチ捻やヘリ落としなど用意していただきました。
今でも私の仕事を支えてくれている大切な道具達ばかりです。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
300年以上の歴史を持ち、東京都の伝統工芸品に指定されている江戸屋さんの「引き染め刷毛」です。
革に染料を馴染ませたり、型染のノリを落としたり、藍を落とす時や革を濯ぐ際など、私の染色工程に欠かせない道具として愛用しています。
今では親指と人差し指で握り、形も重さも心地よく感じるくらいに馴染んでおります。

藍が見事に染みついた頼もしい手。
布ではなく革を染めてのものづくり。
なかなか出会えない独自の展開を進めるenku、原田さんのお仕事です。

今回、12名の作家の制作光景を映像を編集したものを制作しています。
youtube版は少し長めで、インスタグラム版は短めに制作しました。
enkuさんも登場しているインスタグラム版はこちらになります。
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工房からの風、当日のenkuさんの出展場所は、おりひめ神社、お社の裏手。
ホームページはこちらです。
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ハレの日へ

あと16日。

今年の「工房からの風」の開幕が迫ってきました。

第21回となる今展の特徴。
それは、ひとりひとりの作家のブースが、輝いて立ち上がっていること。

コロナ禍で3年間できなかった事前ミーティングを行ったことで、各作家が自身の仕事について深く考えて、それに基づいて準備に進めてきました。

その実りは、当日の各テントで豊かに花開いていることと確信しています。

そう確信している理由の一つが、明日からこの場でご紹介していく作家からのメッセージ。
例年以上に自身の仕事について、とても丁寧に伝わる文章や写真が届いています。
まとめている私が、読みながらほんとうにワクワクしてくるのです。

ただなんとなく作品を持ってきて並べる。
そんな作家は「工房からの風」には、ひとりもいません。

作品の豊かさ、その展示の仕方、自身の仕事のプレゼンテーション。
個展が50ブース集まったような第21回「工房からの風」。
10月 28日 29日の土日。
ぜひ、カレンダーにチェックしてくださいね。
そして、ものづくりとそれを心に響かせてくださる方々が集うことで生まれる、清々しくも優しい人の笑顔が満ちた「工房からの風」に、ぜひご来場ください。
出展作家、風人作家、主催者一同、皆様のご来場をお待ち申し上げております。

:::

出展作家50ブースと共に、今展では風人(かぜびと)と呼ばれる、企画に加わってくださる16人の作家の方々の展開も輝きがひとしおです。

出展作家からのメッセージを前に、今日はこちらをさくっと(個々にはあらためて)ご紹介いたしましょう。

制作光景動画放映/デモンストレーション/トークセッション
1 「南京鉋で削る木の道具」 杉田創作 (木工)
2 「手箒と小箒」 吉田慎司 (箒)
3 「タタラ作りで陶のうつわを作る」大野七実 (陶)
4 「木のボウルを彫る、削る」 片田学 (木工)
5 「家具を作る」 hyakka (木工)
6 「上映会&トークイベント」-風の実りと風人-
岡林厚志(hyakka 風人)× 吉田慎司(中津箒 風人)× 稲垣早苗(工房からの風ディレクター)

鎮守の杜の色暦
ニッケ鎮守の杜・手仕事の庭で約20年にわたって続けてきた草木染めの営み。
製本家の本間あずささんによって、「Book」にまとめ、
RIRI TEXTILEの和泉綾子さんによって、布に織りあげ、当日は草木染めのデモンストレーション(制作公開)を。

素材の学校
こどもが工藝に触れる喜び。
ものが作られていく過程を見聞、体験。
大人の(工藝作家の)本気!を感じてもらう「素材の学校」という企画を10年以上続けてきました。
いつの日にか、このワークショップを体験した子どもが、出展作家として参加することも夢見て!

金属の時間「刻印キーホルダーを作ろう」川崎千明
金属の時間「たたいて作る錫(すず)の腕輪」川崎千明
紙の時間「かお、顔、どんなかお?再生紙で作る壁飾り」森友見子
綿の時間「綿の糸を指で織る」磯敦子
木の時間「いろんな木でお魚を作ろう!」鈴木友子(もくのすけ)
竹の時間「竹のオーナメント」勢司恵美
フェルトの時間「お水でゴシゴシ、羊毛フェルト」西澤泉(IZOOMI)
綿と紙の時間「綿と紙で作るスイーツ」森友見子×磯敦子
キッズ庭めぐりツアー 風人
(詳細は、別記事でご案内しますね)

風の光 – 小さな万華鏡を作る
アトリエ倭による恒例となった木工ワークショップ。
今年は、万華鏡づくりです。
子どもから大人まで、どなたもご参加いただけます。 

ほかにも、特別編集の制作光景動画の公開など、ここから2週間、webやSNSを通じて、「工房からの風」のプレゼンテーションを行っていきます。
ハレの日、二日間をより心から楽しんでいただけますように、ぜひ、このサイトやインスタグラム→clickをご覧ください。

さあ、明日から、出展作家からのメッセージをお届けします。
定番の
Q1
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
の他に、今年は以下のような質問にお答えいただきました。
Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。
Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

Q2とQ3は、どちらか、あるいは両方をお答えいただいています。

ではでは、どうぞお楽しみに~

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第21回 工房からの風 craft in action

第21回 工房からの風 のご案内をいたします。

10月28日(土)29日(日)10時から16時
50組の作家が北海道から沖縄、日本全国から選出されてニッケコルトンプラザにやってきます。

今年のキービジュアルも公開いたします。

毎年恒例となった大野八生さんによる描きおろしです。

会場の一部、「ニッケ鎮守の杜」に茂る植物が散りばめられた画面に、
さまざまな種や実、そして工藝品が手のひらに載せられています。

手から手へ

シンプルに、原点を思いつつ、今の風を感じあえる展覧会を目指します。

:::

昨日は、北海道からの出展作家の方と電話でお話を。
「こちら、準備を整えていますから、安心していらしてくださいねー」
と最後にお伝えしたところ、
「会場は田舎ではないですよね?」
と、ちょっと不安そうなお声。

「ええ、街なかですねー」
とお答えすると
「都会の道路、車事情がちょっと心配で・・・」
とのこと。

フェリーで茨城県の大洗まで来られて、そのあと自家用車でコルトンプラザへ。

あらためて、すごいことなんだなって思いました。
大変な思いをして遠くからはるばる来てくださる作家の方々。
ああ、来てよかった!
すべての出展作家にそう思っていただきたいと心から思いました。

ああ、来てよかった!
そう思える一番のこと。
それは出会い、だと思っています。

そのもっとも大きな実りが、来場くださる皆様との出会い、なんですね。
作品を介して会場で交わされる豊かなやりとり。
かけがえのないその恵みを目指して、全国津々浦々からやってきてくださる出展作家。

その魅力的なお仕事と想いのご紹介も、間もなくこちらからも始まります。

21回目の工房からの風
来場くださる皆様の手に、心に触れるものが豊かでありますように。

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根は深く、風は新しく

6月の暦、間もなくめくる頃となりました。
今年の「工房からの風」まで、ちょうどあと4か月!
準備もここから佳境に入っていきます。

風人を担ってくださっている、箒を作る吉田慎司さんが書かれた「工房からの風」の記事が掲載されました。

社会デザインをテーマに研究されている立教大学名誉教授の中村陽一さんのサイト。
こちらに、吉田慎司さんが「この手で変えられる世界の一部 箒で伝えられるもの」という記事を連載中です。

→ click

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独自で異なる色を放つ場所

根は深く、風は新しく

特別な「場」として育まれてきた理由

という各段落に書かれているのは、実体験を基にした吉田さんの考察。
企画者の私が気づかなかったようなことも、客観的に感じて文章化してくださっています。

「・・・植物の声を聞きながら、伸び伸びと育つように手を入れ、共存し、互いが幸せな関係を築く。そんな庭なのだと思う。」
会場の一部、ニッケ鎮守の杜について書かれたくだりも、「植物」を「作り手」に置き換えて読むと、そういう場でありたいなぁと思うのでした。

「・・・作り手一人一人の力は、大きくはないかも知れないけれど、一つ一つの輝きはどこまでも尊く眩く、必ず誰かの希望となるものだと僕は信じている。
出展者、来場者、運営者と共に仕事を喜び、認め合える場所。
繋がりを得て、自らを深め、次へ進む礎となる場所に関われていることを、とても嬉しく、誇りに思う。」

今年の「工房からの風」も、ぜひそのような場になりますように!
出展作家の方々、風人さんたちとともに、この夏を豊かに送りたいと思います。

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庭に集う

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今年度の「工房からの風」(10月28日(土)29日(日)開催)へ応募いただくための要項を公開しております。
→ click

3月15日から31日必着です。
郵便配達が以前よりも遅くなっていますので、お早目のご準備をおすすめいたします。
また、出展が適していると思われる作り手の方をご存知でしたら、ぜひ情報をご案内くださいませ。
豊かな第21回「工房からの風」を皆さんと創りあげたいと希っております!

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3月に入って庭の手入れの日。
庭全体はまだ冬の名残りでさびしい雰囲気ですが、ひとつひとつ花が開いてきています。
ささやかな音色から、春爛漫、そして夏へと向かって、徐々に音量が豊かになっていく。
そんな目覚めを感じさせてくれる春の庭。

「工房からの風」の会場の一部「ニッケ鎮守の杜」(その中に、「手仕事の庭」という空間があります)の手入れは、私たち「工房からの風」「galleryらふと」スタッフが事務局となって運営しています。

具体的には、「工房からの風」のメインビジュアルを描いてくださっている大野八生さんに全体構成のアドバイスをいただき、月に3日ほど実際にお庭に入っていただいています。

そして、庭人さんとお呼びしている15名ほどの地域にお住いのボランティアさんが、共に庭作業を行ってくださっています。
(ちなみに、5月から新年度になり、新規庭人さんの募集も行います。
→ click)

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庭人さんと一緒に作業着で庭の手入れをしていながら、「庭」という言葉の豊かさについて考えていました。
自然そのものである草木。
その草木のままであれば、山野や草原。
けれど、庭という空間には、人の意思と行動が自然と結びついて姿を成している。

まるで工藝のようですね。
自然素材と人の想い(デザイン…)と手の技が結びついて成したかたち。

そして、庭では、さまざまな草木(そして虫やいきものたちも)が影響し合って育まれていきます。

コロナ禍のこの3年間。
新たに世に出ていこうとしていた作り手たちは、出会いの機会の消失の中で、必死に模索してこられたのではないでしょうか。
自らを発露するために、SNSなどを活用してこられた方も多かったことでしょう。
たとえば小さな植木鉢の中で、一生懸命花や実をつけようと励んだように。

今年、「庭」に出てこられませんか?
工房で蓄えてきた力を持った作り手たちが、庭に集う。
集ったことで、影響を受け、与え、成熟に向かう。
そんなイメージを抱いて。

ホースで水撒きをしながら、「工房からの風」という野外展が、庭づくりと響き合って存在していることが、不思議なくらい必然に感じられたのでした。
一年を通して、庭人さんたちと共に育んでいる庭。
そこに、全国からはるばる集ってくる瑞々しい作り手。
そんな年月が、20年以上も続いてきたこと。
小さな奇跡の集積が、この時空を存在させてくれている。

21回目の「工房からの風」。
豊かな出会いをこの庭で叶えていただけまうように。

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水撒きで出現!した虹。
新しい季節の始まりを祝福してくれているようでした。

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今年度「工房からの風」

今年度、第21回「工房からの風」のご案内をいたします。

開催日 : 2023年10月28日(土)29日(日)
応募期間: 2023年 3月15日(水)~31日(金)

まもなく2023年度の応募要項を公開いたします。

基本的には、2022年度に準じます。
出展作家は、55作家程の構成で行います。
2022年に出展された方にはご応募いただけません。
前後の週末となる10月21日(土)~11月5日(日)に、
個展、クラフトフェア、規模の大きな展覧会への出展がないこと。
などで行います。

今年度は、昨年以上に通常開催となることを願っています。
何より、「工房からの風」の特長である、開催前の交流の機会を活性させたいと思います。

佳き作り手の輪がひろがり、佳きものづくりが豊かに育まれることを願い、第21回展を企画いたします。

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「工房からの風」について取材、考察いただいた書籍が出版されました。

アートプレイスとパブリック・リレーションズ

川北眞紀子・南山大学教授/薗部 靖史・東洋大学教授 共著
有斐閣

5年ほど前から取材いただき、工房からの風本展はもちろん、
百貨店での関連催事や、大阪のニッケ本社への取材など、実に丁寧に考察、執筆くださいました。

取り上げられた活動はほかに、資生堂、ベネッセ、サントリー、トヨタ、大原美術館など充実したメセナ活動で、そちらの中で、ニッケの「工房からの風」の特性を客観的に執筆くださっています。

私たちは、工藝作家のよき仕事が育まれ、現代を生きる使い手の方々の心豊かな営みにつながることを願って企画運営していますが、
社会学、マーケティング、メセナ活動についての専門の方々に客観的に考察いただいたことは、活動の骨格を整え、筋肉を鍛えていただくような励みとなりました。

とても読みやすい文章で書かれてありますし、他の活動についても興味深い内容です。
よろしければぜひご一読いただけましたら幸いです。
→ click

当日の朗らかな楽しさ。
その楽しさを裏打ちする真剣さ。
「工房からの風」ならではの活動を、コロナ禍が落ち着いた中で、じっくり行っていきたい。
この書籍に書かれたことを、そのことへのエール、養分としていきたいと思っています。

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映像公開のお知らせ

「工房からの風」当日、花壇の奥に「風人からの風」というテントがありました。
20回展を記念して、年表やさまざまな展示物、掲出物、のほかに、映像も放映していました。

小泉すなお (陶芸) いとうゆり撮影
㔟司恵美  (竹細工)本人撮影
アトリエ倭 (木工) 本人撮影
RIRITEXTILE(染織) 中川碧沙撮影
大野七実  (陶芸) 本人撮影
岡林厚志  (木工) 本人撮影
編集 岡林厚志 敬称略

工房からの風の名のごとく、工房など制作の現場の光景が伝わるようにと、風人さんたちが作ったものです。
期間限定で公開いたします。
是非、ご覧くださいませ。

→ click

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風人:岡林厚志さんから

無事帰宅しました!
このメールをいただき、一区切りです。
あとほんの数名の方からをお待ちしていますが、この場の「凪ぐ浜の宝もの」の記事は、このへんで閉じたいと思います。

早、1週間、ですね。
私自身も力仕事、事務仕事、さまざまな風の後のあれこれに加え、
身心整えにも意外と時を要し、たくさんのメール全てにはお返事がとてもできそうにありません。
そして、確実にNEXTの仕事の波がやってきますね。
作家の皆様もきっとそうだと思います。

ひとときしっかりと今回のことを見つめ直し、できれば言葉に記して、そして、次へ。
こうして、また、お互いが今より熟した仕事でご一緒できますことを願っています。

:::

最後には、風人さんを代表して、いただいたメールをご許可をいただき転載しますね。
出展作家さんのメール99%に、風人さんへの感謝が記されていました。
(そして、ほんとうに多くの出展作家の方が、「工房からの風」のお客様があたたかい。
作品や作り手をちゃんと見てくださるすばらしいお客様だったと記されていました)
私からもこの場からあらためて御礼申し上げます。

自分のためじゃなくて、誰かのために、こんなにも楽しく動いてくださる方たち。
この気持ちが、また次の、未来の風人さんになって、よきものづくりにつながっていったらいいなぁと思っています。

今回、「風人からの風」という花壇の奥のテントで展開くださっていたのが、
大野七実さん、岡林厚志さん、吉田慎司さん。

代表して、岡林さんからのメールをご紹介いたします。

IMG_2688

長い準備期間を経ての本番の2日間、本当にお疲れ様でした。
そして、ありがとうございます!
20回の記念の年をお天道様も祝福しているかのような気持ちのいい晴天でしたね。
お庭の草花もとても美しく(秋明菊が本当に綺麗でした…)、おかげでたくさんの笑顔に溢れた2日間になったように思います。
僕もお手伝いさせて頂くようになってから、ここまで何の心配もなく晴れるのは初めてで、とても楽しい3日間になりました。
本当に何よりのプレゼントでしたね。

昨日は久しぶりにぐっすりと眠りました。
朝、木の葉の影映るカーテンを開けると、3日前まではまだ青い葉をつけていた庭の木々がちらほらと紅葉し始めていました。
ふと家の中の方に視線を移すと、子どもたちが忙しなく学校の準備をするなか、
南の窓から低く長く差し込んだ陽光が部屋のなかのもののかたちを写し取り、北の壁に影絵を作っていました。
まるで、工房からの風が吹き渡り、季節を一歩進ませたような、浦島太郎のような?気分に落ち入ってしばらく見入っていました。
そんななかテレビのニュースを何気なく観ていると、世界初のキリン研究者である89歳の女性が、若者に向けた言葉としてこんなことをおっしゃっていました。

「自分の船を他人に押させるな」

あまりにタイムリーな言葉に、必然的に風のことを連想しました。
自分の船は、自分独りで漕ぐもの。
行く方角を見定め、時に波に揉まれながらも、必死に櫂を漕いでゆく。
独りで船を進ませるのは辛いこともあるけれど、そんなとき、ふとあたりを見渡すと、同じように独りで船を漕ぐ人たちがいる。
向かう先はそれぞれで、併走する船もあれば、すれ違う船、前を横切る船もある。
それでも、船が近付くひとときに、こんな挨拶を交わせたら。
「こんにちは、お互いがんばりましょう」
それは船を進ませる大きな力になり、挨拶を受け取った方は、また別の場所で別の船に挨拶を交わし、
そうして工藝という大海原全体が温かな温度を持ったものになれば、ひとりひとりの漕ぎ手にとっても希望のあるものになることでしょう。
工房からの風は、その大きな一端を担っている場所だと思っています。

20回という長い時を通して、稲垣さんはじめ、スタッフの方や風人の方々が作り上げ、連綿と繋いできた想いが今、とても慈愛に満ちた場を作り出している。
僕もそれを受け取った一人として、次に繋いでいけたらと思っています。

20回、本当におめでとうございます。
ありがとうございます。

ゆっくりとはなかなかいかないかもしれませんが、
どうぞお身体しっかりと休めて下さい。

長文失礼しました。
今後ともどうぞよろしくお願い致します。

hyakka
岡林 厚志

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岡林さんは5回風人さんを担っていただきましたが、続けてくださる中で感じてくださったことが深くてありがたく、そしてちょっと驚いてしまいます。
惜しみなく我がこととして取り組んだ人だけが感じる何かなのでしょうか。
風人さんたちから、いつも私は学んでいるように思います。

目先の損得という小さなものごとで心を留めないで、
もっと大きな喜び、手応えに向かって漕いでいきたいですね。
その折々に手に実った作品を携えた作家の方たちと、この場で出会いたいと思います。
第20回「工房からの風」に関わってくださいました皆皆様に心より感謝申し上げます。

佳き出会いの風にのって、また、ぜひお会いいたしましょう。

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旅する羊さんから

おりひめ神社、鳥居のほとりで糸車で紡ぎながら展示をされていた旅する羊、猪又裕也さんからメールが届きました。

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この度は第20回『工房からの風』に出展させて頂きまして、誠にありがとうございました。

先般、無事に岩手に戻りました。
千葉より半歩ほど季節の進んだ北の地で、日常に戻りつつあります。

まずは、このコロナの情勢が読めない中開催を決断され、変則的ながらも万全の準備と臨機応変な運営のもと、無事に第20回展を開催して下さりありがとうございました。
そのおかげで、私にとっての初めての『工房からの風』のあの2日間、穏やかでいて澄んだ空気と陽光に包まれたニッケ鎮守の杜の光景は、今もきらきらと耀きをもって脳裏に焼き付いております。

おりひめ神社の鳥居の袂で、作品を携え、糸を紡ぎ、それを来場者の方々が温かく囲み、羊毛についてお話しする、まさに作り手冥利に尽きる空間でした。
そしてそれは、稲垣さんをはじめ、風人の皆さま、庭人の皆さま、昼夜を問わず警備をして下さった警備員の皆さま、私が思い至らない所で会を支えて下さった皆さまが、来場される方々や私たち出展者を思い続けてくれていたからこそだと、深く感じ入ります。

また、ありがたいことに初めてお会いした来場者の方から、後日温かなご連絡を頂きました。
それも思いが20年に渡り連綿と繋がれ、機運としてそよぎ続けてきた風の賜物と、感動と感謝に胸がいっぱいです。

何かと真剣に“向き合い、思い、行動する”ということの尊さを教わりました。
準備の期間から当日を経て今日に至るまで、そしてきっとこれからも、『工房からの風』は私に訴えかけ続けてくれる気がします。
教えも、出会いも、気付きも、反省も、成果も、この宝物をずっとずっと大切にします。

あらためまして、皆さま本当にありがとうございまいした。
自分の成すべき仕事に向き合い、また逢う日まで、しっかりと歩み続けたいと思います。
再会の日を心より楽しみにしております。

それでは、気候変化の激しい折、どうぞご自愛ください。

旅する羊
猪又裕也

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コロナ禍の中で、以前のような集まりの機会を持つことが難しかった今回。
その中でも、特設頁づくりでのやりとりを介して、猪又さんのひたむきなお仕事ぶりい触れることが出来て、当日、会場にお迎えすることができました。

おりひめ神社のほとりでの糸車を回しながら、たくさんの方たちと言葉を、想いを交わす光景は、
今展の中の忘れがたいいくつかの光景の中のひとつとなりました。

若い猪又さんのお仕事は始まったばかり。
続けていく中ではさまざまな局面が現れてくるかと思いますが、
この二日間に感じたものを初期感動のひとつとして、立ち戻れる心の場所のひとつにしていただけたらと思います。

旅する羊、猪又裕也さんの出展前のメッセージはこちらです。
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