2023年 工房からの風

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豊田陽子さん(染め布)

Q1
2017年に出展くださった豊田陽子さん。
今回の「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?

A1
手染めのものを中心に、その他、水彩で描いたデザイン画をもとに京都の染色工場でプリントしたテキスタイルを使ってストール・スカーフ・お洋服に仕立てたものを出品します。
また、バンダナなどの小物や暖簾も数点ですが出品する予定です。

普段は綿や麻などの素材を染めることが多いのですが、ウール素材はそれらと比べて使用する染料も生地の反応も変わるので、わたしにとってはコントロールが難しいのですが、今回は制約のある中でチャレンジしてみることで新たな扉が開けるかも?と悩みながらも楽しく、制作しました。

また、ここのところしばらく春夏の色味を染めることが多かったので、自分の中にある秋冬の季節の色を引き出しから引っ張ってきた感覚がありました。

まだ暑い最中に染めはじめ、今はもうすっかり肌寒い季節になり、景色を彩る色彩もかわり、そんな季節の空気のようなものをふわりと身につけられたらと思い、制作しました。

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Q2
豊田陽子さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
作業場の机(板)です。
1220mm×2200mmの大きな作業台なのですが、これを小さなアトリエにどーんと置いて染め作業をしています。
染めの工程や技法によってこの作業台を使ったり使わなかったりなのですが、この作業台にしてから8年くらい経ちます。

はじめは真っさらなきれいな板だったのですが、作業の成功や失敗、喜びや悔しさなどがこの板の上で繰り広げられ、色々な染料のシミや傷やらが少しずつ積み重なっていき、長い年月をかけてこのような模様(シミ)の台になりました。
自分が意図してつけた模様ではないのが面白く、これからもどんな風に変化していくのか楽しみです。

Q2

Q3
豊田陽子さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
染色の仕事をする前から工藝品は好きで、沢山持っている方かと思います。
現代の作家ものだと沢山ありすぎてあれもこれもと選定することが難しいので、他とは違う意味で大切にしているものです。

この花器は、祖母から母へそして私が結婚して長野に来るときに母から譲り受けました。
花器の底には「昭和五一年 四月一二日 母より頂く かね子」と、墨なのかマジックなのか、祖母の字で書かれています。
それが祖母らしくてこの花器の底を見るたびに笑ってしまうのですが、これは曾祖母が買ったものなのか、もしくは曾祖母も誰かから譲りうけたものなのか、どこのものなのか全くわかりません。

母もわからず、祖母はもう亡くなっているので解明しようがないのですが、長い年月をかけて世代を超えて私の手元にきたこと、私の知らない遠い昔に思いを馳せたり、ちょっと可笑しくて、なんとなく不思議で何にも代えがたい愛おしい花器です。

Q3 (1)

花器のお話し、とても素敵ですね。
大切に作られたものを、大切に使う。
そして、その遺されたものを、大切に引き継ぐ。
「工房からの風」に出展されるものは、それに値するものなのではないでしょうか。
豊田さんの作品の行く末にもきっとストーリーが生まれますね。

豊田陽子さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入ってすぐの小高いスペース。
作家ページはこちらになります。
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CHIAKI KAWASAKI(金属装身具)

Q1
昨年は風人さんとして会を支えてくださった川崎千明さん。
今年は彫金作家のCHIAKI KAWASAKIさんとして出展くださいます。
CHIAKI KAWASAKIさん、今回の「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?

A1
主にシルバーや真鍮といった金属素材で制作した動物モチーフの装身具を中心に出品いたします。

鏨(たがね)と呼ばれる道具を使って金属の板をたたいたり、刻印を施したりする打ち出し技法を用いてつくったネックレスやブローチ、耳飾りのほか、近年取り組んでいる真鍮の薄板に刻印をほどこしてつくる、しおりもバリエーション豊かに展開します。
表と裏の模様が違うので、ぜひひっくり返してご覧いただきたいです。

そのほかに、なぜか急につくりたくなった、とぼけた表情のお魚モチーフのピンブローチなども並びます。

ふわふわな動物はふわふわに、ごわごわしていそうな動物はごわごわに…
硬い金属ですが、動物たちの柔らかさに少しでも近づけるように試行錯誤しながら制作しています。
王道からちょっとマイナーな種類まで、いろいろな動物を連れて行きますので、お気に入りの動物をさがしてみてください。

CHIAKI KAWASAKI_Q1_打ち出しネックレス

CHIAKI KAWASAKI_Q1_真鍮のしおり

CHIAKI KAWASAKI_Q1_お魚ブローチ

Q2
CHIAKI KAWASAKIさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
いつも使っている道具、糸ノコです。
糸ノコ刃をセットして、金属や木を切ったりするときに使う道具ですが、
おそらく一番付き合いの長い道具ではないかと思います。

作品を仕上げるのにはたくさんの工程がありますが
まず、材料を正確に切り出すところから。
学生時代から使っているので、道具の持っているクセのようなものも
良く分かっているし、いちばん使いやすいです。

今後も作品づくりを支える縁の下の力持ちとして
活躍してくれると思います。

CHIAKI KAWASAKI_Q2_糸ノコ

Q3
自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
祖母から譲り受けた、漆塗りの小箱です。
洋裁をやっていた祖母は、ミシン糸を入れていたのですが、私はミニ裁縫箱として使っています。

もっと大きな裁縫箱も別にあるのですが、ちょっとボタンが取れたとか、ちょっとだけ縫いたいものがある時、とても軽くて出しやすいので、もっぱらこちらを使っています。

何となく色味が緑青のふいた真鍮風なところも気に入っております。

CHIAKI KAWASAKI_Q3_漆の小箱

多摩動物園の年間パスを持って通う川崎さん。
笑顔の瞳の奥に、動物への想いが豊かにあふれて、その想いが金属の装身具などの作品になっていきます。
今回も、さながら動物園のようなブースになるのでは・・・と思いきや、水族館も併設⁉されているような・・・。
動物、海洋生物・・・を愛おしむ方々で人気のブースになりますね。

CHIAKI KAWASAKIさんの出展ブースはニッケ鎮守の杜の中央部。
作家ページはこちらになります。
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inch”(ビーズ装身具)

Q1
2018年に出展くださったinch”さん。
今回の「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
編んで編んで編み込んで、余計なものを削ぎ落とし、出来るだけ編み図もシンプルに。
そうして“必然”的な形になったinch”の粋となる作品です。

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Q2
inch”さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
糸玉を入れるための器です。
作業するときに目に触れるものは、温もりのあるもの美しいもの、愛おしめるものでないと良いものは創り出せないのではないかと気づき、それまで使っていたプラスチック容器をやめ、母に制作してもらいました。
ずんぐり丸い形、飴釉の美味しそうな照りが栗饅頭のようで、糸を引き出すときに鳴るカロコロという音まで愛おしく、「どんぐり」と呼んで愛用しています。
勢いよく糸を引き出しても糸玉が飛び出さないよう蓋付で、大きい糸玉も入る大きさ。
プラスチックから陶器になったことで重量が出、ずれることなく安定して糸を引き出せるようにもなりました。
手放すことのできない道具のひとつです。

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Q3
inch”さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
もう20年以上ほぼ外すことなくしている指輪です。
指にあるのが自然で、これをしていることで自分が完成されると思われるくらい個性のひとつになっています。
この指輪のように長く使い続けられ、つけることでより自分らしく、快適で居られるような作品を作りたいと思っています。

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inch”さんの作品は、こまやかな手仕事ながら、完成した姿はクールでどこかロックな感じがします。
けれど、
『作業するときに目に触れるものは、温もりのあるもの美しいもの、愛おしめるものでないと良いものは創り出せないのでは』
との想いで、このような素敵な道具を傍らに制作されているんですね。
inch”さんの作品の魅力の奥行きの一端に触れた想いがしました。

inch”さんの出展場所は、コルトン広場スペイン階段前の大きなテントの一画。
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山下透さん(陶芸)

京都市で作陶する山下透さん。
2016年以来6年ぶりに「工房からの風」にやってきてくださいます。

Q1
山下透さんは「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?

A1
青い器は素地の凹凸と釉薬の濃淡で模様が浮き上がる、「葉と実」と名付けた皿です。
飴色の器は表札やタイルを制作する際に使っていた装飾を、器にも彫りはじめた新しい作品です。

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Q2
山下透さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
マグカップのハンドルをつくる石膏型。
陶芸の仕事をはじめた頃に試行錯誤して作ったので不恰好ですが、以来10年以上使い続けています。
これまでたくさんマグカップを作りましたが、その全てにこの型から作ったハンドルがついている、と思うと感慨深く。
作家としての原点のひとつのような気がしています。

Q2

Q3
山下透さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
小さなグラスで飲むビールをウチでは小ビールと呼んでいて、いくつかあるお気に入りのひとつが左藤玲郎さん作のモールグラスです。
分厚さはあるけれど重たくない。
モールのデザインも軽やかで手にしっくりとなじみます。
仕事終わりの晩酌に、気持ちがほどける器です。

Q3

青や飴色といった色合いがまず美しい山下さんの器。
「葉と実」の文様もまた愛らしく、料理が映えそうですね。
食器棚に揃えたくなるシリーズ、ぜひご覧になってください。

山下透さんの出展場所は、コルトン広場モニュメント周り。
お庭に向かう南側です。

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金城貴史さん(木工)

ここまで女性の作家からのメッセージが続きましたが(極楽寺がらすの岩沢彰一郎さんをのぞいて)、
今年は例年よりも男性作家が多い年になりました。
今時、性差でものごとを分けるのはナンセンスではありますが、
腕力の活かされた作品が例年よりも多いかも知れません。

岐阜県中津川市で制作する金城貴史さんは、木の匙に絞って制作を深める作り手。
2回目の出展となります。

Q1
金城貴史さんは「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?

A1
様々な形・用途・大きさの木の匙を展示します。
型紙を用いて製作する、食事用・調理用の匙と、型紙を用いず即興的に造形する取り分け用の大匙があります。
心が動く一本との出会いがありましたら、幸いです。

 

ジャム匙

汁蓮華

大匙

Q2
金城貴史さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

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作業机の正面の棚に、収集した古物の匙を並べています。
地域・時代を超えて、自分の中の匙の枠を広げてくれる物たちです。
匙に囲まれ、匙を作っています。

工房

Q3
金城貴史さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A
3大きな古い竹籠で、お世話になっていたギャラリーの方から頂いた物です。
季節になると、箱で買ってきたミカンを、ヘタを下にして竹籠に並べます。
暖房の届かない玄関先に置いてある、竹籠いっぱいのミカンが、我が家の冬の風景です。

竹籠

匙、スプーン。
ひとが食べ物を口に運ぶ古来からある生きていくための道具。

ひとつのものを深く追求しながらのものづくりは、どこか哲学的な行為でもあるように感じます。
使う人が使いやすいように。
心地よく、おいしくものが食べられるように。
そして、それが美しいものであるように。

金城貴史さんのブースは、ニッケ鎮守の杜、稲荷社の脇。
これからの日々の食事の友(伴)になる作品を探しにお訪ねください。

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atelier bōc (製本)

5年前、空想製本屋という名前で出展くださった本間あずささん。
今回は、自ら主宰される自作手製本レーベル atelier bōc として出展くださいます。

Q1
atelier bōcさんは、工房からの風に、どのような作品を出品されますか?

A1
読むだけでなく、生活の中で飾ったり、季節のしつらいとして楽しめる手製本作品を紹介したいと思います。

雨にまつわる言葉が刷られ、本を開くと吊るしてオーナメントのようにも楽しめる『雨音(あまね)』、
頁をめくるごとに月が満ち欠けしていき、月の季語と共に月の形の変化を手の中で楽しめる『月の舟』、
窓から覗いた移りゆく雲の景色を本として表した『雲のまど』など、季節や自然をとじこめた本6種を出展します。

一点制作のアートブックも数冊お披露目したいと思います。

屋号のbōcは古英語で、「本」と「ブナ」の二つの語源となることばです。

ブナの木のように深く大地に根を張って、植物的ヴィジョンを抱きながら本と人の手との関わりを深めていけるようにと名付けました。
初出展時は「空想製本屋」としての参加でしたが、今回はこの作品制作部門の屋号で出展します。
生活空間や時間をそっと照らす、ささやかな工芸としての手製本をご紹介できれば嬉しいです。

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Q2
atelier bōcさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
譲り受けた鉄製のプレス機です。
知る限りは私で3人目の持ち主で、元はイギリスで製本を勉強された方が船便で日本まで運び、その後別の方を経て、私のところにやってきました。
たいへん重く、動かすのには大人3人がかりです。

譲り受けたのは15年近く前で、会社員をしながら初個展を終えた後でした。
場所もとるし重さもあるものなので、「これからずっと製本をやっていくのだ」という覚悟を決めた覚えがあります。

それ以来、幾度かの引っ越しの度に移動に難儀しましたが、マンションの8階や古い平家の床、さまざまな場所に変わらずある存在でした。

道具としては、製本前の紙の束を平らにする際や、見返し貼りの圧力をかけるのに欠かせないものです。
どっしりと、いつもアトリエの床にある佇まいは、心の重心、のようになっているのかもしれません。
これからもこのプレスでたくさん本を作っていきたいです。

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Q3
atelier bōcさんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
私のふるさとである、茨城県、笠間の焼き物です。
さまざまな作家さんの作品が混じっていますが、どれも思い入れのあるものです。
陶器市で求めたもの、好きな作家さんのもの、親の長年の友人でもある陶芸家の方のもの、実家から持ってきたもの……
気づけば家にあるうつわの多くは、笠間のものでした。
故郷で過ごした時間より離れて過ごした時間の方が長くなってしまいましたが、
毎日食卓で触れるたび、故郷の土に触れている感覚になっているのかもしれません。
大切なつながりを記憶に留めてくれる存在です。

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atelier bōc
の名前の由来も素敵ですね。
本間さん、そう、本の間、という名字がまさにぴったりのお仕事。

本間あずささんの世界。
知と手の抱くすばらしさが、デザインとしても堪能できるところがなんとも心が躍ります。
今回の出展場所は、おりひめ神社鳥居の正面に向かって右側。

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前川わとさん(陶芸)

富山県から2016年に出展くださった前川わとさん。
6年ぶりに「工房からの風」にやってきてくださいます。

Q1
前川わとさんは、工房からの風に、どのような作品を出品されますか?

A1
これまで細く長く続けて来た泥漿を重ねレリーフしていく技法の作品を出品します。
磁土の素材感の中で透け感というものが魅力の一つだと思うのですが、積層した磁土を削った際にでる水彩絵の具を重ねたような色味を感じていただけたらと思います。

普段は中量産的な仕事もしているのでそのイメージがあると少し驚く方もおられるかもしれません。自分の表現の中で一番大切にし悩み考えてきたものを「工房からの風」という機会にご覧いただけること嬉しく思っております。

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Q2
前川わとさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
私の工房は自宅の1階部分で、2階が住居スペースになっています。
なので、厳密にはこの場所は工房では無いのですがこちらを紹介したいと思いました。
インドのカンタをかけたソファーの横には、祭壇と呼んでんでいる大事な物を集めたスペースがあり。
少しずつ集めたアンティークや工藝品を飾っています。

朝起きたら、このソファーに座ってコーヒーを飲みながらその日の仕事の段取りをし、時には事務仕事をしたり、ランチを食べたり。

作業中以外のほとんどの時間をここで過ごすので、私にとって気持ちを整えるとても重要な場所です。

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前川わとさんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
アンティークのレース刺繍です。
極細の糸を編み上げた繊細なもので、こんな雰囲気の仕事をいつかしてみたいなぁと思って、
その気持ちを忘れないようにと、その当時の自分には少し高価な物でしたが少し背伸びをして手に入れました。

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studio moccaとして、制作発表を続ける前川わとさん。
磁器ならではの美しい表情との再会がとても楽しみです。

前川わとさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜の入って中ほど。
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aei (装身具)

2015年に初めての出展をされたaei の桑山明美さん。
7年ぶりにこのアニバーサリー展へ出展くださいます。

Q1
aeiさんは、「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?

A1
金属加工によって制作した装身具、オブジェをお持ちします。

画家が風景を描くように目で見た景色や日々の些細な出来事を作品に閉じ込めて表現しています。
ひとつひとつに名前を付けて物語を伝えています。
是非合わせてご覧ください。

今回、糸鋸によって板材を切り抜き制作する“すかし”という技法の作品を特に力を入れました。
手仕事のくせのある風合いをお楽しみいただけたら幸いです。
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Q2
aeiさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
2年前にアトリエを移りました。
以前のアトリエは、北に一箇所窓があるだけでとても暗い空間でした。
今度は明るいアトリエにするぞ!と意気込み、作業机は部屋のセンターに。
目の前に大きな窓を設けました。
部屋の中にして大空の下で制作している気分です。
おかげで手元がよく見えて助かります。
窓の外には田んぼが広がり、お米、麦、大豆が季節ごとに植えかえられて、いつ眺めても飽きません。
悩みは、うっかり窓の鍵に手が届かなかったことと、窓を開けすぎると風が強くて部屋中に金属粉が舞うことぐらいです。

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Q3
aeiさんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
大切なものがありすぎて悩む問いでした。
考えてみると、毎日使用しているものは意外と少なく、生活の一部になっていたこれは視野に入っておらず「あ!これがあった」という具合でした。

「小川麻美さんのカップ」です。
(取っ手はないので湯のみかもしれませんが、我が家ではコーヒーや紅茶にも使うので私にはカップです。)

私が初めて野外展に参加した際に主人が購入してくれたものです。
毎朝欠かさずこのカップでコーヒーやお茶を飲みます。
何を入れても私にはこのサイズで飲む量がちょうどいいのです。
少しずつカケが出てきてしまいましたが、口をつけても気にならないのが不思議。
カップにつけられた小川さんの〇のイニシャルを娘はカタツムリ!と言っています。

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結婚、出産を経られて、今は制作発表も順調になさっているaeiさん。
初出展の後、帰宅されていの一番に送ってくださったメールが、2015年にブログに残っていました。
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プロとして立っていけるか、トライする気持ちも抱えて出展された日。
その日の経験も糧として、人生のさまざまなタイミングにも作ることを手放さなかった人。
その成熟したお仕事と「工房からの風」の場で再会できることがとても楽しみでなりません。

aeiさんの出展場所は、おりひめ神社の脇。
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Anima uni(装身具)

2012年の初出展ののち、毎年風人として「工房からの風」を支えてっくださったAnima uniの長野麻紀子さん。
今年は10年ぶりに出展作家として参加くださいます。
10年間で制作活動をうんと広げ、飛躍されてきました。
その独自な世界観は、高まった技術をもって自在に表現され、かたちとなって「工房からの風」にやってきます。

Q1
Anima uniさんは、工房からの風に、どのような作品を出品されますか?

A1
ふっと原点に立ちかえってみたくなったのでしょうか。
なにやらよくわからない力に突き動かされ、10年ぶり2回目の出展です。

はじめての時は、スペイン階段下のテントで緊張した面持ちで佇んでいたら、
あれよあれよという間に終わっていた2日間でしたが、
あれから、わずかでも進化できているのでしょうか。

迷いながら、立ちどまりそうになりながら
揺れて、揺らいで
それでもわたしを内側からつきうごかすなにか。
たましいがふるえるからつくる、つくらずにはいられない、
そういうのだけを掬いとって集めたのなら。

作品があるひとつの形態をなしてから、また変奏曲のように刻一刻と変わりゆき
あたらしい和音が謐けさのうちにたちのぼる。
そんな印象の今回の作品群では、庭のシリーズが深化して
四季折々、とりわけこっくりと秋の実りの季節が展開されます。
エルダーには深紫のベリーがたわわに実り、豊穣を唄います。

またずっと作りたかった<ふれる ear cuff>が完成して、
お披露目いたします。
研ぎ澄まされたバランス感覚から生まれてくる色石の作品。

はじめること、つづけていくこと、おわりを告げること、
どこの地点においてもたいへんで、愛おしい日々なのでしょうか。
それぞれの日々に祝福あらんことを願いつつ。

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Q2
Anima uniさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

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彫金机

身長、腕の長さ、てのひらの大きさ、
細部に渡る隅々までわたしの身体と動きに合わせ、フルオーダーで作っていただいたもの。
使い手にとことん寄り添ってくださるアトリエ倭さんのすばらしいお仕事です。
動くわたしをフレーミングしている、という視点から考えると、
先の倭さんの個展でのオーダーフレームと相通じるものがあるような気が多分にいたします。

眼前の大きな硝子窓のむこう、エルダーの木がサワサワと梢を揺らし、
小鳥たちがピチチチとのぞきこんでいきます。
明るい陽光がしずかに射し込んで、白い机と壁面をちろちろきらめかせるなか作業する
冬のあさが一等好きな情景です。

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Q3
Anima uniさんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3

◯絶賛愛用中

松塚裕子さんの珈琲カップ&ソーサー
朝から晩まで。もう365日手放せません。苔むした竹っぽいから、竹苔カップと勝手に命名。
なんでしょう、この吸いつくような手触り。これで飲む珈琲の美味しいこと。

◯宝物

佐藤亜紀さんからいただいた茜と藍染の糸巻き
これは神棚風に作業場の上の方にしつらえてあって、いつでも彫金作業を見守ってくれているのです。

下地康子さんからいただいた草木染めの糸一式
織の際に出る端っこだそうで、あまりに美しくて言葉を失う色糸。
後生大事にしまってありますが、いつか作品に使わせていただく時がくるかもしれません。
恐れ多いことですが。

武井春香さんの藍甕で染めていただいた真珠
あらたに加わった宝物。なんとも愉快な思い出と共に、この青い真珠を眺めることでしょう。

大野八生さんの落書きのうちのネコ
八生さんからの小包とか紙袋には落書きがしてあるので、もう絶対に捨てられません。

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2012年には、工藝作家のつながりをあまり持っていなかったというAnima uniさん。
この10年豊かに工藝作家とのつながりを育まれて、制作と日々の暮らしの両輪が豊かになられた一端を感じられるメッセージを寄せていただきました。

Anima uniさんの出展場所は、おりひめ神社の奥。
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飯野夏実さん(陶芸)

2013年に初出展くださり、その後作品発表を豊かに続けて来られた飯野夏実さん。
実力を蓄えて、アニバーサリー展に二回目の出展を果たしてくださいます。

Q1
飯野夏実さんは「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?

A1
金彩色絵の磁器作品を出品します。
4分の3くらいはお皿やカップなどの食器、4分の1はアクセサリーや小物入れなど食器以外のものになります。

制作方法としては、箸置きやアクセサリーなどの小物以外、ほとんどのものがロクロ成形です。
上絵付け(本焼きが終わったあとに絵付をして800℃くらいで焼き付ける)がメインですが、下絵付け(素焼きの段階で染み込ませるように絵を描く)、和紙染め(下絵付けの一種で、筆で直接描かずに型紙に絵の具を染み込ませて模様をつける)、いっちん(土の絞り出し)、クエルダセカ(スペインの釉薬掛け分け技法)など、さまざまな装飾技法を取り入れています。

温かみのある白い生地に、私の大好きなお花模様や動物の模様を、華やかな色絵金彩で施したものが多いのですが、私のもうひとつのライフワークでもあるウクライナのピサンキ、西洋中世の装飾美術、イスラム建築の唐草模様、などなど世界中の私の好きなものからインスピレーションを受けつつ、20代半ばに絵付けの勉強をした京都の清水焼の影響もあるかな、という無国籍にミックスされた感じになってきたような気がします。

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Q2
飯野夏実さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

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今年のはじめに埼玉県から台東区に引越しまして、新しい工房を作ったのですが、外から見ても楽しいアトリエになるように、窓下の腰壁のモルタル部分にモザイクを施しました。
色ガラスと大理石をランダムに割って組み合わせたブローチのようなパーツを70個ほど作っておき、壁に埋め込みました。

私も、左官をしてくれた職人さんも、こんなことをするのははじめてでしたので、かなり苦戦しましたが、なんとかスタジオカラクサらしい壁ができあがりました。
来年のゴールデンウィークにはオープンアトリエをしようと考えています。
ぜひ遊びにいらしてください。

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飯野夏実さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
たくさんあって迷いましたが、一番よく手に取る工芸品を選びました。
津田清和さんのグラスです。
型吹きガラスのゆらぎの表情が好きで、適度な大きさとずっしり感も良く、ビールを飲むときはたいがいこれです。

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精緻な加飾の作品を生み出す飯野さんの愛用の工藝品がすっくり端正な津田清和さんのガラス。
一見離れた表現のようですが、それぞれ完成度の高さのベクトルが近いのかもしれませんね。

飯野夏実さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜の中央あたり。
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極楽寺がらす工房(ガラス)

鎌倉で極楽寺がらす工房を築く岩沢彰一郎さんと睦子さん夫妻。
極楽寺がらすさんとして1度、岩沢睦子さん個人として1度出展くださっています。
今回は、極楽寺がらす工房として、アニバーサリー展に出展くださいます。

Q1
極楽寺がらす工房さんは「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?

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二人の作風が違いますので、お互いの作品と共作の作品を出展します。
彰一郎は雪代シリーズを出します。
ガラスの表面がサラサラとした肌触り、薄っすら透ける白い物や一手間加えた作品。
画像は雪代と雪代の間にオリジナルパーツを付けた透明ガラスをカップリングしたグラスになります。
他にグラス・一輪挿し・蓋物など出します。

睦子はkirieシリーズ。
黒いガラス生地を作りサンドブラスト技法で絵柄を彫り込んで表情を付けています。
自分癒しの猫柄が多いです。
彫り込んだ事で表面の凹凸の手触りが心地良く、絵柄も剥がれる心配が有りません。
グラス・花入れ・鉢・ポット等を出します。画像は月夜グラスとポットになります。

共作の干支や鏡餅は、工房立ち上げ時から2人で毎年大切に制作し続けています。
お家でホッコリ和む時間に活躍してくれれば幸いです。

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極楽寺がらす工房さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

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ガラスを溶かしている溶解窯です。
工房立ち上げ時、自分たちでコンクリートを流して作りました。
制作中は1200℃になり、夏場など工房内は大変な温度になりますが、冬場は近所のお爺さん達が温まりに来ます。
19年経って、所々不具合やご機嫌が悪くなりますが、この子が居ないと何も出来ません。
大切な窯です。

Q2

Q3
極楽寺がらす工房さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
「信楽焼 長角皿」 案山子窯陶芸工房 故山田先生より譲り受けた作品です。
ガラス製品とは対照的な大地を感じさせる大胆なテクスチャーに魅せられて愛用しています。

Q3

貴重な窯の画像もありがとうございます。
今年の猛暑の中にも、制作に励まれたおふたり。
爽やかな秋の日に、皆様と制作の実りを介して豊かな交流がはかれますように。

極楽寺がらす工房さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜の中央部。
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吉岡さおりさん(フェルト)

今年はフェルトの作家はおふたり。
そのおふたりともが3回目の出展となります。
それぞれが成熟した独創的なフェルト制作を展開されています。
では、高知県から3回目の出展となる吉岡さおりさんからのメッセージをご紹介します。

Q1
吉岡さおりさんは、「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?

A1
今回は、フェルトジュエリーと布フェルトバッグなどを出品予定です。
心に響いたことや留めておきたいと思ったこと、そんな気持ちや考えを形にしてみたいと思い、フェルトジュエリーを作りました。
胸元や耳元に不思議な記号たちが散らばると面白いのではと思っています。

作品1

作品3

作品2

Q2
吉岡さおりさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
フェルト制作に欠かせないものは、水。
制作していると時折、水で”縫っている”ような感覚になります。

今日はふと顔を上げると、魚か何かが泳いでいるように水の中にフェルトが泳いでおり、そのゆったりとした景色をしばらく見つめて、写真を撮ってみました。

質問2

Q3
吉岡さおりさんが自作以外で、大切にされている、あるいは愛用されている工藝品をひとつ教えてください。

A3
このお茶碗は、随分前にに女性の作家さんから購入。
大きいので何度かご飯を盛られそうになった事も数知れず。

仕事後、このお茶碗でお茶を飲むことが現実世界に戻ってくるための儀式のようになっています。
随分、色味も変化し欠けも作ってしまいましたが、私の好きな器です。

質問3

工藝は、火や水など自然のエレメンツと結びついて制作されますが、フェルト制作の水との関りを、このように捉える感性がとても素敵ですね。

吉岡さおりさんのブースは、おりひめ神社のお社の脇。
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