2024年 工房からの風

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今野恵さん・フェルト・神奈川

例年フェルトでの出展作家がいらっしゃいますが、
今年はひときわワイルドなフェルトです。
神奈川県で制作する今野恵さん。

Q
今野さん、「工房からの風」には、どのような作品と一緒にやってこられますか?

A
様々な種類の羊の、本来の色−自然の色−を生かした作品を出展します。

「冬支度」をイメージして、冬を暖かく過ごすアイテム、
帽子・バック・ミトン・ケープ・ポンチョなど身につけるものと、
敷物・クッション・ひざ掛けなど暮らしの中で使えるものを。

自然色の羊毛の中に、一色だけ緋色−心に暖かな火を灯すような−の羊毛を使いました。
見ているだけでも暖かくなるような赤い色です。
素材と向き合い、作品には羊毛ごとの特性を生かしました。
強く丈夫な羊毛、しなやかで優しい手触りの羊毛。。。
それぞれの羊毛が固くフェルト化され完成した作品から感じられるように、
縮絨率や作品ごとの厚みを考慮し、制作しました。

以前はカラフルなフェルト作品を発表していた今野さん。
どうして今のような自然の色と、自然の力強さを生かした制作へと移っていかれたのか。

ぜひ「小冊子」をご覧になってください。
毎年編んでいる小冊子、今年は13人の作家に文章を寄せていただきましたが、
今野さんから届いた文章は、どんとお腹に! 響きました。
巻頭でご紹介していますので、ぜひお読みくださいね。

Q
今野さんにとって、「工房からの風」とってどんな風なのでしょうか?

A
真南風(まはえ)。
沖縄の方言で梅雨が明けて夏の到来を告げる南風のことで、
「幸せをもたらす風」と信じられています。

フェルト制作には夏の湿度と気温が味方になってくれますから、
まさに今年は「工房からの風」を「真南風」と感じ、夏の間、制作に励むことが出来ました。

幸せをもたらす風。。。準備期間にディレクターの稲垣さんのお話や
個人ミーティングでの言葉、郵送物に手書きで一筆書いてくださった言葉、

出展者の方々の交流の中で交わした言葉が、
私の気持ちを突き動かし、地に足つけて制作に励むことができ、
すでに「幸せをもたらす風」と実感しています。

今野さんは、手ごわかったです(笑)

でも、迷いがすっと抜けてしまえば、あとはキラキラと眩しい表情でしたね。
自分の心と手が掴んだフェルト。
短いスパンで答えを出さず、ずっと続けていく中で、
ほんとうに見たかった花と出合えるのではないでしょうか。
私自身もそう思いながら進みたいです。

今野さんのホームページはこちら → 

出展場所は、おりひめ神社の脇。
木工の泉さんと 陶芸の中本純也さんの間となります。

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泉健太郎さん・木工・新潟

10回目を迎えた工房からの風。
その中でも今まで近いお仕事での出展のなかった
木彫の箱と卵殻の箱を主に作る
泉健太郎さんからもメッセージが届きました。


Q
泉さんは、『工房からの風』に、どのような作品を出品されますか?

A
主に木彫の箱と卵の殻を漆で貼り付けた箱を持っていきます。
幾何文様の木彫の雰囲気、卵の殻のヒビの美しさに何かを感じて
もらえたら嬉しいです。

実際に作品を見せていただきました。
とっても美しい箱でした。

彫刻刀で丹念に文様を刻んだ木箱。
そして、卵の殻を漆を用いて加飾した箱。
用具としてももちろんですが、その表情の美しさを
じっくり堪能いただきたいと思います。
そして、このような美しい仕事をどのように発展させていったらよいか、
ご来場の方々のご意見も、きっと作家はお聞きしたいかと思います。

Q
泉さんにとって、『工房からの風』って、どんな風ですか?

A
『工房からの風』は、これから自分がどういう方角、場所へ向かったらいいのか
を感じさせてくれる風だと思ってます。

当日は、自分が作っているものは少し変わっているので、箸休め的な?風を
吹かせられたらと思います。

箸休め!?
泉さん、面白いですね。

『工房からの風』の作家には、ざまざまな方 がいて、
また、さまざまな方向性があります。
それが、とってもいい、と思いますし、むしろ、もっとそうあったらいいなぁと思ってもいます。

使い手の方々にすぐに喜んで いただける、
販売の上でストライクゾーンの作品をたくさん作る方は、

精一杯それに向かうでしょうし、
泉さんのように、自身がこれをしたい!というお仕事の技術を深め、
そこから使い手の方との接点を模索していくアプローチもあっていいって思うからです。

今既に評価されている表現をみんなが作っていくばかりではなく、
作品のバリエーションはこれから広がっていく過程であっても、
作家の持っているすばらしい種、それを感じて、応援できるような会であったらいいですね。

作品の売買だけではなく、作る、ということのもっと本質的なところで交流できるような…

と、ご本人があっさり書いてくださったのに、私が書きすぎですね。
すみません!


泉さんのホームページはこちら → 

素敵な木の箱と出合えるのは、おりひめ神社周り、
稲荷社のほとりです。
ちょっとシャイ?な泉さん、お話しすると、楽しいですよ。

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qan:saviさん・革・愛媛

四国松山からやってきてくださるのは、qan:saviさん。
カンサビ
とお読みします。
『「神さび」(かみさび・かんさび・かむさび)といわれる、
古来より存在してきた価値観のひとつで、古びて年月を経たものから滲み出てくる、
神聖であり神々しい雰囲気を表す言葉からいただきました。』(ホームページより)
と、いう思いをこめて、名付けられたそうです。

Q
qan:saviさんは『工房からの風』に、どのような作品を出展されますか?

A
僕が作る作品のジャンルは大きく分けると「カメラ」「文具」
「ファッション」「アクセサリー」とあるのですが、
一通りできるだけたくさんの種類をお持ちしようと思っています。
中でも「一眼レフカメラ用のショルダーストラップ」「デジカメケース」「バッグ」

「財布」「革の小箱」「スケジュール帳カバー」に少し重点を置いて制作しました。


「パスポートも入る財布」や「トラベラーズノートのカバー」や
「一泊ぐらいに使えるトートバッグ」など、
「旅」ということをどこかで意識しながら制作したモノは
今後さらに広げていこうと思っている新しい要素のものも含まれていたりします。


全て手縫いで仕上げているのですが、
一針一針に気持ちを込められるのが手縫いの良いところだと思います。
ロウ引きした麻糸で縫ったステッチの味わいや、洗いをかけたり、シワを出していたり、
磨いたりという革の表面のニュアンスなども感じていただければと思います。
基本的には僕が使いたいものや興味のあるものを制作しているので
用途を特化したものが多いのですが、
みなさんに「あっ、こんなの欲しかった!」や「こういうのも良いね!」
というものを見つけてもえると嬉しいです。
わ、なんかとっても、もりもりですね。
qan:saviさんといえば、カメラストラップがとても人気がありますが、
おひとりで一点一点手仕事で仕上げているとは思えないくらい、
さまざまなジャンルにたくさんのバリエーションがあるのです。
工房からの風に向けて、思いっきり取り組んでくださっているので、
この充実の構成なのですね。
見応え、選び応えたっぷりの展示になりますね。

Q
『工房からの風』は、qan:saviさんにとって、どんな風ですか?
そして、どんな風にしたいですか?
A
瀬戸内の島と島の間を渡るおだやかであたたかな風の様です。
ミーティングなどでニッケ鎮守の杜に訪れるうちに、
何だか懐かしさとそこに携わっている方々の温かさや大きな安心感を感じました。
それと同時にそこに集う人が
その風をとても大切にしている想いが溢れていて気が引き締まります。
でもその中にはこの先には一体何があるんだろうという
ちょっとした冒険心みたいな
「心をくすぐられるもの」
が含まれていたりもするのです。
今まではその大らかな風を帆に受けて順風満帆でこさせてもらったので、
当日は自分もその風の一部になれればと思います。
『ニッケ鎮守の杜』をなつかしい!と思ってくださって、うれしい気持ちです。
そして、この先には、何があるんだろう!
って、素敵な感覚ですね。
速攻か、じんわりかは、それぞれですけれど、
きっと風がどこかへとつないでくれることと思っています。

それから、qan:saviさんは、こんなことも伝えてくれましたよ。

昨年こちらに出展されていた、クラフト作家・イラストレーターの
CRAFT Log. 井上陽子さんと少し前からコラボでの作品制作もさせてもらっています。
偶然にも二人に共通のご縁のある展ですので、
今進めているコラボの作品も少しですがご紹介させていただこうと思っています。
これは井上さんに革の表面に活版印刷機で一つ一つ手押しでプリントしてもらったものを
僕が手縫いで仕上げるといったもので、
井上さんのイラストやコラージュを活版印刷した凹凸の味わいやエイジングの加工は
同じものがない一点モノの特別なものとなっています。
よりストーリー性があったり、プリントがあることで成り立つものがあったりと
通常の作品とはまた違った雰囲気ですのでそちらも楽しんでいただければ幸いです。

井上陽子さんのエッセンス、今年も会場にそよいでくださるのですね。
楽しみです!

qan:saviさんのホームページはこちら → 
出展場所は、おりひめ神社お社の脇です。

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横山正美さん・柿渋染め・愛知

今年の工房からの風へも、多種多彩な布仕事の方が出展くださいます。
今日ご紹介するのは、布を柿渋で染めて、
バッグや暮らしまわりの布小物を制作する横山正美さんです。

Q
横山さんは、『工房からの風』に、どのような作品を出展されますか?

A
わたしは柿渋染のおおらかさと力強さ、色が好きです。
ざっくりとした手織りの布を染めています。
布に墨で柄を手描きして柿渋で染めたのや、媒染でいろんな柿渋色を作って、
それをカットし、つぎ合わせたりして作品を作っています。
工房からの風には、そんなつぎ合わせした柿渋染めのかばんを中心に、
そして、かばんの製作から出来るはぎれ布を使った
生活小物などを見て頂きたいと思っています。

横山さんの作品は、柿渋の茶と炭の黒のコントラストがあるところも特徴的です。
ちょっとワイルドな感じのものもありますね。
また、男性にも素敵に映えるものもあって、選ぶ楽しさいろいろです。

Q
『工房からの風』は、横山さんにとってどんな風ですか?

A
工房からの風は、下を向きかけてた”つくる仕事”への気持ちを、
すっとやさしく前に向けてくれました。
自分の中でガチガチに固くなってた焦りと自信の無さを薄く伸ばしてくれました。
そして、改めて「つくること」が自分の中で一番大切なものなんだって
思い出させてくれました。
下を向いてぐるぐる悩んでばかりで自分の足先しか見えてなかったのが
今、道の向こうが見えます。
日々、つくることがたのしい。
わたしに吹いてくれたやさしい工房からの風を、
今度は当日、たくさんの方々へ向けて。
たくさんの風を楽しんで頂けたらと思っています。
そして、わたしも思いっ切り楽しみたいです。 

 

工房に籠って仕事を進めていると、
ふっとどこの誰ともつながっていないのではないだろうか?
そんなことを思ってしまう作家の方も多いように伺います。
けれど、横山さんは、工房からの風を起点に、
いろんな作り手の方とつながって、そこから伝え手、使い手の方々と、
ぐんぐんつながっていく道を拓いているんですね。
気持ちが風を起こし、風を進めていくのかもしれません。

横山正美さんのホームページはこちら →
出展場所は、コルトン広場、モニュメント周りです。
お日様と柿渋染めは友達ですから、きっと鮮やかな展示になることでしょう!
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アトリエ倭さん・木工・埼玉

初出展組のトップバッターは、アトリエ倭さんです。
木のおもちゃと古材を使った小物などを制作するご夫婦です。

Q
アトリエ倭さん、『工房からの風』には、どのような作品と一緒にやってきてくださいますか?
また、当日はどのようなことをしてくださいますか?

A
『日本の伝統を伝える』をテーマにした木のおもちゃと、
古材を使った雑貨をお持ちします。

おもちゃは全て、日本の伝統に基づいたデザインになっていて、
木の美しさと気持ちよさを大切に作っています。
初めて目にした方から、よく工場で作られた物かと思われたりもしますが、
製材から全ての加工、パッケージデザインまで全て二人で行っています。

当日のブースで、おもちゃ製作のデモンストレーションも行う予定です。
木目を揃えて木を貼り合わせたり、コンマ1ミリの調整をカンナでしたり…
といった細かな仕事を、実際に見て頂けたらと思います。


ほかに、古材の雑貨は、すす竹を使った筆入れや、

大正ガラスが入った建具を使った函物を。
大工さんが刻んだ柱の形を活かしたスピーカーなど、大物もお持ちします。
時間を掛けて磨かれた古材の、艶と品を感じて頂けたら嬉しいです。

おふたりの前職は建具職人。
兄妹弟子として腕を磨き、今はアトリエ倭としてふたりでのもの作りを進めています。
日本の伝統的な木工、建具技術をベースにして作られた
創造性ゆたかなおもちゃは、ありそうでないものばかりです。
誠実印!のものづくりは、ぜひお手にとって感じていただきたいと思います。
さりげないだけに、ぐっときますよ。


  Q
『工房からの風』って、アトリエ倭さんにとって、どのような風でしょうか?
そして、この風を、どんな風にしていきたいと思われますか?

A
出展の通知を頂いた時は、実はまだぼんやりとした感覚で、

風を感じてはいなかったように思います。
でも5月に『風の予感』という展示に参加させて頂いて、
スタッフの皆さんや出展作家さん、お客様との時間を過ごし、
しなやかで瑞々しい風を感じました。

さらにその時に会場だった『らふと』の意味が筏であるとお聞きし、
私達も一艘の筏に乗って、帆に風を受け漕ぎ出したような気持ちになりました。
筏には作品と沢山の想いを乗せて、本展へ向けてスタートを切った5月でした。

そこから今まで、帆は膨らんだりしぼんだり(笑)を繰り返しながら、
自分達の核にあるものだけを乗せ、少しずつ進んでいる気がします。
当日の出会いでまた新しい風を帆に受けて、
きっと次の場所へ漕ぎ出せるのかな、と楽しみにしています。      

ブースでは優しくって力持ちタイプの進さんが黙々と手を動かし、
しっかり女房タイプの佳子さんが、きびきびと立ち働く 姿が今から見えるようです!
熱い思いをこめて制作に励むおふたりと、言葉を、心を通わせていただければと思います。

そしてニュース!
先行イベントとして、アトリエ倭さんのワークショップと作品展示販売を行います。
10月7日(日)10時から18時
ニッケコルトンプラザ2階タワーコート(エレベーターのある吹き抜けです)
木のコマに絵を書いたり、仕上げをして、オリジナルのコマを制作します。
随時 ひとつ500円

13日・14日にはアトリエ倭さんのワークショップはありませんので、
ぜひ7日、コルトンプラザへお越しください。
お子様と一緒に近隣の方、特にお薦めですよ!

アトリエ倭さんのホームページはこちら → 
出展場所は、galleryらふとの向かい、おりひめ神社の鳥居の近くです。
陶芸の加藤かずみ☆さんとお隣です。

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大桃沙織さん・金属・新潟

大桃沙織さんも二回目の出展となる方です。
前回は、平井沙織さんでしたけれど、大桃さんとなって今回あらためて!

そう!ビッグニュースは、大桃さん、今年大きな賞を受けられました。
工芸都市高岡クラフトコンペティションの
コンテンポラリークラフト部門のグランプリ!
おめでとうございます!!
今、波に乗っている大桃さんです。

Q
大桃さん、今回の「『工房からの風』には、
どのような作品を出展されますか?

A
模様をひとつひとつ打ち出した小さな箱、
植物や海の生物をモチーフとした針刺し、
種や実からイメージしたアクセサリー、蛾のブローチも並びます。

わ、佇まいがリアルですね~
好きな人にはたまらない感じ。
そう、みんなに好かれるばっかりじゃなくっていいんですよね。
誰かがとっても好き!なものであったら、
作り手冥利に尽きるのではないかと思います。

Q
大桃さんにとって、『工房からの風』ってどんな風なのでしょうか?
そして、今年、どんな風にしたいですか?

A
3年前出展が終わったとき感じたことは、
自分の進む方向を指し示してくれるような、
強くたくましい、まるで光のような風だったということ。

その風はそれからもずっと吹き続け、
私の心と手を動かし、たくさんの自信を与えてくれました。
今年も、その風をさえぎらないよう、留まることなく、
当日まで精一杯進んでいきたいです。

初めての出展のとき、大桃さんにとっては、
きっと今までで、一番たくさんの方に作品を見ていただく機会だったのかもしれません。
どんな風に感じてもらえるのだろう?
そんな期待と不安がない混ざって初日を迎えられたことでしょう。
けれど、その日の沙織さんの表情のなんとも平和で晴れやかだったこと。
今でも目に浮かびます。
来場者の方々の反応が、それからの大桃さんの追い風になったのですね、きっと。
(何より大桃さんご自身が、そのようにこの時の風を迎え入れた、ということなのですね)

大桃沙織さんのホームページはこちら → 
そして、出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入ってすぐ、レンガ道のほとりです。

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加藤かずみさん・陶芸・東京

今年の出展作家からのメッセージを今日からお届けしていきますね。

トップバッターは、加藤かずみさんです。

やさしいような、きりっとしたような、
はかないようで存在感のある
そんな美しい磁器の器を作る作家です。

Q
かずみさん、『工房からの風』には、どのような作品を出展されますか?

A
温かい食べ物や飲み物のおいしい季節になってきましたので、

カフェオレボウルや耐熱のものなど、定番のうつわと一緒に持っていきます。

今年の1月から作り始めたカフェオレボウルは、何個も試行錯誤を繰り返し、
やっと失敗なく、焼きあがるようになりました。
家族でそろえても楽しそうだな、なんて思いつつ大きさも3種類作りました。

同じく今年から作り始めた耐熱のグラタン皿には、
蓋も付けて雑炊なども炊けるようにしました。
もちろん蓋なしでも使えるようになっています。
土鍋も出展しますので、これからの季節に。

新しい釉薬で新作のコンポートも。
皿の部分と土台の部分を轆轤でひいたあと、
一つ一つ手で彫って加飾してからくっつけます。

凹凸があるため、釉薬も変化し複雑な色合いになっています。

 

10月って、
秋そして向かう冬へと、器選びも楽しいシーズンですね。

 

Q
かずみさん、にとって、『工房からの風』ってどんな風なのでしょうか?
そして、今年、どんな風にしたいですか?

A
2009年の一回目の出展の時は、暖かくて強い春一番のような風でした。
2012年の今回は穏やかに吹いている爽やかな秋の風のようです。
美味しいものを食べたり、暖かい服を着ておしゃれをしたり、
紅葉などの木々の変化も美しい、
春とは違う感じのわくわくした秋の風にしたいです。

加藤かずみさんは、2010年、2011年とオブザーバーといって、
私たち企画側のお手伝いをしてくださる作家として大活躍してくださいました。
初出展のときが実質的なデビューで、その後、着々と活動の場を広げているかずみさん。
いつも素敵な装いで、そのセンスのよさも、作品とつながっている気がしています。
食卓や、住空間に美しいエッセンスが散りばめられていくような。

今年は2年間を空けての出展。
きっと初めての時とは違った緊張、
そして、楽しみに包まれた時間を過ごされているのでしょうね、今。

加藤かずみさんのホームページはこちら  →  
そして、展示場所は、galleryらふとの前方、手仕事の庭エリア。
椎の木の木漏れ日が、ひととき磁器の器に映り込んで、
とっておきの秋の日に恵まれそうですね。

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風姿その2

4章「風姿」
続いて染織の森文香さんです。

文香さんが初めて出展くださったのが2007年。
その時から現在までの5年の間にゆっくりと感じてきたことを書かせていただきました。
人生の中で5年はけっして長い時間ではないかもしれませんが、
もの作る人として立って、歩が確かになっていくまでの5年は濃密なものかと思います。
作る人である前に、人としてどうあるのか。
人として進んでいくことと、ものを作ることがどう添っていけばいいのだろう。
文香さんは何も具体的なことや、特別な主張もされませんが、
5年を経て、私は文香さんにはいろんな大切なことをじんわり教わっているんだなぁ。
そんなことをあらためて思った取材でした。

心を澄ませて。
働くことが、生きていく姿を整える。

:::

山形で籠編みをする『kegoya』こと、熊谷茜さん。

楽器を奏でるような指使いで籠を編んでゆきます。

東京に生まれ育ち、林学の学びの先につながった山形での籠編み。
山形で出会ったおじいちゃん、おばあちゃんが茜さんの先生です。
それはもの作りだけではなくて、暮らしていくこと、生きていくことの上での
大切な学びを与えてくれた出会いでした。

おばあちゃんの手と心。
作ることは、生きていく中での自然な営み
:::

章の終わりは、大野八生さん。
工芸・クラフトの作り手ではなく、造園・イラストが八生さんのお仕事。
けれど、『工房からの風』のメインビジュアルを描いてくださり、
会場の一部『ニッケ鎮守の杜』のガーデナーもしてくださる
八生さんのことをぜひ綴りたかったのです。

あらためてお話を聞けば、初めて伺うことばかり!
二つの仕事を続けていくことの迷いを吹き払ってくれた
のが、イギリス人映画俳優だったというのには、驚きました。
そして、文字数の関係で書ききれなかったのですが、
そのやりとりを通訳してくれたのが、
戸田奈津子さんだったという贅沢なこと。

ほんとうに必要なことは、必ず巡ってくるのですね。
強く願えば。

幸福な花や果実は、
時と場と人とが出会い、姿を結ぶ

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さて、駆け足でご紹介をしてきました書籍
『工房からの風-作る働く・暮らす・生きる-20の工房を訪ねて』(アノニマ・スタジオ)
に登場いただいた作り手の方々。
お一人おひとりのストーリー、そして工房の風景、作品写真、
ぜひご覧いただければと思います。

そして、いよいよ明日からは、
今年の出展作家からのメッセージをお届けいたしましょう。

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風姿・その1

4章「風姿」では6人(工房)のお仕事を取材させていただきました。

ホウキ作りの吉田慎司さん。

茜や藍で染めた糸でホウキを編みます。
道具もお手製。
そして、仕上げの面取りも念入りに。
使う人に優しい道具であるように。。。

 

吉田さん、実は漫画家になっていたかもしれないのです。
それが、こうしてホウキ作りの道へ。
その辺りの劇的!なストーリーもぜひお読みください。

自由ではなく自在。
足場があるから、伸びやかになれる

:::


鍛金の相原清子さん。
ワークショップも何度か行ってくださいましたね。

 

誠実に日々働くこと。
小さな作業の繰り返しがかたちを生み出す

 

:::


初雪・ポッケのおふたり。
とっても仲良しで、なれ初めからユニット結成までのストーリも、
伺いながらちょっと照れてしまうようなのですが、
でも、その想いこそがもの作りの原点、原動力になっていることが、
じんわり伝わってくるのでした。

誰かのために祈りをこめて。
贈る気持ちが、もの作りの原点

:::

ここで、吉田慎司さんにちなんだニュースを。
10月6日(土)は、ニッケコルトンプラザ・タワーコートで
吉田さんのホウキの販売とワークショップを行います。
10時~18時まで吉田さんも会場で販売やワークショップ、

デモンストレーションを行っていますので、ぜひお出かけくださいね。
詳しくはあらためてこちらからもお知らせします。

では、次回は、「風姿」のあと3人の方を。

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自分の感受性くらい

今日は風姿という章でご紹介する中の3人の作家の方を。
と思っていたのですが、タ、タ、タ、タンと作家紹介ばかりになってしまうので、
ちょっとブレイクに変えました。(スミマセン!)

20の工房を訪ねて
がメインですが、章ごとにもブレイクのように、
工房からの風の点景として画像をぐるりと頁を枠のように囲み
その中にコラムを書きました。
「先生と作家さん」
「おばあちゃん」
「凪ぐ浜の宝物」
というタイトルです。

また、各章の扉には、右頁に応募要項や、最初のミーティングでお配りする文書、
ホームページの中から、企画者が特に伝えたい文章を記して、
左側にそのミニ?解説をしています。

それらが、実はこの本で伝えたいことの尾のようなものかもしれません。
そして、あとがきには、この本作りの間中、ずっと心にあった
茨木のり子さんの「自分の感受性くらい」を、
出版社からご許可をいただき、掲載させていただきました。
この詩のあとに、私はこのような言葉を綴っています。

:::

暮らしに生きる道具、ものを作る仕事。
使う人が存在して、そこに向かって続けられる制作。
それはいわゆる自己表現ということとは異なります。
けれど、やはり創造なのだとあらためて思うのです。
作ることへの慎みと、それを抱いての創造。
その揺れ動きの中で、作り、働き、暮らし、生きる人たちに惹かれてきました。
一人ひとりが見出す光、見出そうとしている姿に。

けれどもときに、その光を薄く思うこともあります。
それは、発信力や影響力を持つ人や媒体に、
作ることが集約されていくのを感じるときでしょうか。
誰かが時間をかけて考え、生み出した思想に無自覚に寄りかたまっていくような流れ。
私だってうっかりすれば、時代の心地よい流れに乗ってしまうかもしれない。
だからこそ、自分の感受性くらい、自分で守れ、と振り返りたいのです。

:::

10回の開催を重ねて、上のような思いがあったからこそ、
この本が生まれたような気がします。
たとえば、本の中で書かせていただいた方たちを、
私はもちろん、すばらしいと思っていますけれど、
それは、あくまで私が思っていること。

本に載ったからとか、誰かがいいといっているからとか、
もっと言えば「工房からの風」に出たから、いい、のではなく、
自分の心で、この作品いい、とか、この作家いい!
と思う人が増えて、集まったらいいな。
そんなことを思っています。

と、ブレイクというよりは、ちょっとマジメ!な今日のdirector’s voiceですね~
さて、今日の画像はこちら。

無事校了となりました!
ふ~
暑い、熱い、夏が終わりました!

(この本、10月6日(土)7日(日)8日(月・祝)に、
コルトンプラザタワーコートで先行販売させていただきます。
他にもイベントもありますので、お近くの方、ぜひいらしてください。
ちなみに、書店さんは10日ごろかと思います )

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風躍る

工房からの風‐作る・働く・暮らす・生きる‐20の工房を訪ねて
のご紹介を続けますね。
今日は第3章。
風躍る
と名付けた章で、4人の女性作家をお訪ねしました。

柿渋染めでバッグを作る冨沢恭子さん。

クウネル最新号でも、
「太陽まかせの柿渋ぶ染め」
というタイトルで6頁にわたってご紹介されています。

数字も定規も使わない。
布から立ち上がるように生まれるカバン

:::



京都山城村の宮本佳緒里さん
布をつないで、主にガマグチを作ります。

布をつなぐ手と心は、草や木、
風や光と親しみながら、針を進める

:::


金属の小原聖子さん
アクセサリーやオブジェを制作されています。

続けることも才能のひとつ。
音楽を奏でるように、かたちが生まれる

:::



高松で裂き織りでバッグなどを作るいわもとあきこさん


凛として、くすっと。

大胆さには、慎みが裏打ちされて

:::

伸びやかに、しなやかに
風躍るように仕事を進めるひとたち。

茶色の文字は、各頁につけたリードです。
画像は掲載できなかったものもこちらでご紹介してみました。
たとえば、作品がいろいろなところに飾られている
小原さんのお住まい、その上から撮ったものなど、
ワタクシ的には気に入っていたのです。

明日は、風姿を。
こちらは3工房ずつ2日にわたって、ご紹介いたします。

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風集う

2章目は「風集う」
この章では、作家自ら集いの場を作っている、
あるいは、作ろうとしている方々を取材させていただきました。

滋賀県のマンマミーア。
木工の川端健夫さんと洋菓子の川端美愛さん
(健夫さんは、今年の工房からの風に出展くださいます)

「文化の発電所を作りたい。
そのためにも、今は自分を育むとき」

 


静岡(新富士)キャンドルgallery+shop+cafe
koko-kaltio.
ろうそく作家の鈴木有紀子さん
(鈴木さんも今年の工房からの風に出展くださいます)

「美しいろうそくは
安らぎの時を映しながら作られる」

 

東京、錦糸町の硝子企画舎の井上剛さんと枝利奈さん

「役割とは与えられた幸福の種。
種を育む創造の場を築いて」

 

北海道・余市に移られて
ガラスから陶芸にお仕事を変えられたJUNIOの木村泰明さんといすゞさん

「家族との時間を満たし、自然と響き
新天地での制作が始まる」

 

千葉県神崎町で日本酒を醸す寺田本家の寺田優さんと聡美さん
(寺田本家さんは通常、蔵の見学は行っておりません)

「造り手の生き方考え方が
発酵か腐敗かを決定している」
:::

皆さんいい表情ですよね。
ぴかぴかに輝いていました。

本では作品写真もたくさん掲載していますが、
こちらに掲載すると、今年の工房からの風にあるのかな、
と紛らわしいので、ポートレイトを中心にご紹介しました。

ご自身の制作、仕事を深めること。
そのことと響きながら、集いの場を作っていくこと。
5つの風集う場で感じてきたこと、ぜひお読みいただけますように。

明日は、
風躍る
の4人の女性たちです。