月別アーカイブ: 10月 2023

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平井岳さん・綾子さん(漆)

出展作家の方々からのメッセージも最後のひと組となりました。
このあとは、風人さんのデモンストレーション、ワークショップ、トークイベントなどのご紹介や、当日に向けてのご案内をしていきますね。

今回、あえて、皆さんから寄せられた長い文章を省略せずに、そのまま綴っていきました。
スマホの時代、短いセンテンスでキャッチ―に伝えていく方が広がりやすいと思ったのですが、あえて。

あえての理由は、出展作家の方々がこの機会に想いを心の中で確かにできればとの願いです。
その想いを、作家同士で読みあうことで、モチベーションを高めることはもちろんですが、もっと芯のところでこれからの制作に大切なものが育めたらと願って。
そして、その結果、当日の展示内容がよりよくなれば、来場者の方々にも一層喜んでいただけるのではないかと思ったのです。

実際のところ、出展作家、そして、過去出展の方々の反応が大きいように思います。
ちょっとディープでもありますから、一般の方にはちょっとすべて読み込むのはヘビーだったかもしれません。
けれど、あらかじめ、ここを読んでいただけたら、当日は何倍も楽しんで、充実した時間、交流を体験いただけるように思います。
きっと!

では、トリの平井岳さんと綾子さんからのメッセージをご紹介しましょう。

Q1
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
磐梯山と猪苗代湖に囲まれた福島県猪苗代町で夫婦2人で、自ら採取した漆を使用して器を制作しています。
今回はこれからの寒い季節にぴったりな、木と漆の風合いを生かした溜塗りのお椀や蒔地のカップなど日常使いの器を出品します。

『溜塗り(ためぬり)』とは顔料の入っていない漆を木地に塗り重ねる仕上げで、木目が透けて見えるのが特徴です。
『蒔地(まきじ)』とは漆を塗った上から地の粉という珪藻土の粉を蒔いている仕上げで、さらっとしたマットな質感が特徴です。

この2つの仕上げの器をメインにしています。
どちらも“食卓に馴染む漆器“を目指して、形と色艶にこだわって制作しています。
そのために重要なのが材料選びです。
主に漆と相性が良く軽くて柔らかな栃と適度な重厚感とハッキリした木目が特徴の欅を使い分けています。
そして仕上げには自ら漆掻きをして採取した漆を使用しています。
採り方や時期によって少しづつ色艶が変わるので、それぞれの特徴を見極めながら仕上げによって最適な漆を使い分けています。

そして今回はじめてお披露目する新作の器もあります。
中でもご紹介したいのが高脚椀。
名前の通り高台が高くスラリとしたイメージなので洋風のスープなどもぴったりです。
私はこれにオニオンスープとチーズを乗せて焼いたバケットを乗せ、グラタン風にして食べるのにはまっています。

冬の食卓をよりおいしく温かくしてくれる器たちを沢山持っていきますので、ぜひ木と漆の風合いと手にした時の心地よさを感じにいらしてください。

Q2
平井さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
仕上げ塗りに使う漆刷毛
漆刷毛は人の髪の毛で作られているのでとても高価な道具。
修行に入った直後の自分には欲しくてもなかなか手の届くものではなかったのですが、ある程度仕事ができるようになった頃に親方が買い与てくれた物で独立した今でも大切に使い続けています。
漆刷毛は使う人によって毛の長さや毛先の形が違い、自分の塗り方にあわせて調整するのがとても重要になってきます。
「いい仕事をするには良質な道具を使う」ということをこの刷毛からたくさん学びました。
今回出品する溜塗りの器のほとんどはこの刷毛で仕上げ塗りを施しています。(岳)

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
村木雄児さんの三島飯碗と尾形アツシさんのヒビ粉めし碗です。
2点になってしまっていますが、実はこれが私たち夫婦の唯一の結婚記念の品なのです。
指輪や式はもちろん写真も撮っていないので本当にこれだけです。

入籍の前後に地元の器屋さんで飯碗を選んでご飯を食べるという会に行った時にそれぞれ選びました。
記念に買いに行こう、と考えていたわけでもなく選んだ後に『そうか、タイミング的にも物としてもこれがぴったりかもな』という具合です。
揃いじゃないという所も自分達らしいような感じがして気に入っています。
なんだか無計画でだらしないような気もしますが、自分の事となると畏まった事が苦手なのです。

丈夫で使いやすく使うほどに愛着が湧いてくるまさに質実剛健といった姿に、作りたい物も定まっておらず、とにかく模索する日々だった当時の私たちに指針となるような形を示してもらったような気がしています。

余談ですが、これを求めたお店の店主さんとはその時からお付き合いがあり、昨年結婚40年の記念として私たちの汁椀を選んで頂きました。
作り続けているとこんな思いがけない嬉しい事があるのか!と時間が経ってさらに思い出深い器になっています。(綾子)

平井夫妻との出会いは、2020年の冬の名残りの浅い春。
この年の「工房からの風」への出展が決まっていたのでした。

早々に個人ミーティングをお申し出くださって、
「これはすごい人たちが出てきた!」
と思い、秋の出展が楽しみになったのでした。

けれど、この年。
通常開催は中止となって、「工房からのそよ風」として、近隣在住の作家だけで小さく行ったために、平井さんの出展はなくなってしまったのでした。

これから世に出ていこうとしていた新進の作家には、ほんとうに大変な3年間でした。
その中にあっても、先に出会いの機会をいただいておりましたから、他の場での展示に何度か声をかけさせていただき、その中で益々力を蓄えていかれたのでした。

ようやく。
3年ののちに、出展が叶ったと喜んでくださったおふたり。
3年前よりもぐんと作品の量も質も高められての出展です。

今回、出展作家の方々から任意で映像を提供いただき、こちらで映像作家の方に依頼して編集いただいたものを制作しました。
先に公開したインスタ版に加え、少し長尺のyoutube版も本日公開いたしました。

また、特に優れた映像を提供くださった平井夫妻のものは、これだけで1本に編集制作させていただきました。
漆の植林、漆掻き、塗り・・・(&猫)で構成された3分32秒版もぜひご覧ください。
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平井岳さん・綾子さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、花壇よりのgalleryらふと脇。

ホームページはこちらです。
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平戸香菜さん(鋳金)

Q1
富山県砺波市で金属を素材とした制作をする平戸香菜さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
生命のうつろいをテーマに作品を制作しています。
自分で金属を溶かして作品をつくることが、なにより楽しいです。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
溶けた金属が入った坩堝を掴む道具です。
鋳金の道具は市販されているものが少なく、あるものを加工したり作り直したりして使うことがほとんどです。
大切な大先輩から譲り受けたとても重要な道具です。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
野村瑞穂さんの抹茶茶碗
なんでもない形ですが、柔らかな釉薬の色がとても心地良い作品です。
野村さんの作品は白い釉薬が多いのですが、これは珍しく桜色です。
当たり前のことを丁寧に行う大切さを思い出させてくれます。

金属を鋳込む鋳造。
今回も金属を素材として制作する作家が7名ほどいらっしゃいますが、大掛かりな鋳造をされるのは平戸香奈さん。
金属材料を高温で溶解させ、独自に作った鋳型(いがた)に流し込んで冷やし固めることで制作する技法です。

小さなものは装身具から、花瓶からインテリアのものまで。
金属の幅広い作品世界に触れていただく機会になるように思います。

平戸香菜さんの出展場所は、galleryらふとと花壇の間。
秋のお庭にオヴジェも映えるように展示してほしいと思っています。

余談ですけれど、平戸さんはもともとは茨城県のご出身。
展示場所の隣、galleryらふとでは、茨城県在住の竹細工の勢司恵美さんが竹割りをしています。
茨城ののどかで楽しい言葉が行き交うエリアになるかもしれません。

平戸香菜さんのホームページはこちらです。
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そして、平戸さんの登場する映像はこちらです。
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小泉すなおさん(陶芸)

Q1
二回目の出展となる小泉すなおさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
千葉県柏市にて工房を構えて作陶しています。

食器や花器を、半磁土と陶土を作品によって使い分けて作っています。
砂糖菓子のような滑らかな質感、河原で拾う石のような質感など、どれも手に取った時の質感を大切にしています。

食の器はマットな釉を掛けたものが中心ですが
花器やオブジェなどは、土を重ねて表面に装飾を施し
た作品もあります。

陶芸は窯で焼く事で完成するので、最後の最後を見届けられません。
毎回がテストのつもりで、ドキドキの窯出しを行い
自分の中の正解は数を重ねなくては得られない、を痛感しています。

初めて出展させて頂いてから6年になりますが、
小さな窯を新しく手に入れ、沢山の釉薬の試作を行い
色の世界が広がりました。

釉薬の掛け合わせや、滲みで生まれる柔らかな景色。
移りゆく空や広がる波のように、ぼんやりとした優しい景色を
器に写せたらと思っています。

Q2
小泉すなおさんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
工房を構えた時に入れたガス窯と、新しく加わった電気窯。
道具というより相棒で、どちらもクセがあります。
開ける時にこんなに高揚感のある扉はありません。

自分のやっている事は、広い陶芸の世界では
本当に狭い範囲の試作の繰り返しに過ぎないのですが、失敗も多い中、少しでも「ああこれは!」と思うものが出てきた時は、この窯の前で小躍りしてしまうのです。


前回から6年!
その間、風人(かぜびと)さんとしても活躍いただきました。

すなおさんのご自身の創作は、この間、ぐんぐん展開を進められて、作品構成がかなり変わったように思います。
釉薬の変化による色のグラデーションなど、きっと今現在の渾身の展開を見せてくださることでしょう。

小泉すなおさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、入って中央右側。
梅とアーモンドの木の間です。

小泉すなおさんのインスタグラムはこちらです。
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Deep Gorge(陶芸)

Q1
Deep Gorgeという工房名で作陶する高田寛子さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
屋号のDeep Gorge(ディープゴージ)は、幼少期を過ごした米国東部コネチカット州の当時の住所、Deep Gorge Roadから名付けました。
ニューイングランドで培った感性と、日本の陶芸技術を組み合わせた独特の作風が特徴のブランドです。
「たおやか」をテーマに、信楽から取り寄せた2種類の陶土 x 自作の3種類の釉薬 x 2種類の焼成方法を組み合わせて、土の器を作陶しています。
和食器や洋食器といった用途にとらわれない、Versatile=多用途なデザインを心がけており、手に取ってくださった方の解釈で如何様にも使えるうつわを、出品致します。

例えば、代表作のCUP&SAUCERは、コーヒー、紅茶、日本茶、お酒、ジュース・・あらゆる飲み物が似合うデザインを想定して作りました。
お客様がいらした時はソーサーを茶托として。
普段はちょっとしたおやつを載せたり、取り皿としてカップと一緒に。
ハレの日もケの日も寄り添える、食器棚のスタメンを目指しています。

奇をてらわない、不完全だけど、特別。

くらしに寄り添い、何気ない一瞬を大切にしたくなる日々の器をご覧ください。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
道具、というには大きすぎるかもしれませんが、私にとって大切なのはやはり陶芸用の窯です。
電気とガスを併用する窯を用い、12~16時間かけて1250度まで温度を上げて作品を焼成しています。
そのあとで、24~30時間かけて冷ます時間も同様に大切な制作過程です。

陶芸にはたくさんの工程がありますが、泣いても笑っても、最後は窯の神様に作品を預けて仕上げていただく気持ちで毎回の焼成に挑んでいます。

神奈川県鎌倉市で作陶されていたDeep Gorgeさんは、この秋、群馬県北軽井沢に引っ越しをされるとのことです。
陶芸作家が工房を移転するのは、大きな変化ですね。
その直前の「工房からの風」への出展は、ひとつの節目、集大成にもなるのかもしれません。

Deep Gorgeさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、入って右手に添ったところ。
手前隣に、金工の玉置久実さん。奥隣に革のoceanoさんのテントになります。

ホームページはこちらです。
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ふくべ窯(陶芸)

Q1
岐阜県土岐市で窯をひらくふくべ窯さん。
「工房からの風」にはどのような作品を出品くださいますか?

A1
精炻器(せいせっき)というやきものを出品します。

精炻器は昭和初期に岐阜県で生まれたやきもので、化粧土を使った加飾技法を特徴としています。
約50年前に生産が途絶え、現在制作ができる作り手はほんのわずかです。
約20年前に当時の精炻器に出会い、その美しさに魅了されました。
技法を学び、現在はふくべ窯として夫婦で精炻器を制作しています。
精炻器には化粧土を使った様々な技法がありますが、私たちはさまざまな色の化粧土を盛り上げるようにして筆で描いていきます。
身近にある植物や動物をモチーフに毎日の食卓が楽しくなるような器づくりを目指しています。

私たちが昔の精炻器から感じたわくわくを、ふくべ窯の精炻器から少しでも感じていただけましたら嬉しいです。
精炻器の貴重な加飾技術、作品を多くの方に広く知っていただくきっかけにしたいと思っております。

Q2
工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
私たちふくべ窯の大切な道具は、化粧土で加飾するためのヘラです。

筆以外の加飾の道具は多くが手作りです。
このヘラは精炻器の先生である曽根洋司先生が作られたヘラで、精炻器を学び始めた頃からずっと使い続けています。
先生のヘラは私たちが作った道具よりも格段に使いやすく、20年近く制作をしていてもかないません。
化粧土を柔らかく動かし、思い通りの表情を出せるこのヘラを使うたびに、制作したものだけではなく、そこに至るまでの過程も大切に受け継いでいきたいと強く思います。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
愛用している工芸品はNAKARI WATCH JP さんの腕時計です。

まだ使い始めて2年ほどですが、はじめは堅かった皮が使うたびにやわらかく肌に馴染み、木製の文字盤もだんだん深みのある色になってきています。
ただ時間を確認するだけのものではない、同じ時間を一緒に過ごしている生きもののようでとても気に入っています。
これから使い続けてどんな色合いになっていくのかとても楽しみです。

ご夫婦で制作される「ふくべ窯」。
どこか懐かしいような、それでいて新鮮な「精炻器(せいせっき)の器。
なかなか見る機会も少ないかもしれません。
その独特な美しさの有る器が、普段使われている様子を想像してみるのも楽しいですね。

ふくべ窯さんのインスタグラムはこちらです。
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玉置久実さん(金工)

Q1
静岡県で金属を素材とした制作をする玉置(たまおき)久実さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
銅や真鍮を主な素材として、板材や棒材を切り出し、形成、溶接をして制作しています。

金属という素材は熱を加えれば柔らかくなるり、手を加えれば形を変え、硬くなる性質をもち、これを繰り返しながらカタチにしていきます。
私はこのピカピカで無機質だった金属の板が1打1打鎚で叩くごとに鎚目がつき、姿を変え立体になっていく瞬間がとても好きです。
手間と時間がかかる方法ですが、ハリのある丸みと柔らかなカタチはぜひ手に取って感じていただきたい魅力です。

今回出品するライトは場所を選ばず設置でるよう乾電池式にし、配線やスイッチも作品に合わせて1つ1つ制作しています。
カタチはシンプルにしてすっきりと、空間になじみながらも存在感が出るように心がけています。

花の器は絞りの技法を使い制作しています。

焼き鈍し、成形を何度も繰り返しカタチをつくっていくため、鎚の模様と手の中でずっと撫でていたいような丸みを存分に感じられると思います。

オブジェは身近にいる野鳥をモチーフに制作しています。

野鳥は当たり前のように目にしていますが、その中には季節によって何千キロも渡りをおこなうものや、生存のために住む場所を変えたものなどがいます。

あたりまえの光景は、実は尊く美しいものだと気づいたことからその姿を残したいと思い制作しています。

時の経過とともに変化していく色合いも金属の魅力の1つだと感じています。

だんだんと落ち着きのある色合いになり、使い方やお手入れの仕方でマットな質感なったり、つやがでたりと変化の仕方も様々です。

金属の色味や鎚の模様、カタチの丸み1つ1つの違いを楽しみながら手に取っていただけたら嬉しいです。

Q2
玉置さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
工房で使用している机

この机は小学校の入学祝に両親から贈られた学習机です。
最初は木目でしたが、高校時代にペンキで白く塗りなおしました。
学生時代はこの机でまじめに勉強した記憶はあまりありませんが、今では制作に欠かせない机になっています。
安定感があり、天板が広く、引き出しもあるのでとても作業がしやすく気に入っています。

もらった当時はこんな長い付き合いになると思っていませんでしたが、これからも大切に使っていきたいと思います。

ランプ、花瓶、アクセサリー・・・
金属素材で幅広い制作を行う玉置久実さん。
ニッケ鎮守の杜に入って右手(銀座アスター側)に並ぶ4基のテントの、一番入り口側で、金属の作品がどのような表情をしていることでしょう。

玉置久実さんのインスタグラムはこちらです。
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三井亮さん(陶芸)

Q1
山梨県韮崎市で日月窯をひらく三井亮さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
近隣の果樹灰を使用した釉薬でやきあげたうつわや花入れなどの陶器。
果物灰釉は不安定な釉薬ですが、それゆえの繊細な色合いを見て頂ければと思います。
形は平安時代の遺跡からの出土品にインスピレーションを得てシンプルで美しい形状を追い求めています。

Q2
三井さんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
窯です。
父の築いた1立米の不思議な箱。
つくり手にも完全に掌握しきれない5日間。
内で炎が流れ、釉薬が動く瞬間を外から見極める。
日月窯のつくる果物釉は窯の詰め方や詰まり具合も仕上がりに大きく影響を与えるために6日目に窯の蓋を切る瞬間は毎回期待と不安が入り交じります。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
松永 聖士作 漆塗り箸
友人でもある漆作家が制作したもので十年以上愛用しています。
重さ、箸先の細さ、使い代の長さ、持ち代の感触全てにおいていつの間にか自分の手にしっくり馴染んでいて食事の時に違う箸が用意されているとわざわざ取り替えに行くほどなくては落ち着かない相棒になっています。

お父様と同じ陶芸の道へ進まれた三井さん。
お手製の窯も引継ぎ、そこで焼かれる器には、時が脈々と受け継がれているように感じます。

山梨の果樹で灰釉を作って作品作りに生かすお仕事。
今回は、静岡の平井亮太さんが柿農家の剪定作業で出る枝葉を活用されているとおっしゃっていましたね。
身近な素材を活用して美しく人の営みに行かされるものを作る仕事。
それぞれにじっくり拝見してみたいです。

三井亮さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜。
galleryらふとの向かい、佐藤かれんさんのお隣。

インズたグラムはこちらです。
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荒井彩乃さん(陶芸)

Q1
コルトンプラザのある市川市で作陶する荒井彩乃さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
スリップウェアと和紙染めの技法を用いた陶器の食器とアクセサリーや小物入れを出品いたします。

スリップウェアとは、クリーム状の化粧土の上に化粧土で重ね掛けをし装飾をして焼き上げた陶器全般のことを言います。スリップウェアのやわらかくぽってりとした表現と化粧土を伸ばして出来た細い線組み合わせ、豊かな動きの植物模様をうつわに描いております。

和紙染めとは、下絵付けの一種で筆で直接描かずに型紙に絵の具を染み込ませて模様をつける技法です。
花畑や草花の茂みの一部を切り取ってうつわの上に乗せたような、色とりどりで華やかな雰囲気のうつわを作成しております。

2つの技法を使い、自分の思う植物模様で陶器に落とし込んでみました。
それぞれ雰囲気の異なる陶器をお楽しみいただけますと幸いです。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
スリップウェア作家、小島鉄平さんの角皿です。
小島さんの器に描く生き物はとても生き生きとし、スリップウェア特有の化粧土の流れを上手く利用した作品だと思います。
自分もいつかこの様に生き生きとした作品作れるよう、普段からなるべく目の届く場所に置いて、自分を鼓舞しております。

スリップウエアと和紙染めのふたつの系統のお仕事を進める荒井彩乃さん。
以前、他の作家の方のサポートでお客様をお迎えする側も経験されたようですが、ご自身のお仕事、どのように見て、受け止めていただくのか、きっとドキドキされていますね。

荒井彩乃さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、galleryらふとの近く。

インスタグラムはこちらです。
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ムラカミ染織(丹波布)

Q1
丹波布を織る村上樹里さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
兵庫県丹波市青垣町の伝統的木綿織物、丹波布(たんばぬの)を製作しています。
丹波布は、綿から糸を紡ぎ、草木で染め、織り上げる、それら全ての工程を人の手で行なっています。
また、養蚕が盛んだった時代に、商品にならない屑眉をほんの少し木綿織物に織り込んだことから、それが丹波布の特徴となっています。

伝統的な丹波布は、丹波の素朴な空気感を表すかのように、渋く静かな風合いのものが多いのですが、それと比べると、私の織る丹波布は明るい印象を受けられるかもしれません。

日々の生活の中で丹波の自然の豊かさや多様性を感じるにつれ、いつの間にかそのような作風になっていったような気がします。
昔ながらの丹波布を継承すること、それと同時に、現代を生きる私自身が感じるものを表現すること、両方を大切にしながら織り続けています。

工房からの風では、そんな丹波布を肌で感じられるストールやバッグ、日々の生活で使えるがまぐち小物やテーブルウェアなどを展示します。
日々使う物だからこそ、人の手、空気、水、光に触れます。そうした刺激を受けることで、草木染めの色や木綿の手触りが、少しずつ変化していきます。
そんな自然の移ろいを、生活の中で楽しんでいただけたらと思っています。

ぜひ、丹波で生まれた丹波布を、手で触れてみてください。
みなさまにお会いできることを、とても楽しみにしています。

Q2
ムラカミ染織で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
この織機は明治時代初頭のもので、とてもシンプルな作りをしています。
そのため、私でも簡単に持ち上げられるほど軽く、織っていると織機の木材が揺れ動きます。
最初はそれに慣れず、少し戸惑いました。
ただ、織機の揺れと自分のリズムが一致した時、織機と身体とが一体化しているかのようにとても心地よく織れるのです。

数年前、長年染織に携わっておられた大先輩がご高齢のため引退される際に、この織機を譲っていただきました。
そして元々はその先輩もまた、素敵な縞模様のもんぺを履いた方から、この織機を譲り受けたそうです。

先輩から織機をいただく際、「あなたにバトンを渡したからね」と言っていただきました。
約150年前から何代も受け継がれてきたそのバトンを落とすことなく走り続け、いつか私も次の世代へ渡すことが出来るだろうか。
この織機と共にあった人々と伝統の流れに思いを馳せながら、日々、織り続けています。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
秋田の曲げわっぱのお弁当箱です。
私が丹波市へ移住することになり、それまで働いていた職場を退職する際、同僚たちが贈ってくれたものです。

この時、私はとても驚きました。
実はちょうど、曲げわっぱのお弁当箱が欲しくて探していたところだったのです。
ただそのことは誰にも言っていなかったため、箱を開けてわっぱの姿を見た時、「どうやって私の心を読んだ・・?」と衝撃を受けたのです。
同僚に、「なんとなく、わっぱが好きだと思った」とあっさり言われ、見透かされているなぁと、なんだか嬉しくなったのでした。

丹波へ来て、毎日のように使ううち、今では良い風合いを醸し出しています。
壊れることもへたることもなく、秋田の職人さんの技術を感じます。
周りの人から「そのお弁当箱、いいね」と言われるたびに自慢しつつ、これからも大切に、この曲げわっぱを使い続けたいと思っています。

素敵なストーリーがたくさん散りばめられたメッセージですね。

『 約150年前から何代も受け継がれてきたそのバトンを落とすことなく走り続け、いつか私も次の世代へ渡すことが出来るだろうか。』
走り続けるその過程にある「工房からの風」への出展。
ぜひ豊かな経験にしていただきたいと思います。

そして、わっぱのお話も!
わっぱ、会場に持ってきてくださるといいなぁ。

ムラカミ染織さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜。
中央の花壇のほとりです。
和紙のPAPER BRUT さんがお隣。
糸車ももってきてくださるそうですので、きっとすぐわかりますね。

ムラカミ染織さんのインスタグラムはこちら
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そして、映像はこちらです。
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佐藤かれんさん(染織)

Q1
『 北アルプスの山々が初冠雪しました。』
と、コメントを寄せてくださった佐藤かれんさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?

A1
今回が2回目の出展になります。
前回から4年経ち、織るときに使う技法や色、作品の種類や量が増えました。
当日は、この4年間の織りの広がりを、作品を通してお見せできればと思います。

制作では、織物留学をしたスウェーデンでの経験や、日々の暮らしからの「実感」を大切にしています。
この「実感」とは、言い換えると、その作品を織りたいと感じたときの背景です。

今年の「工房からの風」に向けて織ったものから、3つ作品を紹介いたします。

タオル
コットンとリネンのタオルです。
ハンドタオルとバスタオルの、2種類を制作しています。
タオルとして拭くだけでなく、ランチョンマットのように敷いたり、カゴやバッグの目隠しに掛けたり、暮らしに合わせて用途が広がります。

留学中、ルームメイトがお風呂上がりに、薄手でクタッとした布を、いつも部屋に干していました。聞くとその布は、バスタオルだそうで、スウェーデンでは一般的だと教えてくれました。
タオルといったら、厚手でフワフワだと思い込んでいた私にとって、驚きの返答でした。

その後、授業でスウェーデンのタオルを織る機会がありました。
完成後に使ってみると、なんとも言えない心地よい質感で、手放せなくなりました。

手元には使い始めて9年目の、手織りのバスタオルがあります。
今回の出展の際に、見本としてお持ちいたします。
使い込まれたタオルと、新しく織ったもの、それぞれの手触りの違いを感じていただきたいです。

クッション
スウェーデンの民族衣装から着想を得て、ダーラドレルという技法で制作しています。

ダーラドレルは、スウェーデンのダーラナ地方の伝統の織りです。
この地方に学校があったので、留学中、ダーラドレルの布を多く目にしました。
特に、ダーラドレルの模様が織られた、民族衣装が印象に残っています。
スウェーデンの衣装はとても装飾的で、細かい刺繍や色鮮やかなポンポンが沢山付いています。
装飾と合わさると、ダーラドレルの模様が一層引立って、衣装の上でハッとするほど美しく見えました。

その美しさを織りたくて、表面にダーラドレルの模様、裏面に刺繍、四隅にポンポンを付けたクッションが出来ました。
表面、裏面、隅まで愉しめる、手仕事が詰まったクッションです。
会場でお手に取って、様々な角度からご覧いただけると嬉しいです。

膝掛け
コットンとラムウールで織った膝掛けです。
ラムウールのふんわりとした風合いに、コットンのさっぱり感が加わって、肌寒い季節に最適です。
自宅では、昼寝のおともにしています。
大判のストールとして羽織ったり、ソファーに掛けても素敵です。

今回の膝掛けは、8月の「工房からの風」のミーティングで、出展場所を確認した弾みで制作しました。

私のテントは、おりひめ神社の鳥居のほとりです。
木々の間で、少し薄暗く、木漏れ日がひらひら揺れる場所でした。
その様子を見たとき、ここに色で明かりを灯したい、その為に、何かぴったりのものが織りたいと感じました。

新鮮な気持ちのうちにと、帰路で頭をフル回転させて、翌日一気に織ったのが、写真の膝掛け3枚です。
勢いに任せて制作したからか、とっても爽やかな色調になりました。個人的に、今年の出展の、記念のような作品です。

Q2
佐藤かれんさんの工房で大切な、あるいは象徴的な、あるいはストーリーのある「道具」について1点教えてください。

A2
スウェーデンからやってきた、織り機です。綜絖16枚、織り幅150cm、重量約300kgの、大型モデルです。

北欧で初めて織りを学んだ私は、卒業後、日本で織りを続ける手立てがありませんでした。
知人もおらず、道具も場所も、何ひとつ揃っていない状態で、残念な気持ちでいたとき、スウェーデンの先生が、織り機を譲ってくださる方を見つけて、日本へ送ってくださいました。

その織り機の持ち主は、先生のお知り合いの作家さんで、本を何冊も出版するほど、織りに精通されていました。
ご高齢になり、織りをやめ、道具を手放すことにしたそうです。

私には勿体ないほど立派な織り機がやって来て、この織り機を活かすためにも、これからも制作を続けたいと、作家活動が始まりました。この織り機があるから、今の自分の制作ができている、とても大切な存在です。

Q3
お手持ちの「工藝品」で愛用、または大切にされているものついて1点教えてください。

A3
手作りのシャトルです。

スウェーデンで織りを学ばれた日本人の先輩が、私の作家活動の応援にと、昨年に譲ってくださいました。
彼女が北欧にいた頃に、知り合いの木工作家の方にお願いしたもので、糸を入れる所に、作り手のサインが入っています。

一般的なシャトルよりも分厚くて、曲線的なつくりです。
使い込まれて、艶やかな見た目をしています。
手によく馴染んで、糸が魔法みたいにスルッと通るので、他のシャトルも持っていますが、こればかり使ってしまいます。

佐藤かれんさんが前回出展くださって4年が経つのですね。
ちょうどコロナ禍の前年。
最年少作家でした。

もちろんベテランの染織作家のような完成度には至らなかったでしょうけれど、ひたむきに織り上げられた布の瑞々しさに、多くの方が魅了されていました。

コロナ禍の3年間。
弛まず織り続けた先の今展。
ひたむきさはそのままに、織りの手も成熟してきたかれんさん。
初期感動、初期動機の光を失わず、手が掴んだ技術をもって、作品のバリエーションも一層豊かになったようです。

8月のミーティングで、出展場所を確認したパッションのままに織り上げた膝掛け!
ぜひ、見て、触れてみたいですね!
おりひめ神社鳥居のふもとで。

かれんさんのインスタグラムは、こちらです。
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