2019年10月の記事一覧

「出展作家紹介/工房からの風」New

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ヒグチエリさん 布装身具 神奈川

Q1
布に刺繍などを施して装身具を制作するヒグチリエさん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品なさいますか?

A1
日々の中で目にする身近な植物や、
海で拾い上げた自然界の美しい造形からイメージを膨らませて制作した、
刺繍のブローチや耳飾りをお持ちします。
海岸で石ころや貝殻を拾うような、
散歩道で落ち葉を拾うような
そんな小さな発見を楽しみにブースにお立ち寄りいただけたら嬉しいです。

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Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、
空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
工房の中で大切にしている場所は「庭」です。
庭のある家に越してきて3年目になりますが
植物があることで身近に「循環」を感じることが出来ます。
人も循環の中にいるのだなあと日々感じています。
そして根がしっかり張ると植物は強いものです。
庭から教わることが沢山あります。

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Q3
ヒグチエリさんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
私の中のものづくりの種火は20歳前半の頃、
糸や手芸素材、作家さんの作品やCDを扱っているあるお店に出会い、そこに並んでいた「温度のあるもの」に当時心惹かれました。
手でつくることの楽しさや手でつくられたものをしっかりとその温度と共に伝えている店主さんは尊敬する存在です。

糸という素材を選んだのはもちろんそのお店と店主さんに出会ったことも大きいのですが
糸というものが私と何かを「繋ぐ」ものとして作用するのではないかと思いました。

自然界の美しい造形や草花の色に感動し、
それを糸に置き換えて刺繍することで
その時の記憶と感動を見えないところで繋いでくれているかもしれない。

また刺繍をすることが文章を綴ることや音楽を奏でることに繋がるかもしれない。

そんなことを思って制作した作品がただの装身具だけではなく、
見て触れて感じる詩のようなものであれば良いなと思っています。

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ヒグチエリさんの布の装身具。
かわいらしくって、素敵で、美しい。
身に着けていると、センスのよさが伝わってくるようなものばかり。

けれど、そこには表面的なことではなくて、
内側からじんわり表に現れてくるような確かさがあります。
表面的なデザインだけを真似ても、きっとこうにはならないようなオリジナリティー。

ひとつひとつの作品は声を出さないけれど、
作品群で見た時に作家の想いにより触れられるような気がします。
すると、その先の作家の営みに関心が湧いてきます。

ヒグチエリさん、これからどんな風な制作をされていくのかなぁ。
もしかすると、この会がターニングポイントになって、
よりひとつひとつの密度や重力のこもった制作に移っていかれるのでは?
そんな想像もしてしまいます。

(そして、お庭、素敵ですね――。
ふかぶかとしていて・・・)

ヒグチエリさんの出展場所は、スペイン階段前。
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岩田圭音(たまね)さん 金属 埼玉

Q1
岩田圭音さんは、工房からの風にどのような作品を出品なさいますか?

A2
凹版画とその原版をブローチに加工した作品を出品いたします。
素材は真鍮と洋白、絵柄は一点ごとに手描きをし、
銅版画の技法と同じ塩化第二鉄による腐蝕エッチングで制作しています。

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Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、
または、道具の写真を1カット撮ってください。そして、その説明をお願いします。

A2
写真は作業をしている所にある明り取りの窓。
どこかの蔵で使われていたという鉄格子が嵌め込んであります。
奥の絵は小山田二郎のドローイング。
一息つく時は、格子のひと枡ごとに違う景色や色を眺めたり、
小山田のドローイングを眺めたりします。

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Q3
岩田さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、
大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
美大の時は油絵科でしたが、銅版画をどうしてもやりたくて、
版画家の作田富幸先生の版画工房へ通った時期がありました。
銅版画を制作し始めて、最初に受けた強い印象は、
エッチングによって絵が刻まれた原版が、とても綺麗だったということです。
黒いインクを詰めて白い紙に擦った作品も、勿論魅力がありますが、
綺麗な原版を眺めるのがとても好きでした。

版画とは別に、たまたま、アンティークのポーセリンブローチを目にする機会があり、
「絵」が装身具になっていることに、とても感動したことがありました。
とても小さな画面に緻密に描かれた女性の肖像画があること、
そして、その絵柄が、いわゆる紋様的なものではなく、
描き込まれた絵画レベルのものであることに、非常に驚かされました。
当時はあまりに感動して、上絵付けを習いに行こうとも思っていたのですが、
版画の原版のことを思いだし、版画の技法を応用して、
真鍮にエッチングで絵を施し、ブローチに仕立ててみたのが始まりです。

銅版画の基本的な技法はそのまま踏襲しつつ、
腐蝕時間や腐蝕の方法を変えたり、凹部分に漆を入れたりして、
金属上でも絵がしっかり見えるように工夫しています。

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とても印象的な岩田圭音さんの作品。
(お名前も印象的ですね。
たまね、さんとおっしゃいます)
その作品の成り立ちが、最後の質問の答えからよく伝わってきますね。

実際の作品を拝見したとき、その繊細さな美しさに見入ってしまいました。
そして、写真よりも実際の作品が、なんというか爽やか?というか、
よい意味ですっきりと感じるのは私だけでしょうか。

ご本人もとてもお話しのしやすい方で、
作品や、お名前のある種の「濃さ」を、
これもまた、よい意味で裏切ってくれるような出会いでした。
もちろん、創作の泉には深く、こんこんと湧き上がるものをお持ちですので、
その泉、あるいは火種について、ゆっくりお話しを交わしてみたくなったのでした。

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岩田圭音さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、手仕事の庭の花壇を背にしたところ。
作品を介して、ぜひお話しなさってみてくださいね。

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福山菜穂子さん 陶芸 茨城

Q1
福山菜穂子さんは、工房からの風にどのような作品を出品なさいますか?

A1
金属のハンドルを付けた瓶や、壁掛けの花器を中心に出品します。
器にはもちろん、”何かを入れる”という用途がありますが
何も入っていない空っぽでも、佇まいの美しいものにしたいと思っています。
誰かのなにかにとってちょうどいい器が見つかれば嬉しいです。

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Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
悩みましたが、やっぱりロクロです。
一番エネルギーのいる場所です。
自分で作った泥除け、地元の古道具屋さんで買ったクリップライトはお気に入りです。

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Q3
福山さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
幼い頃から、暇さえあれば手芸やら紙工作やら何かしら作っている子どもでした。
おもちゃは買ってもらえなくても、工作の材料なら惜しまず買ってくれる両親でした。
出会いとは少し違いますが、自分の根底にあるものだと思います。
そして陶芸の面白さを教えてくれた大学の先輩にもとても感謝しています。

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今回の最年少出展作家の福山菜穂子さん。
ベテランの作家の方も多くいらっしゃいますが、
どうぞ臆することなく、今ならではの制作を伸びやかに見せてほしいと思っています。

慎重に丁寧なお仕事ぶりの中に、はっとするような瑞々しさを感じる陶器。
現代の心地よい住空間の中にある姿を思い浮かべてみると、新鮮な気持ちになってきます。

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福山菜穂子さんの出展場所はコルトン広場スペイン階段前。
隣は同じく90年代生まれの織の佐藤かれんさんです。

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武井春香さん 柿渋染め 山梨

Q1
武井春香さんは、工房からの風にどのような作品を出品なさいますか?

A2
柿渋染のバッグを出展いたします。
今まではバッグを作るために厚くしっかりとした布を染めていましたが、
近年、布の透ける様子や色の透明感を意識するようになりました。
柿渋染のストール、蚊帳布も出展いたします。

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Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
渋柿。
夏に摘果された渋柿の実です。

我が家の柿も採りますが、ほとんどが近所の農家の方からいただくものです。
摘果の時期になると「今年も要るのか?」と声を掛けてくれます。
感謝です。

絞った液を染料として使います。
フレッシュな生ジュースで染めるとマットな優しい色、
発酵させた柿渋ではシャープなキリッとした色に染まります。

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Q3
武井春香さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
子供の頃、毎年秋になると干し柿を作るために柿の皮むきを手伝うのは普通のことでした。
その時にいつも母から言われていたことは、
「汚れてもいい服を着てね、渋で汚れるから。」です。
渋をたっぷりと含んだ柿は、触れたものをすべて茶色くしてしまうのです。

その後、学校で織を勉強して染織に携わる仕事をした私が、今はその『渋』を使って染めています。
ぐるっとまわって繫がった様な感覚。
布を染めること、ものを作ることを意識するずっと前からそこにあったものです。

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桃と干し柿を生産出荷する農家に生まれた武井春香さん。
身近な素材である青柿を活用しての制作は、織の学びのあとからのものでした。
今ではこの染めのお仕事も柱のひとつとなって、武井さんの制作を支えています。

フレッシュな生ジュースで染めるとマットな優しい色、
発酵させた柿渋ではシャープなキリッとした色

そうねんですね。
ぜひその違いをご覧いただけましたら。

武井さんご自身がハンサムウーマンですので、
その創り出すものもかっこいいのです。
渋色のバリエーションを愉しみつつ、ぜひそのお話しも伺ってみてください。

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武井春香さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入ってすぐの小高い丘。
(私たち、王様の丘と呼んでいます!見晴らしがいいんです)

柿と桃のファームのすばらしい画像もあるホームページはこちらになります。
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mujina木工房 木工 神奈川

Q1
mujina木工房さんは、「工房からの風」にどのような作品を出品なさいますか?

A1
山桜などの無垢材を削り出して、オイルや漆で仕上げた木工雑貨を出品します。
具体的には器を中心にカトラリー、時計や照明などの生活にまつわる雑貨です。

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Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
工房の作業机です。
実は子供の頃に使っていた学習机を使っています。
特に良いものというわけではないですし、もう少し広ければと思うこともありますが、
引出しが多くて使い勝手の良いところや、
ものを有効利用出来ている気持ち良さもあり、割と気に入っています。

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Q3
mujina木工房さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
木工を始める前は建築設計の仕事をしていたのですが、
仕事のストレスを発散する為に木を削り始めたことがきっかけです。

自分の手を動かしてものを作ることで心と体の軸が揃うような気がして、
手を動かすことは当時の僕にとって喜びであり癒しでした。
それは今も変わっていません。

その後、職業訓練校で木工の基礎の基礎を学び活動を始めるわけですが、
そのもっと前の学生時代にプロダクトデザイン事務所でバイトをしていたことがあり、
デザインの考え方などはその時の経験も活きていると思います。

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一級建築士でもある尾池豪さんが開くmujina木工房。
スプーンから家具、建築まで、生活にまつわるあれこれを設計・製作するお仕事を続けていらっしゃいます。

デザイン力から生まれた作品は、すっきりシンプルな中にもどこか微笑みがこぼれるようなスパイスが効いていています。
この器やインテリア小物作品と共にある時間には、しあわせしかないなぁ。
そんな風に思ってしまいます。

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mujina木工房さんの出展場所は、コルトン広場、スペイン階段前。
対面にヒグチエリさん、隣は笠原りょうこさんです。

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TALLER URARAKA 染 スペイン

Q1
スペイン在住で、TALLER URARAKA として創作活動をされる片岡陽子さん。
「工房からの風」には、どのような作品を出品なさいますか?

A1
スペイン北部で紅型 ステンシル 草木染の技法を使い日常使いの布小物を作っています。
カバンやポーチの様に持ち歩くもの、クッションカバーやコースターの様に家で使うものの両方を出展します。
地中海から吹くユルイ風、素朴なカタチと天然顔料 植物染料の優しい色合をこの機会に感じていただけたら幸いです。

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Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、
空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。

そして、その説明をお願いします。

A2
大切な道具
左から夫ルイス作、樫の木のスリ棒(豆汁作り用)、
いくつかある中で一番愛用してる英国製の刀(型彫用)、
昨春沖縄の恩師から頂いたルクジュー(島豆腐を乾燥させた型彫台)、
蚤の市で買った古いブラシ(型洗い用)。

写真にはないですが義母から譲り受けた1960 年代製足踏みミシンも、
長くつきあいたい大切な道具の一つです。

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Q3
TALLER URARAKAさんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
街を離れて、森のそばで布染めて、畑耕して…という暮らしになって10 年。
時々再読する宮沢賢治さんの作品集が、より深いところで共感でき励まされます。
自然と語らい共生しつつ暮らしの中で四季折々の詩を紡ぐことと、
それを作品を通して色んな方達とシェアしたいという想いが、制作の火種となっています。

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「工房からの風」では、出展作家が決定した後、全体ミーティングを2回行います。
今年も北海道から沖縄まで、はるばるさまざまな地に工房を構える作家が毎回9割以上、
ここニッケ鎮守の杜に集います。

片岡さんはスペイン在住のためこのミーティングには参加が叶いませんでしたが、
毎回メールでやりとりしたり、一度は電話でもお話しができました。

電話でお話ししたい、とのご希望でしたので、何かご質問などメールでやりとりできないことでもあるのかしら?
と思いながら、時差を考えての電話でしたが、ふふ、所謂「用件」はなかったような気がします。
なにか「用件」「質問」に応えなければ!と思ってしまったオカタイ私の頭を
ゆるやかに解いてくれるような、ほんわかとしたごあいさつの会話。

海外との電話に慣れないこちらの緊張感が拍子抜けするようなお声は、
陽子さんというお名前がぴったりのあたたかさでした。

TALLERとは、工房のことなんですね。
工房うららか。
まさに、そのままのお人柄を想像しながら、東京のご実家から沖縄を経て、
スペインで制作を続けてこられたひとに思い巡らせました。

たぶん、今頃は緊張できゅうきゅうとなっている出展作家の方々。
その緊張感も得難いものですけれど、気持ちが一色になってしまうのもつまらないですよね。
ゆるやかな空気が流れていそうな片岡さんのブース。(あ、想像ですけれど!)
スペインの森のほとりで宮澤賢治を愛読する人の作るもの、作り続ける気持ちが、
「工房からの風」をわたる一筋になってくれることが、どんなに豊かなことかと思います。

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TALLER URARAKAさんの出展場所は、おりひめ神社の後方。
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手塚えりかさん ガラス 東京

Q1
手塚えりかさん、「工房からの風」にどのような作品を出品なさいますか?

A1
硝子の器や装身具を出品致します。

主にパート・ド・ヴェール、またはキルンキャストと呼ばれる、硝子の鋳造技法で制作しています。
粘土で作った原型から石膏で鋳型を作り、ガラスの粒や粉を詰めて鋳造するというやり方です。

「生活の道具」という枠を超えて、誰かの感受性に触れられるような、そんな作品を作りたいと思っています。

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Q2
手塚さんご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
「窓からの眺め」を選びました。

私の工房は、実家の一室を間借りしています。
かつて祖父の台所兼ダイニングだったところで、祖父が亡くなった後は、母が洋裁のアトリエにし、
その後、病気になった母の寝室としても使っていた場所です。

そういった家族の歴史や思い出が至る所に沁みついた、古いけれど愛着のある小さな部屋で、所狭しと機材や道具を置いて制作しています。
物に溢れて圧迫感があるので、一番多く居る作業台は、解放感を得るために、常に庭が見えるように、窓に向けて設置しています。
のびのびと育った庭の緑や、差し込む光は、清々しい生命力で溢れていて、緊張感のある作業の合間に、すっと透き通るような、ほっと暖かくなるような、そんな気持ちにしてくれます。

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Q3
手塚さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
初めてガラスで何か物を作ったのは、大学一年の時です。
母校である女子美術大学付属高校から同大学への進学の際、ガラスコースのある工芸科を選びました。

その頃は、恥ずかしながら、将来のプランなど皆無で、
「ただ綺麗だから。楽しそうだから」という理由でガラスを選びました。

そんな風に、若さ故に、何のしがらみも知識もなく、感性と直感だけで選んだことが、実は良かったのかもしれません。
家族から「熱しやすく冷めやすい」と言われる私の性格ですが、ガラスという種火だけは、長く灯り続けています。
ガラスに携わって早17年。
これからも、灯し続けていきた いです。

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手塚えりかさんと初めてミーティングをしたのは1月のこと。
作品と作家の表情がとてもシンクロしていて、愛らしく華やかな作家との出会いでした。
それでも手塚さん自身は、ここからの展開をどのようにすべきかと、
開けるべき扉の前にかかる雲を伺いながら、立ちすくんでいるような印象でした。

可愛らしい装身具のほかに、器にも展開を進めたい気持ちを感じ取って、そのことについてお話を深めました。
その後、硝子作家の繁忙期でもある夏の展覧会シーズンを走りながら、器の制作も深められたことと思います。

ちょうど今日、自由学園明日館での催事で、その片鱗を手に取ることが出来ました。
初日で居合わせた硝子作家の津田清和さんが、手塚さんの作品をたいそう褒めていたのが印象的でした。
津田さん、超正直で、直球なので!
パート・ド・ヴェールの硝子も大好きでよく見るという津田さんが、器の裏の仕上げの美しさまでほとほと感心していました。
手塚さん、よかったですね。きっと励まされたことと思います。
と同時に、もっと自分を信じて、器のシリーズを深めたらよいね、とこれは私もまったく同意見でお話ししました。

自分を信じる。
制作において、この肝の座り方は大事ですね。
もちろん、座っていればすべてよし、という単純なことではありませんけれど。

軌道修正はいつでもできます。
でも、やると決めたら一度とことんやってみるのもひとつなのだと思います。

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手塚えりかさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、広場側のゲートから入ってすぐ右手。
秋の光をまとって、愛らしい色合いの硝子が輝いていることと思います。

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鈴木有紀子さん ろうそく 静岡

Q1
鈴木有紀子さんは、工房からの風にどのような作品を出品なさいますか?

A1
物語の一場面を切り取ったような風景や植物の姿を、
炎と呼応させて愉しむ「透ける灯り」と、
今展では、「静かに色を重ねる…」という灯りを並べて灯します。

はっきりと目に見えるものだったり、纏う空気の中にある不確かなものだったり、
「時」の中にある色を「重ねる」という単純な行為を、
心のままに手を動かし仕立ててゆく灯りです。

「透ける~」とは対照的な作り方ですが、
火を灯すという所作を、灯りのある時間を、
普段の生活の中に…灯して育てる灯りです。

工房からの風 シロツメクサ

Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
工房内、メインの作業台。
訪れた方は『実験室のようだ』と仰います。

金型、金属トレー、香料瓶、スポイト、温度計、量り、ピンセット…理科室のよう。
算数・理科の類いは大の苦手だったけれど、理科室にある道具は好きでした。

ここでは、日々健やかな灯りを制作し、知らないことを知るために試作が続きます。

工房からの風 工房1

Q3
鈴木有紀子さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
澄んだ水の中を覗き込むように、それは何だろう? と自問してみると、
浮かんでみえたもの(種火の大元)は、
『どきどき・わくわくする気持ち』だと思いました。

ものづくりに初めて大きくわくわくしたのは小学4年の頃。
私が生まれる前に祖父の作った大型犬の犬小屋を、
当時拾って出逢った子犬の為に、
ベニヤ板やビニル袋(笑)で真冬の風を凌ぐリフォームを一人でしたこと。
それはもう愉しかった。

大人になって、本格的にものづくりを始めるきっかけは、
失敗したろうそくの原因を知りたいと思って、
そのまま知らないことを知ることにどきどき・わくわくする気持ちが大きかったから。

今は、その先にものを通していろんな方の時間が続いてゆく。
やはり静かにどきどき・わくわくとしています。

工房からの風 ハートに灯をつけて(仮)

ほかの誰もが制作していない有紀子さんならではのろうそくの世界。
派手な意匠ではなく、品のある個性的なろうそくの世界が、
ここ数年で構築されてきたように思います。
独学で培った制作方法から、時を味わうかのような光を生み出すろうそく。

今年のテーマは火。
なんとしても、美しい有紀子さんのろうそくを、
あらためて今展で皆さんにご紹介したかったのでした。
「工房からの風」で出会う工藝や手仕事がお好きな方々には、きっと響くと思います。

テーマテントとして、おりひめ神社奥には「五行テント」が建ちます。
大野七実さん、岡林厚志さん、吉田慎司さんが担当くださったのですが、
富士山のふもとの有紀子さんの工房を3人で訪ね、
そのレポートをテントで展開くださいます。
こちらもぜひご覧くださいね。

静かに色を重ねる... 新

鈴木有紀子さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜のgalleryらふとの正面奥。
おりひめ神社の近くでもあります。
そうそう、「五行テント」にも近いです。
他にも、トキニワカフェ周りのお庭に出現するかも!です。

有紀子さんのインスタグラムはこちらになります。
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坂本美奈子さん 装身具 大阪

Q1
坂本美奈子さんは、工房からの風にどのような作品を出品なさいますか?

A1
別珍、サテン、キュプラの布生地を染め、針金などを使用して立体的に仕上げた
ブローチ、ピアス、イヤリングを用意していきます。

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Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。そして、その説明をお願いします。

A2
洋服を吊っている場所です。
撮影もほぼこの場所です。

私自身、洋服が好きで、でも何着も持つことが出来ないので、
どうにかブローチを身に着けることで、
何着も持っているように見せたいと思っています。

ここにあるシンプルな洋服の上で、
想像を膨らませたり、ブローチを2つ並べてみたり、
身に着ける場所や角度を変えてみたりと、
自分自身に提案しながら、引きで見たり、写真を撮ったりして楽しく悩んでいます。

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Q3
坂本美奈子さんにとって、ものづくりの種火ともいえる、きっかけや動機、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
いくつかある種火の1つですが、11年ほど前、地元で初開催されたクラフト展「灯しびとの集い」に行ったときの、金工作家の小原聖子さんの作品との出会いです。

その当時の私は、クラフト展というものに馴染みがなく、
たまたまバイト先でこんなイベントが開催されるらしいよーと前日聞かされ、
暇だったからいってみようという具合でした。

行ってみて…
自分の思っていたクラフトというものとの違いに驚き、大きく感動しました。
中でも小原さんのブースの世界観に大きく惹かれました。
その当時、アクセサリーには全く興味がなかったのですが、
その世界観、自分の佇まいのなかで作りたい…みたいな感じのことを思ったのでした。
(でも、当日、買えなかったのですが…。)

そんなことがきっかけのひとつで、アクセサリーが好きになり、
自分なりのものはつくれないかなと思ったり、
少し恥ずかしいけど人に提案できたらいいな、
など図々しくも思い、今に至っています。

小原さんに対する大きな憧れ、秘かな想いはもちろん告白できてはおりません。

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小原さん、読んでますか~!?
小原聖子さんも「工房からの風」に出展くださり、その後企画運営にも加わっていただきました。
今も果敢に伸びやかに制作されていますね。

ひとりの作家の世界観から、このような作り手を生み出すとは。
作品を生み出すだけではなく、ひとりの生き方まで生み出してしまったのですね。
坂本さんはとても明快なひとという印象があります。
もちろん揺らぐ気持ちは制作の養分でもあると思いますが、
それらを含めて、信じた道を明るくぐんぐん進む人。
作品にその明快さが素敵なセンスに響いてかたちになっているように思います。
ありそうでほかにない、オリジナリティー豊かな作品群。

自分の「好き」を信じて、愛して、貫く素敵さは、きっとブースに満たされていますね。

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坂本美奈子さんの出展場所は、コルトン広場、スペイン階段前。
アトリエカンタさんの隣です。
あ、おふたりとも、大阪からですね。
大阪の言葉が闊達に行き交う界隈になりそう!!

そして、ホームページはこちらになります。
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二井内覚(さとる)さん 陶芸 佐賀

Q1
二井内さんは「工房からの風」にどのような作品を出品なさいますか?

A1
陶器で黒や青色のマット(不透明)な表面の雰囲気のうつわを出品します。
碗やお茶用のポット、花器なども展示できたらと考えています。

Q1-作品画像2-ポットとマグカップ

Q2
ご自身の工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。

A2
制作する時間の大半を、写真のロクロの前で過ごしています。
ロクロで成型する時は、朝に制作を開始して、午後に仕上げ(削りなど)を行います。
時間帯によって光の具合や気温が変わり、作業をしながら時間の変化を感じられるのが好きなところです。

Q2-制作場所

Q3
ものづくりの種火ともいえる、大切な人や物との出会いについて教えてください。

A3
佐賀で陶磁器について学びました。

そこで知り合った同世代の人や先輩と話をしたり、作品を見せてもらうことがものをつくる上での刺激(種火)になります。

他の作り手の人と話したり作品をみる中で、作品に向かう動機が趣味・好みと作品の関係性などが見えたりすると、その理由を考えたりして自分の作る上でのヒントをもらうことがあります。

Q1-作品画像3-オーバル皿

佐賀県有田からはるばるやってきてくださる二井内覚さん。
すでに愛用されている方も多いと思いますが、買い足される方、新たに出会う方と、初めての「工房からの風」で豊かな出会いを重ねてほしいと願っています。

二井内さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜。
手仕事の庭の中央部です。