per.(装身具)
Q1
2018年に出展くださったper.さん。(ピーイーアール)
今回の「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
メインアイテムであるブローチ作品を中心に、時折限定的に展開しているイヤリングやピアスなどの作品も一部ご用意し、今作・新作おり混ぜた展示を思考しています。
彫金技法をベースに、独特の佇まいながらも工藝品のような造形美と機能性にこだわりながら、一点ずつ手作業で制作しています。
老若男女問わず、誰のそばにもそっと寄り添えるようなジュエリー作品を、ぜひ直接ご覧頂きたいです。
Q2
per.さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
制作で使うものはどれも重要ですが、なかでも「すり板」は思い入れが強いです。
すり板とは、材料を糸のこで切る、ヤスリをかけるなど、様々な工程の支えや台として用いる彫金には欠かせない道具。
基本的な作業の大半をこの板の上で行います。
こちらは per. として活動し始めたときから約6年程使用しているもので、作品の形状に応じて当てる箇所を加工したり、自然に削れたりして、徐々に馴染んできました。
じっくり眺めてみると、歩んできた過程や作品の変化などが垣間見え、これまでの悲喜交交が詰まっているように感じます。
今後も大事に扱いながら、制作活動の記憶を一緒に重ねていきたいと思います。
Q3
per.さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
金属作家 岩江圭祐さんの「SUSAB/game」を挙げさせて頂きます。
多角的なアプローチにより、美しく独創的な作品を制作されていらっしゃいますが、特に「SUSAB」シリーズはユニークです。
一見すると金属の塊のそれらは、五感を慰める遊具としての用途を備えています。
握って質感を確かめたり、佇まいをじっと眺めてみたり…
なんでもないようなこの行為が、不思議と癒しや安心感を与えます。
私の所有している「SUSAB/game」は3種のテーブルゲームがモチーフ。
素材感や作用は変わらずに、造形が具象化することで、それぞれの特徴的な所作の心地良さも楽しめます。
岩江さんの “物と人の関係性” への独自の視点。その魅力をさらに身近なものとして落とし込まれた「SUSAB/game」は、まさしく工藝的であり、秀逸だと強く感じます。
手の中で遊ぶたびに、多くの気づきと刺激を頂ける、私の大切な一品です。
4年ぶりにお会いしたper.さんは、作品がふくふくと広がり、深まり、
作家として豊かな4年間を過ごされたことを感じさせてくれるお仕事ぶりでした。
「工房からの風」当日には、その全容が並べられますね。
作品を巡ってのお話とともに、楽しむ方々多いのではないでしょうか。
per.さんのブースは、コルトン広場、スペイン階段前。
作家ページはこちらです。
→ click
POTTERY STUDIO K(陶芸)
Q1
コロナ禍の前年、2019年に出展くださったPOTTERY STUDIO Kさん。
今回の「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
陶の装身具と壁掛けを出品させていただきます。
装身具はピアス・イヤリング・ポニーフック・帯留め・カフスボタン。更に、新作のバングルや指輪・イヤカフをお持ちします。
壁掛けは鳥や木・花を中心とし、これからの季節のツリーや星などもお持ちします。
Q2
POTTERY STUDIO Kさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
春に長野県須坂市から長野市にアトリエを移転しました。
長野市に移転した事で、作業スペースとしては縮小しましたが、団地の一室をリノベーションし、自らも手を加えて新たな場所を作り始めました。
写真は荷物が入る前のアトリエです。
この真っ新な空間と気持ちを大切に制作をしていこうと思い、この写真を選びました。
Q3
POTTERY STUDIO Kさんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
伊東正明さんの灰釉のどんぶりです。
使い勝手が良く、毎日の食卓に必ず出てくる器。
1人の時は丼ものに使い、子ども達がいる時はサラダや和え物を入れて。
優しい色と形に癒され、大好きな器です。
細やかな陶芸作品を制作されるPOTTERY STUDIO Kさん。
小宇宙が詰まったテントブースは、コルトン広場、スペイン階段前。
作家ページはこちらになります。
→ click
古木 裕子さん(布バッグ)
Q1
2014年から8年ぶりに出展くださる古木裕子さん。
今年の「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
綿や麻、ウールなどの布と革で仕立てたバッグを出品いたします。
肩や手に提げたときにしっくりと身体に馴染み、その姿がかっこよく、時にエレガントにみえる、デザインやサイズ感を大切に、素材そのままの素朴な風合いと染色した布の色を組み合わせ、仕立てています。
使い勝手が良い内ポケットやバッグの持ちやすさなど、頼りがいのあるバッグであり、手にしたときに、気持ちがフワッと前向きになるようなバッグであれば良いなと思います。
Q2
古木裕子さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
特に大切にしている場所は、ミシンまわりです。
ミシンで縫い上げていく前に、型紙を布に配置し、しろもで仕上がり位置をつけ、裁断するという下準備があり、その工程が終わって、やっとミシン。
心持ちはいざミシンへ!!という感じ。
なので、ミシンまわりにはすぐに手に取れるように、目打ちや糸切りばさみ、試し縫い用のハギレや制作中の作品に使用する糸をスタンバイ。
実際に縫ってみて、布と糸の色の組み合わせを変えることもあるので、色とりどりの糸を収納する棚もミシンの近くに置いています。
布と糸の色の組み合わせで、仕上がりの印象がだいぶ違うので、糸選びもとても重要です。
大切な相棒であるミシンのまわりに、私のバッグ制作にかかせない大切な道具がギュッと収納されています。
Q3
古木裕子さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
サワグルミの樹皮で編みあげた手提げのかご。
福島県奥会津地方で制作されたもので、クルミの樹皮の素朴な風合いがとても好きで、夏はもちろん、内布を自作して秋冬も愛用しています。
ひと目ひと目丁寧に、丈夫なかごになるように組み上げている、力強くてうつくしいバッグ。
私が目指したいと思う手仕事です。
古木さんのお仕事もこの8年の間に熟されて、よりしっかりとした形に進化されていますね。
ぜひお手に取ってぴったりと馴染むバッグとの出会いを得ていただければと思います。
古木裕子さんの出展場所は、コルトン広場、モニュメント周りです。
作家ページはこちらになります。
→ click
橋本 瞳さん(金属)
Q1
2017年に出展くださった橋本瞳さん。
今年の「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
今回は装身具に加えモビールも出品する予定です。
装身具は、長く行っている植物をモチーフにしたもの、天然石の石留めを施した一点物のブローチ、作品に合わせてフレームを制作したブローチ、鉱物のような表情をした装身具などをお持ちします。
植物以外の作品はその時その時で仕上げで出てくる色が異なり、同じ色が再現出来ません。
是非自分の一点を探して頂きたいと思います。
今回の出展では空間に作品達を凛と飾りたいというテーマがあります。
野外展は天気の影響もあるのでどこまで想像した空間になるのかわかりませんが、その作品をしっかりとその空間に存在させる、それがあることで空間が少し変化するような空気感のあるものを飾りたいと思っています。
きっとそういった作品達は選んで頂いた皆様のところでも日常を少しでも心地良いものにしてくれるのではないかと思っています。
Q2
橋本瞳さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
いつも使っている道具達の一部を紹介します。
学生の頃から使っている自分で制作した蝋切り用の道具、スパチュラ、そして彫刻刀などです。
彫刻刀は良いものでなく、小学生の図工の授業で買った彫刻刀も含まれています。
石膏や蝋をそれらで加工や修正します。
正確に作るというより周りの現象に合わせて形を修正します。
彫刻刀は錆びたりベトベトになったりするのでこれぐらいが身の丈にあっていて良いと思っています。
スパチュラはワックスを原型で作る方は必需品だと思います。
ちょっと皆さんと違った使い方をしている気もしますが、これらは制作中の必須アイテムで、手に馴染んだ道具達です。
Q3
橋本瞳さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
ご紹介したいのは磁器作家の櫻木綾子さんの作品です。
櫻木さんとは数年前に二人展をさせていただきました。
その少し前から櫻木さんの周囲の空気を纏うような作品がとても気になっていまして、二人展の相手を探していたところ、快くお受けいただきました。
写真の作品は普段、作業場に置いてあります。
愛用しているリングなどを作業中に置いておきます。
制作する過程でその表情や変化を繊細に感じ、受け入れたり離したりするであろう櫻木さんの作風は自分に通ずるところが大いにあり、とても刺激を受けます。
そして細かな表情や表現される色、とてもシンプルなのに包むような形が、側にあることで不思議と気持ちを落ち着いかせるとともに背中を押してくれるような気が勝手にしています。
橋本さんが大切にされている作品を語ってくださるフレーズに、橋本さんの制作への想いも垣間見られますね。
どのようなものを大切にされているか、皆さんのストーリーがとても豊かです。
橋本瞳さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、入って左側、銀座アスターを背中にしたエリア。
十代田さんの隣です。
お天気に恵まれ、モビールが映えるといいですね!
作家ページはこちらになります。
→ click
YUSHI SOSHIRODA (革)
Q1
2018年に出展くださったYUSHI SOSHIRODA さん。
今年の「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
4年前の初出展の時にはなかったバックのシリーズをはじめ、
原点でもある動物シリーズやお財布、アクセサリーなどを出品予定です。
どの作品も共通して年齢や性別を問わずお使い頂ける物作りを心掛けています。
Q2
YUSHI SOSHIRODAさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
針では大きさに限界があるので細かい部分が縫いにくく、穴を最小限に抑えて革への負担を減らす為、
僕の作品は針を一切使わずに、糸を熱して1cm程度の小さな針のような糸先を作って制作しています。
そしてドイツでレザークラフトを始めた時に最初に購入した道具が千枚通し(目打ち)です。
日本ではあまり見かけない形ですが、手の中にすっぽり収まって力が入りやすく、1番の相棒です。
Q3
YUSHI SOSHIRODAさんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
竹の網代編みの小物入れです。(姉作)
通気性が良くサイズがピアスの在庫入れとしてぴったりだったので愛用しています。
ここに入るだけの量を目安に毎回作るようにしており、
これを使い出してから在庫を出す時が少し楽しくなりました。
いつか革と竹を組み合わせた作品が作れたらと構想しています。
4年の間に新たな展開へと進まれて、その作品群を拝見するのがとても楽しみです。
そして、道具にまつわるお話も興味深いですね。
竹とコラボの夢もいつか・・・。
YUSHI SOSHIRODAさんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜入って左側、
銀座アスターを背中にしたエリアです。
作家ページはこちらになります。
→ click
tronco(革)
Q1
2018年に出展くださったtroncoさん。
今年の「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
革でできる日常に寄り添う道具を制作したいと考えています。
一本に繋いだ革ひもを立体に編み上げた革のかごバッグ。
仕事や趣味の愛用品を収納できるお道具入れ。
栗や泥、桜で染めた帆布のお道具入れもあります。
刷毛で染めて色を施したルームシューズ。
くしゃっとしたシワをつけることで、履き始めから足に馴染みます。
その他革小物も展示します。
Q2
troncoさんが特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
靴の学校を卒業してから購入したミシンは10年の付き合いになり、一番活躍してくれる道具です。
わたしが焦っているときやイライラしているときに糸が絡まったり、動きが悪くなったり。
心穏やかに向き合うようにしています。
Q3
troncoさんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
篠竹の市場かご
普段は家で収納用に使用していますが、ワークショップのときや展示のときの荷物入れにも使用しています。
今回展示をするかごバッグを作るきっかけになったかごの1つです。
竹は使っていくと経年変化で色が変わっていくので、革と共通点があります。
これからの変化も楽しみに使っていきたいです。
tronco、立花怜己さんは建築を学ばれてものづくりの道に進まれた方。
手仕事ならではの温度を感じる作品ですが、すっきりと構築されたデザインが魅力的です。
革と帆布を使った幅広い作品アイテムながら、デザインの目が一本きりっと通っているところも、ぜひご覧ください。
troncoさんがの出展場所は、ニッケ鎮守の杜、おりひめ神社の脇。
aeiさんの隣です。
作家ページはこちらになります。
→ click
青人窯(陶芸)
Q1
2017年に新潟県から出展くださった青人窯の大山育男さん。
今回の「工房からの風」には、どのような作品を出品くださいますか?
粉引き片口 です。
今回のメインのシリーズになります。
10年前に独立した時は粉引きを中心にしようと思っていましたが、当時は粉引きブームだったので、別シリーズを模索して、補助的に作りながら形と釉薬を修正しながら作り続けていました。
今回、自宅工房が広がって手廻し轆轤(後述)を常用できるようになったので、メインとして挑戦します。
ブロックプリント 八角皿 です。
こちらは幻に終わった2020年の「工房からの風」でメインにする予定でした。
インド更紗などの古い版木の中から食器に向きそうな版を用いて器に型押ししています。
素朴でエキゾッチクな柄とアンティークな風合いが出ればと思っています。
「産業革命で破壊されたインドの綿産業」がまさにこれらの版木を使った技術なので、近代化への一つのカウンターでもあったクラフトの題材としては、なかなか興味深い素材かも知れません。
いつか布作家さんとコラボするのが夢です。
灰瑠璃釉七寸リム皿です。
原色の鮮やかな色を狙うのなら灰よりも石灰石などが良いのですが、あえて鉄分の多い松灰を混ぜることで色がくすんで独特の質感になります。
形がシンプルなだけに釉薬の質感にはこだわりたいところです。
この他にも柿灰や火山灰などの原料を用いた釉薬のシリーズが青人窯の定番です。
2017年の「工房からの風」でほぼ現在の形にまとまりました。
5年ぶりに新シリーズと共に参加できるのが楽しみです。
Q2
青人窯さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
手廻し轆轤です。
開業以来、コツコツと工房と住居スペースを改造していますが、今年からようやく手廻し轆轤と赤土専用スペースを確保しました。
天板は水に強い槐(えんじゅ)です。手触りが優しくて、木目もお気に入りです。
轆轤を回すためのステッキは地元新潟の洋梨ル・レクチェの枝です。
(この洋梨を薪ストーブで燃やした灰を何年分か取っており、釉薬にする予定です。)
手廻し轆轤など惰性で回る轆轤は回転スピードが自然と衰えていくので和食器などでニュアンスを付けるのに向いています。
しかし、すぐに止まってしまうので最短の手数で挽き切らねばならず難易度高く、その分面白いです。
Q3
青人窯さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
宋代(?)の吉州窯天目碗です。
天目と言えば建窯の方が有名ですが、吉州窯のこの開いた形がとてもきれいだな、と思い15年ほど前に購入しました。
しばらくは一生懸命写しを作りました。
中国の陶磁器は宋の時代に「色と形」という点では一つの頂点を迎えたという説があります。
高台が極端に小さいので、この形のままで普段使いできないのですが学ぶところの多い形です。
いつか磁器か天目に挑戦するときはアレンジしてみたいと思っています。
ひとつひとつの取り組み、展開を丁寧にかたちにしていく青人窯さんのお仕事。
5年前から着実に広がった作品群との出会いがとても楽しみです。
青人窯さんの出展ブースは、今年から新たに加わったスペース。
コルトン広場スペイン階段前から本八幡側の空間です。
本八幡駅方面から会場に来られたら、真っ先に見えるのが青人窯さんのテントです。
作家ページはこちらになります。
→ click
豊田陽子さん(染め布)
Q1
2017年に出展くださった豊田陽子さん。
今回の「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?
A1
手染めのものを中心に、その他、水彩で描いたデザイン画をもとに京都の染色工場でプリントしたテキスタイルを使ってストール・スカーフ・お洋服に仕立てたものを出品します。
また、バンダナなどの小物や暖簾も数点ですが出品する予定です。
普段は綿や麻などの素材を染めることが多いのですが、ウール素材はそれらと比べて使用する染料も生地の反応も変わるので、わたしにとってはコントロールが難しいのですが、今回は制約のある中でチャレンジしてみることで新たな扉が開けるかも?と悩みながらも楽しく、制作しました。
また、ここのところしばらく春夏の色味を染めることが多かったので、自分の中にある秋冬の季節の色を引き出しから引っ張ってきた感覚がありました。
まだ暑い最中に染めはじめ、今はもうすっかり肌寒い季節になり、景色を彩る色彩もかわり、そんな季節の空気のようなものをふわりと身につけられたらと思い、制作しました。
Q2
豊田陽子さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
作業場の机(板)です。
1220mm×2200mmの大きな作業台なのですが、これを小さなアトリエにどーんと置いて染め作業をしています。
染めの工程や技法によってこの作業台を使ったり使わなかったりなのですが、この作業台にしてから8年くらい経ちます。
はじめは真っさらなきれいな板だったのですが、作業の成功や失敗、喜びや悔しさなどがこの板の上で繰り広げられ、色々な染料のシミや傷やらが少しずつ積み重なっていき、長い年月をかけてこのような模様(シミ)の台になりました。
自分が意図してつけた模様ではないのが面白く、これからもどんな風に変化していくのか楽しみです。
Q3
豊田陽子さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
染色の仕事をする前から工藝品は好きで、沢山持っている方かと思います。
現代の作家ものだと沢山ありすぎてあれもこれもと選定することが難しいので、他とは違う意味で大切にしているものです。
この花器は、祖母から母へそして私が結婚して長野に来るときに母から譲り受けました。
花器の底には「昭和五一年 四月一二日 母より頂く かね子」と、墨なのかマジックなのか、祖母の字で書かれています。
それが祖母らしくてこの花器の底を見るたびに笑ってしまうのですが、これは曾祖母が買ったものなのか、もしくは曾祖母も誰かから譲りうけたものなのか、どこのものなのか全くわかりません。
母もわからず、祖母はもう亡くなっているので解明しようがないのですが、長い年月をかけて世代を超えて私の手元にきたこと、私の知らない遠い昔に思いを馳せたり、ちょっと可笑しくて、なんとなく不思議で何にも代えがたい愛おしい花器です。
花器のお話し、とても素敵ですね。
大切に作られたものを、大切に使う。
そして、その遺されたものを、大切に引き継ぐ。
「工房からの風」に出展されるものは、それに値するものなのではないでしょうか。
豊田さんの作品の行く末にもきっとストーリーが生まれますね。
豊田陽子さんの出展場所は、ニッケ鎮守の杜に入ってすぐの小高いスペース。
作家ページはこちらになります。
→ click
CHIAKI KAWASAKI(金属装身具)
Q1
昨年は風人さんとして会を支えてくださった川崎千明さん。
今年は彫金作家のCHIAKI KAWASAKIさんとして出展くださいます。
CHIAKI KAWASAKIさん、今回の「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?
A1
主にシルバーや真鍮といった金属素材で制作した動物モチーフの装身具を中心に出品いたします。
鏨(たがね)と呼ばれる道具を使って金属の板をたたいたり、刻印を施したりする打ち出し技法を用いてつくったネックレスやブローチ、耳飾りのほか、近年取り組んでいる真鍮の薄板に刻印をほどこしてつくる、しおりもバリエーション豊かに展開します。
表と裏の模様が違うので、ぜひひっくり返してご覧いただきたいです。
そのほかに、なぜか急につくりたくなった、とぼけた表情のお魚モチーフのピンブローチなども並びます。
ふわふわな動物はふわふわに、ごわごわしていそうな動物はごわごわに…
硬い金属ですが、動物たちの柔らかさに少しでも近づけるように試行錯誤しながら制作しています。
王道からちょっとマイナーな種類まで、いろいろな動物を連れて行きますので、お気に入りの動物をさがしてみてください。
Q2
CHIAKI KAWASAKIさんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
いつも使っている道具、糸ノコです。
糸ノコ刃をセットして、金属や木を切ったりするときに使う道具ですが、
おそらく一番付き合いの長い道具ではないかと思います。
作品を仕上げるのにはたくさんの工程がありますが
まず、材料を正確に切り出すところから。
学生時代から使っているので、道具の持っているクセのようなものも
良く分かっているし、いちばん使いやすいです。
今後も作品づくりを支える縁の下の力持ちとして
活躍してくれると思います。
Q3
自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
祖母から譲り受けた、漆塗りの小箱です。
洋裁をやっていた祖母は、ミシン糸を入れていたのですが、私はミニ裁縫箱として使っています。
もっと大きな裁縫箱も別にあるのですが、ちょっとボタンが取れたとか、ちょっとだけ縫いたいものがある時、とても軽くて出しやすいので、もっぱらこちらを使っています。
何となく色味が緑青のふいた真鍮風なところも気に入っております。
多摩動物園の年間パスを持って通う川崎さん。
笑顔の瞳の奥に、動物への想いが豊かにあふれて、その想いが金属の装身具などの作品になっていきます。
今回も、さながら動物園のようなブースになるのでは・・・と思いきや、水族館も併設⁉されているような・・・。
動物、海洋生物・・・を愛おしむ方々で人気のブースになりますね。
CHIAKI KAWASAKIさんの出展ブースはニッケ鎮守の杜の中央部。
作家ページはこちらになります。
→ click
inch”(ビーズ装身具)
Q1
2018年に出展くださったinch”さん。
今回の「工房からの風」には、どのような作品を出品されますか?
A1
編んで編んで編み込んで、余計なものを削ぎ落とし、出来るだけ編み図もシンプルに。
そうして“必然”的な形になったinch”の粋となる作品です。
Q2
inch”さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
糸玉を入れるための器です。
作業するときに目に触れるものは、温もりのあるもの美しいもの、愛おしめるものでないと良いものは創り出せないのではないかと気づき、それまで使っていたプラスチック容器をやめ、母に制作してもらいました。
ずんぐり丸い形、飴釉の美味しそうな照りが栗饅頭のようで、糸を引き出すときに鳴るカロコロという音まで愛おしく、「どんぐり」と呼んで愛用しています。
勢いよく糸を引き出しても糸玉が飛び出さないよう蓋付で、大きい糸玉も入る大きさ。
プラスチックから陶器になったことで重量が出、ずれることなく安定して糸を引き出せるようにもなりました。
手放すことのできない道具のひとつです。
Q3
inch”さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
もう20年以上ほぼ外すことなくしている指輪です。
指にあるのが自然で、これをしていることで自分が完成されると思われるくらい個性のひとつになっています。
この指輪のように長く使い続けられ、つけることでより自分らしく、快適で居られるような作品を作りたいと思っています。
inch”さんの作品は、こまやかな手仕事ながら、完成した姿はクールでどこかロックな感じがします。
けれど、
『作業するときに目に触れるものは、温もりのあるもの美しいもの、愛おしめるものでないと良いものは創り出せないのでは』
との想いで、このような素敵な道具を傍らに制作されているんですね。
inch”さんの作品の魅力の奥行きの一端に触れた想いがしました。
inch”さんの出展場所は、コルトン広場スペイン階段前の大きなテントの一画。
作家ページはこちらになります。
→ click
山下透さん(陶芸)
京都市で作陶する山下透さん。
2016年以来6年ぶりに「工房からの風」にやってきてくださいます。
Q1
山下透さんは「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?
A1
青い器は素地の凹凸と釉薬の濃淡で模様が浮き上がる、「葉と実」と名付けた皿です。
飴色の器は表札やタイルを制作する際に使っていた装飾を、器にも彫りはじめた新しい作品です。
Q2
山下透さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
マグカップのハンドルをつくる石膏型。
陶芸の仕事をはじめた頃に試行錯誤して作ったので不恰好ですが、以来10年以上使い続けています。
これまでたくさんマグカップを作りましたが、その全てにこの型から作ったハンドルがついている、と思うと感慨深く。
作家としての原点のひとつのような気がしています。
Q3
山下透さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A3
小さなグラスで飲むビールをウチでは小ビールと呼んでいて、いくつかあるお気に入りのひとつが左藤玲郎さん作のモールグラスです。
分厚さはあるけれど重たくない。
モールのデザインも軽やかで手にしっくりとなじみます。
仕事終わりの晩酌に、気持ちがほどける器です。
青や飴色といった色合いがまず美しい山下さんの器。
「葉と実」の文様もまた愛らしく、料理が映えそうですね。
食器棚に揃えたくなるシリーズ、ぜひご覧になってください。
山下透さんの出展場所は、コルトン広場モニュメント周り。
お庭に向かう南側です。
作家ページはこちらになります。
→ click
金城貴史さん(木工)
ここまで女性の作家からのメッセージが続きましたが(極楽寺がらすの岩沢彰一郎さんをのぞいて)、
今年は例年よりも男性作家が多い年になりました。
今時、性差でものごとを分けるのはナンセンスではありますが、
腕力の活かされた作品が例年よりも多いかも知れません。
岐阜県中津川市で制作する金城貴史さんは、木の匙に絞って制作を深める作り手。
2回目の出展となります。
Q1
金城貴史さんは「工房からの風」に、どのような作品を出品されますか?
A1
様々な形・用途・大きさの木の匙を展示します。
型紙を用いて製作する、食事用・調理用の匙と、型紙を用いず即興的に造形する取り分け用の大匙があります。
心が動く一本との出会いがありましたら、幸いです。
Q2
金城貴史さんの工房の中で、特に大切にしている場所、あるいは部分、印象的な場所、空間、または、道具の写真を1カット撮ってください。
そして、その説明をお願いします。
A2
作業机の正面の棚に、収集した古物の匙を並べています。
地域・時代を超えて、自分の中の匙の枠を広げてくれる物たちです。
匙に囲まれ、匙を作っています。
Q3
金城貴史さんが自作以外で、大切にされている、あるいは、愛用されている工藝品をひとつ教えてください。
A
3大きな古い竹籠で、お世話になっていたギャラリーの方から頂いた物です。
季節になると、箱で買ってきたミカンを、ヘタを下にして竹籠に並べます。
暖房の届かない玄関先に置いてある、竹籠いっぱいのミカンが、我が家の冬の風景です。
匙、スプーン。
ひとが食べ物を口に運ぶ古来からある生きていくための道具。
ひとつのものを深く追求しながらのものづくりは、どこか哲学的な行為でもあるように感じます。
使う人が使いやすいように。
心地よく、おいしくものが食べられるように。
そして、それが美しいものであるように。
金城貴史さんのブースは、ニッケ鎮守の杜、稲荷社の脇。
これからの日々の食事の友(伴)になる作品を探しにお訪ねください。
作家ページはこちらです。
→ click