2023年 工房からの風

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二年後の桜のもとで

ソメイヨシノが葉桜になり、八重さくらが満開となりました。
急ぎ、開ききっていない蕾を探して収穫。
桜茶や、アイスクリーム作りのために、塩漬けに。
庭人さんが、笑顔で収穫くださいました。

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春の草花は駆け足で開いていきますね。
クロヌマタカトシさんの個展の最終日から早10日。
白い時間、と名付けられた時間に、さくら色の光がかぶさって、
今も心の中に残像が揺らぐようです。

yukihiromatsuoka さんがフィルムで撮られた写真を送ってくださいました。

明け放った天窓から、はなびらがひらひらと入り込む
年に数日だけの祝福の日。
その光の中で、スウェーデンのHasselbladを構えて、じっくり作品と向き合って撮ってくださいました。

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クロヌマさんの個展では、作品をお選びいただきました皆様、
すべて最終日まで展示をさせていただき、ありがとうございました。

今回、お選びいただける作品が早々に少なくなり、
後半お越しいただいた方には申し訳ないようでしたが、
それでも、うまく言えないのですが、申し訳ない、、を超えて、
ご満足いただいた実感がありました。
ご希望の作品をお渡しすることは叶いませんでしたが、
お越しいただき、ご覧いただいたことへの感謝の気持ちのほうが
ずっと大きく感じられたのです。

それは、お越しくださった方々と作家の何かが、この場で響き、結び合ったからなのだと、
10日経った今、ようやく言葉にすることができました。
この時間にかかわってくださった方々が、作家をまた次に進ませていくのだと思います。

二年後の桜の季節、
二年後のクロヌマさんの作品とこの場でお会いいただきます。
はなのもとでの出会い、再会、心待ちにしています。

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風の始まり

花冷えの合間のひとときの晴れの日に、
今年度出展者による第一回ミーティングが開かれました。

出展作家45名、風人さん(過去出展者で今回サポートくださる方々)12名、
計57名の作家がはなびら輝く庭に集って。

会場を一緒にまわり、その後ミーティングルームに移動して約5時間!
10月の本展に向けての風がそよぎ始めました。

今年の雰囲気は、なんとなく落ち着いた印象。
オトナな風になるのでしょうか?
ゆたかなつながり、ご縁の始まりがこの場から結ばれていきます。

昨日参加された方々、今頃は心の中でぐるぐる風が回っていることと思います。
これから半年のあいだに立ち上がってくる、それぞれの方々のお仕事、
そのハーモニーが楽しみでなりません。

ちょうど花びらもくるくると舞う中、なんだか入学式?のような記念撮影となりました。

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次のことを考える

桜も盛りを過ぎて、今日は冷たい雨に打たれています。

ギャラリーの裏の小庭。
桜色の吹き溜まり。

巨岩、と名付けられた作品が、はなびらのゆくえを見守るように。

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クロヌマタカトシさんの個展、前半の三日間を終えて、あと迎える土日の二日間となりました。

クロヌマさんもブログを更新されています。 → 

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クロヌマさんが、
「今回の展示は僕にとっては特別なものだった」
と書いてくださいましたが、
私たちにとっても今回の展示は特別なものでした。

「galleryらふと」がこの場に移って10年。
「工房からの風」を一年のハレの日とすれば、日々の庭づくりなどの日常のケの日々があります。
その中で、ギャラリーでの展開がどうあったらよいのだろう。
そのことをずっと模索してきました。

折々のワークショップと、
5月6月に行う今年度の「工房からの風」新規出展による展覧会「風の予感」展。
この営みが育ってきましたが、単独での展覧会をなかなか企画できずに過ごしていました。

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前半三日間が終わり、花闇の中に灯るようなギャラリーの中で、
クロヌマさんとわたし、スタッフの宇佐美の三人で静かに充足感に包まれていました。

現在のクロヌマさんといえば、動物や果実の彫像とブローチにとても人気があります。
それを今回は一切出さずに構成することは、作家とギャラリー双方に意思が必要でした。

取り立てて話し合ったわけでもなかったのです。
クロヌマさんが、ご自身で今展はそうありたいと決められて、
私はそれを察して、受け入れただけのこと。
言葉に出さずに、それぞれが相手に迷惑をかけてしまうかもしれないという一抹の不安も抱えながら、
いや、きっと今回はそうあるべきなのだという思いで初日をあけました。

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充足感、といってもひといろではなく、さまざまな喜びの色合いなのですが、
その中でも一番の満たされた思いは、見てくださった方々の反応でした。

「初々しいことがしたかった。
少し手に負えないようなことがしたかった。
知っている線をなぞるのではなく新しく線を引いてみたかった。
でもそれはすごく恐いことでもあった。」

そんな思いで作られた作品を、いや、そんな思いで作られた作品だからこそ、
訪ねてくださった方々の心に鮮やかに映ったものがあったのだと思います。
ギャラリーを後にされるときの表情、佇まいが私たちにとっては宝物でした。

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「工房からの風」に集ってくる作品群。
暮らしの中で使うものであろうと、所謂アートの作品であろうと、
今日現代に個人が作り出すもののあるべき姿。
その姿を映し出す場としてのギャラリーの在り方ってどんなだろう。

後ろをなぞるのではなく、切り拓く心と手をもって作られたもの。
一歩一歩作家として前に進む過程、それに添う場として、
「galleyらふと」が存在したい、そう確信した展覧会でした。

(と、終わったように書いてしまいましたが、土日とあと二日間あります!
土曜日は夕方から白ワインもお出しします。
白い時間、ですもの!)

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先日来の赤木明登さんの「住む」での文章を巡る考察はまだこの場でも続きます。

「次のことを考える」

と、文中小見出しにありますが、今回の展覧会も、その脈の中にあります。
作家が次の扉を開くこととともにある仕事。
「工房からの風」で漕ぎ出した作家の仕事が、
次の海原に向かう場面で関われる場でもあるように。

作家として世に出ることが目的ではなく、作家としての人生を豊かに全うすること。
その過程でひらく花々との出会いの場を作る仕事。

次のことを考える、
も、進みます。

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むきあうじかん

そよそよと花吹雪舞う中、チューリップも咲き出しました。
花曇りが展示空間にふさわしい空気に整えてくれているよう。

初日からゆたかに展示を明けることができました。
クロヌマさんの仕事を見続けていらっしゃる方々、
25年以上も前身のギャラリー時代から通い続けてくださる方々、
fbで偶然知ってくださった方や、案内状から新たに訪ねてくださった方、
作家の方々もさまざまに、はるばると。

どなたもがゆっくりとこの空間を味わうように過ごしてくださいます。
作家や私たちと時々会話を。
けれど多くの時間は、作品にただじっと向かわれて。

工芸、クラフトを中心に展示をしてきましたから、
お客様の佇まいに大きな違いを発見!しました。
用途のあるものは、手に取って、使う動作の中で作品を確かめたり、
服飾工芸であれば、まとったり、身につけたりしながら、作品を鑑賞されます。
触れることで作品を味わうように。
けれど、今展では作品に向き合うだけ。
一点一点向かい合って、作品をただ見つめていらっしゃいます。

私もお客様がひけたとき、作品に向かい合ってみます。
すると、作品を見ながら、なんでしょう、作品には触れずとも、
自分の心に触れているような気持ちに。
自分の心がふんわりかきまぜられて、ほぐされていくようでした。

向き合う時間も、白い時間なのでしょうか。

(作品に、実際に触れていただくこともできます。
樟の芳香をどうぞ、とクロヌマさんがおすすめくださったり)


 

ハマスホイの画集を広げて見ていかれる方も。
 

 
小屋の作品を介して、クロヌマさんとお客様の
それぞれの心にしずむ風景が語られていったり。

いつしか眉がくつろぎ、胸が広がったような姿になられて、
ギャラリーを後に なさいます。

会期はあと4日。
さくらに囲まれたギャラリーでお待ちしています。

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白い時間

満開の桜のもとで、今年初めての展示がgalleryらふとで始まります。

クロヌマタカトシさんの木彫展
白い時間
2012年の「工房からの風」に出展くださった作家の方です。
(おりひめ神社の奥で大きなユニコーンを印象的に展示されていましたね)

新たに塗り清めた白い壁の空間に、作品がひとつひとつ所を得て置かれていきました。

花を摘む女性
手紙を読む女性
腕を組む女性
読書をする女性

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何かに夢中になっている姿、自己没入の姿を、白い時間ととらえて、
「白へ向かう」
という作品群もあります。

一点、神々しいようなおおきな作品も

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僧侶、巨岩と名付けられた作品も白い時間の中に

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今展に向かい、何かに没入している人物の白い時間を追い続けたクロヌマさん。
冴え返りの日々の中、このような便りが届きました。

「・・・
最近は小屋を彫っています。
小屋は以前から心引かれるモチーフでもあり
簡素で必要最小限な佇まいには一種の清貧さのようなものを感じていました。
(建築を学んでいたころから小屋好きでした)
今回、人物像ばかりを追っていく中で
何か個人的に息の詰まるようなところ、
ぐるぐると堂々巡りしてしまうようなところに出くわしてしまい
違った側面から白い時間をとらえてみようと試みています。

ですので展示風景は人物と小屋(家)になりそうです。・・・」
と。

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今回、デンマークの画家ヴィルヘルム・ハマスホイへの
オマージュも心に置きながら企画を進めてきました。

案内状の写真は、ハマスホイが好んで描いた静謐な空間を探してデンマークで撮影してきました。

冬の光の中で、どの角度から撮影しても美しさと新鮮に出会いました。

今展でも、ぜひ全方位から作品と出会っていただきたいと思っています。
貴重な画集もご覧いただこうと揃えています。

クロヌマさんは、会期中4日の土曜日のみ不在ですが、ほか4日間はギャラリーにいらっしゃいます。
開館時間は11時から18時。
桜のはなびら流れるギャラリーでお待ちしています。

クロヌマタカトシさんのホームページはこちらです → 

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リレー

「・・・ものをつくる人、伝える人、使う人、
いろんな考え、スタンス、ペースの人達がいて、
それぞれに、がんばる時期、お休みする時期もあって、好みの違いもあるけれど、
リレーするように、どんな形ででも、「工芸」を支えて繋いでいけたらいいなと思います。
自分もその一端を担う者であると自覚しつつ・・・」

季刊「住む」や、このブログを読まれた方から、いろいろ感想をいただいています。
上の文章は、ある作家の方から。

リレーするように、どんな形ででも、「工芸」を支えて繋いでいけたらいいなと思います。

というところに、とても共感します。
「工芸」を大切に思っている人たちが批判ではなく批評し合う中で
(日本人はこれが苦手ですね、かくいう、私もですが努力しています!)
共感する部分をゆたかに膨らませていけるといいなぁと思います。

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さて、前回のクラフトフェアじゃないの?
に関連して、ちょっとプチ歴史を振り返ってみます。
この件に興味関心がある方には、基礎知識?として知っていただけたら幸いに思います。

1988年 ニッケコルトンプラザ内にギャラリーショップ「ニッケこるとん銀花」がオープン
      年に25回ほどの企画展と常設展示販売コーナーを設けた店舗が誕生
・・・
1996年 「工房からの風」 新鮮 30代 作り手たち コルトンホール 企画展
1997年 「工房からの風」 五行五感展         コルトンホール 企画展
1998年 「工房からの風」 季刊銀花とタイアップ   コルトンホール 公募展
1999年 「工房からの風」 作家たちの海外      コルトンホール 企画展

「工房からの風」は、今でこそ野外での「クラフトフェアカテゴリー」で認識されているかと思いますが、
立ち上げは、館内での展覧会でした。
「住む」文中にあるように、赤木さんが参加くださったのは1996年と1997年。
審査員をお願いして固辞されたのは1998年の「工房からの風」のことです。
この企画の根っこの思いは「新しい作家が世に出ていく場面を作る」ということ。
現在の原型です。

:::

2000年から準備をして、
2001年に今の形の野外展「工房からの風 craft in action」が始まりました。
当初は隔年、2005年からは毎年開催となって、今年で13回目となります。

途中、2004年に館内のギャラリーショップを閉じて、
「工房からの風」の会場となるニッケ鎮守の杜の中に、
現在もある「galleryらふと」を移しました。
庭の改修も2005年に行って、「工房からの風」と連動して
庭作りが始まりました。

:::

「住む」前号の記載の中で、「工房からの風」は、
「クラフトフェアまつもと」を模範にして始まった、
とありましたが、これは違います。
2001年からの野外展を立ち上げるにあたって、
三谷龍二さんには、アドバイスをいただきましたが、
それは「クラフトフェアまつもと」の運営からアドバイスをいただいたのではなく、
三谷さんという作家個人のご意見を伺ったのでした。

三谷さんからは、キュレーションをきちんとするといいね、
テントなど全体の美観を考えて展示が美しくできるようになるといいね、
作品がきちんと伝わるような会になるといいね、
といった現在も大切にしていることの基本をおっしゃっていただきました。
(ありがとうございます!)

そして、そもそも、模範とした成り立ちが違っています。
「クラフトフェアまつもと」は、アメリカでクラフトマン自身が
野外で気持ちよく作品を展示販売するスタイルから影響を受けた、
と伺っていますが、
「工房からの風」は、イギリス、オックスフォードで行われている
Art in actionという研究者たちが企画開催している野外展を
成り立ちのきっかけとしています。
作り手が立ちあげた企画と、作り手でも使い手でもない研究者(紹介者)が
立ち上げた企画という決定的な違いがそこにはあると思います。
(Art in actionとの出会いについては、
拙著「手しごとを結ぶ庭」に詳しく書いています)

もちろん、どちらが良くてどちらが良くない、なんていうことではなく、「違う」ということです。

2001年から始まった現在のスタイルの「工房からの風」は、
2006年くらいから来場者の数が顕著に増えて、その中身も若い方々が増えてきました。
応募数もこの辺から急増してきました。
2009年くらいからでしょうか、
各地でクラフトフェアが増えてきたように思います。
地方の自治体の方や企画をする方から、アドバイスを求められる機会も生まれました。
そのような中で、新たな「違和感」が生まれてきたのでした。
何のために行うのか?
その根っこが違うのに、同じようなことが行われようとする違和感、
とでも言ったらよいでしょうか。

と、今日も長くなりました。
続きは、また。

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クラフトフェアじゃないの?

のっけから「私、クラフトフェアをやっているという意識がないんです」

赤木さんの文章はこのように始まります。
えっ、「工房からの風」って、クラフトフェアじゃないの?
多くの読者はそう思われますよね。

この書き方が正確だと感じいったのは、「意識がない」
と書いてくださったことでした。

私、クラフトフェアの定義が、そもそもわかりません。
そして、あらためて問われれば、多くの方がそうではないでしょうか。

-野外にクラフトを作る人が集まってテントで販売する-

という広義であれば、「工房からの風」が、
クラフトフェアだと呼ばれても別に構わないと思っています。
但し、自らはクラフトフェアではなく、野外展と思っています。
年月を経て、そんな風に思うようになってきたのです。

:::

と、書き出したのですが、昨日、発売日早々というのに、
既に「住む」を読まれた方々がやってきて、
このことについての会話を何人もの人と交わしました。
その中で、あらためて確信したことを、先に書こうと思います。
このdirector’s voiceで、出展作家への質問コーナーを毎年やっておりますが、
それにならって書いてみますね。

Q1
「工房からの風」の原点、やってきたことって何ですか?

A
新鮮な作家が世に出ていく、豊かな場面を作りたい、ということですね。

Q2
「工房からの風」がこれから新たにやっていきたいことって何ですか?

A
世に出た作家が、その後によい仕事(よき作品作り)を進めるための、
時間や空間をもっと作っていきたい。

です。

Q1に関しては、現在の野外展が始まって15年目の今、
その願いが少しは叶ってきたかもしれません。
可能性に満ちた力のある作家から応募をいただくようになりましたし、
全国からギャラリーショップ関係者や
バイヤーの方々が多数来場されるようになりました。
出展を機に、スタートを切る作家が毎年輩出しているように思います。

そして、それを支えてくださっているのが、一般のお客様でもあるのですね。
遡ればこの地で工芸ギャラリーショップ
(「ニッケこるとん銀花」という名前で1988年にオープン)
を立ち上げてから27年が経ちましたから、
ニッケコルトンプラザをコアとした周辺のお客様に
じんわり工芸、クラフトが浸透しているのを感じています。
実際、出展作家の方から後日感想を伺うと、
熱心に見てくださる方に、地元の方が多い、とお聞きします。
また、広域からも、毎回「工房からの風」を楽しみに
欠かさず来場くださるお客様も多く、その方々との会話にも
とても励まされていると。

作家を作家たらしめるものは、一部のキーパーソンだけではなくて、
こうした層の厚い使い手の方々あってこそなのですね。
私も時を重ねてそう思うようになりました。

そして、Q2。
これがここ数年来、強く願いはじめてきたことです。
「工房からの風」の特長のひとつが、出展作家同士の交流の濃さです。
人数が50人規模ということや、開催前に交流の機会を何度も設けることなどから、
「同じ釜の飯を食う」というような関係になる方々がいます。
同期、とか、一期上とか、二期下とか、まるで学校のような言われ方をして驚くことも。
この密な関係性の中から、教え合う、影響し合う、ということが生まれてきました。
制作の師や先輩、同輩が以前より希薄になった今日、
佳き影響を与えあう人的つながりは、とても大切だと思います。

そして、その次。
作品そのものが、進化成長していくための場面を創出したいと願っています。
昨年8月に行った日本橋三越本店での二週間の催事は、
そのひとつのさきがけにもなりました。
(今年も同時期に行います)
このような機会を生かして、
赤木さんが書かれていた、
クラフトフェアが作品の低俗化を招いたのでは、
ということと逆の方向へ向かっていきたいと思っています。

と、すっかり長くなりましたね。
今日はこの辺で切り上げますね。

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クラフトフェアはいらない?

季刊「住む」53号が21日に発行となります。
その中で連載されている塗師、赤木明登さんによる「名前のない道」。
ここ2号は「クラフトフェアはいらない?」というテーマで綴られてきました。
一回目は桃居の広瀬さん、二回目はうつわノートの松本さん、
今号では稲垣とのインタビューを基に執筆されました。

「クラフトフェアはいらない?」
というテーマが印象的なので、このことに感想がひっぱられてしまうかもしれませんが、
それは二次的、三次的なことであって、
工芸そのもののこと、それと関わる人や仕組みがどうあるかについて、
真剣に考え、人と語らい、思考を熟し、発言されているのが
今回の連載と私は受け取っています。

文中「生活工芸」という単語も出てきますが、
生活工芸の是非や認めるか認めないかの
旗色を明らかにすることも意図ではないと思います。
ある共通のジャンルの世界を愛し、大切に思う者たちが、
その世界について真剣に考え、意見をし、よりよい世界としてふくらませていきたい、
ということだと思っています。
(私なりの「生活工芸」という言葉の印象は、あらためて記したいと思います)

よりよい世界、などと書いてしまうと優等生みたいですね。
でも、私自身の身の置き所は、もっと生々しい現場です。
思考を巡らすことはとても大切な活動だと思い、集中することに憧れもありますが、
私はといえば経済社会の只中におりますし、理想論の場に軸足をおいてはいません。
机上論ではなく、常に現場で生身の人間(作家然り、お客様然り)を相手に、
生身のアクションを受け止めながら、ナケナシの頭で物事を考えてきました。

+++

今回の赤木さんのインタビューが文章化されるとき、正直に言えば、不安がありました。
発言というのは話の前後の流れで出てしまうこともあるし、
それをどう掬い上げるかで、如何ようにも文章は作れてしまいます。
私自身の話が拙かったせいで、思いや事実と異なる方向に書かれてしまったらどうしよう、
そんな恐れも抱いていました。

けれど、赤木さんから確認のためにいただいた校正文を読んだとき、
そんな私の幼い心配はまったく不要だったのだと悟りました。
もちろん、自分の文章ではありませんから、多少のニュアンスの違いがないとは言えません。
けれど、大きな流れで、思いを正確にくみ取ってくださって、
これからの光に向かって書かれてある文章でした。
(さすが赤木さん!すばらしい!と思ったのでした)

むしろ、心配になったのは「工房からの風」について、よく書かれ過ぎていないか?
と読者に思われることでした。
過去に「工房からの風」に出展された方、来場された方には、
その実感と、書かれてある文章とに違和感があるのではないかという危惧でした。

しかし、その違和感は正しいと思います。
たとえば、2001年に感じた工房からの風や、2008年に感じた工房からの風では、
今私が感じ、向かおうとしている工房からの風とは違っていますから。
赤木さんの文章は、今の私とのインタビューを基に書かれたものですから。

+++

ある意味、違和感が「工房からの風」を育ててくれた。
といえるかもしれません。

「工房からの風」の姿への想いや理想がある。
その想いや理想も、実行してみれば、思っていた姿とどこか違っている。
その違和感はなぜだろう?
それについて思考しながら、次の姿を思い描く。

毎回これを繰り返しながら、彫琢を重ねるように企画を進めてきたような気がします。
「出来事」に対する想いや理想は、時代や社会背景と添いながらのものだから、
絶対的というよりも相対的な部分もありますね。
どの会も企画者の想いは大切なことだと思いますし、
同時にひとりよがりでは形を成さないものでもあります。

+++

赤木さんの今回の文章を通して、思考を巡らしてみたいと思います。
「工房からの風」について書かれていますから、このブログの場から、
しばらくこのことについて綴ってみたいと思います。

次回は、
『のっけから「私、クラフトフェアをやっているという意識がないんです」』
という冒頭の文章に関連して書きますね。

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風婚

2015年「工房からの風」へたくさんのご応募をありがとうございます。
鋭意選考を進めまして、土曜日の夜に結果通知を投函予定です。
週明けにはお手元に郵便局からの通知が届くかと思いますが、
もし19日木曜日までにお受け取りになれていない場合は、
事務局までご一報くださいませ。
047-370-2244 (10時~18時)

:::

さて、先日結婚のお祝いパーティーがありました。
2012年の工房からの風に出展された陶芸作家のお二人が、
この場での出会いがきっかけで、ご結婚されたのです。

おりひめ神社のご利益でしょうか。
おふたりの門出を祝おうと、近隣の同期出展が作家中心となって
コルトンプラザのレストランで、お祝いの席が設られました。

ウエルカムボードの似顔絵や、新郎新婦席の「壽」の書。
ギターやウクレレでのお祝い演奏や、ユーモアたっぷりで心のこもったスピーチ、
手作りの(作家の方々なので素晴らしく精緻)贈り物。
私たちも、お庭のクリスマスローズや月桂樹などでブーケやブートニアを。

工房からの風での出会いが、幾重にも広がり、深まって、
ものをつくる人生が豊かになっていく。
そのようなことと、ささやかでも関わることできているとしたら、
こんなにうれしく幸せなことはありません。
集まった作家たち、この日集まれなかったけれど気持ちを寄せられた作家たち。
これからも切磋琢磨して、よき交流を続けていかれますね。

画像はおふたりに贈った「寄せ書き」。
出展時の思い出の手ぬぐい(ピンクでした!)に、
お祝いのメッセージを出席者で書いてお渡ししました。
こんな風に、風婚!のお祝い、また出来るでしょうか。

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応募3月5日必着です

ただ今、応募用紙受付中です。
毎年、出だしはゆっくりで、最終日に雪崩れ込む?感じですが、
昨年は本当に大雪の日と重なって、最終日に届かなかった便が何通もありました。
ぜひ、お早目のご応募をお待ちしています。

届いた郵便を拝見しながら、魅力的なご応募ももちろんありますが、
それが50ブースあるかと問われれば、まだまだ余裕があります。
2015年の工房からの風、豊かな風が渡るかは、
出展作家の魅力に大きくかかっています。

いたずらに応募数を増やすことが目的ではありませんので
煽るようなつもりはありませんが、
質の、志の、高いご応募をいただくことを企画者として心より願っています。

また、「工房からの風」の趣旨に賛同くださり、この展覧会を支持してくださる方々、
お知り合いに適した方がいらっしゃいましたら、ぜひ応募をおすすめください。

会場となる「ニッケ鎮守の杜」では、梅が満開。
ここから豊かな出会いの場を作りたいと思います。

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応募が始まりました。

今年度の応募が始まりました!

本日2月20日から3月5日必着で、ご応募をお待ちしています。

web登録フォームも公開しています。

web登録フォームは、当方の事務作業の正確性を高め、潤滑化のためにお願いしています。
応募用紙の送付と、web登録はどちらが先でも結構です。
また、どうしてもweb登録ができない方は、応募用紙の送付だけでも結構です。

応募趣旨をよくお読みいただき、「工房からの風」のことをご理解いただいた上で
ご応募いただけますことを願っております。

また、「工房からの風」が適していると思われる作家をご存知の方がいらっしゃいましたら、
ぜひご案内いただけますと幸いです。

2015年の工房からの風、佳き出会いに恵まれますように。。。

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20日から応募が始まります

いよいよ今年度出展者の応募が20日から始まります。
あと1週間ですね。
応募期間は2/20-3/5必着です。
ぎりぎりでの投函は到着しないこともありますので、
要注意です!
ぜひ、準備万端、早めのご応募をお待ちしています。

ここのところ、いくつかご質問をいただいております。

たとえば
Q
ひとつのテントを二人の作家でシェアして応募したいのですがよいでしょうか?

というお尋ねには、
A
通常の活動をされている形態でのご応募をお願いしております。
今回限定ユニットなどはご遠慮いただいております。

まずは、個々の作家もしくは少人数での工房で
制作されている作品の写真のご用意と、
各記入事項を正確に丁寧にお書きいただきたくお願いいたします。

とお答えしました。

「工房からの風」では、出展者を決めるだけではなく、
その後のやりとりを経て企画をふくらませていきます。
なので、場所貸しのような形式ではなくて、
展覧会の全体構成の中で各作家の展開方法を決めていきます。

:::

今までにお伝えしてきたことと重複してしまいますが、
「工房からの風」では、プロもしくは明確にプロを目指して
満を持して世に出ようという方の出展で構成したいと願っています。

当日までの制作や、当日の濃密さは、
そのような力や意志がある方ではないと、
乗り越えるのが難しいと思っています。
その結果として、新たな扉が開いたり、
豊かなつながりが生まれる可能性を作れるように、
私たちは企画に励みます!

:::

傾向として、陶芸は昨年度は11倍の選考の難しさでした。
50人の出展者のうち多くても
10人未満の選出になるかと思いますので、
今年も狭き門になるかもしれません。

染織は年によってかなり応募数や内容にばらつきがあるように感じています。
さて、今年はどんなご応募をいただけるでしょうか。

木工、ガラスはもっとご応募をいただけるとありがたく思います。

装身具の応募は増えていますが、ただ発表の場として捉えられるのではなく、
「工房からの風」の企画構成と、
作家の制作スタイルが響いているかを
よくご検討いただいて応募くださることを願っています。

その他ジャンル、としている部門は、選考がとても難しいですね。
けれどもこのジャンルが豊かになると、
工房からの風自体がとてもふくよかな風になるように感じています。

昨年もドライフラワーフレーミングのナカヤマサトシさんのように、
展覧会当日の反響も大きく、
その後のお仕事の広がりを得られた方もいらっしゃいます。
「工房からの風」っぽくないから。。などと思いこまず、
趣旨に響いてくださり、今までの出展作家の作品にも感じるところがあるようでしたら、
その他ジャンルからのご応募もぜひ期待しています。

そして最後に
「工房からの風」は、ともに仕事をする場、と考えています。
作品の魅力はなによりですが、
ともに仕事をしたいと思える方が多く出展くださることを希っています。
少なくとも、「このひととは仕事がしたくないなぁ」
と思わずにはいられないご質問や応募形態ではないことを望んでいます。
応募用紙を書くこと自体が、自らのもの作る仕事を整え、
次への進歩へのきっかけになるかもしれません。

佳き出会いにつながるご応募、心よりお待ちしています。